「どうしょうもなく、あなたが」 〜ブエナビスタとレッドディザイア〜   作:リンゴ糖

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冬休み:ブエナがんばります!

 

有馬が終わると、と言うよりは有馬の週は年末年始、世間一般に学生は冬休みの時期。

とはいえトレセン学園にそれはちょっと当てはまらない。

 

授業こそ無いものの年末の大レースに、年始の名物の東西の金杯とトレーニングのために残る生徒も多い。そんな学園には施設管理に食堂にと多くの人が詰めかけている。

 

誰も彼も足を止めない。

ディザイアちゃんもウオッカさんも。

それなら私も動き出そう。

止まっていたんじゃ届かない。

歩いてたんじゃ間に合わない。

 

あの日進めなかった見えない壁もジャンプ一番飛び越えて、目指すは一つ彼女の元へ。

 

「ディザイアちゃん!」

 

リーチちゃんの情報通り、今日も二人でトレーニングしてました!

 

「ブエナさん…?」

 

急にやってきた私に困惑したように、目を向ける。

あっ、そういえば

 

「えーっと、ね」

やっちゃいました!

何を話すか決めてません!

おめでとうは変だし、おつかれには期間が空いてます。

 

「そうだ!トレーニング、一緒にトレーニングしよ!」

 

結局出てきたのはこんなんでした。

ぶえー!

 

「…お断りします」

「そもそもブエナさん、有馬からまだそんなに経ってないでしょう」

「私の、いえ、私たちとは予定が違うのですから、そもそも内容も合わせられませんし」

 

ディザイアちゃんは私に背を向けると淡々と続ける。

 

「まずはきっちり休養なさってください」

「有馬はかなりタフな展開だったとも聞いています」

 

それでは。

そう言うと、ディザイアちゃんは走り去ってしまいました。

 

 

「あー、ごめんな?」

「せっかく来てくれたのに」

 

がっくりと手をついて落ち込む私にウオッカさんが頬をかきながらやってきます。

 

「ディザイアには今、練習パートナーお願いしててさ。

聞いてるかな? 俺たちドバイ目指してるんだけど」

 

「…ウワサは聞いてます」

 

「…ってことは、直接は聞いてない感じか」

 

力無く頷いた私に、あちゃーとばかりにウオッカさんは顔を覆います。

 

「ディザイアからはさ、ブエナのこと色々聞いてたからさ、きっとあれだ。

ライバルには負けたくないとかそんな感じの!」

 

あんまり落ち込んで見えたのかウオッカさんは、わたわたと私のフォローに入ります。

今や現役トップの大先輩なのに、この親しみやすさ。

私もあわてて立ち上がると、

 

「大丈夫です!

ディザイアちゃんの言う通り、今は出来ることをします」

 

ありがとうございました!

ディザイアちゃんをお願いします!

 

そう言うと私は一時撤退を決めました。

 

───

 

その後もちょくちょく突撃してはディザイアちゃんに追い返される日々が続きました。

 

しかし私も無策で挑んでいたわけではありません。

練習メニューが違うのはディザイアちゃんのおっしゃる通りなので、当然その後はメインの時間は避けました。

迷惑をかけるやる方はダメですからね!

 

という訳で、メインが終わった後のクールダウンだったり、雨の日の室内メニューとかそんなタイミングで行動します。

ディザイアちゃんは相変わらず塩対応でしたが、ウオッカさんがときどき間を取り持ってくれました。

 

ウオッカさんは、ディザイアちゃんがいない時に、

 

「ブエナがディザイア追っかけてるの見てるとさ、スカーレットがよく絡んできてたの思い出すんだ」

「まぁ、アイツはブエナと違ってしょっちゅう喧嘩腰でくるんだけどな!」

 

なんて言って私の頭をぐりぐり撫でてきました。

私もだいぶ慣れてきて、

やーめてー、と揺さぶられてます。

 

「…あぁ、懐かしいな」

なんて柔らかい声で呟くから、思わず見上げると、ニッと笑って、

応援してるぜ!

そう言って私の背中を軽く叩きました。

 

 

───

 

ウオッカさんの手助けもあり、二月に入る頃にはたまに一緒にお昼を食べたりもしました。

 

「ディザイアちゃん、それで足りるの?」

 

「…ブエナさんが多いんですよ」

 

「そんなことないと思うけど」

 

「……へへっ」

不意に顔をあげるとウオッカさんが笑っていました。

 

「ウオッカさん?」

 

「どうしましたか?」

 

ディザイアちゃんと二人で首を傾げるも、

 

なんでもねーよ!

と流されてしまいました。

 

「それよりブエナ、俺たちはそろそろドバイに向かう」

「お前もレースが近いからな、

そろそろ別行動だ」

 

ウオッカさんは手を差し出すと、

「一旦お別れだ」

 

私もその手を握り返して

「はい、待っててください」

 

決意を込めて伝えます。

ウオッカさんはいつものように、

ニッと笑います。

 

「ディザイアちゃん」

私は体ごと向き直り、

 

「待ってて」

「追いかけるのは、私の役割」

だよね?

 

「……行ってきます」

ディザイアちゃんは手を胸の前で組み、目をつぶって答えた。

 

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