精霊術師と魔法少女   作:桃月

10 / 13
第9話投下!

Q.いい加減序章終われよ?
A.はい、一応これが本編序章としては最終話です。

Q.ようやく原作キャラが絡んできたのに全然加速しないのな
A.スイマセン!! もろもろの都合で結構厳しいのです!

そんな感じで?第9話、どうぞ


第9話 邂逅、衝突

‡‡‡ 新暦65年4月10日 第97管理外世界≪地球≫日本国海鳴市

 

 

「…………。」

「…………。」

「…………。」

 

 

家族会議なう。

そして沈黙が重い。

先ほど家に帰り、父さんと母さんと俺との3人で 先ほどの説明をしたのだが。

何が問題って父さんが結局母さんに俺のこと話せてなかったのもあって母さんは心の準備が出来ていないだろう、ということだ。

……父さん、なんで話しておいてくれなかったんですか。

って、父さんに丸投げしていた俺にも非は多分にあるんだけど。

 

 

「……つまり、和人は精霊と話すことが出来て、さっきの木とか和人が急に消えたりしたのはそれ関係ってことで良いのかしら?」

「うん。信じられないかもしれないけどその通りだよ。」

「すまない。俺が無理やりにでも話しておければよかったのだが。」

「別に信じないとは言ってないわ。というよりもアキから話を聞こうとしなかったのは私だし、その話もたぶん内容知ってるわ。」

 

 

……は?

いま、母さんはなんと?

え、知ってる?

 

 

「私の息子、那須和人は転生者であり、精霊が憑いている。そうなんでしょう?最初に聞いたときは妄想か何かかとは思ったけれど、今日のあれでその線はなくなってしまったわね。」

「……なんで知ってる、綾佳。」

「西村から聞いたの。たしかスポーツドリンクでも置いておこうかと弓道場に行ったら和人の大声が聞こえて、思わずそのまま聞いてしまったと言っていたわ。……罰したりしたらダメよ?」

「わかっている。……壁に耳あり障子に目ありとはよく言ったものだな。」

「そう、だね。でも、それなら話が早いよ。まずは、母さん、俺のことをどう思っていますか?」

「どうもこうもさっき言ったでしょう? ()()()()って。最初は確かに混乱したけれど、4年もあれば整理くらいできるわよ。」

 

 

……父さんもそうだったけど、母さんも俺が転生者であることを全く気にしていないらしい。

本当に、良い親だと思う。

だからこそ、これからお願いしなきゃいけないことを思うと胸が痛くなる。

 

 

「よかったな、和人。」

「……うん。ありがとう、母さん。」

「お礼を言われるようなことをした覚えはないわよ。さ、本題に入りましょう。」

「わかったよ。……さっきも説明した通り、さっきの木が急に大きくなって襲ってきたのは魔法関連のことなんだ。ここまでは父さんも母さんもいいよね?」

「ああ。大丈夫だ。」

「そうね。ファンタジーだとは思うけど、事実なのでしょう?」

「うん。で、そういった事象に対応できるのは魔法を扱える人間だけなんだ。だから、そういった事象に対応する組織っていうものが存在する。」

「秘密警察的なイメージでいいのかしらね?」

 

 

そういえばシルフィードから聞いてただけだから、なんとなくのイメージしかない。

時空管理局、複数の時空世界を股にかけ、行政、司法、立法の3権力が集約されている組織。

管理局内部で権力分散は行われているらしい。

だから完全に権力が集中している、という訳でもない。

見方を変えて、各世界が領土とみれば時空管理局という名の巨大国家と見た方が正しいのかもしれない。

 

 

「うーん……精霊から聞いた話だから俺もよく知らないんだけど、どっちかっていうと巨大国家な感じじゃないかなぁ。」

「ふむ。そうするとだ、和人はそこの組織の一員になる、ということか?」

「そう。で、その組織の本部はこの世界じゃないんだ。国が違うとかいう次元じゃないから、勤め始めてしまえば会える機会はかなり減ってしまうと思うんだ。」

「なるほど。……それを許可してもらいたいわけだな?」

「うん。ダメかな?」

「いや、そんなことないぞ。どうせ子どもというのは親元を離れていくものだしな。そうだろう、綾佳?」

「……いつから勤めるつもりなのかしら? さすがにもう勤めるというなら止めるわよ?」

「あぁ、えっと、小学生の間はこっちにいる予定だよ。中学に上がるときにミッド……組織の本部の学校に行けたらいいなって考えてるんだ。魔法の関係ない知識は転生前の記憶でほとんどあるんだし、魔法の知識を身に着けないといけないから。」

「――力を持ち、それを振るうものは常に自身を鍛え、その時々の最適な状態を維持せよ。さもなくば汝、志半ばにして倒れ臥すであろう。……そんなような内容が例の古文書に書いてあってな。魔法のことはよくわからんが、それが最適なんだな?」

「そう思ってる。少なくとも今はね。」

「なら俺からは言うことはない。綾佳は?」

「そう、ね。正直さびしく思うのだけれど。……和人が将来安全に過ごすためにはそっちの方が良いのよね?」

「うん。おそらくは。」

「ならそうするといいわ。けど、帰ってくる場所くらいは用意しておいてあげるから帰って来たくなったら帰ってくるのよ?」

「……っ!ありがとう、母さん。」

「お礼を言うようなことでもないわよ。さ、これで話は終わりかしら?」

「うん。父さんと母さんが聞きたいことなければだけど。」

「俺からは特にないな。」

「私も特にないわ。……じゃあそういうわけで、みんなお風呂に入って寝ちゃいましょう? もう遅くなっているし。」

「はい。」

「そうだな。それじゃ和人、一緒に入るか。」

「はーい。」

 

 

とっかかりには時間がかかったものの、話し合いそのものはものすごく順調に終わり、父さんと母さんから管理局勤めの許可も下りた。

……まだ管理局と接触していないから、確定していなかったりするわけだが。

まぁ今回人的被害も出かかったうえに魔法の隠匿すら危ぶまれる事態になったのだ。

管理局が介入してくるのはそう遠いことではない、と願いたいところだ。

 

 

 

‡‡‡ 新暦65年4月17日

 

 

 あの日から丁度一週間。

あの日に高町に気付かれているかと思ったがそうでもないようだ。

なんでかというと、この一週間高町にそれらしいことを聞かれなかったからだ。

確かに2人きりで話せるような状況にはならなかったが、気づいていたなら念話の一つや二つくらい飛んできそうなものであろうにもかかわらず、だ。

 

 

 そしてもう一つ。

ぱったりとジュエルシードの発動がなくなっていたりする。

大方発動しやすそうな場所、つまり人目に触れたり野生動物の目に留まったりするような場所に落ちたものは発動しきったのだろう。

もしくは高町が発動前にジュエルシードを回収できるようになっただけなのかもしれないが。

しかしそれならそれで封印処理時の魔力の高まりで分かりそうなものだし、やはり発動していないが妥当か。

 

 

 

『うーん、今日は高町さん、月村さんの家に遊びに行ってるみたいだねぇ。』

『……そうか。なら俺はこの辺りの警戒にしておくか。』

 

 

シルフィードに頼んで、高町の現在位置だけはなるべく正確に把握しておくようにしている。

同じ場所を探していても、発動した地点が遠ければ対応が遅れてしまうので、それを回避するためだ。

これは高町が一人で封印等が出来るという前提での話だ。

俺のほうは……ファーブニルが封印は多少得意で、見て時間があればどうにかなるかも、と言っていたからそれ次第といったところ。

仮に単独で封印できなくても、高町が来るまで時間稼ぎできれば被害の拡大だけは防げる。

そんなわけでとりあえず別行動になるように行動しているのだ。

 

 

付け加えるならば、もう一つ理由がある。

先日、海鳴市にまた次元介入反応が発生したのだ。

第2の回収者の介入、という訳だ。

こちらの調査もする必要があるため、ジュエルシードだけを探し続けるわけにもいかない。

 

 

『とりあえず、第2の回収者探しをメインとしよう。別に高町の方は放っておいても町に危害を与えるようなことにはならないはずだ。』

『りょうかーい。……今日はかずくんが探査する感じでいこっかー。わたしがやっちゃっても良いけど、かずくんの魔法練習もしないとだしね~。』

『それもそうだな。んー、相手の顔がわかってるわけでもないしエリアサーチは使えないか。なら、屋上から魔力網でも張って魔法関係者に引っ掛けるのがベターかな。』

『それでいいと思うよ~。太くしすぎたら見つかると思うけど、大丈夫だよねー?』

『流石に大丈夫だと思う。念話の時よりさらに細くするつもりだし。』

『ぶっつぶつに千切れないかだけ、だね~。』

『おう。』

 

 

――精神統一。

――まずは大きめの魔力球を一つ、小さめの魔力球を二つ生成する。

――小さな魔力球をゴムのように引き伸ばし、自分を中心としたXを作る。

――次に、大きな魔力球をこれまたゴムのように引き伸ばし、先のXを支えとしながら渦巻きを描かせる。

 

そうやってできた網をさらに延長していき、魔力を持って踏み抜けばこれが千切れ、俺にそれが伝わる、という寸法だ。

この網を、一般住宅街の屋根の高さを結んだものと、ビル街の屋上の高さを結んだものの二つ用意。

これにて準備は完了、あとは待つだけだ。

 

 

『ほー、器用なもんだな。網を作るときは3個マルチタスク割いていても、一回張ってしまえばそれに割くのは1個でいいのか。』

『まあね、元は渦巻きだけだったんだけどどうやったら精度上昇とコスト維持できるかって試したらこうなったんだ。張るのを同時にすることは出来ないけど、そんなのあんまり関係ないしね。』

『板状にすりゃ……使用魔力が跳ね上がるか。』

『それに感知されやすさも跳ね上がりますね。……下位精霊が踏み抜かなければいいのですが。』

『一応強度はある程度維持してるから、故意にやってこない限りは大丈夫だと思うよ……っとぉ、さっそくかかった! 距離2.75㎞、角度103度、約240度方向に移動中ってところだ。結構速い、西に移動しよう。』

『りょうかーい。』

『了解だ。』

『了解しました。』

 

 

エアリーステップスを利用しつつ、屋根の上を伝っていく。

……なんてことはなく、素直に道路をひたすらダッシュする。

車とかの警告はシルフィードに任せ、ひたすらダッシュ。

信号は守ってるけど、逆に信号がなきゃT字路とか入るときの考慮は全くなし。

良い子は真似してはいけません♪

2.16kmを5分ほどで移動したところでいったん止まり、北からくる場合に見えないよう、塀の裏に隠れて待機する。

 

 

『シルフィード、封時結界用意お願い。』

『りょうかーい。合図はよろしくねー。』

『おっけー。……なんか、移動しては止まってを繰り返してるみたいだな。ここから840m位の場所にいる。』

『ジュエルシードを探査しながら移動している、ということでしょうね。どうしますか? 待ちますか?』

『そうだなー。動いて気付かれるのも馬鹿らしいし、待つか。反転とかしたらその瞬間結界張るけど。』

 

 

――そうして待つこと3分。

第2の回収者(ターゲット)がのこのこと近づいてきた。

彼我の距離、15m。

完全に間合いの中、むしろ近すぎると言ってもいいくらいだ。

 

 

『シルフィード、封時結界発動。』

『りょうか~い。演技の時間、がんばれ~。』

『おう。』

 

 

――世界が色あせ、白と黒の世界へと変貌する。

うん、やはりこの瞬間が何とも言えず好きだ。

惜しむらくは自身で発動がいまだに出来ないことだ。

指示を出しつつ、屋根の上に移動、アーチャーフォームのIreneに()()()矢を番え、同じく屋根の上にいた女に狙いをつける。

 

 

「――っ!なにもんだいっ!こそこそしてないで出てきな!」

「動くな。この距離ならいつでもその首、撃ち貫ける。」

「……そいつは、どうかなっ!」

「っ!」

 

 

女が何かに変身しようとしながら振り返り、突っ込んでこようとする。

なるほど、確かに馬鹿正直に首やら頭やらを狙っていたならばこれで回避されていただろう。

だが――

 

 

「ぅぐぁっ!?」

 

 

俺が狙っていたのはもともと足。

俺の放った矢は、女の足と屋根とを縫い付けていた。

逃がさずに情報を得ることが俺の目的であって、殺すことが目的なわけではないのだ。

 

 

「動くなと言ったはずだ。」

「……これくらいで止められると思ってるんじゃ「次をお望みか? 心臓、頸動脈、脳髄、脊椎、リンカーコア。どれでも選ばせてやるが?」……ちっ。」

 

 

Ireneを即座に構え、目を狙ってやると流石に不利を悟ったのか、おとなしくなる。

……念話を誰かに送ったようではあるけど。

 

 

「救援を呼んだか。別に問題ないが。では本題に入ろう。貴様、この海鳴の地で何をしている。」

「……はっ! 教えてやる義理はないね! 坊やこそ何者だい。どうやら管理局のものじゃなさみたいだけどさ。」

「人に何者か尋ねる前に自分のことを言ったらどうだ? ……まぁいい、俺は那須 和人。精霊術師にして鳴海の魔術的統治者だ。」

「精霊術師……? 現地魔導師かい?」

「ふん。こちらの質問にも答えたらどうだ。とりあえず名を名乗れ。」

「……アルフ。」

「そうか、ならアルフ、再度問おう。この鳴海の地で何をしている。」

「さっきも言ったがけど、言う義理はないね。」

「いや、あるさ。土足で人の統治領領域内に入り込んできたんだ。せめて理由を言うのが筋というものだろう? ……とはいえ、実際は目的はわかっているんだがな。ジュエルシードとやらだろう?」

「!? ……何のことだい?」

「しらばっくれる必要は「ファイアッ!!」っ! 来たか。」

「うぁあ!」

 

 

シルフィードの予告通りに飛んできた魔力弾を、前進しつつ回避する。

同時に矢を放ち、アルフのもう一方の足を縫い付ける。

――そして、気が付けば黒衣を纏う美少女がアルフを支えていた。

 

 

『……。』

「アルフ!? 大丈夫!?」

『かずくん、ロリコン?』

『ロ、ロリコンちゃうわっ! 俺も小学生だし合ほ……って、今はそれどころじゃないってば。』

「警告無しに攻撃してくるとは物騒なことだな、黒いの。」

「アルフに先に手を出したのはキミだ。そんな事を言う資格はないと思うけど?」

「俺は警告はしたしな。こちらの要求を言うまでもなく抵抗を始められたので矢を放ったまでだ。」

「……。」

 

 

黒いバリアジャケットを着た少女は無言でデバイスらしきものを構える。

仲間が傷つけられているのだから当たり前ではあるが、思いっきり臨戦態勢だ。

その端正な顔から怒りが滲み出しているのが見て取れる。

 

 

「まぁ待て、こちらに戦闘の意思はない。出来るならば穏便に話し合いで解決しようじゃないか。」

「……アルフに怪我をさせておいて、よくもぬけぬけと……!」

「だからそれはそっちが……。いいか。俺の名前は那須 和人。黒いの、名前は?」

「……。話し合いをしたいなら、弓を降ろして。」

「りょーかいりょーかいっとぉ。」

 

 

番えていた矢を自身の足元に放ち、Ireneを待機状態にする

それを見て黒いのはピクリと眉を動かし、彼女の周囲に浮いていた魔力球を消した。

一応話し合いをしてくれるということか。

 

 

「これで良いだろ。で、質問の答えは?」

「……フェイト。」

「そうか、フェイトか。ならばフェイト、次の質問だ。お前たちが我が統治領、海鳴の地においてジュエルシードと呼ばれる物質を探していることはわかっている。理由を聞こうか。」

「……話したところで、分かりはしない。」

「だから話さない、と。難儀なことだ。質問を変えよう。お前たちが集めることによって、海鳴の地に被害は出るか? 出ないと誓えるならば手を貸すこともやぶさかではないが。」

「……わたしは、出すつもりじゃない。」

「お上がどうかは知らないってか。……であるならば見逃すわけにも、ましてや手を貸すわけにもいかんな。Irene, set up!!」

ALL right, and set up(了解、セットアップします).」

「っ! アルフは下がってて。私だけで十分。」

「フェイト、気を付けるんだよ! 魔法の腕は知らないけど弓の腕だけは確かなんだから!」

「大丈夫。バルディッシュ、行くよ。フォトンランサーセット!」

「[Photon Lancer] set.」

 

 

金色の魔力球が4つ、フェイトの周辺に出現する。

……射撃魔法か。

直射タイプか誘導タイプかは不明だが、先の先制攻撃から察するに直射タイプか。

まぁどちらにせよしっかりと防御さえ出来れば一撃で落とされることはないだろう。

とりあえずは牽制しつつ情報収集ってところだな。

 

 

「おとなしく捕らえられてはくれないかな?」

『フレイムランサー3発、ファイアーボール2発、ファイアーウォール1枚、ソニックバレット6発、ウォーターボール6発用意よろしく!』

『あいよっと。』

『はーい。』

『承りました。』

「邪魔をされるわけにはいかないから。あなたも、怪我をしたくなければ抵抗はしないで。」

「平行線、だな。……いくぞっ!」

「[Blitz Action]」

 

 

瞬間、フェイトが消える。

慌てずにリンカーコアの探査……っ!

 

 

「フルオート・ファイア!」

「[Protection]」

『めちゃくちゃ早いな。細かい指示を出している余裕はない。魔力と位置情報をどんどん送る。可能な限り攻撃し続けてくれ。』

『『『了解』』』

 

 

シルフィード達に指示を出している間にもどんどんと射撃魔法が飛んでくる。

正中線をしっかりととらえた弾、一拍遅れて左右の体の端をかすめる程度にずらした弾、本能的な恐怖を煽るに十分なあえて正面から頭を狙った弾等々。

バリエーション豊かな弾道でこちらにダメージを蓄積しようとしてくる。

早朝練習の回避練習が効いてはいるのか半分くらいは避けられるが……。

このままではジリ貧で負ける、というのは火を見るよりも明らかだろう。

 

 

――Ireneにありったけの魔力を送り込み、プロテクションの防御力をブースト、足を止める。

――体内の熱源(リンカーコア)を明確に感じとる。

――外から(マナ)を送り込み、さらなる(オド)を次から次へと精製、シルフィード達に際限なく譲渡していく。

 

 

「楽勝、と思っているかもしれんが、そうそう簡単には負けはせぬよ。――今度こそ、いくぞ?」

 

 

 

*** ~フェイト・テスタロッサ~ view ***

 

 

 母さんの指示で、この世界にやってきた。

たしか管理外世界の97番、名前は《地球》だったかな。

探すように頼まれているのはジュエルシード、ロストロギアだ。

とりあえずまだ管理局は動いていないらしいけど、介入があればかなり回収が厳しくなってくると思う。

だから、そうなる前にどれだけ手に入れられるかが勝負になるかな。

本来の持ち主も回収しに来ているはずだから、結構急がないとダメかもしれない。

という訳で今日はアルフとは別行動にしている。

万が一魔導師と出会ったら、軽く威力偵察だけして帰還するようにとは言ってるけど、アルフの性格的に結構不安だったりする。

……大丈夫かな?

そんな事を考えていると――

 

 

 ――『フェイトッ! ごめん、捕まった!』

『え、えぇ!? だ、大丈夫?』

『足を矢で貫かれてるから、一人で脱出はちょっとつらいかもだね。』

『足をって……! 今すぐいくね。それまで頑張って!』

『わかった。本当に、ごめんね。』

『気にしなくていいよ。アルフは大事な家族だもん。』

 

 

 アルフとの念話を切って、とりあえず高度を稼ぐ。

このあたりは人通りが少ないので見つかる可能性が低いが、街中で低高度で飛行してしまっては見つかって騒ぎになる可能性が高いからだ。

高度があれば見られても採りか何かくらいに思われる可能性が高くなる。

高い位置に来ると、すぐに封時結界が住宅街で発生していることがすぐにわかった。

まず間違いなくアルフはあそこだろう。

飛行して一気に近づき、結界の天頂に陣取る。

 

 

 「バルディッシュ、入れる?」

No problem(問題ありません). There is no wall(侵入制限が存在しないので).」

「ならいこう。侵入と同時にフォトンスフィア3つセット、よろしく。」

Yes, sir(了解しました).」

 

 

不用心にも一切の侵入妨害がかかっていない結界に侵入する。

だけど、今回はものすごく有り難いと思う。

そんなことを思いながら、結界内に侵入を果たす。

 

 

「[Photon Lancer] set.」

 

 

アルフは……いた!

真下から少しずれたところにおり、その足には矢が生えていた。

そして、敵は真下、アルフに向かって弓を構えている。

たまたまだがここなら死角にになっているはず、放てば必中!

 

 

「ファイアッ!!」

 

 

狙ったのは脳天に1発、後ろに下がって回避したときのためやや後方に1発、右利きなようなので左側に1発。

だが――。

パンッ――!

 

 

「うぁあ!」

「アルフ!? 大丈夫!?」

 

 

敵はまるであらかじめ来るのがわかっていたかのように悠然と前進し、その上アルフに矢を放っていた。

 

 

「警告無しに攻撃してくるとは物騒なことだな、黒いの。」

「アルフに先に手を出したのはキミだ。そんな事を言う資格はないと思うけど?」

「俺は警告はしたしな。こちらの要求を言うまでもなく抵抗を始められたので矢を放ったまでだ。」

「……。」

 

 

 たとえそれが本当であったとしても、家族であるアルフに矢を放ち、傷を負わせたことに変わりはない。

中立勢力とみるよりも対立勢力とみるのが妥当なはず。

というよりこっちがそうは見れない。

 

 

 「まぁ待て、こちらに戦闘の意思はない。出来るならば穏便に話し合いで解決しようじゃないか。」

「……アルフに怪我をさせておいて、よくもぬけぬけと……!」

「だからそれはそっちが……。いいか。俺の名前は那須 和人。黒いの、名前は?」

「……。話し合いをしたいなら、弓を降ろして。」

 

 

 話し合いをするつもりはないけど、ダメ元で戦闘状態の解除を要求しておこう。

もしもこれに応じたならば私も誠意を見せるべきなのかな。

これまで攻撃をためらわなかったのだから、望みはかなり薄いと思うけど。

だけど――

 

 

 「りょーかいりょーかいっとぉ。」

 

 

 ――え?

彼はそう言って番えていた矢を彼の足元に放ち、弓を消した。

弓がデバイスだったのかな?

……そんな事より、話し合いの名目での戦闘状態解除。

応じられた以上こちらも攻撃態勢くらいは解除しなければあまりにも不義理と思ってしまう。

甘いなぁ、というのをわかっていて、それでも私はフォトンスフィアを消滅させてしまう。

 

 

 「これで良いだろ。で、質問の答えは?」

「……フェイト。」

「そうか、フェイトか。ならばフェイト、次の質問だ。お前たちが我が統治領、海鳴の地においてジュエルシードと呼ばれる物質を探していることはわかっている。理由を聞こうか。」

「……話したところで、分かりはしない。」

 

 

 そう、私が集めようとしているのは母さんのため。

ここまでは誰にでもわかってもらうことは出来ると思う。

でも、それを集めるという行為が犯罪であると、母さんも私もわかった上でそうしているというのは。

母さんが娘に犯罪を犯させるというのは。

娘もそれをわかっていながら母さんのために、と集めるのは。

きっと、日の当たるところで生きてきたであろう彼のような人には理解されないだろう。

 

 

 「だから話さない、と。難儀なことだ。質問を変えよう。お前たちが集めることによって、海鳴の地に被害は出るか? 出ないと誓えるならば手を貸すこともやぶさかではないが。」

「……わたしは、出すつもりではない。」

「お上がどうかは知らないってか。……見逃すわけにも、ましてや手を貸すわけにもいかんな。Irene, set up!!」

ALL right, and set up(了解、セットアップします).」

「っ!」

 

 

 戦闘準備を始めた……!

話し合いは終わり、やっぱりそれに意味はなんてなく。

結局は戦って勝者が全てを得て、敗者が全てを失って。

混じり合うことのない平行線ならばそうやって決めるしかないんだ。

 

 

 「アルフは下がってて。私だけで十分。」

「フェイト、気を付けるんだよ! 魔法の腕は知らないけど弓の腕だけは確かなんだから!」

「大丈夫。バルディッシュ、行くよ。フォトンランサーセット!」

「[Photon Lancer] set.」

「おとなしく捕らえられてはくれないかな?」

 

 

 ……彼は彼我の戦力差をわかっていない。

自慢じゃないけど私は魔導師ランクAAくらいなら軽くあるはずだ。

けれど、彼から感じる魔力はあまりにも少ない。

……ある意味、幸運なことに。

これなら、怪我をさせずに、しっかりと手加減をして勝つのも容易いだろう。

 

 

 「邪魔をされるわけにはいかないから。あなたも、怪我をしたくなければ抵抗はしないで。」

「平行線、だな。……いくぞっ!」

 

 

 彼がそう言った瞬間、私はバルディッシュに魔力を込める。

まずは死角に回り、普段よりも少しだけ威力の落としたフォトンランサーを叩きこむ。

これで終わってくれれば楽だと思いながら。

 

 

 「[Blitz Action]」

「フルオート・ファイア!」

「[Protection]」

 

 

 防御!?

早さには自信があったのに……いや、あの顔は気づいてなかったはずだ。

運よくデバイスの自動防御がうまく機能したのだろう。

けど、フォトンランサーは密度に優れ、バリアを削り取っていくことが出来る。

だからこのまま押し切ることだって可能なはず!

そう思い直し、連射を続ける。

 

 

 ……が、動く。

彼は防御しながらどうにか回避行動を続けていた。

しかもプロテクションの効果範囲をだんだんと狭め、その防御力を大きくしつつ。

バリアに着弾しているのは約半分、残りは彼方に飛んで行っている。

……アルフと一直線上じゃなくてよかった。

 

 

 ――そして、彼は唐突に彼の全魔力と思しき量をバリアに供給し、バリアを強化した。

何がしたいのだろう?

魔力がなくなってしまえば逆転などできないはずなのに。

 

 

 「楽勝、と思っているかもしれんが、そうそう簡単には負けはせぬよ。――今度こそ、いくぞ?」

「――っ!?」

 

 

 その言葉と共に、彼の周りに数多くの――17の魔法陣が浮かび上がる。

そして――

 

 

 「フルオート・ファイア。……だったか?」

「くぅ!?」

 

 

 不可視の弾丸が立て続けに6発直撃し、大きくノックバックを喰らってしまう。

続いて炎の槍、どうにか2発回避、1発はマント貫通、さらに火の玉が2発左右から近づいてきて――。

 

 タッ――!

 

 たまらず空中へと逃げ、高速で飛翔しての回避を試みる。

……いったいどこからあんなに魔力が出てきたのか不思議だ。

 

 ――パパパパパパン!

 

 

 「ぐっ!」

 

 

 そしてこの不可視の射撃。

これが見切れない限り遠距離ではジリ貧になる、かな。

そして、仮に色がついていたとしても見切れるような生半可な速度じゃない。

そうやって迷ってる間にも何セットか貰ってしまう。

速射性は高いみたいだけど、威力が極端に低いので助かっているような状態だ。

だけどこれ以上迷っている余裕はない。

遠距離戦で分が悪いならばやるべきは接近戦。

彼の周囲を回っている水球が邪魔だけど、あの速度なら問題にならないはず。

 

 

 「バルディッシュ、行くよ。」

「Yes, sir. <Scythe Form>. [Scythe Slash], [Blitz Action]」

 

 

 サイズフォームへとチェンジし、先ほどまでのフォトンランサーとは違って本気のサイズスラッシュで魔力刃を強化。

ブリッツアクションで一気に接敵する――!

 

 

 「残念。」

 

 

 ――が、唐突に彼と私の間に火の壁が出現し、停止せざるを得なくなる。

その隙を逃さぬとばかりに背後から射撃を浴びせられ、前方にノックバック、強制的に火の壁へと突っ込まされる。

 

 

 「うわぁあ!!」

「フェイト!?」

 

 

 熱いっ!!

燃えているわけではないけれど、そうであるかのように感じるほどに熱量が当てられている。

――だがそれは一瞬。

火の壁を抜けた私は、当然、と言わんばかりに待ち構えていた6個の水球に叩きつけられる。

そして彼は弓状のデバイスを構えており、装填された実矢は私の胸、心臓のあたりを正確に捉えていた。

 

 

*** ~フェイト・テスタロッサ~ view ended ***

 

 

 

 ――決まった。

初見殺し、ファイアーウォール始動のコンボだ。

この矢を放てばフェイトは死ぬだろう。

もちろん殺す気などないので放ったりはしないが。

 

 

 「さて、チェックメイトだ。おとなしく武装解除してもら……っ!?」

「ぐっ!」

「アルフ!?」

 

 

 遠くで、魔力の奔流が発生し一瞬気を取られた。

買ったと思った油断もあったのだろう。

言い訳をすればそうなる。

だが、その隙に俺はデバイスを横に弾かれ、魔力刃を首元に突き付けられていた。

……その際に手が滑って放たれた矢がアルフに直撃し、動揺したはずのフェイトは、それでもやるべきことはやっていたというのに。

 

 

 『あ~らら。こりゃ経験の差が大きいねぇ。』

『……自分でも、流石に情けないと思うよ……。』

「……こりゃまずったなぁ。降参だ。」

 

 

 そういって俺はIreneを待機状態に戻し、両手を挙げて戦意のないことを示した。

――アツイ

 

 

 「ジュエルシードが発動した。気になるのだろう? 行くといい。心配しなくてもしばらくはお前たちの邪魔はしないさ。」

「信用、出来ると思う?」

「俺が本来持つ魔力量より明らかに多い魔力を行使していたのには気づいているだろう? どうせもう少ししたら反動でまともに動けなくなる。なら素性がわからない奴でも暴走するジュエルシードを止められるなら邪魔は出来なくなったということだ。……フェイトのような無理をしなければ戦えない相手と戦闘した時点で俺の戦略的敗北だったんだよ。」

 

 

 ――アツイ,アツイ

まずいな、結構来てる。

 

 

 「……あなたの言葉はともかく、あなたがこの土地を守ろうとしてるのは信用できる。いくよ、アルフ。」

「待て待て、そいつに怪我させてしまっただろう? 治療くらいさせてくれ。」

「敵の情けなんかいらないよ!」

「お前たちが治療魔法を使えるというならいいがな。……使えるのか?」

「……使えないよ。……アルフ、この人は悪人ではないと思う。治療受けて拠点に戻っておいて。」

「フェイト……わかったよ。」

 

 

 そうして、フェイトはジュエルシードの発動地点、月村邸へと飛翔していった。

――アツイアツイアツイ

 

 

 「……置いて行くとは思はなかったが、治療を始めるからな。」

『――聞こえるか? 高町なのは。』

「変なことしたら承知しないよ!」

『ふ、ふぇ!? もしかして、那須君?』

「するかっての。つーかそんな元気もねーよ。」

『敵の敵は味方、警告だ。そちらに黒衣、金髪少女の魔導師が向かった。スピードが尋常じゃない上に魔力量も相当だ。気をつけろ。』

『え、えぇ!? なに、どういうことなの? 那須君戦ってたの?』

『いいから気をつけろ。こっちも限界が近い。切る。』

『ま、まっt――』

 

 

 アルフの幹部を見ると、我ながら見事に矢が貫通していた。

場所は両足の甲、骨の隙間を縫って裏までと、腹部に一発。

――アツイアツイアツイアツイ

 

 

 「とりあえず矢を除去する。痛いかもしれんが我慢しろよ。」

『ファーブニル、矢をだけを燃やしてくれ。アクエリア、水で傷口洗い流した後、ウォータークラリファイで不純物を取り除いてくれ。』

『了解、けどよ……。』

『大丈夫ですか? かなり辛そうに見えますが。』

『まだいける。早く始めてくれ。』

 

 

 ――アツイアツイアツイアツイアツイ

目を閉じて、暴走しようとするリンカーコアを押さえつけつつオドを取り出す。

クールダウンを無理矢理させているようなイメージだ。

そして、取り出したオドをファーブニルとアクエリアに分配する。

――まずは腹部の矢を焼き払う。

――そのまま水洗い。

――ウォータークラリファイを使用し、わずかに残った灰と細菌とを除去する。

 

 

 「……つぅ。もうちょっと丁寧に出来ないのかい?」

「今のコンディションじゃこれが限界だ。我慢しやがれ。」

 

 

 ――アツイアツイアツイアツイアツイアツイ

異物が消滅したことにより、周囲の肉で矢があった場所がかなり塞がれる。

――血液に対してウォータークラリファイを使用、選択的に血漿を取り出す。

――さらにその血漿から水分だけを取り出し、一気に傷口を固める。

この一連の作業をあと2回。

……それまで持てばいいが。

 

 

 「――ふぅ。包帯はもっているか?」

「拠点にならあるよ。しかし、突っ張るねぇ。」

「そうか。帰ったら巻いておくように。手当したと言っても応急処置だからな。激しい運動したらすぐに傷が開く。気をつけろ。」

「わかったよ。……とりあえず礼は言っておくよ。ありがとう。けど、ジュエルシードのこととは別だからね! あんま調子に乗るんじゃあないよ!」

「わかってるさ。ほら、さっさと行け。」

「ふん。」

 

 

 「……行ったか。」

『うんー。かずくん、大丈夫?』

「いや、かなりまずい。暑いの通り越して悪寒がしてきた。道路に降りたら結界を解除して。」

『わかったよ~。……これに懲りて、あんまり無茶しちゃだめだからねー?』

「無茶するなと言われて無茶しないなら最初からしてないさ。」

 

 

 ふらふらになりながら、ゆっくりと道路に降りていく。

普段なら1階分を2段で降りていくのだけれど、今それをすれば確実に倒れる自信がある。

 

 

『結界解除~。』

「ん、ありがとう。……ケータイ、ケータイ…………あった。GPS情報……添付、父さんに、送信。……わるい、みんな。まずいことあったら起こして。」

 

 

そうして俺は意識を手放し、路上へと倒れこむのであった。

 

 

 

The next chapter is coming...




第9話、邂逅、衝突 いかがでしたか?


……とりあえず、アルフごめん!!!
気が付いたら結構痛いことなってたっ。
フェイトも結構痛い感じになってしまってたし……
両名のファンの方々、スミマセン
反省も後悔もしていません(←


そして、ようやく序章が終了、次回1章突入!
と、見せかけて。
次回は挿話です。まさかの序章外伝。
感想欄でメイ・クイーン様よりご指摘のあった個所の修正話にもなります。

それと、修正と言えばもう一件。
和人の精霊魔法・水・祈祷(長い。。。)ですが、一つ名称を変更しました。
効果は変えていません。

[Water Cleaning]→[Water Clarify]

変更を決めたときにPurifyかClarifyか迷ったんですが……まぁClarifyの方が変更量?少ないからこっちかな、と適当な理由で選んでいたり。


それではこの辺で。皆様、よいお年を~ノシ

2013/2/09 改稿・校正 思いのほか誤字が多くて焦りました、気を付けます......orz

2013/2/26 一部改稿 ちゃんと最新話も執筆中でございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。