精霊術師と魔法少女   作:桃月

12 / 13
セーフ? アウトです。
1時間と少しばかり活動報告で言った投稿予定から遅れました。
すみません。
ついでに投稿時点で校正が出来ていません。
重ねてすみません。


まぁそれは置いといて(←
ついに第1章スタートです!

というわけで早速。第10話、どうぞ。


第1章 善悪の基準
第10話 目が覚めて


 まどろみの中、意識が浮上する。

寝苦しかったような気もするが、今はそんなことはなく、このまどろみにいつまでも浸かっていたく感じる。

背中に感じるのはベッド特有のスプリングの感覚。

実に10年ぶりほどの感覚だろうか。

とてつもなく久々なような気もするし、割と最近な気もする。

そしてやはり布団も好きだがベッドも捨てがたい、と再認識。

――と、そこで違和感を抱いた。

 

 

「――ベッド?」

 

 

 そう、ベッドなのだ。

那須家は赤ん坊以外は皆布団であるにもかかわらず。

ならここはどこだろう?

確認しなくちゃなと思うものの、まどろみというものは人類の最強の敵と言ってもいいレベルで強敵だ。

……もうちょっとだけこうしてるか。

そう思い直し、二度寝を決め込む。

 

 

 まどろみに沈みつつ、しかし頭の片隅で勝手に状況整理が始まる。

――たしか、第三勢力の捜索ついでにジュエルシード探索をしていたはずだ。

それで……アルフって女の人と接触したんだ。

舐められないようにかなり強気で行ったし、完全にその場の主導権を握っていて、……フェイトって娘が増援に来たんだったな。

んで、勝利を掴みかけたところで遠くでジュエルシードが発動して、それに気を取られた瞬間に一発逆転を決められた、と。

……かっこ悪いな、俺っ!?

そういや高町はジュエルシード確保できたんだろうか。警告はしたし大丈夫だといいんだけどなー。

うーん……。

まぁいいや戻ろう。

そのあと、俺はどうにか父さんに連絡を入れて……?

このあたりから記憶がだいぶ怪しいのなんの。

つーかちゃんと連絡したかさえ怪しい。

むむむ。

 

 

 現状がやたら気になってきたのでとりあえず目を開ける。

目に飛び込んでくるのは白、白、白、ひたすら白。

具体的には白の天井に白の壁、白いシーツに白いカーテン。

なにやら首、というか体がまともに動かせないのでそれ以上はわからない。

心電図の音?みたいなのも聞こえる。

 

 

 よし、予想は立った。

むしろ立たない方がおかしいレベルかもしれない。

ここは、「病院の個室」だっ!

……ということはあれか。

記憶がないのはぶっ倒れたからで、父さんにちゃんと連絡が言ってる可能性はかなり低いのか?

いや、携帯は持ってたはずだし俺が連絡したかはともかくとして、父さんか母さんには確実に連絡がいってるはずだ。

なんにせよ、とりあえず起きるとしますか。

 

 

「……む、むり…………。」

 

 

 体がまるで動かない。

ついでに暗闇に呑み込まれるように一気に眠たくなってくる。

……そんなに(やわ)な鍛え方をしていたつもりはないんだけどなぁ……。

 

 

‡‡‡ 新暦65年4月20日 第97管理外世界≪地球≫日本国海鳴市

 

 

 ――まどろみの中、和人の意識が浮上する。

寝苦しかったような気もするが以下略。

 

 

 先ほどは果たせなかった夢(起きるだけ)を、今果たす!

……いかんな、頭のねじが緩んでるみたいだ。

こう、何と言うか中途半端に緩んでることを認識できてしまうのが辛い。

ふて寝してやろうか。

 

 

 『あ、かずくん起きたー?』

 

 

 シルフィードには和人が起きたのがばれていたようだ。

流石師匠、ぱねぇっす。

 

 

 『起きたよ。』

『状況、把握してるー?』

『俺、半ば敗走、倒れて病院なう、割と命の危機だった。』

『……[Hypotism Fragrance]』

 

 

 ぁ……なんか、急に眠くなってきた……。

 

 

 『ごめん、眠い……。』

『はいはいー、ゆっくり寝といてねー。』

 

 

 シルフィードの魔法によって眠気を誘う香りを中てられ、和人はなすすべもなく眠りへと落ちて行った。

頭が明らかに緩んでることに気付いたシルフィードの判断である。

しかし、せっかく起きてきた病人を魔法で半ば強制的に眠らせるのも――それも、魔力ダメージでダウンした人間に、だ――どうなのか、そういった疑問は生じて然るべきでもある。

 

 

 『良かったのか? 和人のやつ魔力でダウンしたんだろ?』

 

 

 案の定治療方面に疎いファーブニルが疑問の声を上げる。

最もシルフィードもそれほど詳しいわけではなく、アクエリアがやってもいいですよと言ったからやったのであるが。

そんなわけでシルフィードはその質問に答えることは出来なかったりする。

 

 

 『エリア、解説よろしく~♪』

『……少々疲れているのですが。シルフィ説明できないんですか?』

『詳しいことはわかんない。けど、かずくんの症状と、エリアの治療でどうにか問題はなくなってる、ってことくらいはわかってるよ~。』

 

 

 要するに、シルフィも大してわかっていないわけですか

そうアクエリアは心中でため息をつき、渋々ながら回答を始める。

 

 

 『はぁ。……まず、和人が倒れた直接の原因ですが、リンカーコアの一時的な疲弊によるものです。これくらいは問題ないですね?』

『大丈夫だよ~。』

『おう。』

『それでですね。それだけならすぐに目が覚めるのが普通なのですが、和人の場合はリンカーコアでオドを精製していたため、体内に魔力が過剰に存在していました。これにより和人は重度の魔力酔い状態を併発していたのです。シルフィがわかってるのはここまでですか?』

『うんー。あとはもやっとわかってる感じかなぁ。』

 

 

 まぁ当然と言えば当然だ。

和人に対しリンカーコアの駆動による過度なオド精製は危険だと言い続けてきたのだから。

それ故に和人の体内のオドの量を把握した上で、リンカーコアを鍛えるべく適切なタイミングでの負荷をかけていたのだし、それを提案したのも実行したのもシルフィードである。

和人の倒れた原因に関してはわかっていないわけがない。

 

 

 『なので私がやったのは体内のオドを吸い出して体外に放出させ、かつリンカーコアが自然治癒しやすい濃度に保ち続ける、ということです。リンカーコアのダメージ状態によって割と適性な濃度が変わるのでなかなかに調整がしんどいんですよね……。』

『うーん、それくらいなら代わってあげれたと思うよ~?』

『俺は無理だな。明らかにオド吸い出しすぎたりしそうだ。』

『ファーはもちろんですが、シルフィでも無理ですよ。』

『はっきり無理って言われるとちょっと傷つくぜ……。否定のしようもないけどな。』

『ならファーは黙っていてください。』

『ひでぇ……。』

『どんまいどんまい♪ で、なんでわたしもダメなの~?』

『シルフィですがリンカーコアの状態詳しくわかりますか? 情報科学でいう「カオス」にかなり近いのですけれど。』

 

 

 ――カオス、って何だったっけなぁ、とシルフィードは記憶をあさる。

 

 

 『……はぁ。カオスというのは確率的な要素が何もないにもかかわらず、初期値が微小に違うだけで先の全く読めなくなるような状態のことです。具体的には天気予報が挙げられまして、2週間先の天気ともなると宇宙から飛来する電子ひとつで大きく結果が変わります。これを天気予報の「2週間の壁」といって、天気予報の最新技術はここで止まっています。こんな代物に近いのですが、シルフィ、できますか?』

『む、無理だと思う……。』

『えぇ。ですので、手伝ってもらうことは出来ませんでしたし、私が今かなり疲労しているのも致し方ないことなんです。それなのに長話させられているのもまた、そうなんですよ、はい。』

『う゛。……エリア、ごめんね~?』

『謝るくらいなら休ませてください。ろくすっぽ説明してませんが、シルフィなら考えればわかりますよね?』

『予想はある程度たってるんだけどねー。 後でかずくんといっしょに教えてくれる?』

『そうですね……。概要だけ言えば治療が完了して外部からの微弱な魔力に対しては安全だから、というのが理由です。あとの詳しい話は和人と一緒にしましょうか。では、私は海の方に行ってるので何かあれば連絡してください。』

『りょうか~い♪』

 

 

          ◇          ◇

 

 

 ――その頃。

 

 

 「どうだい、フェイト?」

「……見つからない。」

 

 

 フェイトはアルフといっしょにジュエルシード探しをしていた。

しかし、その探索は大して進んでいない。

理由はいくつかあるが、最大と言ってもいい理由は和人の存在だろう。

単独戦闘でアルフの完全敗北。

彼が殺す気ではなかったからよかったけど、()()()だったら死んでいたんだから、とフェイトがばらけて行動することを拒否したのだ。

 

 

 「やっぱり別々で探した方が良いんじゃないのかい?」

「だめ。一人の時にカズトが奇襲して来たらわたしもアルフも危ない。」

「警戒ちゃんとしてれば大丈夫だって! 律儀に結界張ってから攻撃してくるようなやつなんだしさぁ。」

「でも、アルフはカズトの場所を探してる間にもう狙いを定められてたんだよ?」

「そりゃあそうだけどさぁ。だからってこのまま集められなかったんじゃああのクソババァがフェイトに何するかって思うと……。」

「わたしなら大丈夫だから。……それよりも、あんまりお母さんの悪口を言わないで。」

「……。」

 

 

 ――ナス カズト。

ここでは家名が先に来るらしいので名前はカズトであってるはず。

アルフは海鳴市の魔術的統治者を自称してたって言ってた。

統治者、というには最初から最後まで甘いところがあったような気もするけれど、あのプロテクションに全魔力を流したあたりからの攻撃密度は敵ながら凄いなと言わざるを得ないと思う。

確実に、全部の魔力を流してたはずなのに、カズトはそのまま17個の魔法陣を展開し、攻撃をしてきた。

 

 

 威力は低いけれど弾速も魔術の回転率もものすごく高性能な不可視のシューター。

火でできた槍のシューターと球状の火と水のシューター。

加えて突然カズトを守るように展開した火の壁。

そして、矢による物理攻撃。

プロテクションの腕はよく、防御範囲を狭めて防御力を上げるなんて高等技術も使ってくる。

 

 

 今わかってるだけでもこれだけの魔法の種類があるんだ。

最初っから全部の魔法を使ってきてるとも思えないし、まだまだ種類があると考えた方が良いはず。

しかもジュエルシードを探すために周囲の魔力を探っていたはずのアルフに奇襲を成功させているんだ。

シューターだけであんなに全く違うバリエーションがある敵に奇襲をされるなんてぞっとしない。

 

 

 「……うん、やっぱりどう考えても単独行動はこれ以降しない方がいいよ。カズトに奇襲されるのは怖い。」

「……はぁ。わかったよ、フェイト。でもさ、ちゃんとご飯を食べるってのだけ約束して。奇襲の警戒だってジュエルシード探しだって体力は要るんだから。」

「うん、食べられるだけ食べるよ。」

 

 

 ことあるごとにアルフはこうやってフェイトにちゃんと食事をとるようにと言っている。

しかし今回もいつもと同じ回答を得ただけで、それの意味するところはつまり改善の兆しなし、ということだった。

リニスがいればねぇ、と思う。

リニスがいればこのような状況を許しはしないだろう。

けれど、それは決してありえなかった現在(いま)

リニスのいない現在(いま)、フェイトのそう言った面もあたしがサポートしなきゃいけないのに、クソババァの使い魔でなく、フェイトの使い魔だというのにそれが果たせない。

それが悔しくて、悔しくて、あの白い少年(ばか)の姿を思い出す。

敵であるはずのあたしの傷を――しかも自分でつけた傷だ――傷をわざわざふらふらになりながら治したお人よしの少年(おおばか)を。

どうせならあたしじゃなくてフェイトを助けてやってよなどと考えてしまう。

……どうにかしてこっちに引き込めないかねぇ……。

 

 

 

          ◇          ◇

 

 

 ――スッ、と目が覚める。

目を開くとあたりは薄暗く、明かりと言えば窓から月明かりが差し込んでいるのみだ。

 

 

 『あ、和人、目が覚めましたか?』

『アクエリア? うん、覚めたよ。シルフィードとファーブニルは……外か。』

『はい。下位精霊と戯れてくるとか言ってました。』

『そか。……で、何がどうなったか教えてくれる?』

『わかりました。シルフィとファーとも念話をつないでおいてください。』

『りょーかい。』

 

 

 つい先ほど軽く魔力を探して場所を特定したばかりなので特に問題なく念話をつなぐことが出来る。

普段はラインを繋ぎっ放しなのだが、気絶した影響で切れてしまったみたいだ。

当然高町やフェイト、アルフにくっつけておいたラインも切れている。

……まぁ、仕方ないか。

次会った時にまたつけておこう。

 

 

 『さて、と。それじゃあ説明しましょうか。まず、和人が倒れた理由ですが、わかりますか?』

『ん? リンカーコアの駆動でオド生成してたから、それに耐え切れなくなった、だよな?』

『正確にはそこからの重度の魔力酔い、が原因だよねー。』

『はい。まぁ重度どころか致命的なレベルでしたが。』

『え゛。』

『ですので、契約を結ぶにあたるかもしれない人間を死なすわけにはいかない、ということで治療処置をしました。リンカーコアの補修を繰り返しながら少しずつ体外にオドを放出させて、放出することでさらに供給を増やそうとするリンカーコアをなだめすかしつつ、3日3晩です。わかりましたか?』

『あ、あぁ。ありがとうなアクエリア。』

『わかったのなら以降気を付けてください。リンカーコアの強化としては効率はいいですが危険度と私の負担が大きすぎます。』

『了解。』

 

 

 以前シルフィードに教えてもらったように、リンカーコアは負荷を与え、回復をすることで鍛えられていく。

それは体内に維持できる魔力量は当然として、単位時間に回復できる魔力量もまたそうである。

つまり、リンカーコアの破損と回復を長時間繰り返した今回はかなり成長的には美味しかった、と言えなくもない。

が、いちいち死にかけてはいられないし、アクエリアにもかなり負担が大きかったらしいし、ただの応急処置の副作用とみるべきなのだろう。

それに、アクエリアは言ってなかったがおそらくちゃんとした魔法は数日間まともに使えないだろう。

急成長してしまったリンカーコアになれる時間が必要になるはずだ。

 

 

 『それでは次は反省会といきましょうか。和人の初の対人戦ということで見直すべきところは山とあるはずです。とりあえず和人、ファー、エリア、私の順で一つずつ言ってみましょう。』

『了解。まずは俺からだな。……うーん。前も思ったんだけど、みんなに指示出すときにちょっと冗長な感じがしたな。念話とはいえその時間は短縮するべきかな、と。』

『次は俺か。そうだな、フレイムランサーとファイアーボールはほとんど避けられてたから、偏差射撃が必要じゃねぇか? 難しいし後回しでもいいかもしれないけどな。』

『わたしはね~、対空戦なのに風で移動妨害しなかったとこが気になったかなー。バリアジャケットに空気摩擦をなくす効果を設定してたとしても、風音あれば他の攻撃の音が聞こえにくくなるし、もっと当たったと思うよ~。』

『最後は私ですね。正直私が暇すぎました。遊兵を作っていては指揮者としては問題外です。』

 

 

 うぐっ。

アクエリアのが一番きっつい。

自覚はしていたが、やはり水で攻撃をする、というのがなかなか難しいのだ。

氷なら適当に槍でも作ればいけるが、水では尖らないからなぁ。

しかも速度も出ないし。

 

 

 『とりあえずもう1周やりましょう。和人からまたはじめてください。』

『わかった。……弓を引いてたってのもあるけど、俺自身はほとんど魔法使えてなかったなぁ。』

『あれだ、経験不足と言ったらそれまでかもしれねぇけど、詰めが甘かったな。』

『祈祷魔法なのにちょっと祈るってのが大雑把過ぎたんじゃないかな~。』

『敵の目の前で武装解除もあり得ませんね。今回は敵も相当甘かったので問題ありませんでしたが。』

『あ、そういえば戦闘中にラインの密度が変動しすぎてちょっとめんどくさかったかも~。』

『和人はプロテクション以外魔法使ってなかったんだし、送ってくる位置情報をこっちが使いやすいように加工してくれとも思ったな。』

 

 

 

 問題点が出るわ出るわ。

はじめての対人戦ということで多少は仕方ないかなと思わなくもないが、それにしたって酷い。

すぐに対応できそうなものもなかなかに長期的な課題になりそうなものもいろいろあるが、とりあえず今日はそれぞれの対策を練ることになるのだろう。

 

 

 『とりあえずはこんなところかでしょうか。』

『だね~。』

『まぁこんなもんだろ。』

『それでは順番に消化していきましょう。まずは和人が対策を言って、それを私たちが叩いていく感じでいいですね?』

『了解。』

 

 

 『それでは一つ目。指示が冗長であるという件に関して。』

『そうだなー。とりあえず戦闘中は魔法名をファイアーボールとかフレイムランスとかじゃなくてF.B.とかF.L.にするとかはどうかな?』

『うーん、下位精霊にやってもらうときはそれだとダメだよ~?』

『シルフィード達なら大丈夫?』

 

 

 というかそもそも下位精霊を攻撃にしてもらうなら詠唱しなきゃ発動するらまともにできない気がする。

 

 

『そうですね。特に問題ないかと。同じになってしまうものがあれば多少添え字を付ければどうにかなると思いますし。』

『他には……皆の呼び名を縮めるとか。』

『それは……』

『うーん、どうしよっか? 本当は協力魔法の許可が下りてからってのが筋なんだけどね~。』

『なら仕方ないか……。あとは……分かりましたとか、オッケーとかを了解(ヤー)拒否(ナイン)に統一するとかどうだ?』

『なんで?』

『返事に取られる時間を減らしたいからじゃないですか? 流石に返事無しという訳にもいきませんし。』

『そんな感じ。戦闘中だけってことでいいかな?』

『『了解(ヤー)』』

『や~』

 

 

 ……なんかシルフィードだけちょっと違った気がした。

ま、まぁ大きな問題はないはずだ。

 

 

 『とりあえずこんなところだと思うんだ。次に行こう。』

『そう、ですね。2つ目は偏差射撃でしたか。……現段階では無理ですね。とりあえずもっといろいろ慣れて、相手の移動先を見切れるようになってからでないとただの無駄弾です。』

『だねぇ。確かに必要ではあるけどねー。これからゆっくり体得してく項目だとおもうなー。』

『まぁ俺もすぐにできるようになると思っていったわけじゃないしな。今後の課題ってやつだ。』

『了解。頑張るよ。』

 

 

 しかし、フェイトは既に使っていた。

フェイトの最初の攻撃は俺が攻撃に気付いた場合、バックステップで避けたり右足で横に飛んでよけて初めて直撃、というコースの弾もわざわざ撃ってきていたのだ。

フォトンランサーとやらに半分も当たってしまったのも、あちらが撃ちながらこっちに合わせてどんどん回避先に弾を置いていったというのが大きい。

訓練の量では少なくとも同等、おそらくは勝っているのにこの状況。

正直かなり悔しいので少しでも余裕があれば貪欲に練習していきたい。

 

 

 『それでは次にいきましょう。』

『シルフィとエリアのと合わせての対策になるだろうな。』

『どういうこと?』

『ほら、今回の敵は早い奴だっただろ? だから、遅いシューターでも置いておけばそれだけでもある程度効果が見込めるとおもうぜ? あっちから近づいてきてくれるんだからカウンターが基本戦法になるはずだ。』

『……なるほど。』

『というかですね、私に攻撃魔法を使わせてる時点でダメです。防御と治療が得意って知ってながらなんで攻撃させるんですか?』

『あー、なんか手数多い方が良いかなって思ったんだよ。物量で叩き潰すてきな?』

『その発想はダメダメだぞ~、かずくん。かずくんの弱点は魔力量(パワー)速度(スピード)、長所は多様性(バリエーション)なんだから、重視するなら「手数」じゃなくて「変則性」にしとかないと。』

『り、了解。』

 

 

 ――和人、反省会開始数分にして既にぼっこぼこである。

そして、こんな調子でまだまだ反省会は続くのであった。

 

 

 

‡‡‡ 新暦65年4月21日

 

 

 もう少ししたら学校の友達がお見舞いに来るらしい。

こちらとしてみれば何を大げさな、と言った感はあるが、一般的に見れば休日に倒れて昏睡からの入院、それが目が覚めたとなれば見舞いに来るぐらいするか。

まぁそれまで昨日の反省会の整理でもしようか。

次から次へと出てきた問題点を纏めて箇条書きにするとこんな感じだ。

 

 

・長所を伸ばす、という練習での姿勢が戦闘時は失われている。

・技術的に必須のものを修めていないためバトルスタイルが不安定になりがち。

・詰めが甘い。

・後先考えた戦い方をするべき。

 

 

 どれもこれも長期的に達成するべき課題だ。

なのでとりあえずはフェイト対策、つまり軽装高機動型を相手にした場合に対応するべくマイナーチェンジしていこうということに落ち着いた。

 

 

 ――ん?

この馬鹿魔力……高町も来たのか。

フェイトが向かったことを念話で教えたし、俺が魔術師であることはばれてるだろうなー。

というかそれで来たんだろうしなー。

 

 

 ……そういやあの時発動したジュエルシードは結局どっちが取ったんだろう。

フェイトの方はなんか若干黒っぽいのでできれば高町の方にとっていてもらいたいところだが。

まぁフェイト自身は白っぽいが上が怪しすぎるんだよなぁ。

ジュエルシードって明らかにやばいものだし。

その辺は置いとくとしても、ぶっちゃけどっちも黒ならお手上げだし、高町が白でフェイトが黒の場合も止められる機会のあった俺が止められなかった以上何も言う資格はないけれど。

それでもやはり級友の高町がとってくれていると……。

 

 

 ――コンコンコン。

病室の扉がノックされる。

いつの間にやら高町と……セットでバニングス、月村あたりもだろうか?が到着したみたいだ。

陸も来てるかもしれないな。

 

 

 「はーい!」

「おっす和人! 元気か?」

「ったりめーだ。ちょっと多めに寝ただけだっての。」

「多めに寝ただけで入院なんかするわけないじゃない。なのはがすっごく心配してたんだからね!」

「ふぇっ!?」

「そういうアリサちゃんもけっこう心配してたよね~。」

「わたしはなのはが心配してたからさっさと治れって思ってただけよ!」

「ふふ。そういうことにしとくよ♪」

「「……。」」

 

 

 姦しい。

女3人寄ればというが、月村+バニングスだけで姦しいのだが。

昔のなんか言い得て妙的な感じなこといった人よ、訂正を求める。

 

 

 「で、和人。そんな元気なのになんでまだ入いんしてるんだ?」

「あー、なんかすごい熱出てたらしいくてなー。念のため検査と化するって言われたんだ。今日明日は病院だよ。めんどくせぇ。」

「ってことは明日も宿だいのプリント持ってこないといけないじゃんか! さっさとたいいんしろよー。」

「俺だってしたいっての。……というか今日宿題出てるのか。」

「和人にだけね。授ぎょうでやったやつなんだけど、センコーが大丈夫だと思うけどやらせといてとか言ってた。ほら、これ。」

「んーなになに。」

 

 

 大丈夫だと思ってるなら出すなよな。

無駄に真面目な先生でこういう時はめんどくさく思う。

けど同時に融通も利くので授業で余った時間に他の勉強もできるし読書もできるし、そのあたりは助かってるんだけどな。

 

 

 「…………よし、終わった! 陸、悪いけど明日これ出しといて。」

「はえぇ……。さすが和人って感じだな。」

「もう終わったの? 那須?」

「おう。つってもバニングスもあれくらい瞬殺だろ。」

「まぁそうね。流石にもうちょっと遅かったけど。」

 

 

 

 

 「……うーん、病いんってやることないなー。」

「そんなもんだろ。騒ぐわけにもいかないし、普通は元気じゃない人がいるんだから。別に帰ってもいいぞ」

「でもそしたら和人ヒマだろ?」

「本持ってきてもらうから大丈夫だ。あとは新聞とかな。」

「むー……まぁ和人が良いっていうならいっか。帰るわ。また明日なー。」

「あいよー。また明日。」

「それじゃあ私たちも帰るわよ。」

「そうだねー。またね、那須くん。」

「おう、またなー。」

「なのはー?」

「え? う、うん今行く~! またね、()()君!」

「ん、また。」

 

 

 ――さて、ずいぶんと有益な情報を得た。

これで、この後の動き易さは格段に上がったと言える。

高ま……いや、()()()には感謝しないとな。

 

 

          ◇          ◇

 

 

 ――和人に見舞客が来ていた時、その部屋では同時に那須 和人、高町 なのは&ユーノの2勢力の魔術師たちによる密談が行われていた。

 

 

 

 『那須君、聞こえてる……?』

『当然だ。……さて、聞きたいことがいくつかあるんだがいいか?』

『うん。こっちも何個かあるの。』

『なら順番に。まずは俺から。高町なのは、どこで魔術を知った?』

『ユーノ君からレイジングハートを受け取ったの。そうしたら魔法が使えるようになったの。』

 

 

 やはり、ユーノが高町の才を見つけ、引き込んだのか。

本人の意思次第では足を洗わせるべきか……いや、可能ならば庇護下に置いておくほうが高町の安全は確保できるか。

高町の魔力量は存在するだけで価値があるレベルだ。

どのみち魔術をきちんと習得して自営できるようになってもらう必要はあるだろう。

 

 

 『私からも同じ質問をするね。那須君はどこで魔法を知ったの?』

『……生まれつきだ。生まれつき、精霊が見えた。精霊の声が聞こえた。それだけだ。』

 

 

 精霊……?

 

 『ユーノ君、わかる?』

『ごめん、わからない。だけど、もしかしたら彼はいわゆる現地魔導師というやつなのかもしれない。』

『げんち魔導師……?』

『その世界で生まれた魔法技術を持った魔導師のことだよ。なのはは僕が教えてるから当てはまらないよ。』

『ふーん……?』

 

 

 『二つ目だ。何故青の宝石を集めている?』

『ジュエルシードのこと?』

『正式名は知らないがおそらくそれだろう。』

『あれはユーノ君が落としたものだから。私はユーノ君のお手伝い。』

 

 

 ……ユーノが高町を利用して集めようとしているだけとか考えていないのだろうか。

人を信じるのは美点だが盲信するのは欠点だぞ、高町?

 

 

 『私からの質問もまた同じ。なんで那須君はジュエルシードを集めるの?』

『危険だからだ。放置すれば海鳴の地に大きな被害が出ることは目に見えている。』

 

 

 那須君も危険なのわかってて封印しようとしてるんだ。

もしかしたら協力してもらえるかもしれない。

 

 

 『なら協力してくれないかな、那須君?』

『……悪いがまだお前たちは信用に値しない。次の質問だ。ユーノが白、正しい側の人間である証拠はどこにある。』

『ユーノ君はフェレットだよ? この前翠屋で見たと思うけど。』

『そうなのか? てっきり動物化してるんだと思ったんだが。』

『いや、人間ですよ!』

 

 

 何やら高町が驚いた顔をしている。

……なぜ教えてないし。

 

 

 『僕が白だってことは管理局に問い合わせればわかると思いますが……管理局って知ってますか?』

『知らん。なんだその傲慢な名前の組織は。』

『ご、ごうま……。ま、まぁそれならとりあえず管理局の説明をしますね。』

 

 

 内容はシルフィードから習っていた通り。

次元世界を管理し、次元災害や犯罪の予防及び対処、世界間の戦争をさせないことなどを目的としている。

そのように言われたが、こいついきなりそんな壮大な話されて信じてもらえるとか思っているのだろうか。

……まぁ、シルフィード達が嫌な感じがしないと言っているのでかなりの確率で白なのだが。

 

 

 『で、仮にそんな組織があったとしておまえがそれに所属している証拠は?』

『身分証があります。コピーデータをデバイスに……ってデバイスってあります?』

『ある。首にかかってる青い宝玉だ。』

『それじゃあ失礼して。』

 

 

 そういってユーノが和人の胸に、タタタ、と駆け上がってゆく。

Ireneを起動だけしておき、情報の受諾のみ出来るようにしておいた。

当然ウイルスチェックも怠らない。

まぁここで出てきたら一発アウトなので敵対してたとしてもよほどの馬鹿でなけりゃしてこないとは思うが。

 

 

 『まぁ、一応の、仮初の、薄っぺらい信頼だけはしておいてやろう。』

『……ぁぅ。それじゃあ私から3個めの質問。この前念話を送ってきたのって、その時はもう私のこと気づいてたの?』

『当然だ。お前みたいな馬鹿魔力が覚醒してたら気づかないわけがない。連絡を送ったのはその時フェイトと交戦して負けたからだな。ややブラックのフェイトとグレーの高町なら高町を援護すべきだという判断だ。』

『そっか……。ごめんね? ジュエルシード、フェイトちゃんに取られちゃった。』

『まぁ、仕方ない。かなりアドバンテージはあったと思うが、フェイトは良い魔導師だ。魔力馬鹿のひよっこじゃかなう訳がない。』

 

 

 うん、なんか勝手に質問したいことに答えてくれた。

直前にこっちもいらん事まで答えてくれたからディスアドバンテージが消えただけだが。

このあたりが「詰めが甘い」なんだよなぁ。

 

 

 『4つ目の質問だ。高町は魔術の世界に巻き込まれて後悔しているか?』

『してないよ。最初はただのなりゆき、ただのお手伝いだったけど、いまはちゃんと自分の意思でしてるから。私には力があるんだから頑張らないと。』

『……そうか。ならいい。俺からの質問は以上だ。高町も次を最後の質問にしろ。』

『うーん……。……えっと、質問じゃなくてもいい?』

『それが質問か? なんてな。別にいいぞ。言うだけなら。』

『それじゃあ私のことを「なのは」ってよんで。「高町」じゃなくて。わたしは「和人君」ってよぶから。』

『ナイン。拒否する。』

『むっ。私は質問に答えたんだから、和人君も従ってよ!』

『言うだけならいいって言ったはずだが。』

『言ってないもん!』

『いや、言っただろ……。』

『言ってない! それに、同級生で友達なんだからそうするのが普通だよ!』

 

 

 お前の(女子の?)普通を押し付けるな。

友達ってとこは否定しないで置いてもいいとは思うけれど。

というかデバイスの記録を漁れば一発で分かるのだが。

無関係者がいる此処では無理だしなぁ。

 

 

 『あー、わかったわかった、なのは。』

『やったー!』

『……おまえ、念話だとキャラが変わってる気がするな。』

『そうかな?』

『そうだ。まぁいい。一応の、仮初の、薄っぺらい信頼でよけりゃしてやる。せいぜい気を付けるんだな。』

『……和人君は念話だと口が悪いよね。』

『割と素だ。気にするな。』

 

 

 

 ――こうして、魔術師たちの密談は幕を閉じた。

だが、ジュエルシードにまつわるこの事件を解決する大きな原動力となったこの二人(+一人)が完全に信頼し合うにはまだまだ時を必要としていた。

 

 

To be continued...




第10話 目が覚めて いかがでしたか?

第1章は温泉から、と見せかけて温泉の気配は全くしておりません。
たぶん次温泉です。たぶん。
とまぁこんな感じの軽い次回予告くらいしようかなとこのところ思い始めました。
そうでもしないと本格的に後書きって書くことないんですよね。


誤字等々あれば感想欄かメッセージにてよろしくお願いします。
とりあえず校正は早めにします。


2013/2/12 誤字訂正・微改稿
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。