難産してたとはいえ結構時間かかってしまいました。
反省です……。
誤字脱字等は気を付けていますが、気づけていない場合も多々あります。
もし見つけた場合は感想欄やメッセージで教えていただけると嬉しいです。
さて、宣言通り今回は温泉の話となります。
というわけで、どうぞ。
‡‡‡ 新暦65年4月22日 第97管理外世界≪地球≫日本国海鳴市
「――先生、和人はどうですか?」
「そうですね。信じがたいことですが、健康そのものです。一昨日まで昏睡していたのかすら何かの間違いではなかったのかと思えるほどですね。快復、おめでとうございます。」
「ほっ……。ありがとうございました。」
どうやら健診の結果はいたって良好だったようだ。
流石は回復の得意な水精霊、アクエリアと言ったところか。
……ちなみに、その際に消費した
意識的にリンカーコアを駆動させてオドを精製すると、まだリンカーコアが暴走してしまう可能性が高いため本来の自然回復分だけではあるが。
――
本来、協力魔法以上が使える状態でしかできないことだ。
今回は協力魔法を使ってもいいと思えるほどの相手、それが命の危機ということでの特例であったらしい。
そのあたりで無理をさせてしまったかと思い謝ったが、実際のところはそうでもないらしい。
アクエリア曰く「和人が他の属性の精霊達にも気に入られているために使える魔法のクラスアップに気を回さなければいけないだけですで、単属性ならわざわざ精霊王へ申請などませんし、するとしても事後承諾の形になります。そのため和人は本来協力魔法を使える状態でありながら特例で使えない状態になっているだけですので、現状では協力魔法を使えないとはいえ和人が後払いのシステムを使うことに無理は出ません。』とかなんとか。
なんちゅーか微妙にせこい。
ついでだしもう少し詳しく説明すると、先払いにしろ後払いにしろそれぞれ上限があり使役魔法が使えるようになるとそれが大幅に上昇するらしい。
そして、先払いした魔力は時間が経つとその払った量の係数が減り、後払いは利子がついていく。
後払いはともかく先払いは若干イメージがつかみにくいので具体例を挙げてみる。
係数の減り具合は出鱈目だが、1日16だけ魔力を先払いするとこんな感じになる。
・1日目 16
・2日目 16/2+16=24
・3日目 16/4+16/2+16=28
・4日目 16/8+16/4+16/2+16=30
・5日目 16/16+16/8+16/4+16/2+16=31
・∞日目 lim(n→∞)[sum(k=1→n){16*(1/2)^k}]=32
といった感じだ。
見ての通り先払いの上限は係数によって決定しており、使役魔法だとたとえば今1/2だったのが4/5になり、上限が80に変わる。
――さらにちなみに。
和人の総魔力を仮に10とした場合、自然回復は時速1で回復し、それのみに頼れば約10時間で回復、リンカーコア駆動の完全に負荷なしで回復しきるのには1時間、戦闘時間5分で許容し切れる負荷であれば4分と45秒ほど。
そして先日の戦闘中の速度で回復すれば1分で回復しきることが出来る。
それはつぶれるのも当然、と言うべきだろう。
――さらにさらにちなみに。
現在は治療のおかげで回復速度はさらに上がっていると思われるが、完治するまでは駆動できないので現在の回復速度は不明だ。
『とりあえず、家に帰ったらリハビリかな?』
『そうだね~。魔力の圧縮収縮を繰り返すくらいかなー。』
『了解。あ、でも明日の朝とか4時半起きだと母さんが心配するかも。』
『んーなら朝練はカットしよっか。するにしてもそんなにやれることないから、そこまで早くはないと思うけどね~。』
そんな感じで今後の予定を決めながら母さんといっしょに帰宅する。
まぁ歩いて帰るわけもなく、車を呼んで乗って帰ったわけだが。
「そういえば和人?」
「ん、なに?」
「アキが和人が家に帰ったら話がしたいって言ってたわよ。」
「はーい。」
もう転生者であることもばれているわけだし、わざわざ子供っぽい言葉使いにする必要も特にないのだが、習慣で気づけばかなりの確率で子供っぽい返事をしてしまう俺である。
無理に直す必要もないし、放置でいいかなーって対処していないのも直らない原因だな。
というかあんまり大人びていると周囲は小学生なわけで。
それはつまり浮き易くなってしまうことを意味しており、実際俺の友人はかなり少ない。
昨日お見舞いに来てくれた陸が一番の友人として、次に特に仲がいいと言える男子はおらず、なんというかその他クラスメート♂って感じだ。
友人って言えないくらいなだけで特に仲が悪いわけでもなく、むしろ頼られている感はするし、虐めとは無縁だが。
それに、どうせミッドチルダとやらに引っ越すのであれば地球での友人は足枷になりかねないし、そんなに気にし過ぎない方が良いかなーとか考えていたりもする。
さびしい人生送ってるような気もしなくもないが、小学生に合わせるのはなんだかんだでストレスが大きいからな。
その分、ほぼ素の状態でも寄ってくる陸やバニングス(こちらは絡んでくるが妥当な表現だが)の存在はありがたい。
◇ ◇
「さて、和人。なんで入院するような事態になってしまったか説明してくれないか?」
家に帰るなり父さんとのお話が待っていた。
いつも思うがこの人ちゃんと仕事してるんだろうか?
ダダ甘な面もあるけど、基本的に厳格な人なので大丈夫だとは思うが……。
そんな失礼なことを考えながら、一拍置くために湯呑からお茶を一口飲む。
――うん、うまい。
「……わかった。とはいっても、そんなにややこしい話でもないんだけどね。大雑把にいえば魔法関連だよ。海鳴市に悪影響を及ぼす可能性がある人物がやってきたから接触したんだけど、その時に無理しちゃって……。」
「それで倒れたわけか。……和人からGPS情報だけが添付されたメールが来た時は何事かと思ったんだぞ? その場所に行ってみれば救急車に和人が担ぎ込まれていたし。」
「う゛。……ごめんなさい。」
「今後は倒れないように気を付けて、と言いたいところなんだが。どうせ無理なんだろう?」
理解があってとても助かる。
だが、この事件はどう考えても始まったばかり。
何個ジュエルシードがこの世界に落ちてきているのかは不明だが、それを集めようとしている勢力が俺を含めて3つ、他2勢力のうちおそらくフェイトサイドの上が黒で残りが割と白に近い。
そしてフェイトにしろ高……なのはにしろ優秀な魔導師だ。
少なくともフェイトは転生者である俺と問題なく戦っていたし、なのははシルフィード達お墨付きの馬鹿魔力だ。
覚醒したのは最近なようなので実戦経験はないだろうがそれは俺も同じ。
リンカーコア駆動で多少は縮まるとはいえど、魔力量の差が圧倒的過ぎてそれだけで脅威だ。
「……うん。まだまだ事件は始まったばかり、って感じだから。被害が大きくならないように立ち回らないと。」
「ふむ。……よし、ならこうしよう。事件が終わるまで、和人は学校を休め。」
「えっ!?」
「それで、しっかり休む時間を取るんだ。そうだなぁ、朝はいつも通りでいいとしても朝ごはんの後9時まで休んで、お昼には家に戻ってくること。午後もお昼の後しっかり休むか夕飯の前後でちゃんと休むこと。土日休日は家族に合せること。いいね?」
「別にそれくらいなら問題ないけど……学校休むってのは?」
「どうせ和人は学校行ってたらその分夜とか朝に無茶するからな。学校にはコネでも何でも使って話を通しておく。だから和人は安全かつ迅速にその事件を片づけるんだ。」
「父さん……ありがとう。」
俺は父さんの思わぬ助太刀に感動していた。
なので、次の父さんの言葉に何も考えずに頷いてしまったのも仕方がないことだったはずだ。
「――と、言うわけで、明日から2泊3日で海鳴温泉に行くぞ。」
「うん。」
――うん?
うみなりおんせん?
明日から?
2泊3日?
「って、ぇえ!? 温泉!?」
「あぁ、温泉だ。嫌か?」
「や、や、嫌とかどうとかじゃなくて俺ついさっきまで入院してたんだけど?」
「そうだな。」
「そうだな、じゃなくて! 温泉って体力消耗すると思うんだけど病み上がりに配慮なし?」
「和人の体力が多少減ったところで俺よりも多いだろうしな。大丈夫だろう。」
「ぇー……。」
‡‡‡ 新暦65年4月23日
明くる日。
結局約束のこともあり、抵抗らしい抵抗もできずに俺は海鳴温泉に来ていた。
連休ということでうちと同じように温泉に来ている家族連れも多いようだ。
他にも次はどこの温泉にはいろうだとか言った会話をしているグループがあったり、卓球をしていたり、早くもお土産屋さんではしゃいでいたり、はては真昼間から酒を飲んでいると思われる人までいる。
だから、この状況に陥ってしまったことには何ら不自然な点はないのだろう。
この、海鳴市が一時的にとは言え、その守りがまるでなくなっている状況は。
――なぜ守りがなくなったか。
とりあえず俺がここにいることが一つの理由だ。
昨日多少ごねたものの、体力に関しては全くもって問題ない。
問題は海鳴市から離れることで市街地でジュエルシードが発動した場合に対処できない、ということだ。
……いや、それすらも
『で、何故ここにいる、高町?』
『なのはって呼んでほしいの。』
『少々苛々しているからな。高町にぶつけるのは理不尽であることは自覚している。すまない。』
――そう、前提が覆されていたのだ。
俺も高町も現在地は海鳴温泉、市街地でジュエルシードが発動した時に駆けつけるには少々つらい。
ならばフェイトはどこにいるか?
探査結果からの推測だがここの近くだろう。
高町の馬鹿魔力に加え、あちらが多少隠そうとしているのか若干判り難くはあるが、他の魔術師の魔力をわずかに感じる。
第4勢力という可能性もあるが、それよりもフェイト&アルフのコンビがここに来ている方が可能性が高いだろう。
とりあえず高町がうるさいので念話の切断およびブロックをしておく。
我ながら器用になったものだ。
ぶっちゃけ比較対象である高ま……そろそろなのはに戻すか……なのはとユーノの念話の練度が低すぎるだけの可能性も否定できないが。
ついでなので魔力の極めて細い糸を生成、適当に散布する。
なんとなくだが、たまにこの糸が不自然に流れている気がするのだ。
これがフェイト陣営がこちらに来ているのではないか、という根拠なわけだが……。
ここは温泉地であり、各基本4属性の精霊がリフレッシュのためによく集まってくる。
つまり、
他の地にはない成分の空気もあるため
同様に土の性質も他とは異なるため
何が言いたいのかというと、下位精霊が悪戯でこの糸をいじくっていたり、食ったりしてる可能性もかなり高いということだ。
実際これですでに3回やられていたりする。
それでも、それらとは違う反応を見せたことだってあり、つまり無視はできないわけで。
本当に、存在しないということの証明は難しい。
しかも俺の勘ではフェイト達がいる、が正しいので可能ならばそれを証明しておきたいときた。
「……はぁ。」
「どうかいたしましたかな? 和人坊ちゃま。」
「いや、人生ままならないなぁ、と。」
「ほっほ。小学3年生の言うようなことではありませんな。」
「あー、うん。」
まぁ前世を加えてしまえばもう20台後半だしな。
……まぁそれでも早いような気もするような?
「まぁしかしですな。精神年齢がどうのこうのという以前に子供は自分のやりたいようにやるものだと私は愚考いたしますぞ。」
「失敗の責任は負える人物が負う、と?」
「その通りでございます。新人の失敗を取り返すのも赦すのもベテランの役目でございます。これは子供と大人でも変わりますまい。」
「自分より上がいない場合は?」
「それこそ暗中模索となるのは致し方ありません。責は確かにご自身にお有りでしょうが、そこに罪は存在しえませぬ。考えて行動することも大事ではありますが、考えて過ぎて動けなくなるのは愚の骨頂であります。和人坊ちゃまは頭がよく回るようなのでこのことを
「わかった。……とりあえず、せっかく温泉に来たんだから一風呂浴びてこよう。西村は……。」
「既に秋鷹様から自分に構わず自由にするように、と許可を頂いております。和人坊ちゃまにお供させていただいてよろしいですかな?」
「もちろん。それじゃあ行こうか。」
そんなわけでとりあえず宿の温泉に入りにいく。
どうせ夜入るんだし別に泊るところの宿でなくても良いのではないかと思うかもしれないが、そちらは明日がっつり回る予定らしい。
なので今日は体力回復も兼ねて宿の温泉でおとなしくしてるようにと言われている。
ついでになのはも同じ宿に泊まっているようなので、会えれば暇つぶしくらいにはなるか、という考えもある。
◇ ◇
「ふぅぅ~~~いきかえるぅ~。」
「いい湯ですなぁ~。」
珍しいことに心もち西村の声が伸びているような気がする。
西村も疲れているのだろうか、と思い聞いてみると、「
なので「ということは西村もだな。」と返しておいた。
どうもお互い疲れがかなり溜まっていたようだ。
お互いに精彩に欠けた会話になっている気がする。
「西村はさ~。」
「?」
「なんでうちに仕えてるんだ~?」
湯船の中でぐったぁぁっとしながら前から気になっていた質問を投げかける。
西村も、俺ほどぐたっとはしてないものの、リラックスしながらこちらの話を聞いてくれている。
「なぜ、と言われましてもなぁ……。物心ついたころには既に和人坊ちゃまのおじい様にお仕えしておりましたので……。強いて挙げるならばそれが当たり前だと思っていたからでしょうか。」
「……なんかそういうのって嫌だな~。」
「と言いますと?」
「だって、それって那須家が西村家の人間の将来を狭めてるってことじゃないか。」
「まぁそういう一面もありますなぁ。しかし、汚い話ですが金銭面についてこれほど恵まれるという利点もあると思えませんか?」
あー、まぁ確かに……。
ぶっちゃけた話、同じレベルで金を自由にできると言ったら金持ちの家に生まれるか宝くじに数回当たるか、くらいになるだろうし。
まぁある意味西村家は那須家に付き人として使えることで半ば金持ちの家系になっている、とみることも可能なのか。
んー、でも、なぁ……。
「それでも物心ついたころからだと洗脳っぽくなると思うんだよなぁ。」
「……否定は、できませんなぁ。和人坊ちゃまのおじい様の言を否定することにもなりますので。」
「ん~?」
「おじい様も和人坊ちゃまと同じように那須家と西村家のあり方に疑問を抱いていたのですよ。それでおじい様と私の代で西村家のものが自動的に那須家のお方のお付きになる、という制度を取りやめたのでございます。」
「……だから父さんの付き人が西村の子じゃないのか~。」
「そういうことでございます。」
「ふ~ん……。息子さんは今は?」
「海鳴市内の警察署長をやっております。和人坊ちゃまに限ってないとは思いますが、悪さをして息子につかまることのないようにお願いしますぞ。」
「だ~いじょうぶだって~。…………眠くなってきた。寝たらまずいし、先に上がっとくとくよ。西村はゆっくりしてて~。」
「大丈夫でございますか? 私も上がってお送りした方が……。」
「大丈夫だって。西村だって疲れてるんだろ? しっかり付かれとるためにもゆっくりしとく。」
「……ありがとうございます。それでは、お気をつけて。」
手拭いで体から水気を大雑把にとり、手拭いを絞ってから脱衣所へ戻る。
着替えは宿に備え付けの浴衣だ。
多少動きにくいが、セットアップさえしてしまえばそのあたりは問題にならないしな。
ドライヤーで髪の毛を乾かすのもそこそこに、部屋に戻ることにする。
「――――!」
……ところで、なんか聞き覚えのある声が、覚えのある馬鹿魔力の方向から聞こえてくるのは気のせいだろうか。
こう、なぜだかわからないが、やたらめったら目が醒めてくる。
俺の気のせいでなければ、強気な声はバニングスのもの、馬鹿魔力はなのはのものであるように思えて仕方がない。
そして、注意深く魔力を探ってみれば……アルフ、か?
まぁ、とりあえず。
『どうした? なのは。』
『あ、和人君! なんかね、女の人が……あ、たぶんフェイトちゃんに関係ある人なんだけどね、……。』
『あぁ、それはわかっている。というか女の人が、で大体分かった。あの好戦的な性格だし、なのはを見つけて絡んだだけだろう。……合流する。みんなの前では那須、に戻せよ?』
『え? なんで?』
『お前な……名前呼びに変えるにしても唐突過ぎるだろうが。なんか節目っぽいのがあるまでみんなの前では那須、高町、だ。』
『え~!』
『これは譲らん。ということでよろしく。』
アルフがいるということはやはりフェイトもいるということになるか。
接触して、アルフに魔力の糸をくっつければそこからフェイトの位置も把握できるはずだ。
「――あ、やっぱりバニングスか! お~い!」
「ん?」
いち早く俺に気付いたアルフの目が光る。
「あれ? 那須?」
『あんたら、組んでいたのかい?』
『はっ。まさかだな。アルフやフェイトよりは白に近いだろうが高町とユーノも監視対象に違いはない。』
「おっす。こんなところで奇遇だな。」
「そうね……って、なんであんたがここにいるのよっ!? 一昨日まで入院してたんでしょう!?」
『そうかい。……傷をつけた相手にいうのも癪だけど、この前のことは一応礼を言っておくよ。』
『ふん、ただの応急処置だ。あの程度屁でもないし気にするな。……とりあえず警告しておく。一般人を巻き込むような戦闘はするな。これが守れないというならこちらから全力でお前達を狩りに行く。』
「正確には昨日までだな。ま、湯治みたいなもんだと思えばいいんじゃないか?」
「いや、それは無理ってもんでしょうが……。」
『……言われなくてもそのつもりさ。フェイトは優しいからそんな事をしたら悲しむからね!』
『ならいい。さっさとフェイトのところに帰りな。』
「さーて、邪魔者みたいだしあたしは一風呂浴びてくっとするかねぇ! オチビちゃんたちごめんねぇ。」
白々しくそんなことを言いながらアルフは去って行った。
もうちょっと演じるつもりはないのか、という。
ちなみに「糸」は既につけているし、あとはアルフが直接フェイトに会うなり念話を送るなりすればフェイトを捕捉可能だ。
流石にオートではないため意識を割いておかなければいけないのが難点だが。
「ん? 何かあったのか?」
「あー! あの女! あの女がなのはに『うちの子にアレしてくれちゃってくれてるのは云々』ってわけわかんないこと言って難癖付けてきたのよ! なんなのあれ!」
「ふむ……月村、バニングスの言ってることは正しいか?」
「え? ……うん、あってるよ。」
「そうか。」
よし、ぷんすかぷんすか怒っているバニングスに説教でもくれてやるとしようか。
この天才が歪んで育つのは惜しいものだし、(前世含んで)人生の先輩としてちょくちょく矯正かけてみるのも悪くないだろう。
「バニングス。」
「なによ?」
「その頭が飾りじゃないんだったらもう少し頭を使え。」
「むっ。」
おー、怒ってる怒ってる。
おっかないっちゃおっかないが、正直小学生が怒っても怖くはないな。
なんか威圧感は感じるあたりさすがバニングスと言った感じだけど。
「まずひとつ。うちの子をアレしちゃってくれてるって言ってるんだ。『うちの子』とやらから高町に似た容姿でも聞いているんだろう。で、アレが何かしらんが高町が問題になるようなアレをすると思うか?」
「ないわね。……とすると、真昼間から酒? 信じられない!」
若干飛躍しているが、おそらくその過程はわかっているのだろう。
話が早くて助かる。
「ふたつめ……というかバニングスがスキップしたから元みっつめだが、今日は連休の初日だ。」
「…………なるほどね。確かに仕方ないかもしれないわね。……けど! だからって人に絡むのはダメでしょうが!」
「「??」」
今度は完全に飛躍したためか、月村となのはのお二人さんは理解が追い付いていないようだ。
まぁ、要するに初日だからこれ以上の移動は無し、連休初日でテンションが上がりやすい、観光は移動のない2日目がメイン、移動がないなら二日酔いで運転できない心配もなし。
ここまでそろえばまぁ飲むわな、という話だ。
実際俺の両親は飲んでる。
「まぁそれはそうだな。だが、酒を飲んだ大人なんてそんなもんだと思って流してやるのが大人の対応というものだろう。だからあまりカッカするな。」
「……わかったわよ。」
まだ多少不満げではあるが一応納得してはくれたみたいだ。
とりあえずやることやったし、部屋に帰って情報収集でもするとしますかね。
「さて、俺は部屋に帰るとするかな。」
「そうね、私たちも帰りましょう。というわけで、またね、那須。」
「おう、またな、バニングスに月村、高町。」
「ばいばい。」
「またねー。」
◇ ◇
――その日の夜。
俺はジュエルシードの発動の前兆のようなものをとらえ、現場へと急行していた。
場所は近くの林、小川の流れているところだ。
フェイトはまだ気づいていないようだが、移動速度の問題で到着はあちらの方が早いか。
まぁ封印に関しては問題はないだろうが、念には念を、ということでとりあえず向かってみる。
魔法のまともに使えない状態では戦闘になりようがないし、あちらもこちらを殺す気はないのだから大丈夫だろう。
「こんばんは、フェイトとアルフ。」
「っ! 来るとは思ってたけど、早いね。」
橋の上に立つフェイトに声をかける。
既にセットアップは完了しており、おそらく後はどうやらフェイトは俺が来ることは予想していたらしい。
まぁアルフから俺と遭遇したことは報告を受けているのだし当然と言えば当然か。
ちなみにその報告があったことは当然念話傍受によって知り得ました。
「ま、索敵は得意だからな。」
「そう……ジュエルシードは、渡さない。」
「ん? 別に戦うつもりはないさ。その気なら最初から奇襲してるからな。」
「……そうだね。バルディッシュ、いくよ。」
「Yes, sir.」
フェイトが封印準備を始めた。
前回感じたように、やはり少々甘いところがあるようだ。
……とはいえ、そんなあからさまな隙があったところで俺は何もできない訳だが。
フェイトが自身の魔力を集めていく。
それと並行して、フェイトの周辺に白い
――そう、まるで下位精霊のような
『……まさか。』
『……光の、下位精霊、ウィル……だねぇ。しかもその場にいる精霊じゃなくて召喚してるみたいだし……。』
――光の精霊、基本四属性に対して上位二属性と呼ばれる属性の片割れ。
その性質は、正義を好み、英雄を望む。
転じて劣悪な環境に置かれた者も好み、英雄を引き寄せんとする。
他にも優しい人間やリーダーシップの強い人間も好みやすい。
しかし、少々盲目的なところもあれば、人間とは違った価値観でもって唐突に縁を切ったりすることもある。
基本四属性の精霊とは違い、以上のような種々の特徴を持っている。
そして下位精霊の召喚。
そもそも下位上位にかかわらず、精霊を召喚できるのはその精霊が協力級の使用を認めているのが前提条件だ。
フェイトはおそらく精霊を感知していないだろう。
つまり、精霊側からの一方的な協力、言い換えればフェイトは
これらのことから導き出される答えは――
『救うべき境遇にいるか、英雄か……だが上が黒で盲目的に従っているなら後者の確率なんてない、か……。』
『……かずくん、どうするの?』
『どうするもこうするも、上手いこと救うしかないだろ……。』
不意に知り得てしまったフェイトの境遇。
具体的にはわからないが、それが劣悪なものであると予想が可能で。
知ってしまった以上無視などできるわけがない。
加えて俺は精霊術師。
精霊魔法は精霊を信じねば始まらず、それ故に俺は精霊術師として精霊の感覚を無条件で信じる。
「ジュエルシードシリアルⅩⅦ、封印……!」
いろいろ考えている間に封印が完了したようだ。
当然、なのはもジュエルシードが発動したところで気づき、こちらに向かってきている。
おそらくは後十数秒、と言ったところか。
「お疲れさん。大丈夫か?」
「うん、ありがとう。……なんで邪魔しなかったのか聞いていい?」
「あぁそれか。完全復活してないだけだ。」
「え?」
タッタッタッ――。
遅刻者、なのはの御到着だ。
……というかなんで走ってきたし……って結界が無いからか。
いや、それ以前に俺のミスもあるか。
結界はちゃんと張っておくべきだった。
ジュエルシードの発動時の光は大きい。
目撃者がいなければいいが……。
「あ~ららぁ~、子供はおとなしくしてなって言ったはずなんだけどねぇ。」
「っ! ……そのジュエルシードをどうするつもり!?」
「それは危険なモノなんだ!」
やはりというか、どうも風呂上がりのあの時に一悶着あったらしい。
アルフの好戦的な性格もあってあっという間に一触即発の空気になり始めている。
……戦闘になったら結界くらい張っておくか。
彼女らの会話を尻目に、俺はフェイトに念話を投げかける。
『フェイト。ひとつ、取引をしないか?』
『……内容は。』
『フェイトは人を害さない。俺はフェイトに敵対しない。』
この取引は、フェイトを救うために。
前回の接触で似たようなことは言っているが。
そもそも何から救うのかすらわかっていない状況だが。
フェイト自身が現在の環境を劣悪であると思っていない可能性すらあるが。
しかし――
『……ごめん。』
『……そうか。』
この約束を守ろうとすればフェイトは行動を規制される。
おそらくはそれが障害となる可能性が高いのだろう。
それでも、受けたふりをしないあたりはやはり良い奴ということ。
そして、気が付けば既にアルフがなのはとユーノに襲いかかっていた。
俺は、シルフィードに広範囲の封時結界を発動してもらう。
話し合いたいというなのは。
話すだけでは何も変わらない、伝わらないというフェイト。
彼女らの経験の差は歴然としていて、ジュエルシードをかけたその衝突は、あっさりとフェイトに軍配が上がる。
なのはに自身の名を言い置いて去っていくフェイトに、言葉を伝える。
『……ならば、誓おう。俺は、お前のその優しさが失われない限りにおいて、お前の将来をより良いものへと導く手伝いをすることを。』
『……。』
『覚えておけ。精霊術師は精霊を信じる。精霊術師は契約を破らない。約束も、決して破らない。だから、いざというときには声をかけろ。』
To be continued...
第11話 精霊術師 いかがでしたか?
とりあえず、3人娘のうち、やったらアリサだけが突出してしまうのはなんでだろう……。
そんなつもりではないのに気づけばこうなっているという。
そしていまいち発言のでてこないすずか。
性格がうまくつかめていないのが原因か。
さて、そんな分析は置いとくとして、軽く次回予告です。
といってもアニメ沿いに進んでるので普通に次元震のお話ですが。
2013/2/27 感想欄にて 謎の通行人B 様にご指摘頂いた箇所を修正しました。ありがとうございました。