精霊術師と魔法少女   作:桃月

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はい、第2話です。
まだまだ原作には追いつきません。
というか追いつく前にアニメ見直して復習しておかないと、ですしね。

まぁ裏事情は置いておいて、第2話、どうぞ。


第2話 今、できること

‡‡‡ 新暦58年9月下旬 第97管理外世界≪地球≫日本国海鳴市

 

 「さぁ和人!今日の分は最後だ。パパのところまで歩いてきなさい。」

 

 

 そういって父さんは廊下の突き当たりまで移動し始める。

――ちなみに廊下は50mくらいある。

そして、本日はすでに9往復と片道、つまり次で約1㎞の歩行となる。

……間違っても1歳半に歩かせる距離じゃないと思います父さん。

 

 

 「ほら、和人!頑張れ!」

 

 

 廊下の端にたどり着き、満面の笑みでこちらを振り向く父さん。

まぁそうは思っても、父さんの愛故というのもわかっている。

その上、こんな風ににこにこされていては答えなければいけない気がしてしまう。

……まぁ実際、歩くだけなら問題はないんだ。

歩くだけなら。

だけど。

 

 

 ――『かずくーん。ほら、答えは~?』

『あーもう!もうちょっと考えさせてくれよ。えと、室温が20度と仮定して直径が10cmの水球が100度になるのに……』

 

 

 歩くのにまだバランスを気にしなくてはいけないというのに、同時に物理の問題を解かされているのだった。

円周率……3でいいか。

比熱は……4に丸めよう。

 

 

 『大体160kJくらいか?』

『計算荒いよっ!175.2kJだよ!』

 

 

 なんか桁が細かい。

円周率を3でやったのは確かにあれだったかもしれないが、3.14は無理だぞ?

 

 

 『歩きながらそこまで暗算とかむr『チートなかずくんならできるってば!』』

 

 

 何故か謎の信頼をされていた。

 

 

 「ほら!もう少しだ和人!こっちまで来たらたかいたかいしてやるからな!」

「あい!」

 

 

 ……いろいろとつらいが釣られておくべきだろう。

 

 

 『そこから蒸発させるのにさらに……大きく見積もって1190kJくらいだから、、、1365.3kJ!』

 

 

 これでどうだ!

 

 

 『……まぁ、さっきの適当な計算よりはましだけど。蒸発は1183kJだよ? あと、わたしの計算結果で計算しない! 途中で計算方法変えるとかえって誤差大きくなったりするんだから!』

『はい。。。』

 

 

 ばれてた。

ダメだし思いっきり喰らった。

というかシルフィードはどこの桁まで計算しているんだ。

――父さんの所にたどり着いた。

 

 

 「おー、よく頑張ったな和人! ほれ、たかいたか~い。」

 

 

 ぐいっと体が持ち上げられる。

1年半でいろいろと羞恥プレイに慣れてはきたが。

 

 

 「うきゃっきゃ!」

 

 

 年相応の反応をする、というのがまだまだ恥ずかしいです。。。

 

 

 『あははかずくんかわいいぞ~♪』

 

 

 主にシルフィードがいちいち感想を言(からか)ってくるせいで。

 

 

 『というかさ、1㎞も歩行練習する赤ん坊ってシュールだよね。』

『言うな。今更過ぎる。』

 

 

 魔法講座とかもっと前からやってるしな。

 

 

 

*** ~那須 秋鷹~ view ***

 

 早いもので、和人が生まれてから早くも1年半が経った。

この1年半は大過なくまさに矢のごとく過ぎ去っていった。

一つだけ。

一つだけ不思議な出来事があったが。

半年ほど前、ちょうど和人の誕生日の翌日だ。

夢の中に精霊王?ジンとかいう何かが現れて、和人が5歳になったら証を渡せとかなんとか。

そして目が覚めたら枕元には碧い宝玉。

おそらくこれのことだろうと金庫に厳重に保管してはいるけれども……。

ちなみに宝玉のことを綾佳や召使たちにも聞いたが誰も知らないと言っていた。

まぁただのガラクタかもしれないが、お告げ付きの逸品ではある。

5歳の誕生日プレゼントのおもちゃと考えても問題はないだろう。

 

 

 そんなことより、和人のことだ。

綾佳のやっている3か国語の教育はまだどうなっているのか判らないけれど、俺が教育している肉体面の成長は大したものだ。

つい先ほどだって合計1㎞も歩いて見せた。

1㎞もだぞ!1歳半の子供が!

正直今からどれほど成長するのかが楽しみだ。

……親バカって言うんだろうなぁ、これ。

別にそうであっても気にしないが。

 

 

 そして今、俺は弓道場に来ている。

我が那須家は、神主の家系であると同時に弓術と弓道の家系でもあるのだ。

ま、弓術はもう書物でしか残ってないし、弓道の家系と言ってしまってもいいのだけれども。

戦闘を主眼とした弓術、儀式や武士道精神を主眼とした弓道。

近代兵器が台頭し、さらにそもそも武力行使による外交手段を放棄した日本国。

弓術が残っていられる訳がなかったのだ。

 

 

 ――心の中に的を、真円を描く。

――他のものは一切存在しない。

――目を開き、ゆっくりと立ち上がる。

この時には既に中ることがわかっていた。

――弓を構える。

――矢を番え――放つ。

 

 

 中心でこそないが、そこそこ真ん中の方に矢が中った。

聞いた話だが、人間の体というものは案外すごいものらしい。

反復練習がしっかりとできているという前提であれば、それこそ機械のように同じ動作ができるそうだ。

先ほど動作の途中で中ると分かったのも科学的にはそれで説明されるということだ。

ついでに言えば、先ほどのものは弓道ではない。

射抜くことを目的としている時点で、精神の昇華を目的とする弓道とは認めることができない。

敢えて言うならば弓術側だろう。

 

 

 ――那須家で廃れてしまった弓術を、何故今更やるのか。

簡単だ。

愛息子、和人は精霊に好かれたらしい。

あの夢で出てきた精霊王?とやらからは戦いの雰囲気がした。

まだ弓術の廃れていなかった頃の那須家の文献によれば、懇意にしていた剣士の家系があるらしい。

御神家と不破家だったか?

どちらにせよ、今ではこちらが廃れてしまったために交流はないが……。

そんな家もあるのだ。

和人が荒事に巻き込まれてしまう運命にある、というお告げだったのかもしれない。

そう考えた俺は、那須家の弓術を少しでも復活させようと弓術の真似事を始めたのだった。

 

 

 

 

*** ~那須 秋鷹~ view ended ***

 

 

 ――所変わって和人の部屋。

 

 『で、毎回毎回なんで歩行練習しているときに問題投げてくるんだ? シルフィードのことだし、何か考え合ってのことだとは思ってるけど、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?』

 

 

 ――そうなのだ。

シルフィードはちょくちょく意味の分からないことを指示してきたりする。

しかし、大抵の場合は何かちゃんとした理由があるのだ。

 

 

 『うーん……。まぁ、教えてもいっかー。かずくん気になっちゃってるみたいだし。』

『別にそんな気になってないぞ?』

 

 

 しまった。

かずくんとか言われて思わず反発してしまった。

こうなると次の流れは……。

 

 

 『なら教えなくていーい?』

『……それとこれは別の話だ。』

『何も別じゃないよ~?』

『むぅ。……ごめん、シルフィード。教えて?』

『最初から素直にそういえばいいのにねぇ。』

 

 

 物凄く予想通りの流れになった。

幼児が学習能力高いって言ったの誰だよ。

全然学習できてねぇぞ俺。

 

 

 『それは、あれだ。かずくんとか言われて思わず反発しちゃったんだよ。』

『かずくんてば、まーだそんなこと言ってる。いーかげん諦めなさい♪これ、師匠命令ね♪』

 

 

 なんか理不尽なことを言い出した。

職権?乱用だと思うのがどうだろう?

そう思いつつ、シルフィードを睨みつける。

 

 

 『あはは、睨むな睨むな~。教えてあげるからさ。』

『はぁ。ま、シルフィードに言っても無駄だってことは、1年近くも経ったんだから理解してるけどな。』

『そーそー。無駄だよ、む・だ♪』

『あーもう。いいから説明してくれよ。』

 

 

 あんまり付き合っていると精神力ががりがり削られていく。

経験上さっさと流すのが吉だ。

そうすればシルフィードも流してくれる。

 

 

 『はいはいっと。さて、今まで何度も念話を使ってきたからわかってるとは思うんだけど……念話を使ってる間、他のことが疎かになってること多くない?』

『まぁそうだな。……でも、当たり前じゃないのか?』

『そう、それが当たり前。和人は「マルチタスク」を習得していないからね。』

 

 

 ――multi-task

multitaskingというコンピューターの用語がある。

複数のプログラムの同時処理、という意味だ。

とすると、魔法陣=プログラムらしいし、魔法の同時展開、か?

 

 

 『「マルチタスク」っていうのは、「複数の思考行動・魔法処理を並列で行う技術」のことで、魔法戦闘するなら必須もいいところな技術だよ。ちなみにわたしは7個まで使えるんだよー。』

『7個ってすごいのか?』

 

 

 ……まぁ凄いか。7個も同時に思考とか想像もできん。

というか思考もなんだな。

 

 

 『わかんない。ま、足りなくても下位精霊に手伝ってもらえばいいだけだから、それまで含めるとかなり数増えるねー。』

『まじか。ずるいなぁ。』

『人間が組織で行動するのと似たようなものだよ?ずるくなんてないよー。』

『そんなもんなのかねぇ。』

『そんなものそんなもの。』

『ふーん。。で、そのマルチタスクってやつの訓練なのか?物理の問題は。』

『そうだよー。かずくんまだしっかり意識しないと壁とかなしじゃ歩けないでしょ? だからそこから頭回さなきゃ解けないような問題突っ込めば並列処理せざるを得なくなるはずだーって思ったのよ。』

 

 

 やっぱりそういうことか。

シルフィード、結構スパルタだよなぁ。

 

 

 『なるほど。……できてたかなぁ?』

『できかけてはいたけど、最後の方はむしろ歩くのが無意識にできるようになった感じかな?』

 

 

 言われてみれば、最後の方はもはやバランスうんぬんは考えていなかった気がする。

 

 

 『あー確かにそんな感じがする。』

『まーそんなわけで、これからは他の人がいるところでもどんどん話しかけていくから、変に思われないよう並列処理がんばってね!』

『りょ、りょーかいであります!』

 

 

 まじか。気を付けないと親に心配されるし、頑張らねーとな。。

 

 

 

‡‡‡ 新暦58年12月上旬

 

 マルチタスクの練習を意識的に始めてから2か月半経った。

シルフィードの無茶ぶりには毎日毎日起きている時間中ずっとさらされている。

それを騙し騙しにこなし続け、気づけば2つのタスクなら並列処理できるようになっていた。

 

 

 「はい、じゃあこれはなんでしょう?まずは日本語で。」

 

 

 そう言って母さんはりんごを見せてくる。

――同時に。

 

 

 『昨日の復習問題だよー。人間の行使する魔法には非殺傷設定というものがあるだけど、これはどんなものでしょう?』

 

 

 ――さらに。

 

 

 『今日は人間の魔法の大雑把な区分について教えてあげるねー。まず、現在もっとも普及しているのはミッドチルダ式の魔法で……』

 

 

 シルフィードが念話をふたつ送ってきているので、3個の並列処理をさせられているだった。

かなり厳しい。

 

 

 「りんごー。」

『攻撃対象物理ダメージを与えず、魔法ダメージのみに限定する、だよな?』

『ミッドチルダ式魔法が最も普及していて、円形の魔方陣、と。』

「正解、和人。じゃあEnglishで。」

「あ、あぽー(apple)?」

『補足するなら、物理ダメージ、ではなく肉体的損傷、かなー?衝撃とか痛みはあるわけだしねー。』

『そのとーり。で、もうひとつがベルカ式といって、三角形の魔方陣を使うんだ。近接戦闘に秀でているのが特徴かなー。』

「またまた正解。そしたらDeutsche(ドイツ語)は?」

「あぅー……あふぇる(Apfel)?」

『あーそんなことも言ってたなぁ。』

『ふむふむ。ミッドチルダ式は近接戦闘苦手なの?』

「正解!よくできました和人!じゃあ、りんごジュース作ってあげるからちょっと待っててね~」

『さらに付け加えると、過度な魔法ダメージはブラックアウトを引き起こすから、頼りすぎると危険なんだよー。覚えておいてねー。」

『苦手、ではないかなー。万能選手一歩手前の器用貧乏的な立ち位置かな?ミッドチルダ式は。』

 

 

 ……カオスだ。

 

 

 

*** ~シルフィード~ view ***

 

 数週間前、和人は2つの並列処理(マルチタスク)を完全にできるようになった。

やはり習得が非常に早い。

転生特典とやらのせいなのか、幼児ゆえの成長率の高さに因るものなのかは判らないけれども。

そして今は3つの並列処理(マルチタスク)の練習中だ。

物凄く厳しそうな顔をしているが、そのようなことを考えられているという時点ですでに4つ目の並列処理(マルチタスク)が開花しかけている証拠だ。

これでまだ2歳にもなっていないというのだから末恐ろしい。

だが、まぁ人間であることだし、才能限界というものがあるだろう。

そこが魔素で体の構成された精霊と違うところだ。

 

 

 ――和人のお母さんがジュースを作りに行った。

あからさまにほっとしている和人に、さらに負荷をかける。

もちろん講義や復習は続けたままだ。

 

 

 『じゃーかずくん、今から英語の詩を読むから復唱してね♪』

『うぇぇ!?なんでシルフィードからも英語を習わなきゃいけないんだよ!』

 

 

 ん? この反応は、つまり。

 

 

 『なんでって……ミッドチルダ式の言語はほぼ英語だよ?さっき言ったじゃん。もしかして、聞いてなかったか~?』

『え゛。……言ってました、ハイ。』

 

 

 一瞬聞いていないという顔を浮かべる和人。

 

 

 『そうしとこうとか思ってるじゃないでしょうねー?』

『そそそそんなことないぞ!?』

 

 

 物凄くあわてている。

……黒だろう。完全に、完膚なきまでに真っ黒だろう。

 

 

 『ふーん? まぁいいや。始めるよ~。……』

 

 

 まぁマルチタスクが限界になろうとも伸ばせるところはいくらでもある。

それこそ一生かかっても終わらない程度には。

それに、わたしだって全力で教え込んでいるわけではないのだ。

精霊王に、人となりを見て、道を踏み外すことのないように導きながら教えろ、と指示されているのだ。

確かに、神様の特典(しゅくふく)?を持った人間を魔導に秀でた精霊が全力で教え込み、その人間が道を踏み外そうものなら止められるものはそうそう居ないだろう。

そういった意味でも、様子見をしつつ、というのは大事なのだが……。

 

 

 (……はぁ。なんかそういうの嫌だなぁ。)

 

 

 今更、なのではあるけれども。

しかし和人が道を踏み外すようには全く思えないシルフィードなのであった。

 

 

 (とりあえず、命令違反にならず、デバイスなしでできる訓練はカンストさせるつもりでやっちゃお。)

 

 

 それが心から信頼してく入れている和人に対する贖罪であろう。

本人は素直に認めないだろうけれども。

 

 

 

*** ~シルフィード~ view ended ***

 

 

 

‡‡‡ 新暦59年3月中旬

 

 

*** ~那須 秋鷹~ view ***

 

 もうすぐ和人が2歳になる。

4歳になれば小さな弓をもたせて練習させたいが、今はまだその時ではない。

だが、それでも基本的な肉体のスペックを上げるくらいならできる。

そう思い、和人が歩けるようになってすぐに始めた歩行練習だが、あっという間に年齢を鑑みれば歩行()()とでもいうべき距離になり、気付けば近くの丘を登りに行ったりするまでになっていた。

本当にすごい子だ。

 

 

 だが、まぁ今和人にしてやれることと言ったらその程度だろう。

だから、いま俺がするべきことは2つ。

1つ目は戦いに巻き込まれる運命であろう愛息子の、心の支えとなるような思い出を作ろうとしてやること。

2つ目は那須家の弓術を復活、とまではいかずともある程度紐解いておいてやること。

できることならば巻き込ませたくないが。

少し前に高町家に訪問し、事情を話し御神流の訓練を見学させてもらった限りでは、俺は彼らの足元どころか影にすら届かないだろう、ということを痛感した。

それ故に。和人が巻き込まれてしまった後の助けに少しでもなるよう、俺は動かなくてはいけない。

 

 

 ――ただ、気になるとすれば。

時折虚空を見つめ、無反応になったり、元気だったのが急にふらふらになり、寝込んでしまうことがあったりするのだ。

……憑いている精霊とやらの影響なのだろうか?

まぁ、後者は子供であるために自身の体力がわかっておらず、体力が底をついたのを唐突に気付いただけ、という可能性もあるが。

5歳で宝玉を渡せと言われたので、巻き込まれるのは5歳からだと思っていたが、和人はもうすでに巻き込まれているのだろうか……?

 

 

*** ~那須 秋鷹~ view ended ***

 

 

 

To be continued...




はい、第2話 今、できること いかがだったでしょうか?
プロローグ、第1話と違い、会話文の合間に地の文を頑張って挿んでみたのですが……。

それと、今更ながら。
「」 会話
『』 念話
です。

冒頭、物理の問題。
和人の計算:4 X 5 X 5 X 5 X 3 X 4/3 X (100-20) =160,000J
シルフィードの計算:4.184 X 5 X 5 X 5 X 3.141 X 4/3 X (100-20) =175,224J
物理において1割は誤差の範疇というものを思いっきり出ていますので、軽くアウトですね。
丸めたところが両方減らす方向というのがNG。
せめて4.2、3.1であればましなのですが。ちなみにこれで計算すると173,600Jになります。
蒸発は和人はこちらで計算しました。

最後に、活動報告の方にも書きましたが、先日は操作を誤ってしまい、執筆途中のものを投稿してしまいました。
以後このようなことがないよう注意いたしますので、どうぞお許しくださいませ。

2013/2/5 改稿
2013/2/8 計算ミス訂正 謎の通行人B 様、ご指摘ありがとうございました。
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