‡‡‡ 新暦60年5月29日 ???
*** ~???~ view ***
素体の完成まで丁度あと1年。
あとたったの1年で、あの可愛い、優しいアリシアとまた会える。
昔参加していたプロジェクトFの理論を一人で発展させ、一人で実行に移した。
他のありとあらゆるものを捨て去って。
全てはアリシアのために。
その成果が今目の前にあるポットだ。
中にはアリシアよりも少し小さな女の子が眠っている。
今回は上手くいく自信があった。
それ故に、この素体の名前はフェイトとした。
プロジェクトFの正式名であり、運命という意味を持つ単語。
私とアリシアを再開の運命へと導いてくれる大切な
「ふふ。もう少しよアリシア。もう少しであなたはこの
この
いや、完成してもらわなければ
私の体は病魔に侵されているから。
再び素体が成長するのを待つ余裕はないだろう。
そして、病魔を先に駆逐するという案はあり得ない。
そんなにすぐに治るような病気ではないし、大した設備もないここで治療するのは不可能だ。
あるような場所は管理局の配下で、今の私は犯罪者。
出頭すれば治療は受けられるかもしれないが、それではアリシアは助からないと見切られてしまうだろう。
何せアリシアに施そうとしているのは死からの回復。
現在の管理局の技術では不可能もいいところだ。
それ故に管理局へ出頭することはあり得ない。
よって病気を先に治すという案もあり得ない。
だから、今回は必ず成功させなければいけない。
もう、私には後がないのだから。
*** ~???~ view ended ***
‡‡‡ 新暦60年7月下旬 第97管理外世界≪地球≫日本国海鳴市
Q.ここはどこか。
A.那須家自宅弓道場。
Q.今、何をしているのか。
A.瞑想。
Q.何のためにやっているのか。
A.父さんの弓術訓練が来年始まるに当たり、精神力を磨くため。
Q.現在の気温は何度か。
A.摂氏34度。
Q.湿度はいくらか。
A.わからない。とりあえず蒸し暑い。
Q.いつから続けているのか。
A.6時に朝飯を食い、そのあとすぐから。
Q.現在、何時か。
A.13時。
――ふらっ。
流石に限界となり、体がふらついてしまった。
「お、どうした和人。もう限界か?」
そんなことをのたまう父さん。
だが……
「おなかすいたーーー!」
これに尽きる。
いや、暑いとかいろいろありはするけど、食うもん食えばそちらは大丈夫だろう。
だから、今何よりも欲しいのは
「んー。確かにそうだな。よし、飯食いに戻るか!」
「わーい!ごはんー!」
そう言って、父さんとダッシュで母屋に帰った。
*** ~那須 綾佳~ view ***
今日は朝からアキが和人に弓道の練習をさせている。
体が未成熟であることに加え、弓も用意できていないということで精神的なものだと言っていた。
たぶん瞑想とかそのあたりかなー、と思う。
なんでかと言うと、アキが那須流弓術を復活させようとし始めてからすぐに始め、ずっと続けてきたからだ。
「それにしても、ずいぶんと長いわねぇ。」
「そうでございますね。秋鷹様と和人様が弓道場に向かわれてからもう6時間経っておりますし。そろそろお呼びいたしましょうか?」
西村がそう言ってくれたが、おそらく大丈夫だと思う。
アキだけなら呼ばないといけないかもしれないけど、和人がいるから「お腹空いたー!」とか騒ぐだろうし。
「和人がいるから大丈夫だと思うわ。それよりも、いつ帰ってきてもすぐに昼食に出来るように準備だけはしておいてね。」
「そのあたりは抜かりありませんよ、綾佳奥様。お二人がお戻りになられたらまずオードブルをお出しし、その間にメインのスパゲッティを茹でさせていただきます。」
「そう、流石ね西村。お昼が楽しみだわ。」
「ありがとうございます、綾佳奥様。」
――ガラッ。
「ただいまーーー!」
「ただいま。」
玄関の方から大きな、元気な声が聞こえた。
和人の声だ。
アキの声はあまり大きな声を出していないのか、よく聞こえない。
「どうやら戻られたようですね。」
「そうね。では西村はお昼の準備をお願いします。」
「承知いたしました。」
そう話しているうちに、二人が居間へとやってきた。
「おかえりなさい、和人、アキ。」
「おかえりなさいませ。すぐに昼食の準備をいたします。茶の間へと移動してくださいませ。」
「はーい!今日は何かなー?」
とてもお腹が空いていたのか、和人はもうそわそわとしている。
「メインはスパゲッティらしいわよ。」
「お、今日は洋食なのか。かなり久々だな。」
「私がデザートを作ったのよ。それで合わせてくれたのだと思うわ。」
「わーい!なに作ったの?」
「それは出てきてのお楽しみよ♪さ、移動しましょ。」
「はーい。」
*** ~那須 綾佳~ view ended ***
*** ~那須 秋鷹~ view ***
今日の昼食はオードブルとしてカップレーゼ、メインはベーコンとトマトのジェノベーゼパスタだった。
「ふぅ。結構食ったなぁ。」
「まだデザートがあるわよ♪」
「そうだったな。なに作ったんだ?」
「ふふ、もうちょっと待ってね。西村!持ってきて頂戴。」
「承知いたしました。」
控えていた西村がデザートを取りに行く。
綾佳が作るお菓子は美味しいのでとても楽しみだ。
「お待たせいたしました。こちら、綾佳奥様のお作りしたクインシーメロンのシャーベットでございます。」
「シャーベットだ!たくさんちょーだい!」
「ダメよ、和人。お腹痛くなっちゃうから少しにしておくのよ。」
「えーーー!」
沢山食べたいという和人をたしなめる綾佳。
まぁ弓道場は暑かったし、和人の気持ちもわからなくはないのだが。
「そうだぞ和人。あんまりわがままを言ってお母さんを困らせるんじゃない。」
「むー。」
「それならば綾佳奥様との勉強の最中に間食としてお持ちいたしましょうか?」
「それが良いわね。よろしく頼むわ、西村。」
「ということらしいから、今は少しで我慢するんだぞ。」
「はーい。」
「それじゃ、そろそろ食べようか。」
「「「いただきまーす。」」」
――おぉ。
予想通りだが、綾佳の作ったシャーベットは美味しかった。
「美味いぞ、綾佳。」
「ありがと、アキ。和人はどう?」
「おいしーー!」
――昼食が終わって。
「さて、俺は弓術の練習でもするかな。」
和人は綾佳と言語の勉強を始めている。
SとかVとかいった概念を理解できるようで、言語教育がとても楽だと前に綾佳が言っていた。
もう俺より英語もドイツ語もできるだろう。
……むしろ俺が出来ないだけだが。
自分の弓を持って先ほどまで和人と瞑想をしていた弓道場へと向かう。
瞑想でしていることは「無」の状態、つまり極度の集中状態への足掛かりとなる状態へと能動的になることだ。
和人がそこまでできているとは思えないが、少なくともとても静かな精神状態にはなっていたように見えた。
だが、和人はまだ3歳。
それが瞑想をできている時点で以上なのだろう。
やはり戦闘に巻き込まれる運命を持つ、ということなのだろうか……。
いや、もうこういったことは幾度も幾度も考えて、そのたびに同じ結論に達した。
今やれるのは那須家の弓術を紐解いていくことのみ。
練習を始めよう。
弓術だが、少しずつだが勝手がわかってきて、弓狙い、射抜くというのが少しはできるようになった。
とりあえずは適当な場所に立つ。
――まずは、標的を確認する。
――目測で距離を測る。
――目を開いたまま、標的のみに集中をする。
――弓を構え、矢を番え、そのまますぐに放つ。
標的の端の方に当たる。
今やったのは、標的の位置情報をしっかりと意識し、覚えておくことで可能となる早撃ち。
当然精度は悪くなるが、戦闘目的なら弓を構えてからまた狙っていては時間がかかり過ぎる。
それ故に最初に始めたわけだが……やはりかなり難しい。
弓を構えた時点でそちらに意識が多少持っていかれてしまい、どうしても位置情報への集中が途切れてしまうのだ。
「ま、焦っても仕方ない。まずはこれだけでもマスターしておこう。」
早撃ちの練習を再開する。
目標は、和人が言語の勉強をしている間に標的の中心に5回当てること。
和人の言語の勉強が終われば、夜目を鍛える意味も兼ねての夜間の山登りが待っている。
だから、弓術の練習が出来るのは今だけだ。
しっかりとやっていこう。
*** ~那須 秋鷹~ view ended ***
‡‡‡ 新暦60年11月上旬
――
――大気中の
――新たにできた
この間、約10秒。
『よしよーし。割と言い速さだねー。そのまま5分間維持の後、半分の大きさに圧縮、さらに5分間維持、やってみて~。あ、維持しながらエリアとファーの位置も確定させてね♪』
『うっは。シルフィのやつえぐいなぁ。』
『まぁこの1年半の間でだいぶ慣らされましたけどね。』
『ファーもエリアも無駄話入れるあたり同罪だよ~。』
――
――ファーブニルの位置、とりあえず2時の方向約2km。
――アクエリアの位置は……6時方向約1.5㎞。
これではまだ精度が低すぎる。
――念話の「糸」の密度をもう一度一定にし、消費魔力から距離を予想。
――さらにファーブニルとアクエリアの間の念話を傍受し、消費魔力を推定し密度を仮定。
――ファーブニルとアクエリアの距離を約3.5㎞と仮定。
精度上昇にはこれだけではまだ情報が足りない。
――さらに、ここからのファーブニルとアクエリアの角度の開きを測定。
――約125度と推測。
――まずはアクエリアをまでの距離を1.5㎞と仮定してファーブニルの距離を計算。
――2.42㎞。
――ファーブニルとアクエリアの距離の比は約4:3なので誤差も同じ比率であると推測。
また、計算過程でファーブニルとアクエリアの間の距離の計算値が大きくなるため、やや小さめに修正値を設定することにする。
――ファーブニルまでの距離を2.27㎞、アクエリアまでの距離を1.64㎞と仮定。
――ファーブニルとアクエリアの距離を計算。
――3.48㎞。誤差範囲内。
――この結果からファーブニルの座標を確定させる。
『ファーブニルの位置はここから33度、2.27㎞。アクエリアは-92度、1.64㎞。両者間の距離は3.476㎞。』
ちなみに真東を0度としている。
『ファー、エリア、どう?』
『あーすまん。そこまで細かい桁だせん。35度くらい、2.3㎞くらいではある。エリアとの距離は3.5㎞くらいだな。』
『すみません。こちらもそこまで細かくは出せません。角度は約-90度、距離は1.6㎞強です。』
……ファーブニルもアクエリアも念話がそこまで得意でないらしく、精度に関しては俺の方が上を行っているらしい。
『二人とも、人間に負けて情けないと思わないの~?』
『……情けないと思ってますよそれはもう。ですから言わないでください。お願いします。』
『で、シルフィード、答えは?』
『んーと、調整計算とかしてないけどいいよね。』
『とか言いながらシルフィの答えっていつも俺らのやつよりかなり正確なんだよなー。』
『かずくんの場所からだとファーは33.1度、距離は2.27㎞、エリアはー92.1度、距離が1.64㎞、二人の距離は3.48㎞だね。』
シルフィードはさすがの精度で答えを出す。
これで調整してないって言うのだから恐ろしい。
風の下位精霊の力も借りればcm単位で場所を特定できるらしいし。
『うぉ、和人すげえな。距離ほとんどあってるじゃねえか。』
『ですが、角度が比較的大きくずれていますね。角度のずれというのはかなり大きく出ますし、その点は評価低いのでは?』
『エリアは人のこと言う前に自分の精度上げようね~♪で、こんかいのずれだと大体3.5mくらいだし、まあぎりぎりセーフじゃないかなー。』
セーフの判定を何とかもらえたようだ。
しかし、角度の誤差はやっぱ怖い。
シルフィードとの距離の差はほぼないのに、角度の誤差だけで実際の場所との差が出てきてしまうのだから。
今はまだ数㎞だからいいものの、数十㎞になればそれだけ誤差が大きく出るわけだし、早く何とかしないと。
『よっし!ただまぁ、角度がちょっと不安あるのは確かなんだよなぁ。実際念話から予想したデータとじゃ2度近く差があるわけだし。』
『でも、角度に関しては経験によるところも大きいからね~。頑張って精進するのだぞ、かずくん。』
『わかりました~。』
『で、そっちの残念な二人組♪』
『残念ってなんだよ!これでも結構頑張ってるんだからな!』
『少なくとも和人よりは糸の均質化も省魔力もできています。』
グサッと心に来ることを言ってくるアクエリア。
実際そうだし、少しずつしか改善していない場所でもあるから何も言えないが。
けれど、それが意味するところは均質化が出来ているのにもかかわらず距離が上手くわかっていないということであるわけで。
『そうだね~。なのになんで距離がわからないのかなー?かずくんとの距離ならともかく、ファーとの距離の精度まで負けてるってのは明らかにその技術面で劣っていることに他ならないよ~?』
『う。……申し訳ありませんでした。和人もごめんなさい。』
『いや、いいよ。俺が均質化とか苦手なのは事実だしな。練習してどうにかしようぜ。』
『やっぱ和人いいやつだな。誰が一番早くシルフィの域までたどり着くか、競争だな!』
『というわけでそろそろ32本目始めたいんだけどいいかな、シルフィード?』
『はーい。じゃ、ファーとエリアは移動開始してね。』
『……最近和人の練習量に対する感覚が壊れ始めてる気がするのですが気のせいでしょうか?』
『……気のせいじゃないと思うぜ、俺は……。』
ファーブニルとアクエリアが何か言っていた気がするが、大したことではないだろう。
『かずくん、そろそろ魔力球圧縮してね~♪』
『あ、了解。』
――魔力球の中心に魔力を沈殿させる。
――そして、上澄みを排除し、表面をゆっくりと収縮していく。
『ん~。やっぱ圧縮はまだまだだねぇ。形にはなってるから、繰り返しやってけば問題ないと思うよ。』
『ありがとう。じゃあ、このまま次の念話訓練、かな。』
『そうだねー。一応5分経ったら解除してもいいけど、なるべく長く維持するようにねー。』
『りょーかい。』
こうして、今日も過ぎ去っていく――。
To be continued...
第4話、片鱗 いかがだったでしょうか。
……うん、後書きってネタがないorz
やはり次回予告とかした方が良いのでしょうか。
話のネタにもできますし。
とりあえず、次回はリア用も相まって投稿が遅くなりそうです。
申し訳ありません。
週末には投稿……出来るといいなぁ。