精霊術師と魔法少女   作:桃月

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はい、たいっへん遅くなりましたぁ!すみません!!!
理由はえっと、旧8話が3回全没したとか現8話もなかなか納得いってなくて投下に踏み切れなかったとかそんな感じです、ハイ。
まぁそんなわけで(?)ご意見、ご指摘等ありましたら感想欄などでよろしくお願いします。


それでは、第8話、どうぞ


第8話 運命の転機

‡‡‡ 新暦65年4月5日 第97管理外世界≪地球≫日本国海鳴市

 

 「くっ!」

「[Protection]」

 

 

 コッコッ。

小石が部分展開したプロテクションに当たって弾かれる。

 

 

 『ほらほら、足止めない! いちいち足止めてたらそのまま集中砲火浴びて昇天だよ~。』

『うー、はいっ!』

『どんどん行くよ~♪』

 

 

 宣言通り、シルフィードは次々に小石を飛ばしてくる。

その小石をエアリーステップスを駆使してとにかく避ける、という訓練だ。

だが、エアリーステップスは移動速度が上がるわけではないし、避けきるのは難しい。

なので、避けきれなかった小石は瞬間的にプロテクションを当たる箇所だけ展開して防御し、かつそのまま連続で攻撃を当てられないために移動を続けるのだ。

……ちなみに、垂直移動補助の魔法は思いつかなかった。

 

 

 この朝練、昔は朝食前の軽い魔力操作練習だったのだが、精霊魔法を使うようになってから使用できる魔法が一気に増え、気づけば4時半スタートというかなり重いものになっていた。

和人の使うことに出来る魔法の長所をとにかく伸ばす、というのが訓練の目標だ。

これは、「かずくんは魔力量少ないからねー。汎用性の高いは威力低いから、何かに特化した魔法じゃないと通用しないよ~。」というシルフィードのアドバイスによる。

ソニックバレットは発生速度を、ファイアーボールは操作性と爆発範囲、フレイムランサーは威力と射出速度、クリムゾンアロウは貫通力。

プロテクションは発動速度と部分展開、膜の均質化、エアリーステップスは目標地点を見ずに設定、といった感じだ。

マナ回復は訓練中に1回、訓練終了時に1回、シルフィードの監督の下リンカーコアに過度な負担がかからないぎりぎりの速度で行っている。

今日既に終了している訓練は魔力圧縮/粗密化訓練、プロテクションの全力展開の二つだけ。

――まだまだ、朝練は続く。

 

 

          ◇          ◇

 

 

 『――さて、と。いつもならここから瞑想を始めるところだけど、今日はそろそろ方針決めた方が良いよね?』

『そうですね。……先日海鳴市及び周辺に出現した複数の次元介入反応、シルフィは何かわかりますか?』

 

 

 ――そう、数日前、唐突に海鳴市近隣に大きなマナの乱れが発生したのだ。

シルフィード達はそれを次元介入反応と言っていた。

これは、次元世界を行き来する時に否応なく発生してしまうものらしい。

それが複数。

何があったのか調べるため、シルフィードは風の下位精霊シルフを使役して暇を見つけては調べていたのだ。

 

 

 『んーわかんないー。ただ、この世界にはそこまで魔術師の数が多くないはずだからね~。やっぱり次元空間からの転移物の可能性が高い気がするなー。』

『次元空間からの転移物、要するに管理局の落し物だな。』

『まぁ管理局かどうかはわからないけど、落し物って可能性が高いと思うよー?』

『危険なものなのかなぁ?』

『うーん、多少は危険だと思うけど、どの程度かは結局わからずじまい。ただ、そのうちの一つが発動して、既に封印されたみたい。』

『つまり既に回収に動いてる者がいる、ということですね。』

『そういうことだねー。だから、かずくんの取れる選択肢は3つ。一つ目、我関せず。二つ目、回収者に協力。三つ目、回収者とは別に回収していく。さぁ、かずくんはどうする~?』

 

 

 ……個人としては、多少であれ危険ならばその落し物とやらを回収者と協力してさっさと集めたい。

だが、回収者が管理局ならいいものの、犯罪組織である可能性だってもちろん存在する。

かといって無断で集めれれば、管理局には一時的にであれ睨まれるし、犯罪組織相手ならば俺が標的になり、周囲に危険を呼び込むことになる。

 

 

 『個人的には協力路線で行きたいところだけど、相手が管理局なのか犯罪組織なのかもわからないうちからそれをするのは危険だよな?』

『まぁそうだな。ついでに言えば、相手が管理局だとわかっていても少々問題がある。』

『え? そうなのか?』

『そうですね。この世界は一般に魔法が認知されていない管理外世界ですので。その上で、数少ない魔力を持つ人間は非常に高い素質を持ちます。和人は魔力量が少ないうえに独学ではありえないほどに体系だった魔法を行使しています。はっきり言えば魔力量の少ない現地魔術師と考えるよりも、この世界に移住した魔術師と考えた方がしっくりくるレベルです。』

『加えて管理局のデータベースには絶対にかずくんの情報がないからね~。無断で渡航して管理外世界に住み着き、魔法行使を捨てていない、という犯罪者と仕立て上げられちゃう可能性があるんだよー。』

『……それは、まただいぶまずいな。とすると、現地魔術師のテンプレ的な感じで相互不干渉、あまりに影響が出そうな場合は全力で叩きに行くってスタンスがベスト?』

『うんー。しばらく放っておいて、巻き込まれるか巻き込まれそうになったら、「今まで黙ってたけど余所者が何やってんだ、ああ?」って感じに強気で行ったらいいと思うよー。』

『それは流石に管理局だった場合に印象が悪くありませんか?』

『でも精霊魔法って管理局にしてみれば新体系の魔術だしねー。弱腰で行ったら技術吸い取られてポイされちゃうよ? というか吸い取れるようなものでもないから、即テキトーな扱いを受けるようになっちゃうかも。』

『それはやだなー。でも、強気で行っても結局力が無かったら一緒じゃない?』

『そのとーり。だから、そろそろ協力魔術解禁をジン様たちに申請しようと思ってるんだけどどうかな~? エリア、ファー。』

『良いと思いますよ。私もフラウ様に申請しておきますね。』

『俺もいいと思うぜ。エフリート様に申請しとく。……まぁ、申請した瞬間OKもらえそうだけどな。』

『ふふ。というわけで、かずくん。協力魔法許可が下りたらそっちも練習どんどんしていくから頑張るんだよー。』

『了解。みんなもよろしくね。』

『了解です。』

『わかった。』

『もちろんだよ~。』

 

 

 という訳で近いうち協力魔法が使えるようになるようだ。

しかも3属性とも。

――つまり、合成魔法が使用可能になるということだ。

火属性の調整はともかく、水と風の調整はなかなか厳しいものがあるので、そちらが軸の魔法は難易度高いだろうけれど。

うん、楽しみだ。

 

 

 「――|Master, being glad is no problem, but don't forget me.《マスター、喜ぶのは良いですが私のことも忘れないでください。》」

「だ、大丈夫だって。精霊魔法だけで戦えるわけでもないんだし。」

If your words are true, I can have a relief(それが真実なら安心できるのですが。). |Anyway, the time of breakfast is near《まぁそれはともかくとして、朝食の時間が迫っています》. Don't we go the main house(母屋に移動しませんか)?」

「もうそんな時間なのか。はやいなぁ。」

 

 

 そう言って母屋へ移動する。

今日決まった謎の次元介入反応に対する対応は以下の通り。

 

・巻き込まれるか、巻き込まれそうになるまで傍観。相互不干渉。

・こちらから介入する場合は強気で接する。

・その効果を高めるため、精霊協力魔法の使用許可をシルフィード達が申請してくれることに。

 

――この時はまだ、これでいいと思っていた。

 

 

‡‡‡ 新暦65年4月10日

 

 

 方針を決めてから5日経った。

あの日からほぼ毎日のように落し物(?)が発動し、回収者は無事回収しているようだ。

5日の日の夜は道路やら電柱やらが壊れていたみたいだが、それ以降は特に町に被害も出ていない。

それと、このことからシルフィードは回収者が管理局である可能性はかなり低くなったと判断した。

管理局が封時結界もまともに張らず、管理外世界で魔術を行使して現地建造物に被害を出すなどあり得ない、ということらしい。

かといって犯罪者かというと、また違った理由からそれも考えづらいのだ。

 

 

 犯罪者の可能性が高いなら、俺はやっぱり独自で回収したいと言ったのだが、

「和人如きの魔法技術では標的にされたときにあっさり負けるだけだと思います。せめて協力魔法の許可が下りてからにしてください。」

と、アクエリアにバッサリと一刀両断されてしまった。

なので、今はまだ巻き込まれるのを警戒しながら様子見、という状態だ。

 

 

 そして今日は日曜日、家族で商店街に買い物に出ている。

デパートに行かないのは、地元に金を落とすのは金持ちの仕事、という家訓?のためだ。

それ以前に両親共々庶民的なものが好きっていうのもあるわけだが。

 

 

 「よし。それじゃあそろそろ飯に行くか。」

「そうね。……せっかくだから翠屋にしない?たしか和人のクラスメイトの高町さんのお宅がやっていたお店だと思うのだけれど。」

「ほー、ならそうしようか。和人もそれでいいか?」

 

 

 ――高町なのは。

高確率で例の回収者の仲間だ。

最近、授業中に念話を飛ばしているようなので魔法関係者であることは確定している。

3年間学校から念話を飛ばしていた人間は俺以外には存在しない。

そして高町が飛ばし始めたのは6日。

その念話を傍受した情報が正しいなら、落し物(?)の名前はジュエルシード。

回収者はユーノ、ジュエルシードは彼の世界のもので何らかの人為的な事故によってこの世界に落ちてしまった。

高町はそれの回収時に巻き込まれただけである、ということだ。

高町が巻き込まれただけ、というのは5日のあの惨状が勝手がわからなかったが故の被害とすればつじつまは合うので、信憑性は高いだろう。

問題となるのは回収者、ユーノだ。

彼?の立場に関して予想されるのは二通り。

 

 

 一つ目、念話の内容がすべて正しい場合。

ユーノは義務感によって――むろん間違っているが――ジュエルシード集めをしている。

高町に関して管理局の許可があるかは不明、だが回収に関しては管理局の許可くらいは得ているだろう。

間違った義務感の下行動をしてしまうような人格を考慮して、管理局が重い腰を上げる前に先行で回収しに来たと見ればある程度のつじつまはあう。

高町を巻き込んでいるのがやはり謎だが。

 

 

 二つ目、念話の内容に嘘が入っている場合。

ユーノが盗掘者である場合、それを高町に教えている可能性は限りなく低い。

事故でこの世界に落としてしまった証拠品、ジュエルシードを回収するために来たと考える。

高町という現地民を巻き込んだのは……何かの拍子に優秀な魔術師の卵だとわかり、利用しようとしたとか?

多少無理がある気がする。

 

 

 「和人? どうした?」

「え?」

『かずくん話聞いていながら返事忘れてるー。』

「あ、うん。翠屋でいいよー。」

「よし、じゃあいくか。」

『凡ミスしちゃったなぁ。』

『最近ちょっとマルチタスク緩んでない~?ま た訓練再開しようか?』

『……した方が良いかもしれないなぁ。ちょっときな臭いし。』

『あー、でも一段落してからの方が良いかもねー。組織的なサポートあるわけじゃないから、危機管理とか完全に自分にしないといけない訳だしー。』

『ならそうするか。』

 

 

 

 ――カランカラン。

 

 

 「いらっしゃいませー!何名様でございますか?」

「3人です。」

「それではこちらの席にどうぞ~。」

 

 

 と、なぜか店のかなり奥の方に案内される。

……よく見ると、店内の席のかなりが予約席と書かれたプレートが置いてある。

 

 

 「今日は翠屋JFCの試合があったんですよ。それで、祝勝会をするので騒がしくなると思いますけどすみませんね。」

「あら、ということは勝ったんですか?おめでとうございます。」

「ありがとうございます。……それでは、ご注文が決まりましたお呼びください。」

 

 

          ◇          ◇

 

 

 「「「ごちそうさまでした。」」」

「さて、それじゃあそろそろ帰るか。」

「そうねー。あ、でも少し寄りたいところがあるから、そこ寄ってからでもいい?」

「ん? べつにいいぞ。」

 

 

 昼食を摂っている途中でサッカー教室の子達が来て、店内はだいぶ騒がしくなっている。

父さんが会計を済ませているので、母さんと先に店の外に出ておくことにした。

 

 

 「あれ?那須?」

 

 

 店から出たところでかけられた声に振り向くと、高町なのは、月村すずか、アリサ・バニングスの3人組がケーキをつついていた。

高町と月村はともかく、バニングスは成績のことでちょくちょく絡んでくるから多少は話したことがある。

とりあえず片手をあげておく。

 

 

「和人、お友達? なら、少し話して来たら?私とお父さんはちょっとその辺で買い物してくるから。」

「わかったー。またあとでねー。」

「あれ?お父様とお母様行ってしまったようだけどよかったの?」

「うん。せっかくだから何か話しときなさいって。」

「ふーん。で、どうしてここにって、お昼食べに来ただけよね。」

「そういうこと。バニングスの方は……サッカー観戦後ってとこか。運動もしたわけでもないのにケーキなんか食ってると太るぞ?」

「うっさいわね! これから運動するから大丈夫よっ! ……じゃなくて、そんなことよりほら、この子見て。可愛いでしょ~。」

「なのはちゃんのフェレットなんだよ。でも、この子普通の子となんか違う気がするんだけど、那須君はどう思う?」

 

 

 そんな事を月村が聞いてくる。

が、そもそもフェレットなぞ見たことがない俺には判別はつかない。

飼い主の高町を見ると、ワタワタと明らかに挙動不審だ。

 

 

 『……つまり、このフェレットは高町の使い魔的な感じってことかな? 実際はフェレットではなく。』

『そんな感じじゃないかなー。』

『まぁこじらせるのもあれだし、適当に助けておくか。』

「あーすまん。俺フェレットってよくわからないんだ。けど、可愛いから別によくないか?」

「そ、そうだよね! 那須君。ほら、ユーノ君、お手。」

「キュ!」

「かっわい~~!」

 

 

 ……ユーノ君、だと!?

つまり回収者=フェレットもどき?

 

 

 『んー、たぶん変身魔法じゃないかなー? フェレット素体の使い魔って可能性もあるけどねー。』

『でも使い魔だけで回収とかさせるか?』

『うん、だから変身魔法だと思う。』

『というかだ、高町の魔力量やばいな。これだけ近いと、シルフィードの魔力の探知がちょっと難しいよ。』

『その辺は慣れないとだねー。』

「あれ? どうしたのなのはちゃん、那須君?」

「ふぇ、な、なんでもないよ。」

「あー、すまんちょっと考え事してた。」

「キュ~~~……。」

「わわっ大丈夫?ユーノ君。」

 

 

 また考え事に意識が向き過ぎていたみたいだ。

マルチタスクをやろうと思えばできるけど、そう思ってやらないでいると錆びつく、というのが世の摂理だろう。

――うん、しっかりやろう。

 

 

 「はぁ。小動物を弄繰り回すのは淑女としてどうよ、バニングス?」

「うっ。」

「それに、動物ってのはそういったストレスで寿命がどんどん短くなるんだぞ。」

「うぐっ。……ごめんなさい。」

「謝るなら俺にじゃなくてユーノ君にな。そういや今日は習い事何かないのか?」

「今日はパパとお買い物だからないわよ。っていうか前から聞きたかったんだけどあんたってどこの塾いってるの?」

 

 

 あー、ついにこの質問をされてしまったか。

バニングスは割とプライド高いからなー。

ストレートに言ってないけど?とか言ったらダメージ食らいそうだ。

……優秀な家庭教師がいることにしておこう。

人間に限らないのであれば嘘にはならないしな。

 

 

 「あー、言ってなかったっけか?結構優秀な家庭教師に教えてもらってるんだよ。だから塾は行ってない。」

「そんな優秀なの?」

「うん。わからないところ的確に教えてくれるし、宿題も合理的だしなー。社会とか国語とかは教えてもらってないけど、あんなの授業きいてりゃテスト100点キープできるし。」

「でもいつも学校のテストって100点が当たり前だから他にないとつまらなくない?」

「まぁそうだよなー。けど、その家庭教師がテストも作ってくれるから、特に問題ないかなー。」

「へー。じゃぁ、今度其のテスト見せてくれる?」

「お、いいぞ。けど、問題見て凹むなよ?」

「そんなこと言ってあんたこそあっさり解かれて落ち込まないように覚悟しときなさいよ? ……って、すずかもなのはもどうしたの?」

「えっと……すずかちゃんの100点当たり前発言は慣れてきたけど、それに動じない人がいないなんて、ねぇ?」

「うん……なんか住む世界が違う気がするの。」

「そんな事もないと思うがな。多少努力してればだが。」

「そこが難しいの……。」

 

 

 

 「さて、それじゃあわたしたちはそろそろ帰るね。」

「なら俺も父さんたち探すかー。」

「お。帰るのかい?」

 

 

 高町なのは父、士郎さんの登場だ。

御神流剣士、らしいのだが……。

その情報と目の前のエプロン姿がどうにも結びつかず、別人?ってなる。

 

 

 「あ、今日はお招きいただきありがとうございました!」

「サッカー、とってもかっこよかったです!」

「試合は見に行っていませんが、勝ち星おめでとうございます。」

「ああ、ありがとう。よければ車で送っていくけどどうする?」

「迎えが来るので大丈夫です。」

「右に同じ! でーす!」

「親が商店街ぶらぶらしてるらしいので大丈夫です。ありがとうございます。」

「そうか。なのははどうする?」

「うーん……帰ってゆっくりするの。」

「なら少し待ってて。父さんも一風呂浴びに一旦から一緒に帰ろう。」

「はーい。」

「それじゃあばいばい、なのは、那須。」

「おう、また明日ー。」

「「ばいばーい。」」

 

 

 さて、父さんたちを探しに行くか。

こんな日に限ってケータイ持ってきてないし。

あてずっぽうでもいいけど、精霊魔法の練習も兼ねて精霊に聞くかな。

 

 

 ――『風の下位精霊(シルフ)達、力を貸して。父さんを探しているんだ。』

そうやってシルフのいそうな場所に向かって魔力とともに思念を飛ばす。

下位精霊は上位精霊と違ってはっきりとした光の球を形成はせず、もっともやもやしていて目視で探すのは難しい。

だからどうしても大雑把な感じになる。

……ちなみに、正確には非常に小さな光の球で、いくつもあつまって1ユニットの下位精霊として機能するらしい。

 

 

 ――『さっきそこのおみせはいったー。』

……翠屋のイメージが返信される。

とりあえずコンタクトは成功だが、明らかに間違った、というか時間のずれた情報だ。

 

 

 ――『そのあとどこ行ったか分かる?』

――『おみせからでてきて、あっちいったー』

――『うんうん、それで?』

――『こっちー。』

 

 

 ご覧の通り若干頭が緩い感じなのも下位精霊の特徴だ。

だがまぁ頼むのが大雑把な仕事である限りは問題は発生しない。

この調子で進めばもうすぐ合流できるだろう。

 

 

          ◇

 

 

 ――30分後。

俺はまだ父さんたちと合流できないでいた。

 

 

 「あーくそ、みすったなぁ。」

『あはは、精霊の時間感覚甘く見てたねー。』

『時間間隔が違うのはわかってたけどさ。さっきっていったいいつなんだよ。なんで高町宅に着くわけ?』

『ほら、昔かずくんのお父さん御神流見学に行ったことあったでしょー。あれだよたぶん~。』

『何年前だっての……はぁ。……仕方ない、シルフィードよろしく。』

『はーい。んー……うん、翠屋前だね。』

『つまり完全に無駄足ってことかよー。くそぅ。』

『はいはい、さっさと行って安心させてあげないとね。』

『りょーかい。』

 

 

 「おーい和人ー!」

「あ、父さん!」

「和人! 勝手にどこか行っちゃダメでしょう!」

「まぁまぁ綾佳、和人は俺たちがなかなか戻らないから探しに行ったんだろうし。」

「いつもならそれでいいかもしれないけど、今日は和人携帯忘れていたでしょ! 心配したんだからね和人?」

「う。ごめんなさい……。」

 

 

 母さんはやっぱりかなり心配していたみたいだ。

絶対大丈夫、というか危害を加えてくる奴いたら返り討ちにするくらいはできると思うんだけど、どうも母さんはその辺がわかっていないみたいだ。

 

 

 「よし、それじゃあ合流できたことだし、そろそろ帰ろうか。」

「そうね。大通りに出て、タクシーを拾いましょう。」

「はーい。」

『うーん……。』

『どうしたの? シルフィード。』

『んとねー、さっきかずくんが女の子たちと話してた時変なマナを感知した気がしたんだよねー。それで、それからずっとトレースしてるんだけど……人に合わせて移動しててー、でもマナの受けてる影響は人からのものじゃないしー、なんだろうって感じかなー。もしかしたら、「ジュエルシード」の可能性もあるから気を付けてねー。』

『……まじか。気づかなかった……。で、今どこなの?その変なマナの元凶は。』

『大通り。たぶん通りかかるよー。』

『了解。覚悟しとくよ。ありがとうね。』

『いえいえー。上手くやるんだぞ~。』

 

 

 商店街を抜けて大通りに出ると、運のいいことにすぐにタクシーを捕まえることが出来た。

目的地はまさかの「那須邸まで」、だ。

だだっ広い敷地に日本家屋、弓道場に防音のための竹林。

当然のごとくこの辺では有名だ。

うち以外で同じことが出来そうなのは月村邸とバニングス邸くらいか。

 

 

 「そういえば、お母さんは結局何を買いに行ってたのー?」

「ふふ。和人また大きくなってきたでしょ? だから、弓道着を見て見たかったのだけど……流石になかったわねぇ。」

「まぁそういったものは専門のところ行かないと早々見つからないものだしな。むしろ今から和人の弓道着新調しに行くか。」

「そうれもいいわね。和人はどう?」

「いいよー。」

「それじゃあ運転手さん、行き先変更で、中田武具店まで……」

 

 

 ――ピカッ、ズズゥン……メキメキ、メキ

唐突に、正面から青い強い光が轟音と共に飛んできた。

それに木が折れるような音が続く。

 

 

 「ぐっ!」

「な、なんだ!?」

『くぅ……! 目が……いったい何が起きて『かずくん! 来るよ!』っ!?』

 

 

 シルフィードから前方の映像情報が叩きつけられてくる。

ここから一つ向こうの横断歩道でみるみる大きくなっていく木、それは車を弾き飛ばし、道路を破壊し、こちらに向かって進んできていて――。

 

 

 「くっ! Irene、[Protection]!」

「[Protection] 」

「う、うわぁぁぁぁ!!」

 

 

 ガンッ、ガリ、メキッ!

木の根っこが車に直撃するが、プロテクションが何とか間に合ったおかげで車には影響無い。

 

 

 「Master, enforce [Time Separater](マスター、封時結界を発動しましょう).」

「おっけー、『シルフィード、封時結界頼む。』父さん、処理してくるから心配しないでね。」

『りょうかーい。……かなり範囲が広いみたい。多めに魔力ちょうだいー。』』

「か、和人!?」

『OK』

 

 

 ……っていうか父さん一応動揺してたんだ。

母さんもだけど悲鳴とか上げないからすごいなとか思ってたんだけど。

――そして、世界がモノクロになる。

 

 

 『和人! 近くで大きな魔力の発現があったみたいですが、大丈夫ですか?』

『大丈夫。とりあえずファーブニルといっしょにこっち来てくれるかな?』

『了解です。』

『さて、と。とりあえず状況整理といこうか。……あの木、たぶんジュエルシードの発動体だよな?』

『たぶんそうだねー。中心部と思しき所に黄色い結界、なかには子供が二人いるねー。』

『その二人は大丈夫なのか?』

『大丈夫みたいだよー。』

『よかった。なら、どうにかしてジュエルシードを取り出して、封印するだけだな。……って、やっぱゴリ押し?』

『うんー。ゴリ押しゴリ押し♪ 封印は実物見てから魔法陣編まないとだし、とりあえずできることは木と黄色の結界の分離だねー。』

『了解。』

 

 

 相談している間にも、暴走体の木はどんどん大きくなる。

封時結界を早い段階で張れたからよかったものの、張り損ねていたらと思うとぞっとしない。

俺も魔法にかかわっていなければ先ほどので即死だったと容易に予想が出来るし。

やはり、ジュエルシードの回収は自分から動いてさっさと事を終わらせるべきなのだろうか。

 

 

 『お待たせしました。』

『待たせたな。』

『二人ともありがとう。それじゃ、さっそくはじめようか。まずは物理ダメージ特化で結界を大雑把にくりぬく。で、選択的に木だけ燃やして完全に結界を取り出して、魔力ダメージ特化で破壊、そのまま封印って流れ出いいかな?』

『そんなところだねー。』

 

 

 物理ダメージ特化、魔法ダメージ特化とわざわざ言っているのは、精霊魔法は何の気なしに使うと大抵両方にダメージが入るからだ。

下位精霊ならば確実にと言っていいだろう。

シルフィード達は上位精霊なので、非殺傷設定と意識さえしていれば魔法ダメージ特化になるが、今回のように途中で切り替える場合は言っておいた方が無難、と教えられている。

 

 

 『シルフィード、ソニックバレットで木の幹横から抉るっておいて! ファーブニルは木の反撃があったら焼き払って! アクエリアは……プロテクション?』

『なぜ疑問形なのですか……。とりあえず私は防御魔法担当ですね?』

『うん。よし、そんな感じで、みんなよろしく!』

『了解しました。』

『了解。来たらテキトーに焼くわ。』

『りょうかーい。[Sonic Barret]……ふぁいやーーー!』

 

 

 空中に7つの小さな(くれない)色の魔法陣が浮かび、次々に発射、着弾していく。

――パンパンパンパンパンパンパンパン……。

……着弾のたびに風船が割れるような音がするせいで結構うるさい。

 

 

 『シルフィード、着弾点ずらしてる?』

『ずらしてるよー。けど、これ、再生力すごくてなっかなか削れないーー。』

『……なら、ファーブニルもフレイムランサーで攻撃に回って。反撃してくる気もないみたいだし、俺も攻撃に回るよ。』

『了解だ。』

「Irene, set up!」

「......Stand by ready(起動準備完了). Set up(起動します).」

 

 

光とともに、体が白のバリアジャケットに包まれる。

Ireneは白い弓となり、左手に収まる。

 

 

 「よし、ファーブニル、フレイムランサー! Irene、とりあえず非殺傷設定解除して!」

『あいよ。[Flame Lancer]!』

All right(了解しました). [Crimson Arrow]」

 

 

 非殺傷設定が解除されると同時に弓を引き、クリムゾンアロウを発動し、放つ。

この程度の距離ならクイックでも確実に当てる自信がある。

――暴走体に次々に着弾し、少しずつ削っているが、やはり削るそばから再生していく。

 

 

 「くっそ。再生力自重しやがれ……! ……このまま攻撃を続ける! シルフィード、オド変換始めていいよね?」

『ゆっくりならいいよー。』

「よし、なら早すぎたら言ってくれ!」

 

 

 ――――その時。

ズドォォン、という物々しい音とともに、結界に桜色の光が直撃した。

そして、結界をぶち抜き、暴走体全体が光に包まれる。

後に残っていたのは宙に浮かぶ青い宝石。

それもどこかに飛んで行ってしまった……。

 

 

 「……いまの、何?」

『砲撃魔法ですね。しかも封印機能付きの。術者はかなりいい腕をしていると思います。』

『そうだねー。ついでに魔力の感じから察するに高町さんだと思うよー。』

「……まじか。」

『あんま落ち込むなよ、和人。こんだけ才能の差があれば逆に吹っ切れるってもんだろ。』

「……まぁ。とにかく! 今回のジュエルシードの封印は出来たんだし、めでたし、ってことで結界解除しない?」

『まぁ物理的な被害出ちゃったけどねー。……介入、するんでしょ? お父さんとお母さんにちゃんと話しておきなよー?』

「わかってるさ。それと、ジュエルシードはやっぱり危険だ。そのことも話して、説得した上で介入をしてさっさと終わらせる。」

『とりあえずは今までどこに行っていたかの説明からですね。』

「そうか、そうなるのか。……シルフィード、封時結界の解除言い訳思いつくまでちょっと待ってくれない?』

『あはは、りょうかーい。』

 

 

 

To be continued...




第8話、いかがでしたか?

ついに、原作に追いつきました。
無印編、スタートです。
が、もう1章だけ序章は続きます(予定)。


捏造英語
・Time Separater = 封時結界
正しいミッド語知ってる方いましたら教えていただけないでしょうか?
ちなみにこの名前は「時間を現実世界と分離する」という効果からの命名です。


2013/2/10 誤字訂正及び微改稿
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