異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます 作:カラリ
レベル118の守護獣と戦うなら、こっちもそれくらい強い何かが欲しい。
そう思って記録を読んでいたら、広間そのものに頼れそうだと分かった。左右の壁には、侵入者へ光の槍を撃つ装置があるという。守護獣が寝ている部屋は、獣以外にもずいぶん厳重に守られていた。
「この装置で、あの獣を狙えないかな」
リネアは図を見直し、守護獣は施設の味方として登録されているので撃てないと教えてくれた。首の輪が、その目印になっているそうだ。
なら登録を止めればどうなるか。
アイへ聞くと、登録を外せば施設の武器でも守護獣を狙えるという。味方へ送る防御の魔法も止まり、体を包む光の鎧までなくなる。しかも点検室から操作できるので、あの太い首へ触りに行かなくてもいい。
俺は窓へ顔を向けた。
あの光の鎧を、自分の槍で破る必要はない。鎧を止め、大きな武器を借りればいいのだ。
「使う道具を先に集めましょう」
リネアもうなずいた。作業室の場所も部品の置き場も図に載っている。まだ安全に通れるところだけでも、十分に調べられそうだった。
◇
最初の作業室には先客がいた。
温かい水の通る管へ、大きな蜥蜴が張り付いている。背中は石のような鱗で覆われ、尾だけで俺の背丈ほどあった。ザラに腕を引かれ、ひとまず入口の外へ戻る。
「石鎧蜥蜴だ。これも強いよ」
名前を覚えてから記録を探すと、点検日誌にも注意書きがあった。魔力のある苔や小さな魔石を食べ、温かい管へ集まる。作業前には管を冷やすこと。
寒くなると動きが鈍くなり、下りてくるらしい。
そこまで書いてあるなら、まず従ってみよう。
リネアが弁を確かめ、温かい水を止めて冷たい方へ切り替えた。俺たちは外で待ち、持ってきた昼食を食べた。中を確かめに行くと、蜥蜴は床へ下りていた。
先ほどは素早かった尾も、今はゆっくり揺れている。
「私が前で受ける。ルカは右へ」
ザラが盾と槍を持って入った。追って俺も右へ回る。蜥蜴は低い姿勢で近づき、頭を盾へぶつけたところで止まった。
横腹が見えた。
俺は厚い背中を避け、教わった構えから槍を突き出した。穂先が入る。尾が動くのを見て柄を引き、今度は落ち着いて下がれた。
追ってくる頭をザラが押し返したので、もう一度突く。
相手が動かなくなったところで、俺も槍を下ろした。
〈石鎧蜥蜴 レベル66 討伐〉
〈レベル41〉
4つも上がっていた。
教わったことが実際にできた、その手応えがまだ腕にある。さらに体まで強くなったのだから、俺はつい槍を持ち直して構えを確かめてしまった。
作業室は四つあり、ほかの部屋にも蜥蜴が一匹ずつ入り込んでいた。
同じように管を冷やし、一部屋ずつ片づけた。手順を覚えた上に、そのたび体も強くなる。最後の部屋で槍を引いたときには、最初よりずいぶん楽に動けていた。
レベルは49になっていた。
リネアが50、ザラが51。槍を持ち歩く足取りは入る前より軽い。
「まだ奥の相手と戦ってないのに、かなり上がりましたね」
「私も驚いてる。これなら誘って走る方も楽になりそう」
ザラは槍をつかむ手を何度か開いていた。リネアは図面で四つの部屋に印を付け、調べ終わった棚から使える部品を集め始めた。
◇
作業室の棚には点検用の道具が残っていた。
リネアが取り出した丸い水晶は、台座の片側が割れていた。図面と見比べ、割れたところを指で確かめる。
「使えないですか?」
「水晶は使える。割れた台座だけ、灯りの部品と替えてみよう。同じ留め方だから」
棚の奥から別の金具を選び、割れた部分と交換する。アイが読んだ図面には元の部品しか載っていなかったが、リネアは寸法を測り、違う道具からぴったり合うものを探し出した。
丸い水晶と薄い板を線でつなぐと、板の上に俺の顔が映った。水晶を回せば壁が映り、こちらへ戻せばまた俺になる。
水晶が見ている景色を、離れた板へ映す道具だという。
前世にも似たものがあったので、使い道はすぐに思いついた。曲がり角の先へ置けば、いきなり顔を出さずに向こうを見られる。
「今も似た道具はあるけど、これは小さくていいね。持って歩ける」
リネアと壊れていないものを選び、俺は映った自分へ手を振ってみた。ちゃんと同じ動きをする。アイにも見てもらってから袋へ入れた。
その下の箱には、入口の案内像に使う予備の部品も残っていた。姿を映す薄い板と、輪郭を調整するための小さな水晶。リネアが点検して、使えるものを音声板と一緒に包んだ。
道具の操作を覚えて繰り返す、白い記録石も選んだ。守護獣と戦うとき、俺の代わりに魔法を動かしてもらいたい。
守護獣へ光の槍を当てるには、広間の真ん中へ来てもらわなくてはならない。発射口はその位置へ固定されていて、寝床まで向きを変えることはできなかった。
広間の床には、獣の脚を縛る魔法もある。だが、足止め用の操作板に触れ続けなくてはならず、光の槍を撃つ方の板には手が届かない。記録石へ操作を覚えさせ、その間だけ足止めを任せたい。
リネアが試験用の操作板へ手を置き、床へ小さな光の輪を出した。その操作を記録石に覚えさせる。魔法を動かす魔力は、遺跡の設備から出る。俺たちは動かす合図を送ればいい。
記録石へ触れて起動し、手を離す。
輪は光ったままだった。
「これなら、動かしてから隣へ行けますね」
「うん。覚えた手順しか動かせないから、今は続ける時間を合わせよう」
アイが記録から必要な長さをまとめてくれた。それに合わせて何度か試すと、輪は決めた間だけ光り、ちゃんと消えるようになった。
俺は記録石を持ち上げた。これなら手を離しても、床の足止めを続けてもらえる。
リネアが登録を止めている間に、ザラが獣を真ん中へ誘う。俺はこの石で足を止めてから、発射板へ移る。
机へ図面を広げ、三人が立つ位置へ余った金具を置いた。
◇
最後は、声を出す音声板だ。アイの声を、リネアとザラにも直接聞いてもらいたい。
リネアが板の裏へ線をつなぎ、試しに短い言葉を吹き込む。触れると同じ声が返ってきた。記録を繰り返す使い方のほかに、つないだ先から届いた音を出すこともできるという。
その接続部分の図をアイへ見せると、スキルの一覧に音声板へつなぐための欄が出た。
――ここへ、声を出せる?
『はい。つないでください』
欄を選んで少し魔力を流す。板が震えた。続いて、頭の中で聞き慣れた声が机の上から出た。
『聞こえますか』
リネアが顔を上げた。入口で見張っていたザラまで振り向いた。
「アイ?」
『はい。リネアさんの声も聞こえています』
「そっか。こういう声なんだね」
俺にはいつもと同じ声なのに、二人は初めて聞く。それが妙に不思議だった。リネアは板へ顔を近づけてから、自分で笑って少し離れた。
「近づかなくてもいいのかな」
『ルカさんに聞こえる距離なら大丈夫です。今は、そちらの音を共有してもらっています』
「じゃあ、もう一度。錠前を開けるのを手伝ってくれて、ありがとう」
『こちらこそ、実物を見せていただけて助かりました』
今度は俺が言い直す前に、リネアがうなずいた。
「この板、持っていこう。次の作戦も直接聞けるね」
俺は空いた布を差し出した。ザラは音声板を見ながら、守護獣をどこまで誘えばいいか質問し始めた。アイが位置を答え、ザラが自分の逃げ道を確かめる。
口を挟まなくても話が進んでいた。俺はその間に、白い記録石の接続をもう一度確かめた。