異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます 作:カラリ
俺のレベルが49で、守護獣は118。
最初の岩甲虫なら、相手の方が11ほど高かった。そう考えると今度の差はずいぶんある。だが、ここまで来て相手の数字だけ見ていても仕方がない。
あの鎧を外す場所も、撃つ武器も、もう分かっている。
俺は広間の図を机へ置いた。
「登録を止めて、真ん中へ連れてきて、床で止めて撃つ。それで行きましょう」
リネアは、守護獣の味方登録を外す操作台の前へ立った。これを続けている間は、獣の光の鎧が消え、施設の武器で狙える。手を離すと元へ戻るので、撃ち終わるまで続けると言った。
ザラは逃げ込む通路をもう一度確かめ、広間へ出る扉の横で待つ。
俺は足止め用の板へ、操作を繰り返す記録石をつないだ。
起動して石へ任せたら、隣の発射板へ移る。それだけなら俺にもできる。実際に練習してできたことを思い出しながら、アイへ最後の確認を頼んだ。
『接続は合っています』
返事を聞いてから窓へ目を向けた。守護獣はまだ寝そべっている。壁から首の輪へ光が入り、体を厚く包んでいた。
自分の槍であれを破りに行く予定はない。
「始めましょう」
俺が言うと、リネアが操作台へ手を置いた。
◇
壁の光が途切れた。
首の輪が暗くなり、獣を包んでいた鎧が剥がれるように消えていく。守護獣が頭を上げたところで、リネアから外れたと声が掛かった。
ザラが広間へ走り出た。
中央の輪を越えたところで、槍の柄を床へ打ちつける。守護獣が立ち上がり、太い脚で地面を蹴った。
俺は足止め用の操作板へ手を置いたが、まだ魔力を流さなかった。
獣の体が、床の輪の内側へ入り切るまで待つ。外で止まったら、光の槍が当たらない。
ザラが走って通路へ消えた。守護獣の前脚が青い線を越え、長い胴が続く。後脚まで入ったのを見てから、俺は魔力を流した。
床から光の輪が立ち上がり、守護獣の脚を縛った。
大きな体が前へ傾いて止まる。
俺は手を離した。記録石は光っている。獣の脚も、まだ止まったままだった。
足止めを記録石へ任せ、隣の発射用の板へ手を押し当てる。
「撃ちます!」
左右の壁から太い光の槍が飛び、足を縛られた守護獣へ突き刺さった。
まぶしさに顔をそむけたが、手は置いたままにした。重いものが倒れる音がする。すぐ後にザラから止めるよう声が掛かり、俺は指を引いた。
光が消えた。
守護獣は中央へ倒れていた。爪が床をかき、やがてその動きも止まった。俺は窓から顔を離さずに待った。
胸の奥が熱くなった。
〈守護獣 レベル118 討伐〉
「来た……」
今までより熱い。俺は台から離れ、壁へ背をつけて座り込んだ。肩から背中へ、脚へと力が広がっていく。開いた手を見つめている間にも数字は変わり、50を越え、60も通り過ぎた。
レベル73で止まった。
俺は何度か息をしてから、その数字を口に出した。
「73になった」
「私も。73って出てる」
リネアも操作台から手を離していた。広間を確かめたザラが戻ってきたので聞くと、彼女も同じだという。
三人で数字を見比べた。
誰からともなく笑いが出た。全部の準備を三人でやって、本当にここまで来てしまった。リネアも横へ座り、ザラは槍を壁へ立て掛けた。
俺はしばらく、体の中に入ってきたものが落ち着くのを待った。
◇
一覧を開くと、並列モデルの文字が明るかった。
すぐに切り替える。もう驚かないつもりだったのに、返事を待つ間は最初と同じようにそわそわした。
「アイ、今度は何ができる?」
『つないだ魔法の道具を、いくつも同時に動かせます。状況を見ながら、それぞれ動かし方を変えることもできます』
声を出す音声板から、皆にも聞こえる返事が出た。リネアが早くも試験用の板を手に取っている。
俺は記録石を持ち上げた。こちらは覚えた操作しかできないが、今度のアイは、いくつもの道具を使いながら次の動きまで考えられる。
手元の灯りと試験用の足止め板をつなぎ、出てきた接続欄からアイへ任せてみた。
灯りが明るくなった。同時に床へ小さな輪も出る。
俺はどちらにも触っていなかった。
「両方、一緒に動かせるのか」
リネアとザラが寄ってきた。説明する間にも、アイは灯りを弱めて輪を広げてみせる。片方を変えても、もう片方は止まらなかった。
「さっき欲しかったなあ、それ」
リネアの言葉に、俺も思わず大きくうなずいた。
◇
守護獣のいた広間を抜け、奥の記録室へ入った。
棚を埋める石板を見たリネアが、すぐに依頼書を取り出した。印を照らし合わせて目当ての板を見つけると、台へ一枚ずつ並べて読み始める。
俺も横からのぞいた。
測定器の使い方や結果を記録する方法が載っている。その途中に別の建物を描いた図があり、気になって指を置いた。
「ここも同じ施設ですか?」
「観測棟だって。詳しい測定は、向こうでやってたんだね」
壁の図と合わせると、この記録室の上から渡り廊下が続いていた。そちらも気になったが、リネアは別の板を見つけると、今度は両手でそっと持ち上げた。
「これだ。あの灯りの作り方」
見覚えのある細い線が刻まれていた。店で見せてもらった、半分の魔力で動く灯りだ。板には仕組みだけでなく、部品の削り方や、失敗したときに直す場所まで残っている。
リネアは腰の袋から割れた錠前を出し、その横へ置いた。
「入口まで戻されてばかりだったのに、ここまで来られた」
「持って帰れますね」
「うん。これは私が持つ」
誰も取り上げるとは言っていないが、リネアはもう自分の袋を空けていた。ザラがほかの道具を引き受ける。俺は板を包む布の端を押さえた。
「直すときは、いつも元の人がどう作ったのか考えてたんだ。でも、店で作った、火と風の魔力を分ける板は違うでしょ。使う石に合わせて最初から形を決めた」
「はい」
「ああいうのを、もっと作ってみたい。拾ったものにない形でも」
リネアは袋の上から板の角を確かめた。その手つきにつられて、俺まで帰ってからの作業が楽しみになった。
◇
記録を広げ直したところで、アイから頼まれた。
『右側の板も見せていただけますか』
記録板を向けると、リネアが裏側の小さな文字を示す。今度はそちらへ持ち替える。アイは灯りや足止めの魔法を同時に動かせるようになったのに、読むための記録板は俺が一枚ずつ差し出していた。
「離れた場所を見られる水晶を、もう一つここへ置こうか」
『はい。それと、自分で板を持って向きを変えられると助かります』
「手も欲しい?」
冗談半分で言ったつもりだった。だが音声板からは、すぐには返事がなかった。
『欲しいです。リネアさんと話すときにも、そちらを向けます』
リネアが自分の顔を指した。水晶が映していないところを見るには、誰かに向きを変えてもらわなければならない。机の上に声の出る場所はできたが、自分で人の方を向くことはできなかった。
袋には、入口の幻像に使われていた部品の予備がある。物を支えられる足場の本も、水晶もある。
「入口の案内像みたいに、人の姿を映すんですか?」
「うん。そこに足場の魔法を重ねれば、本の重さも支えられると思う。ただ、手や足に合わせて魔法を動かし続けるのは……」
言いかけたリネアが、明るい灯りと床の輪を見た。俺も同じものを見ていた。
『今なら試せます。まず、本を受け取れるところから』
観測棟へ向かうのは明日にして、その晩は作業室へ泊まることになった。持ってきた食料を分けた後で、俺たちは寝床の横へ道具を並べた。
リネアが本を一冊、机の真ん中へ置いた。まずはこの本を持てるよう、光の手を映してみることにした。