異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます 作:カラリ
入るときに開けられなかった、大きな扉の内側へ戻った。今日はこれを開けて、回収品を台車で運び出せるようにする。
抜いてあった棒をリネアが元へ戻すと、扉へ魔力が送られ始めた。俺は操作板をスキルへつなぎ、アイに任せる。四か所の印が順に光り、一つも消えずに全部そろった。
石の扉が横へ動きだした。
「これを開けるだけで、半日くらいかけるつもりだったんだけど」
リネアは音を立てる扉と、隣にいるアイを見比べた。アイは両手に本を持ったままで、どの操作板にも触れていない。
『接続できれば、ここからでも動かせます』
「そうなんだよね。つい手を見ちゃう」
俺も同じだった。姿ができたからといって、道具の操作まで全部その手でするわけではない。
開いたところをザラが通り、広さを確かめた。
「これなら台車が入る。回収の人も楽になるね」
俺は背負った荷物を持ち直した。入口で大きすぎると思った扉が、今は大きくて助かる扉になっていた。
◇
もっと詳しい測定の記録があるという、観測棟へ向かった。だが、そこへ続く上階の渡り廊下は途中からなくなっていた。切れた石の先は谷で、下の方に崩れた柱が見える。その向こうには、屋根の残った観測棟があった。持ってきた縄では届かないとリネアが確かめ、俺たちはいったん部屋へ戻った。
谷を歩いて渡るために、空中へ足場を出す魔法を使いたい。専門書庫で、その本を写してきてあった。
アイが本を持つのにも使った魔法だが、今度は人と荷物を支える必要がある。床があるところで、俺たちの重さに耐えられるか先に試しておく。
リネアが足場を出す器具をつなぎ、俺が動力の魔石をはめる。アイに操作を頼むと、膝ほどの高さへ、上に乗れる光の板が出た。
槍の柄で押してから両足を載せる。体重をかけても沈まなかった。歩きだすと先へ足場が現れ、通り過ぎた分だけ後ろで消えていく。
戻る方にも段を作ってもらい、いったん床へ下りた。
「次は荷物も持って乗ろう。渡る途中で休めるかも見たい」
ザラに続いて三人で上がり、途中で腰を下ろしてみた。袋まで載せても、足場は下がらなかった。リネアは、魔力の消費量を示すメーターも確かめてうなずく。
俺たちが立って歩きだすと、横の床にいたアイも付いてきた。
◇
離れた場所の景色を映す水晶を、崩れた廊下の端へ一つ固定した。
アイの胸元の水晶は、体が向いている方しか映さない。廊下の端にも一つ残しておけば、アイがよそを見ていても、俺たちの歩く足場全体を確かめられる。映る範囲を確かめてから、俺は腰の器具へ大きな魔石をはめた。
リネアが残量を測り、帰りの分まで足りると確かめたところで、谷の上へ最初の足場が出た。
左へ手すりのような壁も立つ。右側にも薄い光が続き、踏み外さない道になった。
部屋で試したものと同じだ。
そう思って片足を出したが、谷の底へ目が行くと、次の足は少し遅れた。
『急がなくて大丈夫です』
隣から声がした。アイがこちらを見ている。足場も壁も、その間ずっと同じ場所にあった。
俺は前へ向き直り、もう一歩進んだ。
風が上着を揺らした。足の下は揺れない。背後からザラとリネアも続き、四人で谷の上へ出た。
建物が少しずつ近づいてくる。
「これなら、道が切れてても渡れるんだな」
「重さと距離の分だけ、魔石は要るけどね」
リネアが腰の器具を見て言った。それなら用意すればいい。鉱石の欠片を分けて売った金が、今は俺の足の下に道を作っていた。
俺は入口を見て進んでいたが、アイは途中で上を向いた。
『外壁にも観測結果が刻まれています』
「どこ?」
『入口の左上です。柱の陰に続きがあります』
顔を上げて、ようやく文字に気づいた。アイは俺がそれを見る前から、別のところを読んでいたのだ。
「少し左へ寄れば見える?」
『はい。足場を広げます』
立ち止まれる場所ができ、アイが端へ歩いた。壁の文字を確かめ、それから足元の谷へ視線を落とす。
『下の川まで、ずいぶん距離がありますね』
「怖くなった?」
『今は、離れている感じを確かめています。絵を見るときとは違います』
俺も手すり越しにのぞいた。旅絵集の橋から見下ろしたら、こんな景色なのかもしれない。
少し見てから、顔を戻した。俺はまだ、長く下を見るのは遠慮しておきたかった。
◇
観測棟の入口へ着くと、ザラが先に床を確かめた。俺たちが全員渡り終えたところで、最後の足場が消える。
さっきまで歩いてきたところは、ただの谷へ戻っていた。
アイも振り向いている。腰の横には、自分で持ってきた本があった。
「アイも、あそこを歩いてきたんだな」
『はい。帰りは、反対側の景色も見たいです』
俺は扉へ灯りを向けた。まずは、この建物の中である。
部屋には大きな輪を重ねた測定器が並んでいた。壁を埋める記録板を見たリネアが、すぐに写しを取り出す。ザラはほかの入口を確かめ、俺は手前の説明を読み始めた。
アイは隣の板を見ていた。分からない字があると、持ってきた本を自分で開いて比べている。その間も灯りは消えず、入口を映す水晶も動き続けていた。
俺の見ていた記録板には、倒れた魔物から人へ光が流れる絵があった。ただし人へ届くのは一部だけで、残りの光は周りへ散っている。
「これ、倒した後にもらってる力の話?」
アイが隣へ来た。俺の指している場所を見てから、下の文章へ目を動かす。
『はい。レベルを上げる力です。人へ届かず、周りへ散る分を測っています』
記録では、そうして失われることを「散逸」と呼んでいた。
俺は絵をもう一度見た。レベルが上がるとき、自分へ入ってきた分しか考えたことがなかった。
もしかして、まだ拾えていないものがあるのか。
「測る道具も残ってるかな」
「これじゃない?」
リネアが棚から小さな器具を下ろした。図の印と一致する。倒した魔物から出る成長の力を、その場で測るための道具だという。
動力の魔石を入れると、表示の針が動いた。だが、これで正しい値を測れるかはまだ分からない。リネアはつながっている線を調べ、交換が必要な部品を書き留めた。
『まず、この記録と比べて測定できるようにしましょう。回収する仕組みは、その後です』
「部材は街で買おう。ここにある線は、かなり傷んでる」
俺はうなずき、傷んだ線を図面の脇へ並べた。
一覧を開いた。
〈世界モデル レベル100で解禁〉
俺は一覧を閉じ、リネアが書いている材料の紙を押さえた。アイが隣の記録を読み上げ、必要なものが一つ増える。
次は、上がり方そのものを調べてみよう。