異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます 作:カラリ
次のモデルは、レベル180で開く。
〈自己改良モデル〉
自分でもっとよいモデルを設計できる、という説明だった。
俺は一覧を閉じ、図書館の机へ地図を広げた。今は126。ここから54も上げるなら、かなり強い相手を探したい。
ただ、図鑑の数字が大きい順に狙えばいいわけではなかった。
強い上に飛び回る相手。どこへ逃げるか分からない相手。倒せそうでも、そこへ道具を運ぶだけで何日もかかる相手。
候補へ丸を付けていくと、討伐より運搬の相談が増えてきた。
「もっと、同じ場所にいてくれる相手がいいな」
『鉱床に留まる魔物なら、準備する時間を取れます』
アイが前へ出したのは、閉鎖された鉱山の記録だった。
大岩喰い。大きな鉱石を食べ、その成分で分厚い殻を作る魔物だ。餌の多い鉱山の奥へ入り込み、長く棲みつくという。
俺は地図の端にある赤い印を見た。
まだレベル18だった頃、200以上と書かれていて、今の俺が行くところではないと思った場所だった。
今日は、その場所へ行く道を探している。
「一匹目が248。次が239で、こっちは232」
リネアが調査記録を並べた。どの鉱山も採掘を諦めて久しいが、入口付近の設備には点検の記録が残っていた。
鉱石を運ぶ床。その下にある、大きな砕鉱機。
俺は太い歯車の絵を見た。
「石を食べるなら、石で呼べますよね」
『はい。好む魔力を餌にできます』
「だったら、ここへ来てもらえないかな」
床の下には深い穴がある。その底で、鉱石を砕くための歯が回る。
硬い殻を、自分の槍で叩き割る必要はなかった。
◇
三つの鉱山を回る計画が、机の上へできた。
床を直す。砕鉱機を動かす。餌で獣を床へ呼ぶ。乗ったところで床を開き、下へ落とす。
その前に、機械が殻を砕けるかも確かめなくてはならない。持ち帰られた殻の欠片と設備の仕様をアイへ見せ、必要な出力を比べた。
『この大型機なら、厚さに余裕があります。ただし、古い軸と歯の状態は現地で確認が必要です』
「じゃあ、先に全部直してからですね」
俺が一つ目から順に矢印を引くと、ザラが自分の地図を横へ並べた。
「帰り道、ここへ寄ってもいい?」
小さな丸が一つ付いていた。森の下見で見せてもらった、まだ登っていない尾根だ。
「湖が見えるところですか」
「そう。前は一日余分に歩く余裕がなかったけど、今ならこの崖を上がれる。足場もあれば、荷物を持って戻れると思う」
ザラは地図をこちらへ寄せた。通ったことのある線は麓までで、その先はまだ点のままだった。
俺はアイへ、その尾根を通る道も比べてもらった。
日暮れまでに下りられる案が出た。鉱山で使う魔石とは別に、登り下りの分を残せばいい。
「帰りは、こっちにしましょう」
「ありがとう。じゃあ、帰りに急がなくて済むように準備しよう」
ザラが地図へ薄く線を引いた。まだ通っていないからと、濃くは塗らなかった。
◇
鉱山へ入ると、大岩喰いは奥の坑道で石を噛んでいた。
姿は、水晶で映して確かめた。狭い人用の通路から先へ置いたものだ。手前の設備へ作業に入る間も、相手がどこにいるか見える。
荷馬車に石を山積みにしたくらい、大きかった。
俺は映像を見てから、横の砕鉱機を見下ろした。
こちらは、さらに大きい。
「これを動かす魔石、高かったですね」
「うん。でも大きいのが二つ残っててよかった。歯を全部作り直すなら、もっとかかったよ」
リネアが欠けた歯の場所へ印を付けた。使える部分を回し、交換するところだけを外していく。
俺とザラは重い部品を運び、アイは測定と機械の向きを合わせた。少し回しては止め、異音の出る場所を調べる。
レベル126の体は、こういう作業でも驚くほど頼りになった。前なら四人で運んだだろう軸を、二人で持ち上げられる。
だが、持てることと、正しい場所へ収めることは別だった。
「もう少し左。止めて。そこの刻みを上へ向けて」
リネアに言われるまま動かすと、軸がようやく収まった。
その晩は、硬い殻の欠片を機械へ入れて試した。
歯に挟まれた石が割れた。破片がさらに噛み砕かれ、下の受け皿へ落ちる。
俺は受け皿を引き出し、細かくなった欠片を拾った。
これなら、あの殻でも通る。
ただし、大きな獣を丸ごと受け止めるには、軸の補強と本番用の動力が要る。大型の魔石と補強材は街で取り寄せることになり、届くまで数日はかかるという。
◇
その夜、操作小屋で三つの鉱山の地図を並べた。
一つ目を作動させてから歩けば、二つ目へ着く頃には日が暮れる。別の日に一つずつ倒せばいい。準備が済めば、それでも次のモデルには届く。
でも、地図を眺めていると、別のことを試したくなった。
「ここに座ったまま、三つとも動かせたらすごくないですか」
「鉱山を全部つなぐの?」
「はい。映像を見ながら、一匹ずつ。終わったら、すぐ次を動かせます」
俺は机の上に、三か所の映像が並ぶところを想像した。うまくいけば、鉱山の間を歩いているはずの時間に、もう次のモデルを使っていられる。
今の接続は、同じ建物の中や見通せる近くなら使える。山を越えて離れた鉱山まで、映像や操作は届かない。
「長い線を引くのは?」
「引けるけど、途中を守る仕事が増えるね。岩が落ちる場所もあるし」
リネアは道を指でたどった。線を通すだけのために、山道をもう一つ作るような話になる。
俺たちは残りの鉱山でも点検を済ませ、いったん街へ戻った。大型の魔石と部材を待つ間に、別のつなぎ方も探すことにした。
図書館で経路の本を尋ねると、司書さんが神殿の記録も持ってきてくれた。
「道の神、オルネ様は、離れた祠へ声を届けられます。道具に使えるか、ご本人に相談できるかもしれません」
俺は地図から顔を上げた。
「ご本人って、神様と直接話せるんですか?」
「はい。オルネ様は、ときどき人の姿で神殿にいらっしゃるんです。旅人の話を聞かれることもありますよ。まずは神官さんに、相談を取り次いでもらっては」
神様が実在していて、加護を授けることがある。それはこの世界で育つ間に、何度も聞いていた。
だが、人の姿で現れた神様へ、自分で話しかけられるとは思っていなかった。神殿は祈りを捧げる場所だとばかり考えていたのだ。
「道具の相談を持っていっても、いいんですね」
「何を知りたいか、図面も一緒にお見せすると伝えやすいと思います」
俺は広げていた地図を畳んだ。聞けるなら聞いてみたい。離れた場所へ声を送れるのなら、探している仕組みそのものだ。
その足で、神殿の窓口へ向かった。
神官さんは図面を受け取り、三つの鉱山を結ぶ線を確かめた。俺は空中の足場で工具を運んだことと、今度は映像や操作も遠くへ届けたいことを話した。
「オルネ様は、いつも神殿におられるわけではありません。相談の内容をお伝えして、お返事をお待ちしましょう」
会ってくださるという返事が来たのは、その翌日だった。
「明日の午後、こちらの庭へ人の姿でお出になるそうです。足場の道具も、ぜひ見せてほしいと」
俺は窓の向こうの庭を見た。
明日はあそこで、神様と顔を合わせるのか。
持ってきた図面を巻き直し、足場の器具も袋の上へ移した。相談する前に実演することになったので、帰ったらもう一度、動きを確かめておこうと思った。