異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます 作:カラリ
遠くの罠を動かすことはできた。
だが、経験値は帰ってこなかった。
俺たちは神殿の庭で、自分の表示と測定記録を見ていた。試験に使ったのは、採石場の岩甲虫だ。三人で仕掛けた小さな落石の罠へ呼び、ここから起動して倒した。
映像も操作も届いた。岩が落ちたことも、その下で相手が動かなくなったことも、こちらの板へ映っている。
なのに、体へ入ってくるはずの温かさはなかった。
「向こうでは、ちゃんと集めてたんですよね」
「うん。でも、集めた先へ道がない」
リネアが二枚の記録を並べた。岩甲虫のそばへ置いた回収器は動いていたが、そこで束ねた成長の力は、こちらへ来る途中で散っていた。
俺は、オルネに教えてもらった目印の石を見た。
「声が通るから、全部通ると思ってた」
『今は、映像と操作を送るように合わせています。成長の力を受け取る帰り道も、別に合わせる必要があります』
アイが図へ三本の線を足した。
俺、リネア、ザラ。実際に仕掛けを作り、動かした三人へ向け、回収器の先をつなぎ直す。
受け取る相手を勝手に増やすのではない。働いた分がこちらへ届くよう、その道を用意するのだ。
その日は岩甲虫をもう一匹狙う前に、受け取る側の器具を組み直した。
いきなりレベル248で試さなくてよかった。
そう口にすると、ザラが大きくうなずいた。
「私も、あっちを倒した後で気づくのは嫌だね」
◇
翌朝の再試験では、三人とも小さな温かさを感じた。
板の中で岩甲虫が動かなくなり、回収器が光る。その少し後に、こちらの受け取り口も白く光った。
「来た」
「うん。私の分も」
リネアが記録を止めた。ザラも自分へ流れた量を確かめ、同じようにうなずく。
レベルは126のままだった。最初は一匹で何段階も上がった相手だが、今の俺たちの次のレベルには、もっと多くの力が要る。それでも、受け取れた量は目盛りへ残っている。
俺は回収の記録を、計算盤へ入れた。
放出された量。途中で散った量。こちらへ届いた割合。
昨日と違い、最後の数字がきちんと出た。
「これで、鉱山へ置けますね」
『はい。同じ仕組みを使い、距離に合わせて調整できます』
俺は椅子の背へ寄りかかった。
これなら、誰か一人が向こうへ残らなくていい。三人で同じ映像を見て、直す場所も相談できる。
ザラはもう、鉱山までの道を地図で確かめていた。
◇
鉱山へ出発する前に、オルネと街道を歩いた。
目印の石をどこへ置くと安定するか、古い祠を通りながら教えてもらう。俺たちの器具は箱に収まり、アイも自分の本を持って付いてきた。
途中の分かれ道で、荷を担いだ男性に道を聞かれた。
北の町へ行きたいという。地図の短い方を指そうとした俺の横で、オルネが尋ねた。
「途中で寄りたいところはある?」
「古い休憩所がまだあれば、そっちへ。前に借りた器を返したくてね」
「だったら、右だ。少し遠回りだけど、昼を食べる頃に着くよ」
男性が礼を言って進んでいく。
俺は地図を戻した。町へ着くだけなら、左の方が短い。だが男性は、器を持ってそちらへ来たのだった。
「休憩所、まだあるんですね」
「あるよ。俺もあそこへ寄る。店の人が、旅人から聞いた話を覚えててくれるから」
オルネは杖を右の道へ向けた。
「今日はこの先も見てもらいたかったし、そこで休もうか」
ザラは日があるうちに戻れると確かめ、右へ進んだ。
◇
休憩所には、道の案内板があった。
右は北の町。左は水のくめる広場。裏の細い道は、崖の上の見晴らし場へ続くという。
俺たちが昼食を取る間、アイはその板を見ていた。先ほどの男性は店の人へ器を返し、今は同じ卓で話し込んでいる。
「案内板が気になる?」
『はい。町までの道だけでなく、途中でできることも並べられそうです』
アイは手元へ小さな道の絵を映した。
急いで町へ行く道。水を補給する道。景色を見る道。それぞれの脇に、かかる時間が出る。
『先に、どこへ寄りたいか聞ける形にしてみたいです』
リネアが匙を置き、絵をのぞき込んだ。
「これ、休憩所で使えたら喜ばれそう。人によって案内を変えられるんだよね」
『はい。ただ、ここの細い道はまだ見ていません』
「じゃあ、帰りに確かめよう。店の人にも、通れる道を聞いてみる」
ザラが立ち上がり、案内板のところへ向かった。
オルネはアイの映した道を見ながら、次は自分もこの案内の続きを考えたいと言った。
俺は残ったパンを食べた。鉱山へ向かうための相談が、寄り道を選ぶ道具にまで広がっている。
食べ終わったところで、アイがこちらを向いた。
『ルカさんは、見晴らし場にも寄りますか』
「行く。せっかくだし、見て帰ろう」
急がなくていい道なら、今日はそちらを歩きたかった。