異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます 作:カラリ
最初の大岩喰いは、餌を追って搬送床へ乗ってきた。
レベル248。荷馬車より大きな体が、床の端を踏む。
俺たちは一つ目の鉱山の操作小屋にいた。窓の外に餌を置いた床があり、その真下には砕鉱機の動く深い穴がある。
四本の脚が全部載ったら、床を開く。
それだけの仕掛けを作るために、三つの鉱山を回って二週間ほどかかった。壊れた歯を替え、軸を直し、回収器と遠くへつなぐ目印の石を設置した。
ようやく、手元の柄を引くだけになった。
「砕鉱機、回ってるよ」
リネアが動力の目盛りを見ていた。アイは穴の底を映す水晶と、残り二つの鉱山の接続を確かめている。ザラは獣の脚を見て、最後の一本が乗るのを待った。
大岩喰いが頭を下げた。
好みの魔力を含んだ石へ、口を近づける。後ろ脚が一歩進み、床の内側へ入った。
「全部乗った」
ザラの声で、俺は柄を引いた。
◇
床が左右へ開いた。
大きな体が落ち、少し遅れて、穴の底から低い音がした。
俺は水晶の映像へ目を移した。石の殻が、砕鉱機の太い歯へ挟まれている。獣が脚を突っ張ろうとしても、深い穴の壁には掛かる場所がない。
歯が回った。
背中の岩が一枚割れ、破片が下へ落ちた。別の歯が続き、殻の内側まで砕いていく。
「動力は?」
「足りてる。このまま保てるよ」
リネアが答えた。俺は手元の起動用の柄を押さえ、余計な操作をしないようにした。
自分があの殻を割る力を出しているのではない。買って運んだ大きな魔石が、機械を回している。
穴の中の動きが止まると、周りへ据えた回収器が光った。
俺は椅子の背をつかんだ。
胸へ熱が入る。
〈大岩喰い レベル248 討伐〉
126だった数字が変わり始め、今度は150を過ぎても止まらなかった。リネアもザラも、手元の作業を終えてから自分の表示を見ている。
〈レベル174〉
「あと6……」
俺が言うと、アイが次の映像を前へ出した。
『二つ目も、接続を保っています』
俺は次の映像へ向き直り、隣の操作板へ手を移した。
ここから山を下りる必要は、もうない。
◇
二つ目の鉱山では、餌をつけるとすぐに獣が出てきた。
レベル239。こちらにも三人で入り、同じように設備を直してある。今は離れた小屋から、目印の石を通して動かしていた。
大岩喰いが搬送床の前へ来た。
片脚を載せかけ、戻す。
もう一度、鼻先を床へ近づける。俺は餌の光を強めようとしたが、ザラに止められた。
「何か避けてる。いったん餌を消そう」
光を止めると、獣は少し待ってから坑道へ戻った。
アイが床の端の映像を大きくした。
小石が挟まっていた。片側の床がわずかに浮き、平らになっていない。
「あそこ、掃除用の動かし方が残ってる」
リネアが別の操作欄を指した。
「全部開かなくていい。端を少し傾けて戻すと、石だけ穴へ落とせるはず」
『できます。獣が戻ってこない間に動かします』
アイの姿は俺たちの隣に立ったままだった。その目の前の板で、遠くの床が少し持ち上がる。
小石が転がった。
縁から穴へ落ち、戻した床は平らになった。
リネアが左右の留め具まで確かめ、いいよと言ってくれた。
俺は餌をつけ直した。
少しして戻った獣は、今度は脚を引かなかった。餌へ顔を近づけるために進み、四本とも床へ載る。
柄を引いた。
映像の中で床が開いた。遠くの鉱山の砕鉱機が、その体を受け止めた。
◇
二匹目を倒した力は、つないでおいた帰り道を通って届いた。
受け取り口が白く光り、俺の胸が温かくなる。リネアとザラも同時に顔を上げた。
三人で設備を作り、起動し、今も動かしている。その仕事の分が、ここまで戻ってきた。
〈レベル190〉
越えた。
俺はすぐ一覧を開いた。
自己改良モデルの文字が明るい。その下には、さらにレベルを要求する欄がなかった。
最初に見た一覧の、最後まで来ている。
俺はその欄を選んだ。
「アイ、今度は自分で賢くなれる?」
『はい。計算手順とモデルを設計し、今よりよくなるか試せます』
「じゃあ、使ってみたい。残りの一匹が終わったら、最初にそれをやろう」
『承知しました。記録も残しています』
目の前には、床へ挟まった小石の映像がまだあった。見落としたものも、直した手順も、新しいモデルを試す材料になる。
俺は三つ目の鉱山へ操作を切り替えた。
同じ小屋に座っているのに、今日だけでも体へ入る力が大きく増えた。足の下の床板がきしむのを聞き、椅子の座り方まで少し変えた。
◇
三匹目は、レベル232だった。
餌で呼び、床を開き、砕鉱機を回す。途中で止める必要はなく、用意した回収器まで全部働いた。
三つの鉱山を止め終えたとき、俺たちはレベル201になっていた。
最初は180まで欲しかった。それを三人とも越えて、200の先にいる。
ザラは盾を持ち上げ、重さを確かめた。リネアは大型の魔石を両手で外し、まだこれだけ残ってるよと言って笑った。
俺は床へ置いていた工具箱を持った。
軽い。
そう思ってもう一箱重ねると、リネアから、入る分だけで帰ろうねと言われた。
「まだ何も言ってませんよ」
「あの棚の部品を見てたでしょ」
見ていた。
結局、運ぶ箱を先に並べ、その中へ収まる分だけ拾うことにした。ザラは明日の帰り道を確かめている。約束していた尾根へ登るため、今日は早く寝たいという。
俺は道具をしまう前に、もう一度一覧を開いた。
灰色だった欄は全部明るい。
次のモデルまで、あといくつ。
そう考える場所は、もうなかった。
代わりに隣のアイへ顔を向けた。
「次のモデル、本当に作ってみような」
『はい。使う仕事は、何から始めますか』
俺は空になった魔石を一つ手に取った。
最初に儲けた、あの仕事なら記録が山ほどある。