異世界転生したらスキルが〈生成AI〉だったので、知識を集めて格上狩りを始めます   作:カラリ

9 / 29
正しい順番で開けない

 外扉を抜けた先で、光の人影が頭を下げた。その足元の台座から、声が流れる。

 

『ようこそ。見学の方は、右手の待合へお進みください』

 

 思わず足を止めた。長衣を着た人が台座の上に立っている。だが服の裾から向こうの壁が透け、顔を近づけても目はこちらへ動かなかった。

 

「図書館で見た幻像ですね」

「うん。まだ動いてるんだ」

 

 リネアが台座の印を調べる間に、俺は奥への道を尋ねてみた。返ってきたのは、さっきとまったく同じ案内だった。

 

「続きは教えてくれないんですね」

「この言葉を繰り返すようになってるんだね。案内図の方を見よう」

 

 通り過ぎると、背後でまた待合を勧められた。俺たちは壁の図を確かめ、通路の奥にある別の扉へ進んだ。リネアが開きたかった外扉より、ずっと大きい。

 

「奥も同じようには開かないね」

 

 リネアが大きな扉から手を離した。

 

 扉には、魔力を流す印がいくつもあった。一つへ触れて光らせても、次を動かそうと手を離すと消えてしまう。複数の印を同時に光らせ続けないと、開かないという。

 

 俺は大きな扉を見上げた。いかにも、これを開けてくださいという顔をしている。

 

 ――アイ。扉の解き方はいったん後回しにしよう。向こうに入れる道があればいいんだ。

『案内図を見せてください』

 

 壁の図へ灯りを向けた。部屋から奥へ続く道と、小さな文字。持ってきた対照表を並べると、アイは右下も読みたいと言った。

 

 灯りを下げた。

 

 図の中では、大きな扉を迂回する細い道が、その奥の部屋までつながっていた。

 

『作業員用の通路です。正面の扉を開けなくても、設備の裏側へ入れるようです』

 

 俺は図の線をなぞり、行き着いた先の棚を見た。

 

「リネアさん、こっちから行けそうです」

 

 彼女はすぐに図を見に来た。

 

  ◇

 

 大きな扉を開けずに奥へ回り込める、修理用の入口を探した。小さな蓋が見つかったのは、荷物棚の後ろだった。

 

 棚を動かすと、腰ほどの高さにある蓋の全体が見えた。リネアは隙間の埃を払い、刻まれた印を調べてうなずく。回収した道具の点検口にも、同じ印があったそうだ。

 

 ただし、この蓋も閉じていた。点検する設備が動いている間は、危険なので開かない仕組みだという。

 

 図へ戻ると止める場所も描かれていた。壁沿いにたどっていくと、床近くに細い棒が三本並んでいる。そのうち一本が青く光っていた。

 

『正面の扉へ魔力を送る部分です。光っている棒だけを外してください』

 

 リネアにも確認してから引いた。大きな扉の光が消えると、棚の後ろで音がした。

 

「開いたよ」

 

 戻ってみると蓋が倒れ、身をかがめて歩ける通路が現れていた。

 

 俺はもう一度、正面の扉を見た。

 

 まだ閉まっている。なのに、その向こうへ行ける道ができてしまった。

 

「こっちは、ずいぶん簡単ですね」

「壊れた扉を直す人が、入れなくなったら困るからね。こっちの道が残っててよかった」

 

 リネアが明かりを持って中へ入り、俺も後ろへ続く。棚の裏を這っている姿は冒険というより倉庫の片づけに近かったが、行き先はずっと楽しみだった。

 

  ◇

 

 通路の先には机と棚が並ぶ小部屋があった。

 

 壁の線は青く光り、隅の水受けには細い水が落ちている。誰もいなくなって長いはずなのに、動いているものがある。そのことに驚いていると、リネアはもう棚の前へ立っていた。

 

「ここまで来られた……」

 

 石板を一枚持ち上げる。表面に文字が浮かぶと、彼女は依頼書と並べて見比べた。

 

「これ、探してた点検記録だよ」

 

 リネアは点検記録を台へ置き、隣の板も持ち上げた。俺も横から文字を眺め、それから別の机を調べた。

 

 隣の机には、補充する部品と保管場所の一覧が残っていた。離れた場所を見る観測器、声を出す音声板、操作を覚える記録石。入口の案内像の図もある。

 

「声を出す道具、ありそうですよ」

「本当だ。壊れていないのが残ってるといいね」

 

 リネアが点検記録を包み、俺は一覧の写しを取った。今度は欲しい部品を決めて探しに行ける。

 

 奥の壁には設備全体の図もあった。作業室が並び、その先に記録を保管する大きな部屋。さらに上には、別の建物へつながる線が描かれている。

 

 入口だけでこれなら、奥には何があるのだろう。

 

 俺が指を止めると、ザラは先に様子を見ようと言って通路の端へ進んだ。小窓からのぞける広間があり、俺も横へ並ぶ。

 

 大きな獣が眠っていた。

 

 牛より大きい。長い前脚と太い爪が見え、首には金属の輪が付いていた。壁から伸びた光が輪へ入り、全身を包んでいる。

 

「生き物だね」

 

 ザラの声を聞きながら、俺も上下する脇腹を見た。部屋の隅には苔が茂り、水も流れている。

 

 壁の表示板には守護獣という名前と、レベル118という数字が出ていた。

 

「……118?」

 

 思わず読み直した。次に欲しいモデルはレベル60からだ。その倍近いものが、向こうで寝ている。

 

「ここから正面へ出るのはやめておこう」

 

 ザラに言われ、俺は素直に窓から離れた。今すぐ同じ広間へ入りたくはない。

 

 ただ、手元には設備の図と点検の記録がある。

 

 俺はそちらへ灯りを戻した。

 

 ――アイ、まずここで何が動いてるか調べよう。

『はい。使える記録から整理します』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。