やばいスキルがついちゃった   作:ナストマト

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やばい、ユイちゃんのことすっかり忘れてた。どうしよう、今からストーリーを作ろうかな。矛盾したりしないよね?大丈夫だよね?




帰還

 

 

 

 

いよいよ第65層ボス攻略会議が今日開かれる。俺はボス攻略に参加することにした。ボス攻略。戻って来た。ようやくだ、長かった。まさか本当に戻ってこれるなんてな。《愚者の勇志》がなければ戻っては来れなかっただろうな。

 

てかさ、今更だけど本当に戻っていいの?攻略組のLv.に達してるの? 攻略だけはマージンに達してるからやったけど、ボス攻略までやっていいの?だ、大丈夫だろう。別にキリトやアスナにも止められてないし。実力的に大丈夫なんだろう。特にLv.とか話したりはしてないけど、多分他の攻略組の奴らと変わらないはず。

 

ちなみに今の俺のLv.は82だ。Lv.は上がれば上がるほど、次のLv.に上げるための必要経験値が多くなってくる。流石にここまで来ると、相当な経験値が必要になってくる。レベリングではなかったとはいえ、1週間最前線で攻略をしていたのに5つしか上がらなかった。いや、十分おかしいんだけどさ。そういや、アスナのやつは不審に思わなかったのだろうか? 俺だけバンバンLv.が上がったことに。まぁ、何も言ってこないしな、気にすることはないか。正直そっちに気を回していられない。今はボス攻略だ。

 

 

 

 

さて、俺はキリト、クライン、エギルと共に65層の街の広場に来ている。ここでボス攻略会議が開かれる。まだ予定の時刻にはなっていないが、既に多くのプレイヤーが集まっている。その中に俺が攻略組から離れる前にいたプレイヤーはほんの僅かしかいない。それもそうだ。俺の経験則から言えば、一度攻略組から抜けた人が戻ることは、ほぼないだろう。抜ければわかる危険からの解放の喜び。もちろん完全に危険では無くなるわけではないのだが、前線に比べたらどれほどの安堵感があることか。わざわざ危険を冒してまで攻略組に戻ろうなどとは思わないだろう。例え後悔があったとしてもだ。

 

まぁ、俺の場合は《愚者の勇志》なんていうトンデモなスキルがついてしまったからな。強くなれることが嬉しくてついLv.を上げてしまった。結果、早い段階で戻ることが出来たのだから良いのだが。

 

 

「はーい、それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」

 

 

っと、来たか。相も変わらずディアベルが進行役を務めているようだな。見れば、いつの間にかさっきまではいなかった血盟騎士団のメンバーの姿が見える。その中にアスナの姿は見えない。アイツ、ホラーフロアだからサボりやがったな。まぁ、下手に怖がられて足を引っ張ることになっても勘弁なのだが。

 

 

「ボス討伐に参加してくれてありがとう。じゃあ早速だけど、ボスについての情報を」

 

 

ここまで来たプレイヤーに気の慰めは要らないということだろうか、前の時みたいなちょっとしたジョークはない。そうだろうな、今だとむしろ非難されかねないしな。空気読めとか。でも今の俺には必要かもしれない。もうヤバイ。何がやばいって緊張でヤバイ。攻略組に戻って来た感動とかどっかへイッテQしてるわ。懐かしいなイッテQ。もう一度観たいな。祭り大好きなんだよな。あ、ちょっと落ち着いた。

 

 

「ボスの名前は《ウォルフラム・スパイダー》。全身が硬くてダメージがほとんど通らない」

 

 

調査隊によって得られた情報を伝えるディアベル。ただし、調査隊を派遣しているのは血盟騎士団だ。聖龍連合には血盟騎士団に比べて精鋭と呼べるプレイヤーは少ないからな。そうして得た情報をヒースクリフを通じてディアベルに情報が伝えられているのだ。…と、キリトが言ってた。

 

スパイダーってことは蜘蛛かよ。ホラーフロアとはなんだったのか。それにしても、ウォルフラムってどっかで聞いたことあるな。なんだっけ?

 

 

「ウォルフラム…タングステンか」

 

 

エギルが呟く。タングステンね、確かすごく硬い金属だったな。通りでダメージが通らないわけだ。…ああ、そうか。聞いたことあると思ったら、ウォルフラムってSAOの作者のもう一つの作品に出てきてたな。そっちも一応全部読んではある。その中に確かウォルフラムが出てきてたはずだ。しかし、それってドイツ語だよな。エギルさんドイツ語も出来るんですか。

 

 

「ただ、ダメージが普通に通る箇所が一つだけある」

 

 

あるのか。流石に弱点無しはまだこの階層だと無いか。で、何処なんだ。その弱点ってのは。

 

 

「顔だ」

 

 

ザワつきが起こる。弱点が顔。つまり、蜘蛛に対して顔に攻めろというのだ。それはキツい。

 

前にも述べたが、普通なら蜘蛛系は足の付け根と腹が弱点だ。だから蜘蛛系と戦うときは横から、もしくは後ろから攻撃するのがセオリーとなっている。だが、弱点を攻める以外にも意味がある。蜘蛛は口から酸を吐いてくるのだ。その酸には毒状態にしたり、防御力やSTR()を低下させたりといった効果があり、非常に厄介だ。しかし、正面に入らなければ酸に当たることはない。だからこそ正面には入らずに戦うことが重要なのだが、今回の敵はそうもいかない。一体どうやって攻めればいいのか。

 

 

「相手が放ってくる酸にはSTR低下の効果がある。効果の持続時間は長い。相手の防御が硬い以上、長引いたらこっちが不利になる。できる限り早めに終わらせたい。そのために、タンクとアタッカーを正面に多く配置したいと思う。それと、敵の側面、後方にも数人ずつ配置する。ほとんど通らないとはいえ、攻撃し続けてれば少しはダメージになる」

 

 

ふむ、まぁそうなるか。結構普通だな。

 

 

「それと、メインアタッカーを決めようと思う」

 

 

ん? メインアタッカー?

 

 

「結果的に引き付け役にもなってしまうけどね。できる限り酸を浴びずにいれて、尚且つずっと攻撃を当てられる、そんな人がいい」

 

 

ふむ、つまり、攻撃をずっと当てるから結果的に憎悪値を稼ぐことになって、結果的に引き付け役にもなるということか。なるほど。確かに引き付け役は重要な役割だ。引き付けてる間に他の人が攻撃やら回復やら色々できるしな。今回の場合はメインアタッカーという立場になってしまうが。となると、タンクの人で攻撃も出来るという人になるか。盾なら酸耐性さえついていれば状態異常になることはないしな。

 

 

「その役割の人なんだけど、俺から推薦してもいいかな」

 

 

ディアベルが推薦か。となると、よっぽど盾役と攻撃役の切り替えがいい人なんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼めるかな、ショウさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウっていうのか、誰だソイツ。聞いたことないな。よっぽど無名なんだな。ハッハッハ。

 

 

 

 

 

 

 

「俺ぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

え、何で!?

冗談はヨシ子さんですよディアベルさん!?

今回やっと戻って来たばかりなんですぜ!?

ここにいる殆どが『え、誰?』みたいな感じになってるじゃん。そりゃそうだろ。本当に久しぶりなんだから。はい、どうもはじめまして。ショウと申します。アホか。

 

いや、しかし本当になんで俺なんだよ。攻略組の奴らも気乗りしないだろうよ。いきなり出てきたやつにこんな大事な役を任せられないだろ普通。

 

 

「君のスピードなら酸を浴びることなく攻撃が出来る。今回の作戦の一番の適任者だ」

 

「いや、急に言われてもだな…」

 

「俺もショウがいいと思う」

 

 

おい、キリト。お前まで言うか。少しは俺の心中を慮ってくれ。やっとのことで戻ってこられたと思ったらいきなり大役を任されたんだぞ。お前ならどんな気分になる。…コイツなら喜んでやりそうだな。

 

 

「ディアベルと黒の剣士が言うなら…」

 

「二人が推薦するようなやつだもんな…」

 

「実はスゲエやつなのかも…」

 

 

あれ、何か変な空気になってないか?もしもーし、誰ですか、俺のことを過大評価してるやつは。

 

 

「皆はいいかな」

 

 

頷く攻略組の面々。おいお前、逃げられなくしたろ。そうやって皆に同意させて断りにくくするっていう戦法か。だが甘い。俺はそんな周りに流されるような人間じゃないんでね。ここはバシッと断らせてもらう。

 

 

「ショウさん」

 

「仕方ないな、引き受けるよ」

 

 

ダメでした。いや、こんな雰囲気の中断れないって。少なくとも俺は無理。

 

 

「ありがとう。それじゃあ正面に入る組を決めたいと思う。まずは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───よし、それじゃあこれで行こう。みんな、絶対勝とうぜ!」

 

 

高らかに賛成の意が掲げられる。気合いのこもったいい声だ。そこに負ける意志など微塵も感じない。期待できそうだな。俺以外は。

 

 

「はあ…」

 

「どうしたんだよ、ため息なんかついて」

 

 

会議がお開きになったところでキリトが話しかけてきた。ちなみにコイツも正面の組に入った。クラインとエギルも正面の組だ。俺の知り合いは優秀なアタッカーが揃ってるな。

 

 

「どうしたもこうしたもあるかよ。久しぶりのボス戦がこんな大役ってなんなんだよ」

 

「それだけの実力があるってことだろ」

 

「俺以外にも誰かいるだろうよ。本当になんで俺なんだよ」

 

「ショウ」

 

 

鋭い声名前を呼び、俺をじっと見つめてくる。

 

 

「俺はショウが一番適してると思う。ディアベルもそう言ってただろ」

 

 

それは確信に満ち溢れた目をしていた。データだとしても、そういう思いが確かに伝わってきた。

 

 

「俺たちは誰だって死にたくない。だからこそ最善の手段を取る。そして、今回はショウをメインに据えることが最善だと思った。決して他の人じゃ代わりにならない。ショウじゃなきゃダメなんだ」

 

 

…最善。死にたくない。分かってはいたはずなんだけどな。結局のところ、俺は怖がってただけなんだ。いきなりの大役。皆の命を背負ってると言ってもいい。俺がミスをすれば皆を危険に晒すことになる。責任なんかとても負えやしないと。しかしそれは、皆が正しく必死になって考え出された最善の案。俺の代わりが出たところで皆の危険が減るわけではない。むしろ逆。俺が出ることで、皆の危険が少しでも減るのであれば、答えは決まっている。ただ、

 

 

「…ひとつ聞いてもいいか?」

 

「ああ」

 

「ディアベルが俺のスピードなら、って言ってたよな。俺より速いやつはいないのか?」

 

 

俺より速い奴がいるなら、そいつに任せた方がいいと俺は思う。だから、俺自身を納得させるためにも、これは聞いておきたい。

 

 

「少なくとも、俺が知ってる中で一番速いのはショウだな」

 

「そうか」

 

 

つまりボス攻略に挑むプレイヤーの中で俺が一番速いってことか。なら、俺が適任だろうな。まさかそれ程速くなってたなんてな。

 

ああ、最善だ。確かに最善の案だよ。認めよう。なら

 

 

「なら、俺が出るしかないな」

 

「ああ!」

 

 

なんでお前がそんなに嬉しそうなんだよ。全く、ひどい役回りになったもんだ。戻ってきていきなりだもんな。だけど、俺が加わったことで戦略が増えるというのなら、それが最善ならば、甘んじてその役を引き受けよう。それが結果的に自分を、死なせたくない人を守ることにもなる。

 

とはいえ、どうなることやら。

 

俺は何度目かわからないため息をついた。しかし、先程のように負の感情は込められていない。

 

やったろうじゃないの。メインアタッカー。

 

決戦の日は、いよいよ明日である。

 

 

 

 






おまけ ショウのスキル

・曲刀(刀スキルを取るのに必要)
・刀
・片手剣(序盤で使ってた)
・投剣(スローイングピックを投げるのに必要)
・索敵
・隠密
・愚者の勇志
・抜刀術
・?
・?
・?

?のところは決めてません。もしかしたらどこかで追加するかもです。

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