ようやく、用事の方が終わりまして執筆の方ができるようになりました。これからはペースが上がると思います(上がるとは言ってない)。
血盟騎士団ギルドホーム。大きさは勿論のこと、堂々と聳えるその姿は、なるほど、このゲーム最強ギルドに相応しい。初めて来たが、聖龍連合のホームと全然違うな。あっちは宮殿のように派手で見せたがる感じがあったが、こっちは伝統を重んじるような、まさに城といった雰囲気がある。どっちかというとこっちの方が好きだなぁ。やっぱりさ、日本人としては城ってものに興味を惹かれるよね。これは西洋風の城だけどさ。オンラインゲームで『城プロ』なんてものもあったしな。
ていうか、これって誰がデザインしてるんだろうな。最初から建てられてるのか? それとも、まさかヒースクリフが自分でデザインしてる訳じゃあるまいな。うわ、想像すると何か面白い。
そんな血盟騎士団ホームの中に、攻略組の中でも選りすぐりの人達が集められている。人数は20人程だろうか。ボス攻略の時に比べれば少ないな。ということは、選ばれなかった人は実力が足りない、もしくは信頼されていないということだ。実力はともかく、信頼されていない人とは誰なのだろう。その人たちは注意する必要がある。俺はまだ攻略組に戻って間もないからあまり他の人のこと知らないんだよな。誰が嫌われているとかわからない。今度誰かに聞いてみるか。
「ショウも呼ばれたんだな」
振り返れば奴がいる。ネタが古いか。今時の人は知らないだろうな。冗談はともかく、キリトがいた。まぁ、コイツは当然呼ばれるか。
「コイツに呼ばれちゃってよ」
と、隣にいるアスナを指さす。てかさ、いつまでくっついてんの?流石に人がいるところではやめて欲しいんだけど。見ろよ、周りの攻略組の野郎どもの憎しみの籠った視線。アスナみたいな美人を侍らせてたらこうなるわ。俺もキリトがこうしてたらそうする。むしろ、どうやって社会的に潰そうか画策するまである。
だがなお前ら、そんな目を向けていいのか? やろうと思えば瞬殺だぜ? 俺が。恥ずかしさで。羞恥死とか何それ新しい。
「仲がいいんだな」
やっぱそう見えるよな。それにしても、キリトはアスナのことが好きじゃないのか? 少なくとも周りの奴らみたいな嫉妬心は感じられない。ただ隠してるだけか? それとも、本当に好きじゃないのか。だとすると、原作とだいぶ違ってしまうな。結婚はしないだろうし、ユイにパパママと呼ばれることもないだろう。別にディアベルを助けたことを後悔しているわけではない。けどなぁ、やっぱりなんだかんだ言ってもアスナとキリトでくっついて欲しい気持ちがある。
「悪くはないな」
「正直じゃないな」
と言って微笑むキリト。やっぱり違うのだろうか。わからんな。今度好きな奴がいるのか聞いてみるか。それはそうとさ、なんでお前はそんなに温かい目で見てるの? 保護者なの? 俺の方が年上だぞ。
それにしても、急に血盟騎士団に集められたのだから少しは重々しい空気になっているかと思ったが、案外そうでもないな。リラックスとまではいかないが、ある程度弛緩した雰囲気だ。ボス戦と違うからだろうか。心構えがまだできていないからか。
それとも、これから始まる何かに対する恐怖心を少しでも和らげるためか。
「諸君、よく集まってくれた」
と、ヒースクリフが来たようだ。人を呼んどいて最後に来るとは偉くなったもんだなぁ。あ、偉かった。さぁ、早いとこ何の集まりなのか教えてもらおうか。
「君たちはなぜ、ここに呼ばれたのか疑問に思っているだろう。それに答える前に伝えておかないとならないことがある」
……嫌な予感がする。デスゲームで鍛えられたカンだ。大抵のことは当たる。ただし、嫌な方向でだけ。
「第30層にて、レッドギルド《
会場がざわつく。
「一般的なギルドのように建物をホームとしているわけではないが、確かにそこで集会が開かれているのを部下が数回目撃している。そこが拠点である可能性が高いだろう」
一呼吸
「これまで、彼らは様々な方法で殺人を犯してきた。しかし、今まで捕獲、報復に成功した例は少ない。それは、彼らの位置が掴めなかったからだ。今挙げた成功例も、現行犯に過ぎない。用意周到で、その姿を見せることすら少ない。しかし、我々はその所在を掴んだ。これは好機とみていいだろう」
さらに一呼吸
「だが、情報収集に長けている彼らのことだ。いつこのことが彼らに漏れるかわからない。だからこそ、出来る限り迅速に叩きたいが、我々だけではそれは厳しい。そこで──」
ああ、やっぱりな。ほらみろ、嫌な予感というものは当たるもんなんだよ。
「──ここにラフィンコフィン討伐隊を立ち上げたい」
ラフィンコフィン討伐隊。それが俺たちを集めた理由。ヒースクリフは参加しろというのだ。人が人を倒すための討伐隊に。モンスターを倒すのとは訳が違う。これはSAO、この中で死んだら現実世界でも死んでしまうというデスゲームだ。このゲームで人を殺すことは歴とした殺人となる。普通なら参加なんてもってのほかだ。しかし、相手はそれこそ禁忌な殺人を犯すレッドギルド。それが断ることを渋らせている。
「ここに呼んだ諸君は、我が血盟騎士団員が実力、信頼ともに保証した者たちだ。彼らの人数がどれほどのものか想像はつかないが、この人数であれば少なくとも負けるということはないだろう。だからこそ、君たちに是非とも協力して欲しい。だが、もちろん無理強いするつもりはない。極力捕縛するようにしたいが、彼らを相手にするなら何が起こるかわからないからね。それこそ、殺人を犯すという事態すら起きかねない。それでも自分の意思で参加するという者だけ、この場に残って欲しい」
誰も去ろうとはしない。それは決して全員参加するというわけではない。決断に迷っている人がほとんどだろう。むしろ、すぐさま参加するという意思を固めた人はどれほどいるのか。
「…ありがとう。感謝する」
結局誰一人として会場から去ることはなかった。……上手い手口だ。理由も聞かせず集め、いきなり重要な選択をさせる。こんな選択、すぐに決められるわけが無い。結果、今みたいな時間切れとなる。くそっ、ヒースクリフは最初から全員参加させるつもりだったんだ。俺たちはまんまと奴の手に引っかかった。
「では、作戦を伝えたいと思う。今回の作戦は至って単純だ」
すぐさま作戦会議へと移すヒースクリフ。俺たちの気が変わらないようにするためだろう。抜け目のないやつだ。
「先ほども言ったが、出来る限り捕縛することが目的だ。いつものようにモンスターを相手にするわけではないからね。だが、そこがアドバンテージになることがある」
モンスターじゃないことがアドバンテージ…? つまり、プレイヤーが相手だからこそ活かせる強みがあるということになる。それは一体なんだ?
「ショウ君」
ヒースクリフがショウの名前を出した時、理解した。そして強く睨みつける。ヒースクリフ、アンタって人は…っ!!
「君にはこの刀を持って斬り込んでもらいたい」
ショウに一振りの刀が渡される。
「それには、麻痺付与の効果がある。それで彼らを麻痺状態にさせ、我々が直ちに捕縛する。それが今回の作戦だ」
バカな、危険すぎる。確かにショウのステは対人向けだ。しかし、いくらショウのAGIが優れているとはいえ、そうとうの人数がいるであろうレッドギルド相手に一人で突っ込ませるなんて。そんなことはさせない。
だが、
「わかった」
「ショウ!!」
ショウはそれを了承した。ダメだ、そんなことしてはいけない。俺は声を荒げた。
「ダメだ、危険すぎる!!」
時間を争うとはいえ今すぐにでも出発するわけではない。俺たちはただ呼ばれてきただけだ。戦闘準備は出来ていない。つまり、時間はまだある。準備する時間のうちにも何か他に作戦を考えられるはずだ。
「キリト、お前言ったよな。死にたくないから最善を取るんだって」
こっちを向かずに前を見て俺に話すショウ。ああ、言った。確かにそういった。だけど、友達が危険な目にあうっていうのに見過ごせるわけが無いだろ!
「ヒースクリフにとって、ここで攻略組の人数を減らすことにメリットはないはずだ。なら、この作戦が最善の手なんだろう。それに、俺にとってもありがたい話だ」
「ありがたい…?」
ショウはゆっくりとこっちに顔を向ける。
「こうでもないと、俺があいつらを殺すことになりそうだったからな」
その顔はとても恐ろしく、そして悲しげだった。
はい、ここまでです。長らく待たせてしまったのに短くて申し訳ありません。
ついにラフコフ討伐戦がやってまいりました。感想でもありましたが、結構期待していた方は多いようですね。さてさて、どうなることやら。