やばいスキルがついちゃった   作:ナストマト

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今日は何の日ですか?
ええ、そうです。ロストソングの発売日です。
でね、買っちゃった。(・ω<)
絶賛プレイ中です。もしかしたらロストソング編もやるかもですね。


今回はアスナ視点です。



遺恨

30層のとある洞窟。そこがラフィンコフィンの拠点らしい。転移門のある街から相当離れている。こんなところに洞窟があるなんて知らなかった。開放されたのはだいぶ前のこととはいえ、広いSAOの世界だ。まだまだ知られていないことがある。

 

その場所は結晶無効エリアなので、無効エリアのギリギリまでを回廊結晶で行き、そこからは徒歩で行くことになる。最初から徒歩だと気づかれてしまう可能性が高いからだ。攻略組が20人ほど固まって歩いていたらラフコフでなくても不審に思うだろう。この作戦はバレたらおしまい。だからこそ、慎重に動かなければならない。

 

作戦実行は、団長に集められた日の夜中。作戦は変わらずショウ君が特攻するというもの。キリト君が最初は止めようとしたものの、ショウ君自身が拒否しなかったため、そのままの作戦で行くこととなった。

 

私も止めようとした。けど、出来なかった。ショウ君のあんな顔は初めて見た。恐ろしかった。

 

 

 

しかし、どこか悲しげだったのはなぜだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟の中は意外と明るい。しかし、岩場で陰になっているところが多く、隠れるには困らない。侵入者にとっては、明るい分隠蔽率が下がり発見されやすくなるのだから、拠点としてはふさわしいのかもしれない。

 

先頭をショウ君として隊は進んでいく。出来る限り隠れながら進んでいるが、この大人数だ、いつ発見されてもおかしくない。心構えだけはいつでもしておかなければならない。

 

 

「アスナ」

 

 

キリト君が小さな声で話しかけてきた。

 

 

「ショウは、今は落ち着いてるけど、ラフコフに会ったら何をするかわからない。もしもの時は、俺たちで止めよう」

 

 

もしもの時とは、殺人のことだろう。それは間違いとは言えないかもしれない。相手は殺人者。それで誰かを守ることが出来るのだから。しかし、それが決して殺していい理由にはならない。

 

私は言葉の代わりに強く頷き返した。キリト君は口の動きだけで『ありがとう』と言った。それはこっちのセリフでもある。私も万が一の時は止めようと思っていたから。彼もきっと仲間として、友として、そんなことをさせたくないんだ。そうだ、そんなことはさせない。

 

しかし、キリト君はショウ君がラフコフに会ったらどうなるかわからないと言っていたけど、どうしてだろう。会議の時といい、ショウ君とラフコフの間に何かあったのだろうか。

 

 

「ねぇ、キリト君」

 

 

正直、聞いてもいいことなのかわからないが、キリト君なら何か知っていると思い、聞いてみることにした。

 

 

「ショウ君は───」

 

「静かに」

 

 

ショウ君が小さな声で、しかし、全員に行き渡るような声で言った。

 

 

「この先は道が開けてる。広場のようになっていて隠れるような場所がない」

 

 

ここで険しい顔になるショウ君。

 

 

「けど、広場の上の方には岩場があって隠れられるようになってる。そして恐らく、ここでアイツらが強襲を仕掛けてくる」

 

 

緊張感が走る。

 

 

「覚悟を決めろ。出来る限り俺がやるとはいえ、何があるかわからないからな」

 

 

覚悟を決める。私たちに言ってるようで、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

 

 

「いいか、俺が飛び出したら後に続いて一気に来てくれ」

 

 

討伐隊の各々が武器を構え、飛び出す体制に入る。ショウ君に何があったのかは気になる。けど、それは帰ってからだ。今のことに集中しよう。そうしなければ帰れないかもしれない。

 

私も愛用の武器《ランペンドライト》を構える。いつもと違う緊張感。怖い。手が震える。でも、私よりもショウ君の方がずっと怖いはず。なら、私が逃げ出すわけにはいかない。

 

ショウ君は目を閉じ、ふぅと一呼吸する。

 

そして

 

 

「行くぞ」

 

 

広場の方へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッハァァァァーーーーッ!!」

 

 

私たちが広場の中央あたりに来ると、ラフコフのメンバーが飛び出してきた。ショウ君の予想通りだ。その瞬間、ショウ君が動き、次から次へと麻痺にして行動不能にしていく。人数は30人ほどだろうか。ただ、入口の方を除いてほとんど囲まれる形になってしまった。いくらショウ君でも、バラバラに散らばっているプレイヤーを攻撃するのには時間がかかるだろう。

 

 

「各自、ショウ君が対応するまで防御に撤するんだ」

 

 

団長が指示をする。作戦通りにするにはそれが一番なのだろうが、心情的には複雑だ。結局はショウ君頼りになってしまうのだから。

 

 

 

と、目の前から細剣が迫ってくるのが見えた。咄嗟に首を捻り躱す。軽く髪を掠めるだけで直撃はしなかった。しかし、凄まじいスピードとキレだ。

 

 

「閃光、の、アスナ、だな」

 

 

攻撃を放った相手が話しかけてくる。骸骨のようなマスクに赤い目、武器はエストック。この人は

 

 

「貴方はザザ、赤目のザザね」

 

 

ラフィンコフィンの幹部の一人、赤目のザザ。先の会議でもジョニー・ブラックと共に要注意人物としてあげられていた。武器はエストックという細剣。先ほどの剣筋を見る限り、流石幹部にふさわしい実力だ。

 

 

「同じ、細剣使い、同士、どちらが強いか、決める」

 

「それなら決闘でいいじゃない」

 

 

こんな殺し合いで決着をつける必要なんてない。ただ力比べをしたいならば、決闘をすればいいだけだ。だからこその提案。しかし

 

 

「それじゃあ、つまらない」

 

 

帰ってきた返事はこうだった。つまらない……ですって…?この人たちは、本当に狂っている。ゲームと言っても、死んだら本当に死んでしまうこのデスゲームで、人を殺すことをどうしてためらわずいられるのか。いや、楽しんでいられるのか。

 

 

「人殺しを楽しんでいる貴方を放っておくわけには行かない!」

 

「なら、やってみろ」

 

 

ザザは私に向かって突きを次々と繰り出してくる。速い。AGIだけなら私よりも上かもしれない。けど、私はもっと速い人を知っている。体を動かし、または弾いて攻撃を躱す。

 

 

「やる、な」

 

「光栄ね」

 

「だが、お前は、攻撃、できない。なら、負けない」

 

 

ザザのエストックが光を放つ。ソードスキルだ。どうする、ソードスキルで相殺を狙うか。いや、ザザの速さを考えるとそれは難しい。回避するしかないが、ソードスキルの速さはいかほどか。避けられるだろうか。しかし躱すしかない。回避行動がとれるように身構える。

 

 

「させねぇよ」

 

 

 

一閃。ザザの体が崩れ落ちる。

 

 

「お前は……」

 

「コイツをやられたら上手い飯が食えなくなるだろうが」

 

 

ショウ君だ。ザザに斬りかかり麻痺状態にしたようだ。周りを見てみると既に全員が討伐隊によって拘束されていた。本当にあの人数を一人でやったの?

 

 

「邪魔を、するな」

 

「邪魔なのはお前らだろうが。なんならここで消してやろうか?」

 

「ショウ君!」

 

「冗談だよ」

 

 

さっきのキリト君の話があったからだろうか、本当にやりかねないと思ってしまった。冗談ならいいんだけど。

 

 

「黒鉄宮で悔い改めるんだな」

 

「……いつか、潰す」

 

「やられる覚悟があるならいつでも来な」

 

 

マスクを着けているため表情はわからないが、恐らくショウ君を睨みながらザザは拘束され、他のメンバーと共に回廊結晶で黒鉄宮へと連れられていった。終わった……のかな。討伐隊のみんなも、やりきったような表情をしている。ほとんどショウ君がやったんだけどね。見たところ、死者もいないみたいだし、本当にすごいなショウ君は。それはそうと

 

 

「助けてもらっちゃったね」

 

「貸し一つな。今度また美味いもん作ってくれよ」

 

「それでいいの?」

 

「十分過ぎるな」

 

「なら今度作るね」

 

「よっしゃ、ざまあみろキリトめ!」

 

 

何でキリト君が出てくるのかわからないけど、それでいいのならお礼として料理を振舞おう。これでも料理スキルには自信がある。もう少しでコンプリート出来る程に上げている。何を作ろうかな。

 

 

 

 

 

頭の後ろでギンッという音がした。

 

 

「えっ?」

 

 

いつの間にかショウ君が刀を抜いている。そして足元に落ちていくピック。狙われた? まだ残っていたのか。しかし、いったいどこから?

 

 

「お前か」

 

「ショウく……っ!?」

 

 

その表情は怒りに満ち溢れていた。そして、ただ一点を見つめていた。広場の奥の方にある岩場の陰に誰かがいる。私たちに見つかったことがわかると、彼はさらに奥の方へと逃げていった。

 

 

「お前は逃がさねぇ!」

 

 

ショウ君も後を追って行ってしまった。行ってはダメだ。これは罠だ。ピックに何か仕掛けがあったのかはわからないが、私をどうかする気はなかったはずだ。今更私を、例えば麻痺にしたところでほとんどのメンバーを拘束したはずだから、少人数で何か出来るわけではないだろう。とすれば、今のはショウ君を誘き寄せるためのもの。誘き寄せるからには何かある。

 

 

「アスナ!!」

 

 

キリト君が叫ぶ。見ていたのだろうか。とにかくわかるのは、ショウ君を放ってはおけないということ。そうだ、一人では行かせない。キリト君と共にショウ君を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちがショウ君に追いついた時、ショウ君は一人の首を刎ねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポリゴンを散らすプレイヤー。

 

 

殺した。ショウ君が、人を。

 

 

ピックを落としたことを見ると、先ほどのプレイヤーだろう。報復だろうか。だが、それでも目の前の出来事が信じられなかった。

 

だが、またしても驚くことが起こった。ショウ君がその場に倒れたのだ。

 

 

「ショウ君!!」

 

「ショウ!!」

 

 

私たちはショウ君に駆け寄る。

 

 

「麻痺っただけだ、心配すんな」

 

 

よ、よかった。何があったのかと思った。最悪の事態も頭に浮かんでしまった。

 

 

「今すぐ回復を」

 

「いい、それよりっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Ha、これでお前も人殺しだなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この声は

 

 

 

「PoH!!」

 

 

キリト君が叫ぶ。

 

 

「これはこれは、黒の剣士と閃光のアスナ様じゃねぇか」

 

「お前、まだ捕まってなかったのか」

 

「そんな怖い顔すんなよ。俺は今な〜んにもしてないぜぇ?」

 

「ふざけるな!! 今までどれだけの人を傷つけてきたと思ってるんだ!!」

 

「お〜、怖い怖い」

 

 

PoH。ラフィンコフィンの頭領。悪とはいえ、その圧倒的なカリスマ性でメンバーを率いてきた。その実力、残虐さはこのラフコフ随一だろう。滅多に顔を出すことはないが、それでも多くのプレイヤーを陥れてきた。

 

 

「流石に多勢に無勢だからなぁ、この場は引くとするかぁ」

 

「待て、PoH!!」

 

 

ショウ君が叫ぶ。

 

 

「お前は、お前だけは許さねぇ!!」

 

「うるせぇな人殺し」

 

 

ニヤリと口角を吊り上げるPoH。

 

 

「もうお前も俺たちと同じ、人殺しなんだよ」

 

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」

 

「くくっ、じゃあな」

 

「待てよ、おい、逃げるな!!」

 

 

転移結晶で転移するPoH。ここは結晶無効エリアではないのか。いざとなった時に逃げられるようにここに誘き寄せたのか。流石に用意周到だ。

 

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、私はキリト君を呼び出した。喫茶店のような店で和やかな場所だが、人が少ないという穴場だ。これからする話は、もしかしたら聞かれたらまずいかもしれない。だこらこそ、この場所を選んだ。

 

 

「ごめんね、疲れてるはずなのに」

 

「いや、構わないよ。それで、どうしたんだ?」

 

「その、ショウ君のことなんだけど」

 

「ああ」

 

 

ショウ君はあれから、泊まり込みの部屋に引きこもってしまった。確かに、人を殺してしまったという事実は重くのしかかるだろう。何とかしてあげたい。しかし、気になることがある。

 

 

「ショウ君とラフィンコフィンとの間に何かあったのか聞きたくて」

 

 

ショウ君のラフコフに対する異常な敵対心。そして昨日のPoHに対する言葉、『お前だけは許さない』。

 

 

「……あまり言いたくないんだけどな」

 

「お願い、教えて」

 

 

知っておきたい。ショウ君のこと。

 

 

「……ふぅ、わかったよ」

 

 

語られるショウ君の過去。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショウは大切な人を、目の前で殺されたんだ」

 

 

 

 




はい、ここまでです。

いやー、殺伐としてきましたね。筆者はあまりこういうのは好きではないんですが、チートとはいえ、こういう展開があってもいいですよね。

次回はショウの過去についてです。語られることのなかった過去がついに明らかになるかもです。
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