やばいスキルがついちゃった   作:ナストマト

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いつの間にかこの小説を書いて1年経っていたという事実。にもかかわらず第三者視点の方が書きやすいと今更ながら気づいた。




灯火

 

 

 

75層フロアボス、《ザ・スカル・リーパー》

 

原作では攻略に挑んだプレイヤーの半分近くを屠った原作最強ボス。大きなカマ、後ろ足、尾での一撃は直撃すれば大ダメージ必至。防御力も流石クォーターボスだけあって並外れている。小説を読んでいて、一撃でプレイヤーを葬りさった時は馬鹿げた強さだな、ゲームバランス崩壊してるんじゃないかと思っていたが、まさか自分がそんなやつと対峙することになるとはな。

 

だからといって負けるつもりも死ぬつもりも毛頭ない。誰も死なせない。俺も死なない。

 

やべぇ、今の俺カッコよくね? 何か勝てる気がしてきたぞ? 燃えてきたぜ! うおおおおお、燃えろ、俺の小宇宙よおおおおお!! 今なら音速を超えそうだぜ!!

 

……はい、軽く現実逃避してました。いやね、考えてもみてくれよ。例えるならね、アーノルドなシュワちゃんに殴りかかりに行けますかって話よ。殺すのは最後にしてやるってなるでしょうが。帰りてぇー、マジ帰りてぇー。あったかハイムが待ってるんだよー。アスナん家だけど。おいそこ、ヒモとか言うな。

 

 

しかしよくもまぁこんなにバカ共が集まったもんだな。

 

この場にいるのは28人。原作より少ないか? ……ダメだな、ずいぶん長い間この世界にいるからな、記憶が曖昧になってる。

 

正直十分な数とは言えない。数だけで言えば36人欲しかった。仕方ない、数より質だと考えよう。実際、人数が多すぎても動ける場所が少なくなったり連携が難しくなったりといったデメリットもある。それが排除出来たと考えよう。なぎ払いで大量死なんてたまったもんじゃないからな。

 

確か14人だったか、原作で亡くなった人数は。本当にエグいな。そんなやつとこれから戦うわけだが。

 

目の前には大きな扉。このすぐ向こうにはヤツが待ち構えている。…身体が震えてきやがる。たまんねぇなちくしょう。漂う空気は張り詰めるなんてレベルじゃない。キリトやアスナでさえもいつも以上に緊張しているのが見て取れる。そのまま少しでも刺激を与えれば千切れそうな、そんな雰囲気。…たまんねぇよ。

 

先頭に立つディアベルがこちらを振り向く。その顔には笑顔を貼っていた。

 

 

「みんな、俺から言うことはただ一つ」

 

 

───勝とうぜ!!

 

 

いつも通り。普段と変わらない。これから最恐最悪の敵と戦おうというのにも関わらず。その姿勢に心が落ち着く。リーダーというのは斯くあるべしというのを体現しているようだ。

 

難儀な役割だ。自らの心境をひた隠し、鼓舞する。そこに動揺、不安などを垣間見せてはならないのだから。ましてや、感情が出やすいSAO、それがどれほど難しいことか。ひたすら感情を押し殺しているのなら、誰があいつを救ってやれる。

 

……バカヤロウが。

 

張り詰められた空気は緩められた。ただ一言で。

 

大きな扉が開かれる。少しずつ、少しずつ。先程までの重苦しさを顕しているかのように扉は動きは鈍い。

 

だがそれでも確かに動いている。緩やかに。ああ、この扉は本当に俺たちのようだ。ゆっくりと、長い時間をかけて進んで来た、俺たちの。

 

 

 

開かれた部屋の中に光はなく、暗闇が広がっている。辺りを警戒しながら中に進むと、重い音と共に扉が閉められた。開こうとしても中から開くことは出来ない。ならばと念のため外に待機させていた非戦闘のプレイヤーに、扉が閉められたら開けるように指示してあったが、一向に開かないところを見るとやはり完全に閉じ込められたらしい。第3層のようにはいかないか。

 

と、唐突に壁に取り付けられた松明に灯りが灯り始める。ようやく部屋全体が見渡せるようになるも、ボスは見当たらない。

 

……となれば決まってるよなぁ。

 

見上げれば、おぞましい形態をした骸骨が天井に張り付きこちらを見下ろしている。

 

やっぱりそこか。

 

 

「上よ!!」

 

 

アスナの叫びで全員が見上げる。と同時にヤツがニヤリと笑った。ようやく気づいたのかと言わんばかりに。まるで獲物を狙うかのように。

 

壁を蹴りあげ地上に飛び降りたと思うと、大きな雄叫びを上げた。

 

 

「キシャアァァァァァァァァアアアア!!!」

 

 

デカい。見た目と相まって威圧感がハンパない。いやマジでハンパないわ。さっきの咆吼も身体を竦ませる。内側に響く。実体ではないが心臓を鷲掴みにされているような錯覚を覚える。さながらスカルリーパーは死神か。似合ってるぜくそったれ。

 

誰も動く気配はない。動かないのか、いや動けないのだ。あまりの迫力に、あまりの威圧感に。

 

……たまんねぇよマジで。本音を言えば帰りたい。帰ってゴロゴロしたい。エギルの店でみんなと駄弁っていたい。

 

けどな、命懸けのバカがこれだけいるんだ。俺だけ背を向けてられねぇよな。いや、こんな義務的じゃないな。そんなのは自分自身が許せない。むしろ利己的な理由だ。ったく、初めの頃の俺はどこへ行ったのかね。こんなんじゃなかったはずなんだがな。

 

「さて、仕事するか」

 

ようディアベル、お前の仕事少しだけ手伝ってやるよ。鼓舞するぐらいなら俺にだって出来る。俺のやり方で、だけどな。

 

 

 

 

 

 

瞬時にして消える。ショウのその動きを表すにはその言葉が相応しい。気づけばスカルリーパーの眼前に迫っていた。振り抜かれた刀はその眉間へと吸い込まれる。

 

 

「ギギィッ!!!???」

 

 

大したダメージはないが、然しものスカルリーパーも驚愕したような表情を見せる。AIであれど、獲物だと思っていた相手が凄まじいスピードで攻撃してきたのだ、感情を表してもおかしくはない。

 

だが、その相手は過去最強にして最凶のボス。そんな敵が一瞬であれど怯んだという事実は大きく攻略組の心を揺らした。

 

 

──────勝てる?

 

 

「グギギギアアァァァァァアアアアオォォオ!!」

 

 

赤く光る目をただ1点に定めるスカルリーパー。明らかに憤慨した様子で口からは白い息が漏れている。伝わることは1つ。

 

《潰す》

 

その大きな鎌を持ち上げると、空気を切る音すら置き去りにして振り下ろす。金属音。直後、身体を突き抜ける振動が身体を貫き、辺りへと響き渡る。

 

面々が最悪の状況を考えたのは言うまでもない。しかし金属音、そう、聞こえたのは金属音だ。その命を刈り取らんとする得物はショウへと届くことはなかった。鎌とショウとの間にあるのは、これもまたプレイヤーの希望の1人。

 

万物を防ぐ盾。神聖剣ことヒースクリフ。

 

拮抗すらさせない。その場にピタリと鎌を受け止めている。

 

 

「私を試したな」

 

「さて、どうだかな」

 

「これで心置き無くできるかね?」

 

「わざわざ言わなくてもよくない? バカなの? 死ぬの? 死ぬなよ? 守れ、ずっと守れ。俺死んじゃう」

 

「フッ、了解した」

 

 

短い2人の会話。2人の間に信頼はない。だが理解はしている。こいつなら大丈夫だと。仕事をしてくれると。

 

受け止められた鎌を伝い再び眼前へと駆け上がるショウ。一撃。やはり硬い。微々たるダメージしか与えられない。それでも、戦えている。戦っている。あのボス相手に!!

 

今度こそ攻略組の面々は思う。

 

 

───────勝てる!!

 

 

ディアベルは口角を上げた。ああ、彼等はなんと眩しいのだろう。勝とうぜ、などと威勢よく言ったところで、自分は何も出来ていない。ただ気丈に振る舞っているだけ。自分に言い聞かせているのだ。いつもそうだ。いつ死ぬともわからない恐怖との戦いなのだ。団長という立場上、逐一団員の情報は入ってくる。死亡の報告を聞く度に自分がそうなることを想像してしまう。

 

だがそれでも、人の命を預かる立場、弱音を吐くわけにはいかない。俺はディアベル、聖龍連合団長、ディアベルなのだ。人々はそれを臨んでいる。だから俺は団長ディアベルであり続ける。だがそれがどうだ、結局自分は何も出来ていないではないか!!器用貧乏なパラメータが祟り、元より戦力としてはさほど数えられない自分が出来ることはただ鼓舞し指示するだけ。それすら今は果たせていない。なら俺は何だ。団長の役割すら果たせてない自分は誰なんだ。なぜここにいる。そういった終わらない自問が蝕んでいた。

 

だが彼は灯した、俺の心に、全員の心に。誰もが動けない中いつもの様に先陣を切り与えた一撃。その一撃に烈火を見た。ついて来いと言っているかのように。自分がここにいるのだと言っているかのように。

 

影は灯りの無いところには出来ない。灯りがあるから影が出来るのだ。真っ暗では何も見えない。人は光と影があって初めてその形を成す。影を作るための灯りを、火を灯せ。強く、熱く、大きく、人の魂に火を灯せ!!

 

 

それが《火影》!!

 

 

今、確かに火は灯った。

ディアベルは叫ぶ。

 

 

「続けぇ!!」

 

《オラァァァァアアアアアアアアア!!》

 

 

自分が何であろうと関係ない。今自分に出来ることをするだけだ。彼のように。団長なんて立場はフェザーリドラにでも食わせとけ。俺はディアベルだ!!

 

火は集まればやがて大きくなり炎となる。後は燃やし続けるだけだ。ディアベルは駆ける。上げる雄叫びはさながら龍が吼えるかの如く。

 

 

「ウオオォォォォオオオオオオオ!!」

 

 

この炎、消せるものなら消してみろ!!

 

 

 

 

 

戦闘を始めてどれくらい経っただろうか。凄まじく長い間、3日ぐらいは戦っている気がする。流石の防御力を誇るスカルリーパーだが、少しずつではあるがダメージを蓄積させていった。今では4本目のHPバーの赤く色を変えた。

 

前衛後衛でスイッチを繰り返し攻防に効率的に戦闘を展開させたが、しかし流石に硬い。全くダメージが通らないばかりか、バーが1本減るたびに行動パターンが変化、さらに攻撃力防御力ともに上昇させた。

 

 

「う、うわあぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

 

悲鳴が響く。戦闘中であるが故にそちらを見やることは出来ないが、パリンという音が聞こえたところから察するにまた1人、帰らぬ人となったのだろう。これで何人目だろうか。だが、へこたれている時間は無い。悔やむのは後だ。

 

なんとかヘイトを稼ごうとするものの、確かにある程度はこっちを狙っているが、隙あらば無防備なプレイヤーを攻撃してくる。結果、詳しくはわからないが数人のプレイヤーが死んだ。

 

もう少し、もう少しなんだ。だが無闇に突っ込むな。落ち着け、焦ってはいけない、そう考えることが既に焦っている証拠なのだろう。頭では理解はしているつもりでも勝手に思考が逸る。抜刀術で決めてしまうか? 馬鹿な、決め切れる保証もないのに。だがしかし。いや、でも。ええい、迷うな。確実に行け。勇敢と無謀を履き違えるな。

 

俺は俺の仕事をしていればいい。大丈夫だ。攻撃に備え1度タンクにスイッチしようと後退する。

 

 

「ちくしょおおおおおおお!!!」

 

 

だが俺の思考とは裏腹に1人がパーティーから抜け出し、スカルリーパーへと駆けた。バカ野郎!!何してやがる!! 盾も持たねぇやつが1人で突っ込んでんじゃねぇ!!

 

焦っているのは俺だけではないということだ。今の死で何かが外れたか。長時間の戦いによる精神的疲労もあるだろう、普段の攻略組なら、いや、ニュービーでも犯さないであろうミスだ。

 

ニヤリ、悍ましい笑みを浮かべたのはスカルリーパーだ。カモが来た、そう思ったことだろう。1人突っ込む相手に対し左の鎌を振るう。プレイヤーは何も見えていないのか、それに反応も見せない。ただ走るのみ。誰の援護も間に合わない。

 

唯一、俺を除いて。

 

刀を鞘に収め一足飛びで距離を詰める。そして振り下ろされた鎌にめがけ抜刀。ライトエフェクトを発する一刀は鈍い金属音を響かせ受け止めた。

 

なんとか間に合ったか。だが受け止めはしたもののせめぎ合いが続く。それも時間の問題だ。ソードスキルが切れたら負け。押されても負け。刀が折れても負け。ソードスキルを発動させた以上ここからの回避も無理。八方塞がりだ。

 

 

「ショウくん!!」

 

 

アスナの声に、彼女が言わんとすることに気づく。

 

右の鎌が俺の命を刈り取らんとこっちに向かってくる。俺にどうにかする術は無い。ヒースクリフもここからは距離がある。1度後退したのが仇となったか。間に合いそうにない。

 

すまんな、勝手な行動して。ハハッ、さぞやスカルリーパーさんもほくそ笑んでいることだろうよ。さんざん動き回ってたハエを仕留めることが出来るんだからな。

 

 

ちくしょう、ここまでかよ……

 

 

「ウオオォォォォォオオオオ!!」

 

 

突如飛び出した一つの影。手にする片手剣からはライトエフェクトが光り俺へと迫る鎌を受け止めた。

 

 

「ディアベル!!」

 

「君なら助けると思ったからね、俺の時のように!!」

 

 

お前…

 

 

「ぐっ!!??」

 

 

だがディアベルは押された。パラメータからして完全に受け止め切れないのだろう。

 

しかし、俺たちには仲間がいた。

 

 

「俺たちも!!」

 

「いるぜ!!」

 

 

クライン、エギル。

 

それぞれが俺とディアベルが受け止めている鎌に対しソードスキルをぶつける。ディアベルの方もも完全に拮抗するまでに至り、こっちは徐々に押し返す。まったく、本当に頼もしい仲間たちだな。

 

「クライン、見せてやろうぜ!!刀の可能性ってやつをなあ!!」

 

「おうよ!!侍なめんじゃねえええええ!!」

 

「ギィィィイイイイイ!!!???」

 

 

鎌と刀、その重量差と耐久力からして押されて当たり前、折れて当たり前。そんな刀が、今まさに押し返している。そして

 

 

「「うおおぉぉぉぉぉおおお!!!」」

 

「!!??」

 

 

鎌を大きく返され、上体を崩すのはスカルリーパー。それに伴いディアベルたちも開放されたようだ。なんとかなったな、見たかよクソッタレ、窮鼠は猫を噛むんだよ。

 

体勢を崩しているスカルリーパー、そこを逃す俺たちではない。そこに距離を詰めるのは一筋の閃光。

 

 

「ハァァァァァアアアア!!」

 

 

寸分の乱れのない突きがライトエフェクトを伴い放たれる。優雅にして可憐な舞い。聞こえる打撃音はさながら円舞曲。彼女の前では例えボスといえども引き立て役に過ぎない。今、彼女は踊る。踊る。踊る。

 

 

「ギィィィィイイイイイイ!!??」

 

 

それを皮切りに攻勢に出る。他のプレイヤーも次々と攻撃を加える。残りHPを減らして行く。だがそのスピードは遅い。まだ倒れないのかよ、抜刀術も含めてこれだけソードスキルを打ち込んでるってのに。

 

ああ、認めよう。お前は間違いなく最強のボスだった。

 

だが、これで終わりだ。ハッ、結局アイツが持っていくんだよなぁ。主人公補正ってのは羨ましいねぇ。

 

空に踊るは黒い影。俺が憧れ夢見た、二振りの剣を持つ男。

 

行け。

 

 

「決めろ、キリトォ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の静寂の後、歓声が部屋に響き渡った。

 

 

 






はい、ここまでです。

実は次も書き上がってます。明日投稿します。


P.S.ゴッドイーターリザレクション面白いね。
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