というわけでホロウ・フラグメント編です。
ようやくフィリアを出せた喜び\(^ω^\)
フィリア
ここは何処だろう。何も見えない。何も聞こえない。身体の感覚も何も無い。
ただ、そこに意識があるだけ。
って前にもあったなこれ。
まぁわかってるよ。ここが死後の世界なんだろうな。SAOでの死は現実での死。つまり俺は死んだってことだ。前の時は身体があったけど。
意外と最期は呆気なかったな。俺らしいといえばらしいかね。
振り返れば本当に色々あった。楽しいこと苦しいこと。死にたくなるようなこともあった。悔いのない人生なんて有り得ないと思ってた。悔いが募り積もってその上で今の自分が形成されていくのだとそう思ってた。でも死んだ今、後悔なんて全く無いな。今までのこと全てが許容出来る。死ぬというのはこういうことなのだろうか。
気がかりはある。アイツらは無事に現実に帰れたのだろうか。それだけが唯一気になるところだ。だがしかし、情報を知る手段が何も無いのだ。この不安をどう払拭すればいい。これ心残りで成仏できずに地縛霊になるやつじゃないの? いやプログラム上に地縛ってどういうことだよ。
ところで俺はこれからどうなるのだろう。てかどうすればいいの?ずっとこのまんま?気が狂うわ。せめて何か見えるか聞こえるかして欲しい。どうにかならないものか。
無い身体を動かそうとするも何も起こらない。現実は非情である。ええい、この身体の性能を活かせぬまま死ぬのはごめんだ。諦めたらそこで試合終了なんだよ。なんだ、どうすればいい。歌か、歌えばいいのか。俺の歌声を響き渡らせるか。いいだろう、俺の歌を聴けぇ!!天も次元も突破してやる!!
口づけを交わした日は〜♪
ママの顔さえも見れなかった〜♪
ポケットのコイン────
あれ?
なんか光が見えたような?
確か前にもこんなことがあったよな。
あの時は確か───────
再び見えた光は、今度は消えることなく暗闇に広がり、やがて視界を埋め尽くした。ああ、そうそうこんな感じだったな。
で、気づいた時には森の中に立ってましたとさ。歌って凄い。ヤック・デカルチャー。
どこなのここ? 青木ヶ原樹海? 白神山地? いや、それにしては落ち葉が全く無いな。ああそうか、ここが天国なのか。そりゃ落ち葉なんてないわ。でも鳥のさえずりすら無いのはどういうわけ?俺のイメージがファンタジーなだけで天国っていうのは案外こういうもんなのか?
ていうか俺の服装がSAOで死んだ時のままなんだけど。こういうのって現実の格好じゃないの? 帯刀もしてるし、俺本当に死んだんだよな?
こうやって右手を振り下ろしてもメニュー画面なんて出るわけ────
ピロリーン
出るんかい。
んー? ちょっと待ってくれ。メニュー画面が出たということはここはSAOの中だということ。ステータスにも《Sho》の名前とLv.112の数字が表示されている。HPも分子は0ではなくMAXまで回復している。これが示す事実は一つ。
「俺生きてるじゃん」
あ…ありのまま今起こったことを話すぜ。俺は死んだと思っていたら生きていた。な…何を言っているのか(ry
いや実際こうもなりますよ。だってあんな暗闇に放られて急にピカーって光ったと思ったら今度は森の中に立ってて、これで俺生きてるーとはならないだろ。
とにかく、ここはどこなんだ。場所を確認しようにもマップには《unknown》の文字が記されているのみで自分のカーソルすらない。普段であればカーナビのように写すマップも何の役にも立たない。見渡しても周りには立ち並ぶ木々だけ。モンスターや人っ子1人いない。
さてどうするかね。まずは知ってる場所に帰ることが優先事項だが、遭難状態にある時は下手に動かない方がいいんだよな。とはいえ、ここにずっといても進展する事もなし。
ああそうか、転移結晶使ってみるか。とりあえず使ってみてこれでダメなら歩こう。出しっぱなしのメニュー画面を操作してアイテム欄を開くのだが、気になることが一つ。文字化けがいくつか見られたのだ。
今までにこんなことは無かった。どういうことだ。俺がこんな所に放られたのと何か関係しているのか? 文字化けしているのは防具や武器やアイテムと多岐に渡る。これ転移結晶大丈夫だろうな?
……お、あったあった。よかった、転移結晶は無事だったようだ。んじゃ、早速オブジェクト化して────
ずっとメニュー画面に集中してたからだろうか。迫るモノに気が付かなかった。
「うおっ!?」
左半身に衝撃が走る。急な衝撃に耐えられず2回ほど地面を転がってしまう。なんだ、何が起こった!?
見れば、短剣……だろうか、を片手に向かってくる少女の姿があった。明らかに敵意を持った様子で、斬りかかってくるであろうことは想像に容易い。俺も反射的に刀を抜き応戦する。
案の定斬りかかって来たソイツは右から斬撃を繰り出す。だがその程度で殺られる俺ではない。こちとら紙装甲でやり繰りしてんだ。なめんじゃねぇぞ。
前にも話した様に刀は攻撃を正面受け止めるのが不得手だ。下手すれば十撃くらいで折れる。だから向かってくる攻撃を受け止めるのにまともにやる必要は無い。
繰り出された短剣に刀を乗せる。そして相手の勢いを利用し最小限の力で俺に当たらないように誘導する。俺の首あたりを狙った攻撃は右肩を掠めるように通り抜ける。所謂《柔術》だ。キリトがよくやるヤツ。これの利点は次の攻撃に繋げられることだ。攻撃を繰り出した後の体勢は隙がある。ましてここまで近くで攻撃を空振ってくれるんだ。当てるに容易い。
だが俺は反撃しなかった。いきなり攻撃されて言いたいことは多々あるし、聞きたいことも幾つかある。特に目を引いたのは、そのカーソルの色。
オレンジ
それは違法行為を犯したプレイヤーがなる色。この少女は何か禁忌を犯したのだろうか。今までにもオレンジのプレイヤーには何度か対峙したことがある。例えばラフィン・コフィン。彼等はプレイヤーを殺すという行為によってオレンジに色を染めた者達だ。そのようなプレイヤーをレッドプレイヤーと呼ぶ。
オレンジになる人は割といる。もちろん少数ではあるが。例えば直接手を下していなくても殺人へと追い込んだ相手のカーソルは緑のままだ。カーソル自体は青天白日を示しても身は汚れている、そんなプレイヤーがいる。復讐などでそのプレイヤーにダメージを与えればオレンジになってしまう。そんな事件は実際にある。何なら俺もオレンジになっててもおかしくなかったしな。
他にも単純に連携ミスでダメージを与えてしまったという場合もある。ただ、オレンジ=犯罪者というレッテルが貼られるからオレンジというだけで忌み嫌われる存在になることは間違いない。
この少女がレッドなのか、ただのオレンジなのか。それを知りたい。もしレッドであるのならば、場合によっては────
続いていた攻撃の手が止む。無駄だと悟ったのだろうか。少女はこちらを睨みつけながら、しかし動揺を抱えた目で問うた。
「あんた、誰……?」
「それはこっちのセリフだっての、いきなり攻撃してきやがって」
「……あんたは────」
そこから先は聞くことが出来なかった。突如として轟音と共にモンスターが降ってきたからだ。チッ、こんな時に。だが巻き上げられた砂煙が晴れ、現れた姿に驚愕した。
骸骨のような顔に大きな鎌と蠍のような身体を持つモンスター。俺たちがつい先程倒したはずのフロアボス。
スカルリーパーそのものだった。
「くっ、なんとか巻いたと思ったんだけど……やるしかないか」
巻いた? ということはコイツから逃げていたのか?
しかし考える暇も与えることなくスカルリーパーは攻撃をしてくる。矛先が向けられたのは少女。ここに来るまでにヘイトが溜まっていたのだろう。その大きな鎌を振り下ろした。少女は辛うじて避けるものの右側面から来る攻撃に気が付いていない。このままでは直撃を食らうことになる。
だがそれはよろしくない。ここで初めてあったプレイヤーだ。少女には道案内をしてもらう必要がある。ここて死んでもらっては困るのだ。例えオレンジであろうとも。
ったく、こんなのばっかだな!!
少女に迫る鎌に対し抜刀術を放つ。するとあの時は拮抗するに留まったのに対して、今度は切り口を顕にし真っ二つとなった。部位欠損のステータスがスカルリーパーに付与される。
鎌を切れた? ってことはあの時よりはパラメーターは低いのか。見ればHPも一撃で大きく削れている。っていうか3本あるうち1本まるまる削れた。マジかよ、ここまで効くもんなのか。自分が誇らしいな。
さて、コイツはここで潰した方がいいか。落ち着いて話も出来ないしな。抜刀術に驚いた様子の少女に話しかける。
「おいお前」
声をかけると気を取り戻したようで、再び睨みつけるような表情になった。またかよ、俺が何かしたか?
「……なに?」
「コイツ倒すから手伝え。さっき見た感じ、結構戦えるんだろ?」
「なんでわたしが……」
「死にたくなきゃ手伝えっつってんだよ。お前、コイツに追われてんだろ。ここで倒さねぇとどこまでも追ってくるぞ」
「……」
「それに、俺もこんな所で死にたかないんだよ」
「……わかった、今だけ協力してあげる」
「オッケー、早速だけど硬直切れるの時間かかるからちょっと引きつけてくれ」
「世話が焼けるね」
「たった今助けてやった恩を忘れたか」
「頼んでないし」
「えぇ……」
なにそれ女って怖い。助けてやったのに報われない。まるで働いても働いても全く残業代出ないみたいだね!!はたらけどはたらけどと石川啄木先生のようにぢっと手を見つめていたい……。
砂を握りたくなるような感情に浸っていながら戦闘を見ると、少女は俺の頼んだ通りヘイトを自分に向けつつ俺のいる方から離れていった。ちゃんと言うことは聞いてくれるのね。案外優しい子なのかもな。それだけにオレンジが気になるところではあるが。
と、硬直が解けたか。急いで合流するが、目に見える範囲でスカルリーパーのHPが削られていた。やはり75層の奴とは比べ物にならないくらい弱い。それでも1人で倒そうとは思わないが。
合流した後は俺が基本的にタゲを取って少女が隙を付いて攻撃するというスタイルで戦闘を展開していった。即席のパーティーだったが少女も然る者で俺との連携を上手くこなしていた。特に危険もなくあっさりと倒すことが出来た。いや本当にあっさりだったわ。75層での戦いがあれだけ激しかったからより呆気ないというか拍子抜けというか。ともあれ倒せたわけだから良しとする。
さてさて、問題はこれからなんだよな
「あー、サンキュー。助かった」
「……別にいい。わたしも助けられたし」
「……」
「……」
き、気まずい……ッ!!
お忘れかもしれないが俺は人見知りなのだ。しかも相手が可愛い女子ともなれば俺の人見知りメーターはフルスロットルなわけで。ついでに、さっきまで命を取られかけていたのにいきなり馴れ馴れしく話しかけるのもおかしいし、なんて言えばいい。
いい天気ですね。
アホか! ご近所挨拶か!
月が綺麗ですね。
告白か!出会っていきなりの告白か!
今日は風が騒がしいな。
文学少女か! 中二な人しか喜ばんわ!
「……どうして何も言わないの?」
「ひゃい!?」
内心でどう話しかけようかと悩みまくっていると向こうから声をかけてきた。焦って変な声出たわ。やだ恥ずかしい。
「……あんた、あいつらの仲間じゃないの?」
「は?あいつら?」
何のことだ? あいつら? 仲間?
「……どうやら本当みたいね。でもあんた、見えてるんでしょ? わたしのカーソル」
「オレンジだな」
「それを見て何も思わない? どうして何も言ってこないの? どうして普通に話せるの?」
「そりゃ気にならないと言ったら嘘になるけどな。でも、そんなのおいそれと聞いていいものでもないだろ」
「……別にいいわ。……わたし、人を殺したの」
「……」
人を殺した……ねぇ。文面通りに捉えるなら黒鉄宮に送り込んでもいいんだけど、俺にはそうは思えないな。
「そういうことだから、わたしに関わらないほうがいい。それじゃさよなら。さっきは助けてくれてありがとう」
ちょ、ちょっと待てよ。お前がいなくなったら本当に路頭に迷うことになってしまう。せっかく見つけた
「ちょっと待ってくれ」
「……なに」
「いや、俺はついさっきここに飛ばされてきたばかりでな。右も左もわからないんだ。出来ればでいいんだが案内頼めるか?」
「断る」
「そうかありがとう。で、どっちに行けばいいんだ?」
「あんた、人の話を聞けってよく言われない?」
「……」
「やっぱり」
ち、違いますー。人の話を聞かないんじゃなくて聞く前に行動してるだけですー。むしろ言われる前に行動してるんだから褒めて欲しいくらいだ。その実、大半はただ聞こえないふりをしてるゲフンゲフン。
「さっき関わらない方がいいって言ったばかりよ」
「ここで迷える子羊になるくらいならいくらでも関わるぞ」
「自分で子羊とか言っちゃうんだ」
「やめろ、自分で言って恥ずかしくなった」
「……子羊」
「やめろおおおおおおおおおおおお」
なんだろう、こう、死にたい。顔から火が出るどころかベギラゴンが出るレベル。あっつい。身体あっつい。今なら修造超えるかもしれない。いや無理だな。あの人ホルスだもん。
─────《ホロウ・エリア》データ、アクセス制限が解除されました。
ん? 何か聞こえたような?
《ホロウ・エリア》? アクセス制限? 解除?
「……あんた、それ…………」
「え?」
「その手に浮かんでる紋様は……」
見れば右手には先程までは無かったはずの紋様が浮かび上がっていた。それは見たこともない形で、十字架の様にも見えた。ただ一つ言うことがあるとすれば。
何これ超かっこいい。
なんだこの中二心をくすぐるようなフォルムは。すげぇ、かっこいい。手のひらからビーム出そう。ディバインバスター出そうぜ。じゃなくてもシャイニングなフィンガーみたいに出来るかもしれない。それともあれか、これで変身が出来るようになったとか? 魔装少女になれたりする? ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ……
「……なにしてるの?」
おっと、これで何が出来るかいろいろ試していたら怪訝な目で見られたぜ! そりゃそうだろ。また黒歴史が増えてしまった。
「いや、これで世界が取れる気がして」
「あんた、変わってるね」
「自覚はしてる」
だってこの世界の人間じゃないし、そりゃ変わってるだろ。むしろ変わってるこの世界の中じゃ、俺が正しいまである。
「……ねえ、その手、よく見せてくれない?」
「ん? はいよ」
「……やっぱり同じ」
「何が?」
「これと同じ紋様がある場所を知ってる」
「マジで?」
「うん。……わかった、案内してあげる」
「Thank you!」
無駄に発音良く言ってしまった。あー、よかった。本当にこれからどうしようかと思った。ダメだったらのたれ死ぬ未来が見えてたわ。
と、少女が困惑したように聞いてくる。
「簡単に信用するんだ……わたしオレンジだよ?」
「ああ、それで?」
「それでって……」
なんだそんなこと気にしてたのか。大した問題じゃない。
「もし殺人狂のレッドなら、硬直の時、俺を殺せたはずだ。わざわざ俺の言うこと聞く必要もないし、助けることもなかっただろ」
「……」
「それに、俺はレッドの奴らと対峙したことがあるからな。なんなら命の取り合いもした。だからわかるんだよ。お前は悪いやつじゃないってな」
「……全部演技かもしれないよ?」
「そん時は黒歴史が増えるだけだ」
今更一つ二つ増えたぐらいでどうということは無い。それに、少しのやり取りだったが、この少女は今までのクソみたいな奴らとは違う。普通のプレイヤーと変わらない。ただの可愛らしい少女だ。だから普通に接する。それだけのことだ。
「ふふっ……」
「なんだよ」
「あんたってよっぽどのお人好しか、よっぽどの馬鹿よね」
「ほっとけ」
お人好しねぇ、そんなのはキリトとクラインだけで十分なんだが。俺にまでお人好しが移ったか。馬鹿という可能性は一切考慮致しませんので悪しからず。
「俺はショウ、お前は?」
「フィリア」
「フィリアね、よろしくな」
「うん、よろしく。さ、案内するわ。行きましょう」
これが、俺とフィリアの出会いだった。
はい、ここまでです。
出来る限りホロウ・フラグメントをプレイしていない方にも伝わるように書いているつもりですが、世界観やオブジェクトなど、筆者の稚拙な文章では伝えきれない部分もあると思います。
筆者が絵を描けたら良いんですが、如何せん下手くそなものでして。猫を描いたのにバッタと間違えられるってどういうことだよ……。
そういう訳なのでご了承ください。