今回と繋げようか迷ったけど長くなり過ぎるから止めておいたという裏事情。
案内されるままに森の中を歩いていく。見たところアインクラッドと同じような構図で、それだけ見たら、ホロウエリア……だったか、そんな別の世界に飛ばされたとは思えない。だが階層が表示されていないことや教会のような建物だったり物凄いデカイ黒い球体のような物があり、それが緩んだ感覚に現実味を持たせる。今までにあんなのは見たことがない。
道中、このフィールドについて聞いてみた。
「よくわからない。《ホロウ・エリア》と呼ばれているらしいけど。わたしも一か月くらい前にここに飛ばされてきたの」
とのこと。フィールドを探索中に突然転移させられたらしい。しかし、一か月も前からここにいるということは、果たして元の世界に帰ることが出来るのか。不安になってきた。
それと、フィリアには俺のような紋様が無い。フィリア曰く、この世界でそんな紋様をつけてる人は見たことが無いらしい。
「ん? ってことは他にも人がいるのか?」
「……ええ、でも少しおかしなところがあるというか……」
「おかしなところ?」
「説明が難しいの。実際に会って確かめた方がいい」
どういうことなのかね。まぁ実際に会った方が良いと言うし、そうするか。
辺りにいるモンスターはさほど強くなく、むしろ弱い部類に入るくらいだった。と言っても、73層くらいのLv.だが。その種類もアインクラッドにいたモンスターと変わりない。ワスプにオーク、スケルトンなどが道中殆どを占めた。ただ、モーションパターンなどは少し違ったりしていた。これもこのエリア特有のものだろうか。
因みに、聞いたところ、スカルリーパーは初めて見たらしい。宝箱を開けようとしたら襲ってきたと。恐らくボス的な立場だったんだろうな。てか宝箱あんのかよ。
また、スカルリーパーとの戦闘の際に負ったダメージをフィリアが回復しようとしているを見て、アイテムは使えるのかと問うた。
「アイテムは使えるみたい。でも転移結晶を使ってもダメだった」
とのことで、クリスタル無効エリアでもないらしいのだが、帰る手段としては使えないようだ。本格的に帰れるのか怪しくなってきたな。
アイテムと言えば、文字化けしていたアイテムだが、一応捨てておいた。フェアリィダンス編でもこんなことがあったが、ユイが捨てた方が良いと言っていたし、そうじゃなくてもバグってるアイテムを持つ気にはならない。残念ながら愛刀である紅椿も文字化けがあったので捨てるべきだったのだが、流石に愛着があるので捨てずにとっておいた。しかし、いつまでも持つわけにはいかないので、何処かにオブジェクト化して飾っておこうかと思う。
そうそう、マップが表示されるようになったことも言っておかねばならない。アクセス制限とやらが解除されたせいだろうか、先程までのunknownの文字は無くなり、元のマップ機能を取り戻したのだ。しかもホロウエリアの恐らく全体図を見ることが出来るようになっていた。細かいところはマッピングしなければならないが、大まかな情報でも今はありがたい。
さて、どのくらい歩いただろうか。坂を下り、目的地はまだかと問おうとしていた時のことである。
─────規定の時間に達しました。これより適性テストを開始します。
アナウンスが響いた。
「い、いきなり何?」
「適性テスト? おい、これはなんだ?」
「わたしに聞かれても困る!」
「……テストって言ってたよな?」
「わたしも……確かにそう聞こえた」
「ならさっさとやっちまおう。テストは学校の時から嫌いなんだ」
特に試験前の追い込みが大嫌いです。普段からやっとけよって? 出来たら苦労しないんだよ。
「……言葉の割に嫌がってないわね」
「あ、わかる? 実はめっちゃ楽しみにしてる。やっぱ未知のエリアってのはこうじゃなきゃ面白くないだろ」
知的好奇心が刺激されるな。キリトも喜んで飛びつくだろうよ。あいつも居たら楽しいだろうな。最初の頃が懐かしいぜ。2人であっちこっち冒険してばっかだったからな。洞窟やら森やら宝探しみたいなことしてたしな。子どもだったなぁ、とか言いつつ今も楽しんでるわけだが。
得てして男という物は冒険というものに1度は憧れるものだ。インディなジョーンズ然り、ナショナルなトレジャー然り、アンチャーなテッド然り。
「……どうやらお人好しじゃなくて馬鹿の方だったみたい。……わたしは、ずっと悩んでいたのに」
その小さな呟きは、俺の耳には届かなかった。
適性テストとは特定のモンスターを討伐し、森の出口へと到達することであった。流石、テストというだけあって辺りには今までより強いモンスターがゴロゴロいた。これまではLv.80前後だったのに対してLv.90を超えるのが殆どだ。
中にはLv.126のモンスターもいた。倒したけど。だって近くに宝箱があったんだもん。どうやら倒さないと開かないギミックらしくて、つい……ね? 両手斧ではあったがそこそこの武器が手に入った。エギルにでも売ってやろう。
しかしこのマップが広い広い。どれほど歩き回ったかわからない。マッピングも兼ねてあちこち歩き回ったが、かなり時間がかかってしまった。そのおかげでいくつか宝箱見つけたから良いけど。刀も手に入ったし、さほど強くは無いものの軽さが気に入ったしとりあえずはこれで行くことにする。
肝心のターゲットだが、ミノタウロス系のモンスターでLv.自体は95と低いものの、
てなわけで無事、モンスターを倒し、広々としたマップを迷いながらも出口へとたどり着いたところで、再びアナウンスが流れる。
─────クリアを確認しました。承認フェイズを終了します。
「また出た。このアナウンス」
「ふーん……」
承認フェイズ……ねぇ……。
「ねぇ、どうしたの?」
「ん? ああ、承認フェイズだとか適性テストだとか言ってるからさ、このフィールドは何なのかと思ってな。元のアインクラッドではこんなの無かったし」
「ふーん。それで、何かわかった?」
「微妙な所だな。ある程度の目星はつけてるけど、完璧に理解したわけじゃない」
「そう……」
「どうしたんだよ?」
不満げな顔になるフィリア。なんだ?機嫌を損ねるようなこと言ったか?
「だって、わたしがずっと調べててもわからなかったのにさ、ここに来て数時間のあんたが謎を解いちゃったら悔しいに決まってるでしょ?」
「いや知らんし」
でしょ?って言われてもなぁ。気持ちはわからんでもないが、会って数時間の奴の気持ちなんて理解できるわけないだろ。しかし、結構負けず嫌いなんだな。そういうのは嫌いじゃない。
「あーあ、これじゃトレジャーハンターの名が廃るわ」
「トレジャーハンター?」
「まあ自称だけど。SAOには職業なんて無いし。モンスターと戦ったり、クエストクリアしたりするよりダンジョンに潜ってお宝を見つける方が、わたしには向いてると思ってるから。それが生き残るために重要なアイテムであることが多いしね」
「へえ」
「だから、トレジャーハンターになることにしたの」
「ソロでか?」
「そう」
俺が言えたことではないが、ソロでの戦闘は危険だ。フィリアの戦闘を見る限りでは、このエリアでも戦える実力は十分にある。なんなら攻略組にいてもおかしくない。ソロでやるのなら、やれるだけのスキルも持ち合わせているのだろう。
「さーてと、少し順番が変わったけど、この先に例の転送装置があるわ。行きましょう」
「了解」
森を抜けると、少し開けた場所に出た。一見何も無いように見えるが、壁際にぽつんと立つオブジェクトがあった。
「あれよ」
それは縦長の四角い石のように見える。形自体はそれ以外に特筆すべき特徴のないただの石だ。だがそのオブジェクトには俺と同じ紋様が刻まれていた。
「ほら、これ」
「……確かに同じだな」
「ね?見間違いじゃないでしょ?」
「転送装置ってさっき言ってたな。これは何処に繋がってるんだ?」
「さっきの黒い球体、覚えてる?」
「ああ、なんかでかいヤツか?」
「そう。わたしは今まで入れなかったけど、あんたがいれば入れる気がする」
「この紋様か?」
「そう」
「でもなんで俺だけに紋様が現れたんだろうな」
「わからない。あんたの取ってるスキルに関係があるんじゃない?」
その言葉にギクリとする。俺の持ってるスキルって……抜刀術は違うよな、これは普通のユニークスキルだし。いや普通かはわからないけどクエストで手にいれたスキルだし尾を引くようなものではないはず。てことは問題なのは……
《愚者の勇志》
またお前か!! 本当にお前は俺を困らせてくれるな!! 助かってるんだがそれ故に困るという二律背反。とはいえ、本当にこれのせいかどうかはわからない。思い当たる節がこれしかないのもまた事実だが。
「そんなスキル聞いたこともないけどな」
とりあえず誤魔化すしかないな。正直な所、キリトたちとまでは行かないまでも、フィリアのことはかなり信頼している。しかし、何処から情報が漏れるかわからない以上、気軽に口に出すわけにもいかないのだ。嫉妬とは恐ろしいもので、自分が手に入らないものを見つけたら襲われる可能性もある。出来る限り、そういった可能性は排除したい。だからキリトたちにも言えないのだ。悪いな、信頼はしてるんだぜ?
「ねぇ、試してくれる?」
「といってもどうすりゃいいんだ? 翳せばいいのか?」
紋様がある右手を転送装置の紋様に近づけてみる。すると、右手の紋様が光を放ち始めた。これでこの転送装置が機能するようになったのだろう。どうやらフィリアの予想は当たっていたようだ。
「流石はトレジャーハンターだな」
「わたしも、球体の中に何があるのか知らないんだけど、きっと中には《ホロウ・エリア》の秘密があると思う」
「だろうな、いかにも怪しいしな」
「ねえ……わたしも一緒に行っていい?」
「お前なぁ、俺が案内させるだけさせてサヨナラなんてする様に見えるか?」
「え?」
「そんな薄情者にはなりたくねぇっての。ほら行こうぜ」
「……うん」
転送装置を使い、飛ばされた先で透明な地面の上に俺は立っていた。ここは何処だろうかと見渡そうとして、まず目に入ってきたのは、文字の波。
「なんだよ……これ……」
うねる様に流れていく文字の波と、いくつかのモニターに何かのデータのようなものや、この《ホロウ・エリア》のマップ、更にはスキルについてなど様々なことが映し出されていた。SAOのOPの最初で流れていたものと似ていると思った。
「ビンゴ! やっぱりそうだった」
「ここは、あの球体の中だよな?」
「おそらくね」
辺りを見渡してみると、敵の姿は無いようだ。と、ここで気づいた。どうやらここは圏内らしい。どうりで敵がいないはずだ。いや待てよ、確かオレンジプレイヤーが圏内に入った時にはガーディアンが来るはずだ。だがいつまで経ってもガーディアンが来る気配はない。
「普通の圏内とは違うみたいだな」
「でもこれで安心して調べられる」
そうして手分けしてこの空間を調べることにした。主に周りに見えるものは先ほど述べたようにモニターや文字が目立つ。その文字は日本語ではなくどうやら英語……でもないのか? よくはわからないがプログラムの様に見える。
それと、この空間は見えない壁があり、一定の半径の円状に区切られていた。永遠に空間が続くよりは調べるのが楽でいい。
さて、モニターやらなんやらについて話したが、それ以上に存在感を放つものが部屋の中央付近にあった。それはユイの時と頼もしくも忌まわしきスキルの時にも見たことのあるもの。
「コンソールじゃん」
めぼしいものは調べたし、後はこれだけなんだが、英語は苦手なんだよなぁ。と思いながらも操作してみるが、ありがたいことに出てきたリストは日本語で書かれていた。そこに書かれていたのは実装やエレメントなどの文字。それからあちらこちらをサーフィンして1つわかったことがある。今いるこの空間だが《管理区》と呼ばれているらしい。
管理区……実装……承認フェイズ……
俺の中で何かが繋がりつつあった。
「ねえ!!ちょっと来て!!」
しかしその思考はフィリアの声によって途切れる。
「どうした」
「これって転移門かも、ちょっと見た目が違うけど」
そう言ってフィリアが示すのは床に配置された石版のようなオブジェクト。確かに転移門にあったものと似ている。フィリアが言ったように形は少し違うが、書かれている文字も転移門と変わりない。
「たぶんそうだろう。これで、ここから出られるんだな」
帰れる、帰れるんだ、あいつらの元へ。
そこでふと気づく。いや、今まで気づかない方がおかしいぐらいなのことなのだが。
俺たち、なんでSAOにいるんだ?
勝ったらゲームクリアという条件を元に俺はヒースクリフと決闘し、そして引き分けた。しかし、ラスボスであるヒースクリフを倒したのだから、クリアされているはずだ。原作でもキリトはHPを0にしながらもヒースクリフを倒しクリアした。であるなら、俺たちも現実世界に帰れてもいいはずだ。
脳裏に浮かぶ最悪の可能性。
まさか、置いていかれた!?
だって俺はよくわからん空間に飛ばされてたし、フィリアは一か月前から《ホロウ・エリア》に来てたって言うし、SAOの中だとしてもこのエリアのプレイヤーまで帰還することが出来ないとしたら?
やべええええええ、これ何処に繋がってんのおおおお!?
「どうしたの?」
脳内で非常に最悪な想定をしていると、様子がおかしいことを訝しんだのだろうか、フィリアが話しかけてきた。ああ、もしかしたらフィリアがこの世界にいる唯一の知り合いなのかもしれない。
「フィリア、俺たちはもしかしたらアダムとイブかもしれない」
「やっぱりあんた、馬鹿の方ね」
失礼な、事態は由々しきことでありますことよ!?
いやもう確かめるしかないんだけどね。何処に繋がってるのかは定かではないし、めっちゃ怖いけど、ここで立ち止まっているよりも出来ることがあるのなら行動した方がいい。でも怖ぇなぁ。向こうで誰もいなかったらどうしよう。いやいや、俺にはフィリアがいるじゃないか!!
「じゃあ帰るか」
「わたしは……一緒に行かないから。あんたは帰りなよ」
断られました。掴もうとしていた蜘蛛の糸は、どうやら天に繋がってなかったようだ。何で!?どうして!? そんなに俺のこと嫌いなんですのん!? アカン、心が折れそう。
「だから……ここでさよなら。あんたと一緒で、結構楽しかった」
「そんな今生の別れみたいな事言うなよ」
どうして帰ろうとしないのか。気になるところではあるが、本人がそう言ってるんだ。俺がどうこう言うことじゃない。
「転移門だっていうなら、またこっちに戻ってこられるだろ。この世界の謎も解けたわけじゃないしな」
たとえば、ボスクラスのモンスターが徘徊していること。適性テストの時のモブも、少し特殊だった。更に言えば、この迷宮区塔も見当たらない。この管理区も含めてアインクラッドの時には無い不思議なことばかりだ。
「そう……不思議だよね」
「後はアレだ、男ってのは宝探しが好きなんだよ。なんかでっかい物が見つかるかもしれないしな。武器でもスキルでも」
「ふふ、そうかもね」
あとついでに言えば、もし向こうに誰もいなかった時に知り合いがいてくれると本当に助かるからフィリアとは縁を切りたくないって言うのが本音だったりする。なんなら理由の9.9割ほどを占めてるまである。ソロは慣れてるけど誰も知り合いが居ないのは流石に寂しい。ほんと、初めて会った時のクラインに改めて感謝するわ。
「……もし来ることがあったらメッセージを頂戴。ここに来るようにするから」
「ああ。……ん? 紋様がなくてもここに来れるのか?」
「うん、試してみたけど、1度開通すれば通るだけは出来るみたい」
あ、だからさっき居なくなってたのね。さっき手分けして調べてた時に、置いてかれたのかと項垂れてたら居たし見間違いかと思ってた。
「了解、来る時は連絡するわ」
「期待しないで待ってる」
「……約束を裏切るのは、もう御免なんだよ」
「え?」
「いいや、なんでもない」
その言葉を最後に転移装置を起動する。光に包まれフィリアの姿が見えなくなる。さてさて、これはいったい何処に繋がってるのかね。
アイツらはまだSAOにいるのだろうか。聞きたいことも言われるであろうことも、想像するだけで愛おしい。出来ることなら、アイツらにまた会いたいもんだ。
そしてフィリア、俺はまた来るぜ。必ずな。
だから────
「またな」
転移した先は、一つの街だった。俺がいる転移装置がある場所はちょっとした祭壇のような形をしていて、それを中心に周りには水路が通っていて水が流れている。水路を囲むように作られた道の傍には芝生や花などもあり、結構華やかなイメージだ。
だがそんな街の様子は二の次だ。今、俺が心から叫びたいことが一つだけある。
人が…………いるっ!!!
それもNPCではない。ちゃんとしたプレイヤーである。俺は1人じゃない、1人じゃないぞおおおおおおお!!
と、喜びに浸りたいところではあるが疑問がある。なぜプレイヤーがいるのだろうか。先ほども述べたようにゲームクリアしたはずではないのか。いや、ここにプレイヤーがいる時点でその可能性は消えるか。
とすれば、ヒースクリフが約束を反故にしたのか? そんなことをするようなやつじゃないはずだが。とは言ってもこのデスゲームに閉じ込めるようなやつだし、やりかねないか。所詮アイツは俺たちにとっては敵なわけだしな。
そもそもアイツが原因とも決まったわけじゃない。今のところその可能性が有力ではあるが。ユイに聞けば何かわかるか?恐らくキリトたちもまだSAOの何処かにいるはずだ。よし、そうと決まれば探しに行くか。
「やっぱり生きてタカ」
と、早速動き出そうとしたところで聞き覚えのある声に話し掛けられた。この何処か特徴的な話し方は……
「アルゴか」
「なんだ、素っ気なイナ」
「いや、マジで今泣きそうなんだが」
知り合いが居てくれて良かった……。内心ではもう流れる事ナイル川の如く、涙涙ですよ。
「聞いタゾ。ラスボス相手に喧嘩売るなんて無茶したらしイナ」
「やらざるを得ない空気になっちまったんだよ。むしろ決闘ふっかけられたのはこっちだし。あれだ、窮鼠猫を噛むってやつだ」
「鼠はオレっちダロ?」
「ああ、噛まれないように気をつけるよ」
むしろこいつは追い詰められなくても噛みそうだよな。てか噛むわ。間違いない。それもガブッと1発じゃなくてジワジワと痛みつけるように噛むタイプ。怖っ、アルゴ怖っ。
「あっ、そうだ」
頭にポンと手を置いてやる。まぁ、なんだ、言わなきゃいけないことがある。戸惑いの表情を見せるアルゴ。
「心配かけて悪かったな」
「……誰も心配したなんて言ってなイヨ」
「俺がそう思ってるからいいんだよ」
「……ショー兄の癖に生意気ダナ」
「何でだよ」
素直じゃないな本当に。ずっと涙目だってことに気づいてないんだろうな。かく言う俺も視界がほぼ涙で埋まってたりする。生きてて良かったと心から思うね。
「この目の前に現れたやつにはyesを押せばいいんダロ?」
「やめてください死んでしまいます」
アルゴ、それドロップやない、ハラスメントコードや。むしろ俺がドロップ(drop)してまう。やっべ、ついユイみたいに頭撫でちまった。押されたら黒鉄宮送りになる。今度こそ死んでしまう、今度は社会的に。
「悪かった、すまんかった、だからやめてくださいお願いします」
「貸し1つナ」
「抜け目ないな」
汚いな、流石アルゴ汚い。
「そうだ、アスナたちは何処にいる?」
「その情報は100コルだナ……と言いたい所だケド、その必要は無さそうダゾ」
「え?」
アルゴが指さしたのは俺の後ろ。振り返ってみればものすごい勢いでこっちに向かってくる人影が1つ。誰もが振り返る美人さんが猛進してくるものだから目立って仕方ないな。
ああ、帰ってきたんだな。俺は、みんなの元へと。
「ショウくん!!」
飛び込んで来るのを迎えると、胸に小さくない衝撃が来る。これが心配させた分だと思うと重く感じるな。
「ただいま、アスナ」
「ショウくん……ショウくん……うぅ……グスン」
おいおい、泣くなよ。こっちまで泣けてくるじゃねぇか。既に涙でいっぱいなんですけどね。
「オレっちはもう行くヨ。お邪魔みたいだからナ」
ごゆっくりどうゾと言って去っていくアルゴ。ああ、本当にありがとうよ。そして悪かったな、心配させて。今度、何かで貸しは返すからな。
「良かった……生きててくれて……本当に良かった……」
「約束したからな、生きて帰るって」
そうだ、俺は生きている。この世界に。いつだったかアスナに言ったことがあったな。認めろ、自分という存在は、確かにこのSAOにあるんだと。その気持ち、思い、全ては本物なんだと。
「アスナ」
「……なに?」
ならば、俺もこの気持ちを認めるとしよう。
「好きだ」
俺は生きているんだから。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「またな……か……」
1人残ったフィリアは、ただ一言口にする。
「転移」
ショウと同じように光に包まれる。しかし、光が消えた時、彼女はまだそこにいた。
──────システムエラーです。《ホロウ・エリア》からは転移出来ません。
流れるアナウンスに、フィリアは落胆と、そして諦めの表情を浮かべる。そして思う。それは言葉となって口から零れる。
「……わたしって、なんなんだろう」
誰もいない空間に、その言葉は響くこともなくただ静かに消えていった。
はい、ここまでです。
ショウ帰還ッ!!ということでようやくホロウ編が動き出した感じですね。ここからフィリア、ホロウ・エリアとどう展開を広げていくのか。乞うご期待!!今考え中です!!