やばいスキルがついちゃった   作:ナストマト

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ホロウ・リアリゼーション……?



帰還

 

 

「んふふ〜♪」

 

 

超がつくほど上機嫌で腕を絡めてくっついてくる少女を引き離す術も度胸も性格も俺は持ち合わせてはいなかった。

 

あの、アスナさん?そんなに密着してこられると、その、胸部装甲の方がですね、こう、防具越しにダイレクトアタックしてくると言いますか。これだと俺もライフで受けるしかない訳でして。未だ思春期である俺には少々刺激が過激で衝撃的でして。俺のロンギヌスの槍もNT-Dしてしまいそうになる訳ですよ。ええい、女性の胸部は化け物か!!

 

いいの? 襲っちゃうよ? スイス銀行に振り込ませるスナイパー宜しくヤっちゃうよ? そんな気概があればいいんですけどね。おいそこ、ヘタレとか言わない。そういえばスイス銀行って実在しないらしいね。日本銀行みたいにあると思ってたわ。

 

 

「あの、アスナさん……?」

 

「な〜に〜?」

 

「男としてこのアガルタを楽しみたいのは山々なんですが、そろそろ離れて頂けると……」

 

「だーめっ♪」

 

「デスヨネー」

 

 

知ってた。でもね、ちょっと状況を考えていただきたくございますお嬢様。ちなみにユイも俺の足に身体を預けてたりする。

 

今俺は76層に新たにオープンしたエギルの店の二階にある部屋のうちの一室にいる。部屋は寝室となっていて1人が泊まるには(ベッドはセミダブル)十分過ぎる広さとなっている。

 

入るだけなら8人ほど入れそうな広さを持つ部屋の中心で、私ことショウは正座をしています。何故って?

 

 

「……ショウさん?」

 

「……ハイ、何でしょうかシリカさん」

 

「アタシ達は心配していました。それはそれは心配していました。75層から帰ってこないショウさんはどこに行っちゃったのかと」

 

「……ハイ」

 

「心配していたのに……どうしてこうなってるんですかああああああああ!?」

 

「うふふ〜♪」

 

「落ち着けシリカ」

 

「原因はショウさんです!!」

 

「ハイ、申し訳ありません」

 

 

つまりはこういうわけだ。シリカに有無を言わさず強制させられたからだよ!!

 

アスナと再会した後、76層のエギルの店へと連れていかれ、そこに待っていたのはキリトたちだった。アスナと同じように再会を喜びあったのだが、一段落した後にシリカに正座するように言われたのだ。

 

いやまぁ心配かけたんだし正座するに抵抗ないというか、むしろしなければならない義務というかだから良いんだけどね。そんな訳でキリトたちを前に正座をしている状況に至る。

 

 

「キリトさんから話は聞きました。どうして1人で無理しちゃうんですか」

 

「いや俺がふっかけた喧嘩だし。それにPvPなら俺が1番強いと思ったし」

 

「そうやっていつも背負い込むんでしょう!!」

 

「適任だと思ったんだよ。でも心配かけたのは悪かった。謝る」

 

 

さっき再会した時なんかずっと泣きながら抱きついて離さなかったし。心苦しかった。こんな小さな子を不安にさせてしまった事に苛立ちも覚えた。それでも、あの時はやらなきゃいけなかったんだ。

 

 

「……はぁ、ショウさんがそう人だっていうのはわかってるからそれはもういいです」

 

「じゃあもう立っていいですかね」

 

「でもそれとこれとは別です!!」

 

「えぇ……」

 

「そのアスナさんはどうしたんですか!?心配していたのに会った時からべったりと!!まるで恋人みたいに!?」

 

「あー、そういうことか。うん、恋人」

 

「……え?」

 

「だから恋人。告られたから気持ち伝えた。俺たち晴れてカップル。OK?」

 

「……」

 

 

うわすげぇ、思考を止めた顔って感じがする。例えるなら(・ω・)みたいな感じ。なんだ?そんなに驚くことか?

 

 

「シリカ?おーい、シリカー?」

 

「……ダメだわ、完全に思考停止してる」

 

 

顔の前でリズが手を振っても全く反応しない。これ大丈夫か? 精神だけしかないのに思考停止って大丈夫なのか?

 

 

「むしろ今まで付き合ってなかったのが驚きよね」

 

「そうか?」

 

「ああ、お似合いだよ」

 

「えへへ〜♪」

 

可愛い。

 

うーん、そう言われると嬉しいんだが、キリトに祝福されるのは何かこう……違和感がある。原作と違うからか、何ていうか……言い知れない心情が……。

 

 

「てかよ、オメェいったいどこにいたんだよ?」

 

 

とクラインが聞いてきた。決して嫉妬して話題を変えた訳では無いのだろう。決して。それより俺も聞きたいことがある。喜んでばかりもいられない。

 

 

「その前に聞かせてくれ。なんで俺生きてるんだ?」

 

「クリスマスイベントの報酬覚えてるか?」

 

「クリスマスイベント……」

 

 

俺は参加しなかったが、話には聞いたな。確か報酬は……ああ、なるほど。

 

 

「生き返らせてくれたってわけか」

 

 

イベント報酬はその名も『還魂の聖晶石』という。還魂のその名の通り、死んだプレイヤーを生き返らすことが出来るというデスゲームとなったこのゲームにおいてぶっ壊れたアイテムだ。俺の回答は的を得ていたようでキリトが頷く。

 

 

「ショウが消えた後すぐにクラインがやってくれたよ」

 

「そうだったのか、ありがとよ」

 

「へへ、良いってことよ」

 

「麻痺ってたのによく動けたな」

 

「ったりめぇよ!女が動けて男が動けないなんて男が廃るぜ!」

 

 

サムズアップしてくるクライン。いや実際凄い事だと思う。システムの枠組みを超えて動ける人がどれほどいるだろうか。てか動けるのかよガバガバじゃねぇかとも思うが気にしない。

 

即断しなければならなかったとはいえ貴重なアイテムを使わせてしまったな。『還魂の聖晶石』はいつでも生き返らせることが出来るわけではなく、HPが0になってから10秒以内でないと効果は発揮されない。それだけに使い勝手が難しいアイテムでもある。……ん?10秒以内?

 

 

「確か10秒以内じゃないとダメなんだったよな?」

 

「ああ、そうだ」

 

「あれ間違いなく10秒以上経ってたよな」

 

「そうなんだよな。ショウが消えちまった後だったから、正直駄目なんじゃないかとも思ったんだよな。いつまで経っても戻って来ないしよ。そんでも、ちゃんとアイテムが使われてたから生き返ってるはずだとは思ってたんだが」

 

 

ふーむ、実際に消える所を何度か見たが、HPが0になったら結構すぐに消えちまうんだよな。それでも俺の時はアスナやキリトたちと言いたいことを言えるくらいには話が出来る余裕があった。どういうことなのだろうか。ヒースクリフが配慮してくれたとか? まさかな。

 

にしても、今の話に少し気になるところがあるんだが。今クラインは俺が生きているかわからなかったと言った。それはおかしい。俺たちにはそれを確認する手段がある。

 

 

「生命の碑を確認すればよかったんじゃないか?」

 

 

生命の碑とは、SAOに囚われた1万人のプレイヤーネームが刻まれたのことだ。死んだプレイヤーの所には横線が入り、言い方は悪いが誰が死んだかを確認する物にもなる。だから俺が生存しているかどうかは一目瞭然だと思うのだが。

 

 

「それがよ、こっから下に降りれねぇんだよ」

 

「……は?」

 

「どうにもシステムの方がおかしくなってるみたいで、76層から下に転移が出来ねぇんだ。ボス部屋からの階段を降りようにもその階段が消えちまってよ」

 

「下に降りる手段は無くなったってことか」

 

 

件の生命の碑があるのは第1層。なるほどね、だから確認出来なかったわけか。それにしても、フローリアとかもう行けなくなると思うと悲しいな。ここに来ている以上76層に上がることは可能なんだろうが、上がったら最後戻れないとか、なにそれ怖い。

 

……でもおかしい。俺は初めて聞くことのはずなのに、どこか知っていたような気がする。デジャ・ビュ?

 

 

「おかげで俺も51層の店を手放す事になっちまった」

 

「アタシもよ。リンダース気に入ってたんだけどな〜」

 

 

エギルとリズがそれぞれ口惜しそうに言う。長い間使ってたんだから愛着もあったろうに、そりゃ悔しいだろうよ。特にリズ。キリトとの出会いを果たした場所だしな。お熱いこった。

 

 

「それで、ショウはいったい何処へ行ってたんだ?」

 

 

キリトに尋ねられる。おっとと、そうだった。

 

 

「何処と言われてもよくわかんないんだよな。気付いたら《ホロウ・エリア》って場所に飛ばされてた」

 

「《ホロウ・エリア》?」

 

 

俺は向こうでのことを話した。目が覚めたら森の中にいてオレンジのプレイヤーに襲われて、と思ったらスカルリーパーが降ってきて、共闘したら和解して、変な模様が浮かんだと思ったら、それ見たことあるとか言ってフィリアが案内してくれて、最終的にはわけのわからん場所に飛んだ。自分で言っててなんだが、短い間に濃い内容を過ごしたな。

 

 

「んで、ようやくこっちに戻って来れたって訳だ」

 

「オレンジのプレイヤーに襲われたって……そのフィリアってのは大丈夫なのか?」

 

「少なくとも悪い奴じゃねぇよ。どういう事情があるのかは知らないけど、良い意味でオレンジらしくない」

 

「……ショウがそういうならそうなんだろうな」

 

 

信頼してくれてるのね。まぁ見る目は悪くないつもりだ。伊達にレッドと戦ってないからな。

 

 

「……ところでショウくん?」

 

 

ここまでほとんど口を出さずに腕に絡み付いていたアスナが話しかけてきた。……あれ、何やら寒気がするな。風邪でも引いたかな?

 

 

「な、何でしょうかアスナさん?」

 

「フィリアさんって……女の子?」

 

「あ、うん、ハイ、そうです」

 

 

ピシリッ。そんな音が聞こえた気がした。アスナさん、笑顔が何か怖いです。それと回した腕に絡みつく力が妙に強くないですかね? これダメージギリギリじゃないですか? 違反ギリギリで寸止めとか何それ器用。

 

 

「う、ウフフフ」

 

「あ、目を覚ました」

 

 

ようやく意識を取り戻したらしいシリカだが、何やら様子がおかしい。おーい、もしもーし。

 

 

「そうですよね。ショウさんはそういう人ですよね。ええ知ってました、知ってましたとも」

 

 

ウフフフフと笑いながら揺れるシリカ。怖い、怖いよシリカ。

 

 

「それにしても《ホロウ・エリア》か。面白そうだな」

 

 

キリトが呟く。

 

 

「やっぱお前もそう思うか」

 

「ああ、未知のエリアなんて聞くだけで冒険心が擽られる」

 

「よし、なら行ってみるか」

 

「ダメです!」

 

 

キリトたちを連れて《ホロウ・エリア》に行こうとしたところでユイに止められた。どうした?

 

 

「パパがいない間、ママはとても悲しそうにしていました。今日は傍にいてあげてください」

 

「あー……」

 

 

そう言われると弱い。まぁ今日じゃなくてもいつでも行けるわけだしな。キリトには悪いが、今日は止しておこう。てかユイの上目遣い可愛い。

 

 

「すまんキリト、今日は無しだ」

 

「良いさ、ショウも疲れてるだろうし、ゆっくり休めよ」

 

「部屋はここを使っていいぞ」

 

「サンキュー」

 

「なぁに、キリトたちも泊めてるんだ。今さ一部屋くらい構わねぇよ」

 

 

ああそうか、下の階層には戻れないんだもんな。店を構えたっていうリズはともかくキリトやアスナはホームが無いのか。あれ、てことはサチもここに泊まるのか? 若い男女が2人、何も起きないはずがなく……。

 

 

「……?何よ?」

 

「強く生きろ」

 

「何言ってるのかわかんないけどその哀れむような視線やめなさい」

 

 

頑張れ……頑張るんだリズ……ッ!!俺は応援してるからな!!

 

 

 

 

 





おまけ

ショウ「で、俺いつまで正座してればいいの?」

シリカ「ウフフフフ」

リズ「これもうどうしようもないわね」


はい、ここまでです。

ホロウフラグメントをやり直してるうちにまだクリアしてない所があることに気付きレベリングしてる最中です。ソロしかダメってキツすぎる。

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