たまにはこんな回があってもいいと思うんだ。
そうだ、買い物に行こう。
理由なんてどうでもいい。人間、ふとアレがやりたいコレがやりたいと思う時があるものだ。人間は唯一、欲に生きる生物なのだから。今がその時だ(cv.影山ヒロノブ)。
てな理由でアークソフィアにて様々な店を物色し始めたのだが、そもそも唐突な発案だったため欲しいものなんて決めちゃいない。何かしらの掘り出し物でもあればラッキー程度の感覚である。ウィンドウショッピングっていうの?
とはいえ、掘り出し物はなかなか見つからないから掘り出し物なわけで、これといって目を引くようなものは見つからずに昼を迎えた。でも陳列してるものを見るだけでも楽しいんだよね。知られざる店も発掘出来るかもしれないし、何より気分転換になる。
しかし、いくら楽しくても気分転換が出来てもお腹は空くわけで。どこかしら店でも入って食べようと思案する。
店を見て回っていたら普段来ることのない所に来ていたようで、エギルの店辺りに比べて人通りはかなり少ない。商売上がったりだが、人が来なくても店が潰れないのがゲームの良いところだよな。NPCだから食い扶持なんて気にしなくていいし。
創作物だとこうした所に隠れた名店があったりするもんだが、リアルだとそうそうないよなぁ。と思ったがよく考えれば今いるのは創作物の中だったぜ。
そこでいいか、と偶然目に止まった店に入ることにした。この世界には食べログも無いしその店の評価なんて人聞き、または自身で確かめるしかない。
入ってみようじゃないか。さぁ、この俺の舌を唸らせろ。うーまーいーぞー!!と言わせてみせろ。
カランコロ-ン
「お帰りなさいま……せ……」
「間違えました」
バタン
んー?見間違えかな?
何かシリカがメイド服を着ていたような……?
いや、腹の虫が見せた幻覚かもしれない。あはは、そこまで腹が減っていたのか。これはいかんな、早く栄養を補給しなければ。再び店内へと入る。
カランコロ-ン
「お帰りなさいませ!!ご主人様!!」
「いや何してんの」
見間違えじゃなかったでござるの巻。えぇ……いや……えぇ……。
「お帰りなさいませ!!ご主人様!!」
「わかった、わかったから。てか何でちょっと怒り気味なんだよ」
「こちらへどうぞ!!ご主人様!!」
「聞けよ」
なんなのこの子。ちゃんと会話のキャッチボールしようよ。投げたボール投げ返してよ。ボールどっか行っちゃってるよ。空き地飛び出して神成さん家のガラス割っちゃってるよ。
未だ立ち尽くす俺の腕を引っ張り強引にテーブル席へと座らせると、シリカは早足で裏の方へと引っ込んでしまった。何やってん?今の何やってん?
ところで
「咲夜さーん!!オーダーいいかな!?」
「はい、ご主人様」
「アイリちゃん!!僕の精気吸い取って!!」
「ウフフ、たっぷりと搾り取って差し上げますわ」
「ナナさーん、疲れてない?」
「だ、大丈夫です!!ナナはまだまだピッチピチで若いですから!!」
「シリカたんprpr」
「「「「おまわりさんコイツです」」」」
ここはアレですか、メイド喫茶とかいうやつですか。こんな人通りの少ない場所に立地してる割に随分と繁盛してるな。どっかで聞いたことのあるような声がするけど、まぁ気のせいだろう。
いや、それはいいんだけど……なんだろう、さっきのやりとりを見ていたのか、やけにコッチに尖った視線が来るな。シリカと親しげに話していたことへの嫉妬か?嫉妬なのか?
「あんたも大変ね」
ん?これまた聞いたことのある声が……隣から?
「ご愁傷さま……それとも、自業自得かしら?」
なんだ、ただのシノンか。
「……いや何でここにいるんだよ」
しかも同じテーブルで。
「買い物をしているうちにお昼時になったからお食事でもと思って。たまたまこの店に入ったらシリカが居たから……無視して出るわけにもいかないじゃない」
「てっきりこういう店が好きなのかと」
「まさか、あんたじゃあるまいし」
「俺だって好きじゃねぇよ」
「あら、そうなの?」
「基本人見知りな俺がこんな所に来れると思うか?」
「嫌な説得力ね……」
行こうと思ったことは何度かある。だが無理なんだ。俺にはレベルが高すぎる。女の子からベタベタと接客されるとか営業とわかっていても無理。場合によっては気を失う自信すらある。
メイドは好きなんだけどなぁ。紅魔館の従者さんとか良いよね。服も良いよね。ウサミンとか冥土へ誘う召使いとか可愛いよね。さっき見た気もするけど。
「シノンはメイド服着ないのか?」
「着るわけないでしょ」
「着てくれ」 キリッ
「あんた戦闘の時より真剣な表情してる自覚ある?」
そりゃ真剣にもなりますよ!!メイドシノン見たいもん!!みんなも見たいよな!!そうだよな!!
すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。風・・・なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、俺たちのほうに。
「ところで、オーダーはまだなのかしら?」
「あ、忘れてた。おーい、シリカー」
「……うぅ、すみません。慌てちゃって、ご注文忘れてました」
「そんなに慌てることもないだろうに」
「だ、だって……まさかショウさんが来ると思わなかったから……」
「ここに入ったのも偶然だからな。こういう店と分かって入ったわけじゃない」
外装もうちょい何とかしろよ。ありきたりな風貌だったから普通の飲食店かと思ったわ。シノンが迷い込むのも無理もないっての。
「で、注文いいか?」
「あ、はい!それではご主人様、お嬢様、こちらからお選びください」
「ご主人様は止めてくれ。なんかこう……イケナイことさせてる様な気になる」
「……」
「どうしたシノン?」
「……これ、本当に注文しなきゃダメかしら」
「……うげっ」
シリカから渡されたメニューには
・メイドのラブラブ1000%オムライス
・あなたにメイドも折れちゃう?ポキポキポッキー
・比叡の気まぐれカレー
・地獄より湧き出し漆黒の聖水〜そよ風を添えて〜
などなど。
oh……マトモなのが一つも見当たらない。地獄から湧き出る聖水って何だよ。なんで水にそよ風添えちゃうんだよ。てかそもそもコレ何なんだよ。
「あ、それコーヒーです」
「最初からそう書けや」
どうエキサイト翻訳したらこうなっちゃうのん?ワニムでもここまでは意訳出来ないよ?
「この中だとカレーが1番マシかしら」
「止めとけシノン。死にたくないならな」
「え?そうなの?」
「シノンさん、店員のあたしが言うのもアレですけど、それだけはやめた方が……」
「じゃあなんでメニューに書くのよ」
「店長が面白いから書いとけって」
「死人を出す気かここの店長は」
俺の知る比叡のカレーとかタダでさえダークマターな物質でしかないのに、さらに気まぐれとか。もはやダークマター通り越して異次元物質になっちゃうんじゃないの?
「あれ?ショウさん、どうして比叡さんのカレーの事を知ってるんですか?」
あ、マズイ。
「あの、アレだよ、噂に聞いたんだよ。圏内なのに状態異常になる魔の物質、その名が比叡のカレーだと」
「ああ、そうだったんですね」
「……え?本当なの?」
「ええ、前に比叡さんのカレーを食べたお客さんが麻痺にかかったらしくて」
なにそれ怖い。まさしく圏内事件。
「でもそのお客さん、刺激があってたまらんとか言って、今ではすっかり常連さんです」
「ニッチな人もいるものね……」
「ニッチ過ぎるだろ……」
怖えよ。何が怖いって比叡もそのお客さんとやらもみんな怖えよ。いいのかそんなもん放ったらかしにして。おい店長、お前に言ってるんだよ。
「じゃあ、1番マトモなのは何かしら?」
「あ、オムライスなら大丈夫ですよ?あたしが作りますし」
「そう、じゃあお願いしようかしら」
「俺もそれで」
「はい!かしこまりました!」
俺たちのオーダーを受けるとシリカは裏へと帰っていった。これから作るのだろうが、このSAOの世界では本当に料理をする訳では無いので、さして時間はかからない。
料理の腕は料理スキルに依存するが、以前、アスナの手伝いがあったとはいえ、S級食材を見事料理して見せたシリカだ。問題ないだろう。
「でも、オムライスなら''大丈夫''って言葉が不安でしかないんだよなぁ」
「やめて、食べる前に印象悪くしないで」
「お待たせしました〜」
「お、来たか」
「……ええと、何してたんですか?」
「暇だから座禅組んでた。結構なトレーニングになるんだぜコレ」
「前にやってるのを見てから続けてるけど、意外と難しいのよね」
鍛錬自体は簡単だ。座禅を組み目を閉じる。そして心の中で火の灯った1本の蝋燭をイメージする。その火が揺れないように只管集中する。まぁよくあるやつだな。
精神鍛錬は基本だ。いざという時に乱して力を発揮できなかったらいくらLv.を上げてても意味無いからな。かと言って他を怠るのも良くない。心·技·体、合わさってようやく力を発揮できるのだ。
「2人とも、特徴的なこの店でもかなり浮いてますよ?」
「俺はもう慣れてるし」
「私は気にしないから」
「聞いたあたしが悪かったです」
お前恥ずかしがり屋なんじゃないのかって?流石にもう慣れたわ。色々と目立ち過ぎた。好奇の視線に晒され続けた経験を舐めるなよ。でもやっぱ恥ずかしい。うわ、周りのヤツらめっちゃ見てるよ。集中しすぎて全然気づかなかったわ。
「こちらがオムライスになります」
「へぇ、よく出来てるな」
「うふふ、まだこれで完成じゃないですよ?」
「え?」
そう言って取り出したのはケチャップ。ああ、オムライスにケチャップは定番だな。お好みでかけてくださいってことか。
「いきますよ〜」
「ん?」
あれ?お前がかけるの?まぁいいか、店の人だしオススメの分量とかあるんだろうな。
「シ・ョ・ウ・L・O・V・E・♡」
「ちょっと座禅してくるわ」
「ええ!?」
煩悩退散一意専心一心不乱只管打坐焼肉定食煩悩ボボボボボボ……
「ショウさーん!!帰って来てくださーい!!」ユサユサ
「ハッ!?俺はいったいなにを!?」
「どれだけ動揺してるのよ……」
い、いかん。落ち着け俺。ここはそういう店なのだ。こういうことはむしろ接客として当然のことであって俺だけではないのだ。あそこの奴やこっちの奴のような客に対しても同じことをしているに違いない。
何それイラッとする。
「シリカ!!」
「は、はい!?」
「こんなことは俺以外の男にはするな、いいな!!」
「え、ええ!?それってどういう……」
「また何か始まったわね」
なんだろう、こう、一人娘に彼氏が出来たと聞かされた時のようなこの何とも言えない感情は。いけません!!まだまだ他の男になんか渡しませんよ!!親父か俺は。
「そもそもショウさんだけにしかしないですし……」ボソボソ
「ねぇ、もういい加減食べない?私お腹空いちゃって」
「そうだな、頂くとしようか」
「あ、ちょっと待ってください」
俺の皿に置かれているスプーンを何故かシリカが取ると、そのままオムライスへと直交。ちょっと待て、それ俺のオムライスだぞ。
と思ったのも束の間。少し掬い持ち上げたオムライスをフーフーと少し冷ますと、それを俺の口元へと差し出してきた。これは……
「はい、あーん」
「まだぶっこむかお前は」
「これもサービスなんです!!周りを見てください。他にやってる人もいるでしょう?」
「……うわ、マジでやってるよ」
「でしょう?はい、あーん」
「えぇ……」
「やったらいいじゃない。あくまでサービスなんでしょう?」
そ、そうだな。これはサービスなんだ、あくまでサービス(合理化)。でも何となく心の中でアスナに謝っておこう。すまんアスナ。
「あ、あーん」 パクッ
「どうですか?」
「……美味いな」
「よかった〜」
美味しいんだけど、どうにも味よりも恥ずかしさの方が先に伝わると言いますか。正直味わうどころじゃないと言いますか。いや、美味しいんだけどね。
「じゃあ次はシノンの番だな」
「え?」
「え?い、いいわよ、私は」
「心配すんな、これはサービスなんだ」
「あんた、絶対楽しんでるでしょ」
「お互い様だろ」
お前だって俺の時楽しんでただろうが。ニヤニヤしてんの見てたぞコノヤロー。
「シリカ言ってたもんな?俺だけじゃなくて他の人もやってるって」
「そ、それはそうですけど……」
「そう、サービス。これはサービスなんだ。仕方のない事なんだ。シリカは何も悪くない」
「……ああんもう、シノンさん!ほら口開けて!あーん!はい、あーん!」
「ちょっと、なにヤケになってるのよ!?」
「何ですか!?私のオムライスが食べられないって言うんですか!?」
「なに酔っ払った上司みたいなこと言ってんだコイツは」
「ほら早くしてください!!じゃないとあたしが食べちゃいますよ!?」
「何なのよその脅し方は……はぁ、わかったわよ。食べればいいんでしょ食べれば」
おっと、まさかシノンが折れるとは。弄れるだけ弄ったら止めようかと思ったけど、これはこれで面白い。
「行きますよ!はい、あーん!」
「あ、あーん……」
ハムッ カシャ
「……ショウさん?何してるんですか?」
「面白いもん見れたからみんなにも見せてやろうと思って。写真取っといた(メモリークリスタル画像保存Ver.)」
「ちょっと、それ渡しなさい!!」
「ショウさん!渡してください!」
「やなこった!」
脱兎の如く駆け出す。
「「待ちなさい(待ってください)!!」」
「俺にスピードで追いつけるとでも思っているのか」
「皆さん、捕まえてくれたらオムライスご馳走します!!」
「「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」」
「ちょ待って店の中だから逃げきれないから無理流石に無理」
その後、めちゃくちゃ謝った。
はい、ここまでです。
一応言っておくと他作品のキャラはあくまでネタなんで本当にいると思わないでください。何かもうぶち込みたくて仕方なかったんです許してください!
あと気分転換に俺ガイル×ドラえもんの小説投稿したんで良ければそちらもどうぞ。