やばいスキルがついちゃった   作:ナストマト

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クリスマスが今年もやってくる(絶望)



暗雲

 

 

前にも述べたが、ホロウ・エリアは大きく5つのエリアに分かれている。今俺たちがいるのは森林エリアだが、現段階で他のエリアに進むことは出来ない。

 

何故かといえば、別のエリアに続いているであろう道を、変な紋様が浮かび上がった透明な壁によって分断されているからである。これは一つではなく複数の場所に存在している。

 

その壁に窪みがあるだが、フィリアから貰った首飾りを憶えているだろうか(40話参照)。その首飾りの形とそっくりなのだ。これはと思い首飾りを嵌め込んでみるが、何の反応もなく壁は開かれず、結局先に進むことは出来なかった。

 

形がピッタリだったし、嵌め込むことは間違っていないはず。恐らく何かしらのギミックがまだ隠されているのだと予想する。これだけ広いエリアなのだ。まさかただのスイッチなどという安易なものではあるまい。

 

というわけで、色々と巡り巡った結果に辿り着いたのが

 

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

 

目の前のエリアボスである。

 

巨大な狼のような獣。頭に角を生やし背中には棘のついた鎧のようなものを付け、体の色は全体的に黒く禍々しい。

 

炎を吐き出したり長い尾を叩きつけてきたりとモンスターとしては一般的なモーションがほとんどだが、体力が多い。HPバー3本である。フロアボス並だ。ましてやフロアボス攻略と違い、挑むのは俺とフィリアの2人だけ。きっつい、マジきっつい。

 

今では残り1本を残すのみ。だが、フロアボス同様レッドゾーンになった途端にモーションを変えてきた。しかも防御力が格段に上昇し、タダでさえ一撃が小さい短剣と刀の攻撃がほとんど通らなくなってしまった。

 

持久戦も覚悟したちょうどその時、ボスが一回転し、太く長い尾をしならせ、フィリアに叩きつけようとした。

 

 

「フィリア!スイッチ!」

 

「了解!」

 

 

そのモーションを察知した俺はスイッチを呼びかけ、フィリアと入れ替わりボスの前に立った。

 

振るわれる巨大な尾。空気を切り裂く音が聞こえる。硬さも増した分威力も上がっただろう。だが、ならばやり方はある。

 

刀の刃に迫り来る尾を乗せる。鋭い金属音が響かせながら、刃の上を滑っていく。強化が仇になったな。硬くなった分、よく滑ること滑ること。

 

反対へと受け流すと、勢いを乗せた攻撃だっただけにボスは体勢を崩した。しかし、身体が少し傾いた程度である。こんな感じで4本足は大きくバランスを崩さないから厄介だ。

 

だが、俺にはそれだけ隙があれば十分だ。いい加減疲れてるんだ、ここで終わらせる。

 

心なしか、攻撃が躱されたことに驚愕した表情を浮かべるその顔面へと抜刀術《蜻蛉》(8話参照)を放つ。ボスの顔面に横一線に傷が入る。

 

7mもあるこの斬撃なら内部にまで届くと思ったのだが、どうやら表面だけでなく筋肉までも強化しているらしい。深い場所まで斬ることが出来なかった。体力も削りきれず、少しばかり残ってしまった。

 

 

「ショウ!」

 

 

フィリアが叫ぶ。渾身の一撃が決まらなかったのだ。この後訪れるのは硬直。そうすれば紙装甲の俺は簡単に屠られるだろう。それを阻止しようとしてか、駆け寄って来る音が聞こえる。

 

ニヤリとボスが笑った気がした。お前の負けだとでも言いたいのか。勝ち誇ったような顔しやがって。

 

 

だとしたら残念だったな。

 

 

刀が振り抜かれた体制から右足を軸に回転。それに伴い刀に再び光が灯る。

 

刀の下級ソードスキル《旋車》。

 

光の軌跡は先ほどの抜刀術が付けた痕跡を見事になぞった。内部の方が脆いものだ。いくら強化してても傷口に喰らうのはキツイだろう。

 

残りわずかだったHPは吸い込まれるように赤色は消えていき、ボスは声を上げ大きく仰け反り、そして散っていった。

 

 

 

 

今までの喧騒が嘘だったかのように静寂が辺りを包む。眼前に広がるボス部屋は、荒廃した教会に映える木々、そこから漏れ出す陽の光が幻想的な空間を作り出していた。

 

それでもどこか物足りない、寂寥感があった。どこかピースが欠けているようなそんな感覚。

 

部屋に入った時を思い出す。あの時は確かに厳かな領域だった。やはりここはボスの鎮座する場所なのだと思う。ボスがこの部屋にいて初めてこの場所は完成するのだ。

 

それはともかくとして

 

 

「はぁ、やっと終わったか」

 

 

ようやく終わったよ、長いんだよマジで。あそこまで硬いのは今までにも居なかったんじゃないか?

 

エリア毎にボスがいるとしたらあと4体もこんなのと戦わなきゃならないのか。しかも2人で。うわ、きついな。

 

なんにせよ無事に勝ててよかったな。疲れたけど。疲れたけど。大事な事だから(ry。

 

 

「……」

 

「……ん?どした?」

 

 

気づけばフィリアがポカーンとした顔でこっちを見ていた。どうしたの? 新しい技でも覚えたの? 1、2のポカンなの? あれってどうやって忘れさせてるんだろうね。ゲンコツ?

 

 

「……今のなに?」

 

「今の?」

 

「だから!ソードスキルを連続でやったでしょ!」

 

「あ、ああ。何事かと思ったらそんな事か」

 

 

なんてことは無い。タネも仕掛けもある訳じゃない。ただシステムに則っただけだ。

 

 

「スキルコネクトだよ」

 

「スキル……コネクト……?」

 

「ソードスキルの適切なタイミングに合わせて次のソードスキルの動きに繋げるんだ。そうすることで連続して発動出来る」

 

 

ヒースクリフとの戦いの時に用いたのもこれだ。繋げるのにかなりの集中力を要するし、繋げた分の硬直がプラスされる。

 

繋げようと思えばどのソードスキルからでも繋げられるはずだが、システムアシストの上書きをするので相当の力を込めなくてはならない。しかもそのタイミングもかなりシビア。だから繋げるのにもソードスキル同士の相性によって難易度は変わる。

 

だがその欠点を補って余りある技だ。仮に今のように止めを刺せずHPが残ってしまった場合に起死回生の一撃を加えることが出来るのだから、生存率はぐっと上がる。

 

 

「ソードスキルを繋げる……そんな事が出来るなんて……」

 

「やろうと思えばフィリアにも出来ると思うぜ?」

 

 

原作ではキリトがキャリバー編でやってたな。クラインの驚き方からしてよっぽど異質な物だったんだろうが、考えが及ばなかっただけで多分みんな出来ると思うんだよなぁ。意味合いは違うけどコロンブスの卵みたいに。

 

 

「さ、行こうぜ。これで次のエリアに進めるようになったはずだ」

 

「あ、うん。そうだね」

 

 

俺たちはボス部屋を出ると、モブと戦うのも億劫なので隠密スキルを全力で駆使して教会の外へ。無駄に高い隠密が役に立ったな。フィリアもソロでやっていただけに流石と言うべきか。

 

外に出るとようやく開放された感じがする。ああ、空気がうまい。星三つです。

 

ぐ〜っと伸びをすると背筋がバキバキと音を立てているような気がした。もちろんゲームだから気のせいだけど、それぐらい疲れた。

 

 

「でも、よく勝てたね」

 

「それも2人でな」

 

 

ソロなら絶対にやりたくない。HPゲージ3本に1人で挑むとかバカとしか思えないわ。蛮勇が過ぎる。おいキリト、お前だよ。

 

 

「……やっぱりショウは強いね。強いのは分かってたけど、改めて感じた」

 

「それなりにな。PvPなら負けない自信はあるが」

 

「ふふっ、確かにやりたくない」

 

「でもまぁ、俺1人じゃきっと倒せなかっただろうな。フィリアのおかげだ」

 

「そ、そんなことない……あたしなんてまだまだだよ……」

 

「謙遜すんなって。フィリアは強い。攻略組の俺が言うんだから間違いない」

 

「……うん、ありがとう」

 

 

感謝の言葉とともに優しく微笑むフィリア。うぉ、なかなかの破壊力。かわいいなちくしょう。危うくトキメキかけたぜ。

 

 

「んじゃ、あの場所へ行こうぜ。今度こそ行けるはずだ」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

再び次のエリアへと繋がるはずの場所へとやって来た。透けて見える壁の向こうには大きな橋がかかっており、その先は島のようなものが浮遊している。恐らくアレが浮遊遺跡エリアだろう。未知のエリア……期待に胸が膨らむな。

 

 

「よし、行くぞ……」

 

 

首飾りを取り出す。ボスを倒したからだろうか、首飾りが光を放っている。如何にも効果がありそうな雰囲気を醸し出している。

 

これで条件は満たしているはず。いざ!

 

今1度首飾りを嵌め込む。1度ダメだったこともあり、やや不安である。だ、大丈夫だよね? これで開くよね?もう一体ボス倒せとか言われても困るぞ?

 

だがそれは杞憂に終わった。前回は無反応だったが、今回は点滅を始めたかと思うと、最後に大きく光り、気づくと壁は無くなっていた。

 

成功したのだ。

 

 

「やったね!」

 

「おう!」

 

 

ハイタッチを交わす。フィリアは俺より長くホロウ・エリアに関わってきたのだからその喜びは一入だろう。良きかな良きかな。俺も嬉しいですぜ。

 

ポトリという音と共にはめ込んだ首飾りが、壁が無くなったことで地面に落ちた。だが、はめ込む時に放っていた光は消え失せている。とすると、また次のエリアでもボスを倒さないといけないのか(絶望)。

 

 

ちなみに、後に分かることだが、エリアボスを倒しギミックを解除したにも関わらず、他の場所は開かれなかった。光っている状態の首飾りをはめ込んでも開かない。恐らく進むべき順番があると思う。アインクラッドの階層の一つずつ登るように、このホロウ・エリアも一つずつエリアを進まなくてはならないのだ。もうプレイヤーにやらせる前提だよねコレ。

 

 

さて、まだ時間はあるけど今日はここまでにしとくか。ボス戦もあったし、疲れの残った状態で行っても何かあった時に対応出来ないと困るしな。何の情報もない未知のエリアなんだ。万全の状態で行かないと。

 

「今日はここまでにしとくか。ボス戦で疲れてるし、お楽しみは明日ってことで」

 

「うん、そうだね」

 

「それにしてもようやく先に進めたな」

 

「……本当、ショウのおかげだよ。あたし1人じゃ、きっとダメだった」

 

「何言ってんだ、この首飾りを見つけたのはフィリアだろうが。隠し部屋が見つからなければ次のエリアに進めなかったんだし、どう考えてもお前の手柄だろ」

 

「でも1人じゃボスは倒せなかった。ううん、それどころか、先に進むことすら出来なかったと思う」

 

「ああもう、わかったわかった。これは俺たち2人の結果だ。それでいいな?」

 

「……なーにその投げやりな感じ」

 

「だって埒が明かないし、それでいいだろ。言わなかったか? 面倒なのは嫌いなんだ」

 

「それってあたしが面倒くさいってこと?」

 

「いやそういう事じゃなくてだな……ええと……」

 

「……ふふっ、ショウって時々可愛いよね」

 

「よしてくれ恥ずかしい」

 

 

どうして俺が辱められにゃならんのだ。それに、男なら可愛いよりカッコいいと言われたい。

 

うーむ、顔は悪くないと思うんだがなぁ。つまり普段がダメだと? 何言ってやがる。面倒なのは嫌いって言ったり働きたくないって言ったりアスナの家に居候したりもう完全にダメ男ですありがとうございました。

 

 

「んじゃ帰るか」

 

「うん」

 

 

帰ったら思いっきり昼寝しよう。そう思いながらちょうど近くにある転移装置(初めて管理区に行く時に使ったヤツ。各地にある)で管理区に戻ろうと──

 

 

「……ん?」

 

「……どうしたの?」

 

「何か変な音が聞こえないか?」

 

「変な音?」

 

 

モンスターの鳴き声が響く中に、どこか異質な物音が混じっている気がする。気のせいか? ただの鳴き声か?

 

 

「……いや違う」

 

 

微かに聞こえるこれは……悲鳴。

 

 

「ショウ!?」

 

 

そう判断した瞬間、その方向へと駆け出した。フィリアを置いていくことになってしまうが許せ。

 

声は未だに聞こえる。絶叫。恐怖に慄いているのを感じさせる。その声を頼りに木々を躱し駆けて行く。その間に考える。悲鳴? こんな所で? 誰が? なぜ?

 

憶測が頭を駆け巡る。だがそれは正直どうでもいいこと。悲鳴が聞こえたなら困っている人がいるということ。今はそれだけの理由があればいい。それだけで駆けつけるに値する。

 

木々の間を抜けていくと、それほど遠くない場所に少し開けた空間が見えてきた。そこには4人の人影が見える。1人は倒れ込み、黒いローブを被った3人はその人を取り囲んでいる。

 

否、ただ取り囲んでいるだけではない。3人の手に持つそれぞれの得物。それが次々に倒れ込んでいる人へと叩き込まれていく。一方的な虐待。動けないのか、倒れ込んでいるプレイヤーは何もせずただ攻撃を受け続ける。

 

もはや悲鳴は無くなっている。自らに起きている出来事を諦観するしかなかった。

 

止めとばかりに1人が高く曲刀を振りあげる。ニヤリとより一層強まった笑みがその男の表面に浮かぶ。直後の妄想でもしているのだろう。人が死ぬ光景に笑えるコイツは……狂ってる。

 

そして振りあげた腕が下ろされる。

 

 

「……?」

 

 

だが、下ろしたはずの腕が見えない。おかしい。本当ならコイツは死んでいるはずだ。なのに、なぜ、コイツは生きている。そう思っている事だろう。貼り付けられた笑みが徐々に消えていく。

 

ボトッ、と重い音が男の足元で鳴る。反射的に音の主を見やる。

 

曲刀を握った腕が地面に落ちていた。

 

瞬間、男は飛び退き、こちらに気づく。

 

ようやく理解したか。それは俺が切り落としたお前の腕だよ。

 

 

「……お前は」

 

「凡夫に名乗る気はねぇな」

 

「……チッ、ここは引くぞ」

 

「逃がすと思うか?」

 

 

曲刀を持っていた男がリーダー格だろうか。指示すると即座に撤退を開始した。だがそれを逃がすほど俺は甘くない。そうだな、足を切り落とすか。

 

その刹那、足元に何かが転がってきた。

 

照光(しょうこう)結晶である。

 

使用すれば対象者の暗闇状態を回復させることの出来るアイテムだ。目の前が真っ暗である時に、無理やり暗闇に明かりを照らし暗闇状態を解除させる。便利なアイテムであることは間違いない。

 

ただし、対象者が暗闇状態出ない時は話が別だ。

 

照光結晶だと気づいた時にはもう遅かった。

 

 

「しまっ────」

 

 

照光結晶から光が溢れる。目を閉じるのが間に合わず目に光が入る。目の奥が痛くなるような錯覚。それと同時に白く染まる視界。

 

完全に目を潰された。白く染まった視界には何も映されない。何も見えない。これでは追いかけようにも追いかけることが出来ない。

 

 

「くそったれ!」

 

 

完全に油断していた。あの3人がアイテムを落とすところは見えなかった。3人だけじゃなかったんだ。他にいたもう1人が俺の目を潰し、3人を逃がした。くそ、勝手に3人と決めつけていた俺のミスだ。

 

 

「ショウ!!」

 

 

フィリアの声が聞こえる。ここまで追いかけてきたのか。だが、グッドタイミングだ。

 

 

「フィリア!回生結晶を!」

 

「うん!」

 

 

俺が声をかけると、すぐに視界に色が戻ってくる。すぐさま辺りを見渡すが、あいつらはもういない。

 

……逃がしたか。

 

 

「……そうだ、さっきの人は!?」

 

 

だが周りを見渡しても倒れていたはずの人はどこにも見当たらない。

 

 

「ショウ……その……」

 

「……そうか」

 

 

あの人は全く逃げようともしなかった。麻痺状態にされていたのだろう。それと恐らく、毒。

 

 

「ショウ、さっきのやつらはいったい誰なの?」

 

 

誰?

 

状態異常にして周到に殺人をするこの手口。

 

誰かなんて決まっている。

 

架空の喉が、確かな乾きを感じる。

 

汗が滲む。

 

手が震える。

 

乾いた唇を動かし声にする。

 

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)だ」

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

照光結晶の設定に関しては完全オリジナルです。だってこうでもしないとショウから逃げられないんだもん(白目)。

最後の回生結晶は状態異常を全て回復出来るアイテムです。これはゲームにも存在します。ショウがかかった状態異常は暗闇もどきですが暗闇ではないので回復するのにはこのアイテムしかありません。


さて、筆者はようやくアリシゼーションを読み終えました。感想として言いたいのは一つだけ。

アリスめっちゃ可愛い。


あとドラえもん×俺ガイルの方も更新してます。
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