勘違いして書き直し、また勘違いして書き直しました。
アインクラッド攻略の帰り道、唐突に地面が揺れ始める。徐々に大きくなっていく揺れ。
「また地震か」
今が戦闘中でなくてよかったと思いながら、地面に手と膝を着き、揺れに耐える。そこそこ大きめの揺れがしばらく続いた後、ゆっくりと収まっていった。
安堵と不安から、大きくため息を付く。
これは決して日本人だから地震に慣れているという訳では無い。そもそもゲームの中なんだから、所謂地学的な地震なんて起きるわけが無い。アインクラッドは浮遊城でもある。浮いているのだ。普通なら起きるはずがない。普通なら。
それが今では当たり前のように起きている。
ヒースクリフを倒し、76層に来た時からちょこちょこと発生し始めたこの地震は、初めのうちはたまに起こる程度だったが、最近頻発するようになった。
最初は何かイベントの予兆かとも噂された。しかし、80層を攻略中の今現在、それと関連していると思しきイベントは起きていない。こんなことは今までに無かった。長期イベントにしても流石に予兆が長すぎる。
であれば何なのか。この世界はゲームだ。意味が無いことなど無い。全てが何らかに繋がる。この地震も何かがあるはずなのだ。だからこそ、何も起きていないことに不安が募る。何も無ければいい、普通のイベントならいい、などと楽観的になれるような性格はしていない。それは大多数のプレイヤーがそうだと思う。
とはいえ、事実として今は何も起きていない訳で。静観するしかないのだ。
「もどかしいな...」
また1つ、大きなため息を付いた。
「あ、ショウくん!」
アークソフィアに転移すると、転移門の近くにアスナとシノンがいた。2人ともちゃんとした装備をしているけど、どうしたんだ。
「攻略の帰り?お疲れ様」
「おう。2人は何してるんだ?」
「シノのんの《射撃》スキル初実践にね。熟練度もそろそろ大丈夫かなと思って」
「もうそこまで上がったのか。早いな」
「1人だと不安だし、ちょうどアスナが暇してたから」
見ての通り2人はとても仲がいい。シノのんというあだ名で読んでいる辺りからも伺える。思えばアスナが1番シノンに近づいたのが早かったな。シノのんってあだ名つけたのもアスナだし。何故か俺もシノのんって呼んだら怒られたけど。解せぬ。
ていうかシノのんってあだ名の語感良いよなシノのん。テロロンってリズムがいいよなシノのん。可愛いしなシノのん。
本来ならシノンはレベルがそこまで高くないから、もう少し下の階層で熟練度を上げるべきなのだが、今は原因不明のバグで76層より下に行けない。だから効率は悪いものの、アークソフィアの訓練施設で少しずつ上げていった。
にしても、ついに熟練度が追いついたか。ずっと気になってたんだよな《射撃》スキル。うーん、見たい!
「俺もついて行っていいか?」
「私は構わないけど、そっちこそいいの?攻略の帰りでしょう」
「平気平気。これくらいでへばったりしねえよ。ていうか《射撃》スキルが見たい。めっちゃ見たい早く見たい見せてください」
「冷静に興奮するって初めて見たわよ...」
「気持ちはわかるけどね。だってユニークスキルだもん」
「そういうものなの?」
「うん、この世界だと珍しいことが正しく希少だから。データで管理されてるからいくら強請っても手に入らないものは入らないし、それがユニークスキルだと尚更ね。その人の唯一無二のなんだもの」
「そういうこと。未だ見たことないスキルをシノの...ンンっ、シノンが発現させたんだから、そりゃ興味はそそられるって」
「アンタ今シノのんって言いかけたわよね」
やっべ、さっきまでシノのんシノのん心の中で連呼してたら口に出てた。
「え、ええと、この階層で試すのか?」
「そのつもり。いきなり最前線で試す訳にもいかないし、まずは色々確かめることが大事だしね。本当はもっと下の階層に行ければいいんだけど」
「行けないもんはしゃあないな。なら護衛は多い方が良いだろうし、やっぱ俺も付いてくわ、うん」
「御為倒しに理由付けしたわね」
「いやまぁ事実だし」
初実践がこんな上層なんて不安も不安よ。俺とアスナがいれば大丈夫だとは思うけども。万が一の時は俺が殿を勤めればいいし。
「準備は出来てるのか?装備やアイテムは確認したか?」
「ええ、アスナにも確認してもらったから大丈夫」
「よし。じゃあ行くか」
やっぱり1番興奮するのはユニークスキルを見ることだね。間違いないね。
てことでやって来ました76階層のフィールドでございます。今回はお試しだし簡単な相手が良いよな。お、《フレイジー・ボア》か。丁度いい相手がいるじゃん。
「アイツでいいだろ。イノシシ型のモブだから複雑な動きもしない。基本的に直線的に動くから狙いもつけやすい」
「わかったわ」
どうやらまだこちらに気づいていないようだ。うろついているだけの相手なら、動きも遅くやりやすいだろう。
距離はだいたい30m。フゥとゆっくり息を吐き、キリキリと音を立てて矢を番えるシノン。息を吸って止めるより、息を吐いたほうが余計な力が入らず震えないのだ。カメラで撮る時はおすすめ。
また、射法八節というものがある。簡単に言えば、矢を放つための8つの基本動作のことだ。足踏み、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残心、の8つからなっていて 、主に弓道では真っ先にこれを教えられる。というのも、残心は抜きしてもこれが狙いやすい形だからである。
じゃあこの世界でも同じようにすればいいかと言われたらそうでは無い。そもそも、モンスターが襲ってくるのにいちいち足踏みして〜、残心で〜、なんて悠長にやっていられるわけが無い。
だからか、弓を構える姿勢さえとれば、ある程度のエイム精度と力加減はシステムが補助してくれるのだ。というのはシノン談。とはいえあくまで補助。だいたいのことは自分でやらなければならないらしい。
つまり、これはシノンの実力ということだ。
『プギィィィィイイ!!???』
「おみごと」
放たれた矢は撓むことなく真っ直ぐ飛び、横を向いていたその胴体の真ん中へと突き刺さった。ダーツならBULLだな。20点。
「凄いよシノのん!1発で当てちゃうなんて!」
「ありがとう、でも...」
『ブルルルゥ!フゴッ!』
那須与一の如く1発でひゃうふっと射たシノンだが、これで今夜はぼたん鍋よ〜、とはならないのがこのHP制の世界なわけで。ちょっぴりHPが減っただけでまだまだ元気にこちらに向けて威嚇をしてくるイノシシくん。
「あんまり削れてないな。シノン、頭狙えるか?俺がタゲをとるから」
「やってみる」
こっちに突っ込んでくるボアのヘイトを稼ぎ、自分を追わせてぐるっと半周させ、再びシノンに正面を向くように仕向けた。Cの字になるような動きね。最後に上から C↓ こんな感じ。
「いくぞシノン」
さっきシノンが射抜いたのと同じ距離に立ち、ボアが突っ込んで来たのをギリギリで避ける。すると、背後から来た矢がボアの眉間へと突き刺さった。ジャストミート。
いやすげえなオイ。ウィリアム・テルかロビンフッドかよ。シノンさんマジゴルゴ13。
『ブモッ!?フゴゴゴッ!』
「はいお疲れさん」
うーん、こんなもんか。まぁレベルもまだまだだしな。
実験台になってもらったボアには深く感謝して倒してやる。後2秒くらいは覚えておいてやるよ。サンキュー牛くん。あれ、鹿だっけ?
「お疲れシノン、撃って見た感じどうよ?」
「よく手に馴染むわ。上手く言えないけど、なんて言うか、これが私の武器って感じ」
「感覚的な部分は大事だぞ。性能も勿論だけど、戦闘での憂いはちょっとでも無くした方がいいしな」
「使い慣れてないとリーチが違って間合いを間違えることもあるもんね」
俺はそういうのは無いが、アスナみたいなレイピア使いや刀使いにはよくあるらしいな。片手剣とか両手剣だと太さが違って感覚が狂うとかもよく聞く。
片手棍みたいなハンマー使いはあまり無いらしい。重心が先にあるから感覚的にわかるのよね、とはリズ談。
その点、シノンはあれだけの腕前を披露しただけあって良い感触なのだろう。
「でももう少しダメージが欲しいわね。あれじゃあ居なくても同じようなものよ」
「レベルも熟練度もまだまだ低いからしゃーない。でも居なくても同じなんてことはねえよ。遠距離からヘイトを稼いでくれるだけでもこっちはやりやすくなるし、ソードスキル使えばダメージも出るだろ。武器だってもっと良いやつがドロップするかもしれないし、これからこれから」
「そうだよシノのん。私も手伝うから、一緒に頑張ろう?」
「ええ」
いやー、いいもん見れた。やっぱかっこいいな《射撃》スキル。あのピンと張り詰めたような雰囲気が好きだわ。シノンも凄く似合ってたな。思わず見蕩れちまった。俺でなきゃ惚れちゃうね。
「どうする?もうちょいやってくか?」
「そうね、お願いするわ」
「じゃあ今度は私がタゲを取るね」
そう言ってアスナが駆け出していく。
《射撃》スキルはチャクラムのように投擲武器ではないから、矢が尽きない限り遠距離から連続して攻撃が出来る。弾かれて手元に戻ってこないという心配もない。しかも、接近されたら弓を背中に背負い直せば、別の武器(シノンの場合は短剣)と即座に切り替えができる。
つまり、リスクが少ないスキルと言える。
言ってはなんだが、チャクラムの上位互換だ。もちろん、チャクラムの方が上回っている部分もあるが、弾かれた場合のリスクがデカすぎる。だからボス戦では計算に入れづらいのだ。
それは多くのプレイヤーの共通認識で、現にチャクラム使いはほとんどおらず、攻略組に限ってはゼロだ。
持つだけ持って投げるだけではダメージはもちろん、ヘイト稼ぎにもならない。そもそもチャクラムを使うためには《投剣》スキルと《体術》スキルが必要だ。これはチャクラムが投擲武器のためである。投げるという許可、投げるための動作の2段階認証を踏まなければチャクラムを使うことはできないのだ。
《投剣》はともかく《体術》を取っている人はあまりいない。理由は簡単。武器を使う方が強いから。
ただでさえその2つのスキルスロットを埋めるのに、さらにチャクラムのスキルを取って熟練度を上げるのは、時間もスキルスロットももったいない。見合うだけのメリットが無い。だからチャクラム使いが少ないのだ。
《射撃》スキルは強い。今後シノンは、攻略の大きな戦力になる。今はまだ何もかも足りていない。しかし頭角を現すのに時間はかからないだろう。
いずれ隣合って戦うことになるかもしれない。
ああ楽しみだ。期待に胸が膨らむ。
「期待してる」
思わず口をつついて出た言葉にシノンは──
「任せて」
強気な笑みで返した。
…やっぱカッコイイわ。俺でなきゃ惚れちゃうね。
最初アルベリヒを出そうとして、いやまだはええわ、と思い直して書き直し。
それからシノンの初実践にしようと思って途中まで書いてたら、あれ?前に外に出てね?と思って読み返したらやっぱり出てたので書き直し。
なんで自分の小説なのに忘れてんねん。
前回投稿してから日間ランキングで8位になってました。くっそビビりました。3日後に消えてました。泣きながら執筆してました。そしたら1週間後くらいにまた15位くらいになってました。どうなってんねん。
感想は全部読ませていただいています。
本当にありがとうございます。
ただ、それに対していらんことを意図せずとも言ってしまうのは嫌なので、返信は気が向いたらにします。
だから感想は下さい(土下座)
評価とお気に入りも下さい (土下寝)