最強魔法少女はニチアサ枠から引退したい 作:おすすめのプリキュアは何ですか
ユラリの一人称打ちにくくて正直後悔しています。
でもこのTS仕草のある一人称が可愛いと思いませんか?私は思います。
「店長、売れるために新メニュー考えました」
「聞くだけ聞くね」
「竜田揚げ」
「却下」
その尻尾竜田揚げにしてやるぞ、って言おうとしたけど、流石にセクハラな気がしたのでやめた。
でも喫茶店の新メニューで竜田揚げって。せめてパンか米つけないと嫌だろ。何が悲しくてコーヒーと竜田揚げを合わせて食べるんだよ。合うのそれ?
「じゃあ店長も何か考えてくださいよ。いい加減本当にこの店潰れますよ?」
キヨラちゃんの口調からはおどけが抜け、本気で心配し、本気で
い、言われなくてもちゃんと新メニューは考えたもん。パンケーキとか。誰も頼まないけど。
それに人だって、キヨラちゃんのいない平日の昼間とかに、たまに来たりしてるんだ。
……何故かみんな、コーヒーを飲み終わるとスッキリした顔をして、もう二度と来てくれないけど。
まぁレート見ると元気でやってるのはわかるからいいんだけど!
もっと気軽にリピートしてもいいんだからねみんな。ほんとに。
「何度も言うけど、儲けるためにやってる訳じゃないから。多少貯金食い潰すくらいでちょうどいいんだって」
「だからぁ、それじゃあ困るんですって。あたしは店長のコーヒーの味、好きなんですから」
「……えぇ〜」
ちょっと頬がにやけてしまう。
完全に趣味だけど、好きだと言われて嫌な気分になるものでも無い。
とはいえ、確かにキヨラちゃんの貴重な青春の時間を雇わせてもらっていると考えると、せっかくなら社会経験になるよう、ちゃんとしたお店にする必要があるのか?
キヨラちゃんはしっかりしているが、少々前のめりすぎるところもあるし、そう考えると……。
「店長? おーい……ダメだ。なんか考えに没頭してる」
っと、キヨラちゃんのことを色々考えすぎてしまっていた。
流石にキヨラちゃんの結婚式のことまで考えるのは考えすぎだったな。
しかし、歳のせいかどうも若者の未来が気になるのはサガというもの。
最近でいえばイシュシュなんかは本当に、小さい頃から面倒を見ている可愛い可愛い後輩だし、それ以外にも後輩は沢山いる。
黎明期は、後輩はほとんど育たなかったんだ。
魔法少女の死亡率が今よりもずっと高かった時代。後輩なんて育ち切る前に死ぬのが当たり前だった時代。
そういう時代があった分、主に教官をやってた時代は教え子たちをもう異常な程に可愛がっていた自覚がある。
自分でもちょっと……あれすぎたなと思い、あまり連絡はとっていないけど、そういえばみんな元気でやっているのかな。
などと考えていると、カラン、と音がして扉が開かれる。
「あ、いらっしゃいませー……ん? うぇ!?」
入ってきたお客さんを見て、キヨラちゃんが汚い悲鳴をあげた。
お客様になんて失礼な、と思って
入ってきたのは、学ランのような衣装を身にまとった、小さな魔法少女。
半ば髪の毛と一体化したような学帽風の帽子からは、鮮やかな金のツインテールが伸び、地面スレスレで生き物の用に揺蕩っている。
どう見たって魔法少女。
だが、キヨラちゃんが驚いた理由はそこではなく、彼女の胸に付いている小さなバッジだろう。
それは、魔法少女なら知らぬ者はいない───日本政府直属魔法少女であることを示す証。
魔法少女レートの対象外となるが、全員が特質概念保有魔獣───通称【概獣】との戦闘が可能であるという最低ラインの戦闘力に、魔法少女界を動かす頭脳。
一人一人が、魔法の何相応しき奇跡を振るい、人類の窮地を救ってきた、天恵。
人間の形をした最終兵器とも言うべき存在を見て、
「───ペラト!? え、ペラトだよな!? 大きくなったなぁ!」
「……え。お知り合いなんですか、店長」
知り合いも何も、見間違えるはずがない。
幾らか背が伸びて、体つきも女性らしく成長しているが、彼女の名前は
「───くふっ。あはっ☆せんせぇの方こそ、こんなボロ小屋に閉じこもってお勤めご苦労様♡額も広がって、ボロ小屋の固定資産税と併せて破産寸前って感じ〜♡」
「えっ。口悪っ」
「ははっ、ありがと」
「えっ、何に? マゾ?」
相変わらず礼儀正しく可愛らしい、
◆
「えーっと、コーヒーどうぞ」
「いただきます♡」
ペラトはキヨラちゃんから受け取ったコーヒーを口にし、少し難しそうに、懐かしむような顔をしてから。
「……艱難汝を玉にす♡」
「なんて?」
「ありがとね、ペラト」
「なんで!?」
先程からキヨラちゃんはペラトが何を言っているか分からない、といった反応だが、まぁ仕方ないだろう。
ペラトの魔法、【
その魔法と育った環境故に、彼女は───。
「───メスガキ、なんだよ」
「めす……なんて?」
そう、魔獣の侵攻によって失われたものは多岐に渡るが、その一つにサブカルチャーがある。
だから、昔の漫画とかのセリフを引用して、若い子たちに首を傾げられる、なんて経験がよくあるのだが。
人類は魔獣によって、メスガキという文化も失ってしまったんだ!
まぁ別にどうでもいいけど。
とにかくペラトは、ちょっとメスガキというか……武将ガキなだけで、根はいい子なんだ。本当に。
ちょっとメンタルが関羽とかそっち方向なだけで。
ちなみにさっきのは、「苦さの先にコクのある大人の味」と言っていた、んだと思う。
「それにしても……政府直属の魔法少女と知り合いって、店長何者だったんですか」
「ただの社畜だよ」
「三顧の礼♡」
「はい、おかわりね」
「言語学者じゃなくてですか?」
さて、久しぶりに教え子がコーヒーを飲みに来てくれた、とかだったら嬉しいのだが。
政府直属の魔法少女ってのは、そんなに暇ではないだろう。
三杯目のコーヒーを飲み干してから、ペラトは真面目な表情で
「せんせぇ、ほうれい線、ふっかぁ♡」
「そんなことないですからね!? 店長程の美人って魔法少女にもなかなかいないですよ!?」
「そうか……」
「ほら気にしちゃったじゃん! 政府直属だかなんだか知らないですけど、女性にそういうこと言っちゃダメですからね!?」
「気にしないでキヨラちゃん。今のは『とても深い事情のある話になるので、覚悟して聞いてください』って意味だから」
「肯定♡」
「別の意味で気にしますよ!? なんでそうなるんですか!?」
なんでって……なんでだろう。
なんとなく魂で伝わるんだよな。
やっぱり古い世代だから残ってるんじゃないかな、武士の魂とか。
「春眠暁を覚えず、処女拗らせて大変そう♡」
「これは煽りですよねぇ!?」
「『大事な話になるので、こちらの方には席を外していただけますか』って言ってるよ。そうだね、キヨラちゃんは席外してて」
「本当にそう言ってるんですよね? アタシ、馬鹿にされたら相手の立場とか関係なく怒りますからね?」
そういうキヨラちゃんの目はマジだったが、言う通り店の外に出てはくれた。
たしかに、あの子なら相手とか関係なくムカついたら手を出しそうだなぁ。やっぱり、なにかあった時のために鍛えておいた方がいいかな?
「せんせ、せんせぇ」
「ん、どうしたペラト」
「死刑♡ペラトと話している時、他の子のこと考えた♡その身を煉獄に晒しても消えない罪♡」
こうして成長した姿を見れた、と言うだけでも、
「悪かったって。
「魔力スカスカ♡この程度の文明レベルで霊長名乗るとは片腹痛し♡先祖に申し訳立たない♡切腹♡」
「えっ!? それ、マジ!?」
「無論♡」
予想外の言葉に、
日本国内で、現在あらゆる魔法少女の立ち入りが禁止されているエリア───非人類生存領域と呼ばれる、魔獣の長たちの領域は八つ。
そのうちの一つの、奪還作戦が動き出していると言うのだ。
「どこだ!?」
「でっか♡」
「フジエリアか!」
富士山周辺に発生した圧縮空間樹海フジ。
確かにあそこなら、シン=ヨコハマと近く、バックアップしやすいという利点もあるが、同時に何か起きた場合はシン=ヨコハマに溢れた魔獣が殺到しかねないというリスクもある。
と、まぁ。
色々思考は巡らせたが、それを
「桃源の誓い♡」
「そりゃ、そうだよな」
その作戦に、
つまりはそういう話だ。
「足腰ガタガタ♡爪先の悪酔い♡」
「いや、そういう訳じゃないんだけど」
各地に魔獣が作り出した巣───通称【ダンジョン】の攻略は、人類にとって魔獣の侵攻を止めながら、自らの生存リソースを獲得するという意味でも、魔法少女の代表的な仕事の一つ。
ただし、ダンジョンは魔獣の住処。当然ながら、そこを攻めるということは、都市防衛とは比べ物にならない死亡率の高い仕事だ。
……今更、死ぬことが怖い、なんて口が裂けても言うつもりはない。
でも、だからこそ。
「悪い、ペトラ。それには参加出来ない」
「……どうして?」
「
この魔法で何度も窮地を乗り切ってきたし、この魔法の使い方に関しては極めたという自信がある。
だからこそ、この魔法を持つ
そんな思いで
この魔法は、
「ごめんねペラト。久しぶりなのに、かっこ悪いところ見せて」
「……悪いのは、カノンさんじゃん」
ペラトは昔、怒られた時のような表情で。
納得がいかないと、そう言いたげに頬を膨らませていた。
「……はぁ〜。うちの先輩はみんな雑魚雑魚♡もう仕方ないし、老老介護で……えーっと、馬鹿! ばーか!」
これ以上話しても意味はないと悟ったのだろう。
明らかに料金に釣り合わない札束をバン、っと机に叩きつけ、ペラトは立ち上がる。
「ご馳走様です。コーヒー、美味しかったですよ、せんせぇ」
相変わらず、いただきますとごちそうさまだけはちゃんと言う、礼儀の正しい子だ。
「あ、そうだ。よわよわせんせぇなんて必要ないけどぉ♡ざこざこどもよりはマシだから、年金生活しんどくなったら、足を舐めに来てもいいんだからね♡」
「いやぁ、もう今はペラト達の方が優秀だと───」
「【虚飾を禁ず】」
その言葉を聞いた瞬間、口が動かなくなる。
魂そのものが縛り上げられるような硬直。
言葉によって世界を定義する、ペラトの魔法【
今、
「……ペラト」
「【思ってもいないことを口にしないでください。私達は知っています。先生が誰よりも強く、誰よりも、自分の技に誇りを持っていることに】」
ペラトは優しい子だ。
魔法の暴発を恐れ、語彙を彼女が幼い時の語彙だけに抑えている。そんな彼女が、本来の口調で喋るということ、それそのものが彼女の本気であり、誠意。
「【先生がどんなに嘯いても。私にとって、最高で最強の魔法少女は、先生なんです。先生は私の希望なんですから。責任、最後まで取ってくださいね】」
そう言って。
ふっ、と。幼かった彼女らしくない、蠱惑的な笑みを浮かべて、ペラトは去っていく。
……参ったな。弟子にあそこまで言われたら、言う通りにというわけにもいかないが、何もしない訳にもいくまい。
仕方ないが、やれることを考えるしかあるまい。
「……戻りました」
「あ、ごめんねキヨラちゃん。出てもらっちゃってて」
と、そこに店の外に出ていたキヨラちゃんが、ペラトと入れ替わる形で戻ってくる。
が、なんだか彼女は顔が赤い。
風邪、を魔法少女がひくことなんてないし、一体……。
「その、アタシ、黙っておきますから」
「何が?」
「二人の……その、夜の……ごにょごにょ」
………………?
………………何が?
「キヨラちゃん?」
「なんとなくペトラさんの声が聞こえてきて、その、意味を考えたら、そういうことかなって」
「キヨラちゃん」
「秘密にしますから! それじゃあ! お疲れ様です!」
「キヨラちゃぁん!?」
クソッ、思春期まっさかりの女子高生め!
何を勘違いしたのか分からないが、キヨラちゃんは止める暇もなく店から駆け出していってしまう。
……
◆
神騙ペラトは思考する。
口に出す言葉を吟味しなければいけない分、人一倍煩い脳内をしている自負はあったが、それにしたって今日の彼女の脳内は大瀑布。轟音の如き思考の奔流が渦巻いていた。
せんせぇ。
大好きなせんせぇ。本当に強くて、賢くて、優しいせんせぇ。また会えたことが嬉しくて。
そんなせんせぇにあんなに悲しい顔をさせるカレンさんが、腹正しくて。
けれど、そんな自分の感情とは別に、ペラトが思考していたのは。
「……道成寺、キヨラ」
ユラリの店でバイトをしていた、魔法少女の名前。
戸籍上も存在しているのは確認しているし、経歴に怪しいところはない。
だが。
ペラトは何故か、あの店員のことが妙に気に食わなかった。
「……?」
胸の内に湧くイガイガトゲトゲとした感覚に名前をつけることができず、結局ペラトは、モヤモヤしたまま帰ることとなった。
・神騙ペラト
メスガキ系武将。将としての責務とメスガキの性質を併せ持った、ハイブリッド魔法少女。年齢は成人済みだが、9歳まで人間の生存していないとされていた山奥で育ったため、情緒が若干幼い。せんせぇのことが好き。
どんな相手とでも会話を可能にする【