最強魔法少女はニチアサ枠から引退したい 作:おすすめのプリキュアは何ですか
そろそろ忘れている人がいるかもしれないが、うちは喫茶店をやっている。
と言っても、現状はメニューがコーヒーしかない。
というのも
というわけで、ちょっと遠出してシン=ヨコハマのスーパーに来ていた。
やはり こういうのは、都会の方が値段は高くとも品揃えは豊富なんだよね。とはいえ、昔みたいになんでも置いてある、とはいかないが、味の再現食材とかは売っている。
メニューに追加するなら、サンドイッチとか、パンケーキとか、そういう軽食系がいい。とはいえ、野菜とかは高いからなぁ。
なんて、食材の前でああでもないこうでもない、と悩んでいると。
「……は? え。先輩何してんすか?」
そこには、前の会社での
完全にオフと言った、足だしへそ出し肩出しの高露出にメガネと、普段スーツを着こなしている姿を見ている分、一瞬誰だか気づかなかったほど。
というか、その、露出が多くない? そういうのは良くないんじゃないか? あんまりさ。
「えっと……お疲れ様です」
「お疲れ様です……じゃねぇっすよ!? え? こんな所で何してんすか?」
「あ、カゴの中カップ麺ばっか。体調管理は気をつけなよ」
「うるせー! 余計なお世話っす! こっちは言いてぇーことたくさんあるんすからね!?」
肩を掴まれてゆさゆさと体を前後に揺さぶられる。
しまった、よく考えたら、シン=ヨコハマに来れば当然こうなるリスクもあったのに、完全にボケていた。
こうやって問い詰められたりするのは、イシュシュからすれば正当な権利だとは思うしいいのだが……今日は、予定があるから勘弁して欲しい。
というわけで。
「あ!? もしかして貴方、イシュシュ・パレトさんですか!」
「ちょ、先輩!?」
なるべくでかい声で、イシュシュの名を叫ぶ。
魔法少女というのは人気商売の側面もある。
決して
「……え、あれってやっぱり」
「本物のイシュシュちゃん!?」
「腰細っ!? 細すぎて引く!」
周囲の人達がざわざわし始めて、あっという間に人だかりが出来る。
「先輩、なんて汚ぇ手を……」
「あの、イシュシュちゃん! サインください……!」
「あ、はーい。お名前教えてくれるかな?」
普段はだるいだのめんどくさいだのうだうだ言っているイシュシュだが、その実業務には非常に真面目。
さっきまで
その反応の速さもさることながら、イシュシュがこんなに人気の魔法少女になった事実に、ちょっと感慨深くて涙が出てくる。
あんなに小さくて泣き虫だった子が、今度はこうして夢を与える側に……。
これ以上美しい光景はあるだろうか?
いや、あるはずがない。この美しい世界を守りたい。
じゃあ俺は帰るか。また後で連絡するね。
「なーんか帰ろうとしてますけど、逃がすわけねぇっすよ?」
ファンサをしながら、イシュシュが
その営業スマイルの奥に秘められた何かを察知して、
「発動条件は満たしたっすよ。魔法少女との戦いで、
「え。待ってイシュシュ、待て!?」
「ファンサが終わるまでそこにいてもらうっす。───【
イシュシュの魔法、【
非常に扱いが難しく、幼い頃は制御できなくて大変なことになっていたが、今の彼女はこの難しい魔法を上手く使いこなしている。
詳しく説明すると長くなるので省くが、彼女の魔法を使えば触れた相手の服を重くしてその場に拘束する、などの使い方は朝飯前───。
ビリッ。
「……ビリッ?」
端的に言えば、布が破ける音だった。
イシュシュの魔法は扱いが難しく、数値をめちゃくちゃにする対象の設定から、数値の設定まで一瞬も気を抜けない。
だから、誰が悪いかといえば混乱する状況で逃げようとした
イシュシュは恐らく、
一つは、少し重くした程度なら
もう一つは───対象の設定を、間違えたのだろう。
突如肩に走った重量感に、全力で抵抗した結果。
……まぁ、端的に言うと、下着というか、なんというかですね。
「……」
「……先輩」
「何?」
「さすがにすいません」
「…………いいよ」
この状況でも、
◆
改めて今日、ワンピースを着てきてて良かったと思う。
パンツタイプを履いていたら、最悪重くなった下着に巻き込まれて、ずり下ろされていたと考えると悪寒が走る。
そんなわけで、下着をダメにされたのでぱぱっと新しい服を買ったわけだが。
「イシュシュ……これはちょっと、
「そうっすか? 先輩、細っこくて肌綺麗だから似合うっすけどね」
弁償します、なんて甘言に乗った結果、頭の先からつま先までフルで服を買い換えられた。
イシュシュと同じように臍を出したミニ丈のトップスに、足を大胆に晒したホットパンツ。
「だいたい、何恥ずかしがってるんすか。先輩のコスチュームの方がよっぽど少女趣味で傍から見たら美少女しか着れない衣装っすよ?」
「あれは慣れだよ! え〜、マジ勘弁してくれよ〜……」
イシュシュがすごく楽しそうに着せ替えしてくる手前、強く言い出せなかったけどさすがに恥ずかしい。
晒した肌に人の視線が集まるのを、魔法少女の鋭敏な感覚が感じ取ってしまうし。
なんか道行く人が俺を見てみんな「うす……」とか「ほそ……」とか言ってる気がする。
「元を辿れば逃げようとした先輩が悪いと思うので、今日一日くらいは後輩の着せ替え人形に甘んじてくれっすねぇ」
「別にいいけどさ。こんなおじさん着せ替えて楽しい?」
「人生で二番目くらいに楽しいっす」
え、目がマジなんだけど?
何が楽しいのか全くわからないが、
「なんで急に辞めたんすか?」
「……まぁ、疲れちゃったからかな」
色々事情はあるが、疲れたというのは嘘では無い。
元々、本来は政府直属を辞める時に、もう魔法少女を引退するつもりだったのだ。
それをマクマンがわざわざ
そう考えると、大概あのマスコットも大バカだ。
「ふーん、そっすか」
「もっと怒られると思ったなぁ」
「なんでっすか?」
後ろを歩くイシュシュの顔は見えないが、声色は心底不思議、と言った感じだった。
「うちが生まれる前から、ずっと命かけて戦って、自分より他人を優先して、辛い時もそんな素振り見せずにいた人が、疲れたから辞めますって言うの止めるのって、どんな権利があるやつが出来るんすか? 少なくとも、うちだったらそんなこと言われたら、相手をぶん殴って辞めますけど」
「……でも、さっき怒ってなかった」
「いや相談もなしに勝手に居なくなって、その果て休日に顔見たら逃げるんじゃ怒るでしょ」
全くもってその通り。
後輩に常識を説かれるなんて、
「うちが不満なのは、相談くらいしてくれたら良かったのにってことっす」
「後輩に泣き言とか、魔法少女らしくないだろ」
「この程度で泣き言カウントしねぇっすよ。うちらは、人類の希望なんすよ?」
トンッ、と。
前を歩いていた
「しょぼくれた先輩のケツを叩くくらい、自己研鑽の範疇。給料なんて貰わなくたってやってやりますよ」
……ペラトもそうだが、ちょっと見ない間にみんな、大人になって。
「ま〜。マクマンさんの態度からして、あの人、ってか熊は、全然先輩戻ってくるつもりっぽいっすけどね」
「え。そうなの?」
「『アイツ四十年くらい休みの概念なかったせいで、疲れの抜き方わかってないだけだと思うクマ』って言って、机とかそのままにしてるっすよ」
あのマスコット、余計なお世話焼きやがって。
まぁ、休みの感覚を失っていることは否定しないけれど。
「うちも戻ってこいとは言わねぇっすけど。もうちょっと休んだら改めて、今後どうするかとかは聞きたいっすね。先輩、大人しく隠居とかできる柄でもないでしょうし」
「……そうだなぁ。じゃあ、しばらくは休ませてもらうよ」
ずっと、自分が前に立たなければと思っていたけれど。
いつの間にか、
指先から溢れる星屑を、ふと眺める。
忌々しい一番星。
この星が
「せーんぱいっ!」
「きゃぁ!?」
いきなりイシュシュが
貧弱な訳じゃないが、
「先輩、自分のことおじさんとか言う割には、悲鳴は可愛いっすよね」
「そういうのは反射だから仕方ないだろ。それより、急になんだ?」
「別にぃ? 休日なんだから、そんなしょぼくれた顔しないで。ほら、ほら!」
…………しょうがない。本格的に息抜きしないと、どこかで限界が来るのも事実だ。
「ところで先輩、これからどこ行くんすか?」
「ん、昔の知り合いのとこ」
イシュシュのせいというかなんというかで予定が狂ったが、
スーパーも品揃えはいいが、やっぱりああいうところに並ぶのは合成食材の類で、決して悪くはないが、
故に。
「一言で言えば───八百屋だよ」
「八百屋って……あの、生野菜とかが売っているとかいう、架空の店の!?」
「実在するよ」
今まで出てきたネームド魔法少女を年齢順に並べると
ユラリ>>>ペラト>クリナ>イシュシュ>キヨラです。
ペラトとイシュシュは小さい頃から戦闘員として経験を積んでるので、年齢の割に経験が豊富です。今のところ魔法少女以前の世界を知らない子ばかりですね。