日間1位ありがとうございます。
スローライフなのであまり盛り上がりにかけるかもしれないですが、これからも長い目でご愛読ください。
一応スローライフのつもりで書いてます。スローライフになってますかねこれ。
「ここか……」
久々にスーツを着て訪れたのは、ヨコハマエリアの外れにある大きな研究施設。
ビートカプス社という、魔法少女向けの
魔法少女の戦闘の基本、現代では基礎アーツと呼ばれるものは二つ。
一つが障壁。魔力を用いて物理干渉を遮る、所謂バリアを生み出す技術。最近では建物に標準で組み込まれ、巨大な魔獣が現れた際の二次災害をある程度抑制できるようになっている。
もう一つが、魔弾。こっちは名前の通り、魔力から弾丸を形成して砲撃のように放つ技術。
現代の都市部での魔法少女の基本戦術は、この二つを合わせて中距離での火力戦。
閉所や小型との戦闘ではまた変わってくるが、それでも中距離火力戦は、生存率の観点から見ても最も安定した戦い方だ。実際、黎明期の死亡率の高さは、障壁技術の未発達という要因もあるし。
だが、障壁は割も簡単なんだけど、体外に魔力を出してそれを弾丸として形成するという技術は……適正に比重が重く、練習でどうにかならない側面もあったりする。だから
つまるところ、
本当にこの技術が普及してから、魔法少女の死亡率は飛躍的に下がった。色々問題点があるとはいえ、
「あのー……ずっと立ち止まって、どうしたんですか?」
「あっ、すいません」
よく感傷に浸る悪い癖で、いつの間にか扉の前で立ち塞がってしまっていた。
振り返って頭を下げ、顔をあげると……。
「……貴方は、あの時の!」
そこに居たのは紫宝の魔法少女、アメジア・レスターさんだった。
◆
「やぁやぁやぁ! 話はマクマンさんから聞いてるよ! 君が今回、我社の実験に付き合ってくれるえーっと、魔九院ユラリさんだね! 私の名前は
「あ、よろしくお願いします」
施設内をアメジアさんに案内されると出迎えてくれたのは、とても早口な今回の依頼主、キリクさんだった。
手元でなにか機器をいじりながら、視線は一応こちらに向けているが、作業する手は一切止める様子がない。
「ご無沙汰してますキリクさん。今日はよろしくお願いしますね、あ、これつまらないものですが……」
「ああアメジアくんもお疲れ様! 早速だが生体認識を済ませておいてくれ! 試作品は幾つか作ってあるから、今日はいくつかの使用感と戦闘データを集めたいんだ! あとつまらないものならいらないから捨てておいてくれ! 面白かったら貰うよ!」
「ぁぅ……はいぃ……」
キリクさんの早口に、アメジアさんは割り込むことができず、涙目で縮こまりながらこちらを見て。
「あの、これ、つまらないものですけど貰ってください……」
「え〜……」
「こんなのしかなくてごめんなさい……あの、ユラリさんにも、改めて後でお礼、させてください……今はこれと三万円くらいしかないのでぇ……」
この流れで貰うのはちょっと気まずいけど、アメジアさんの今にも泣き出して、と言うかもうちょっと泣いてる目を見ると、受け取らないこともできず、仕方なく受け取ってしまう。
戦い方やインタビューとかの受け答えを見てある程度知ってはいたが、魔法少女として平均より優れた体躯と魔力量に反比例した自己主張と自信。
衣装は姫騎士という感じなのだが、中身は大型犬のような子、という印象だ。
そのままアメジアさんはとぼとぼと別室に向かっていき、後には
「えーっと、
「何をすれば? 魔法少女の存在意義とは、正義を信じ人々の希望となること!」
「そうじゃなくて、今日の概要を改めてお聴きしたくて」
そう
「では改めてご説明しますね。本日、ユラリさんには我社で開発したアメジアさんの専用
うわっ、急に落ち着いたな。
ヒスイの後輩とかにもこういう子いるけれど、人格の切り替えが見事すぎてちょっと心配になる。
「ところでユラリさん。本日は正装で来るようにお願いしたのですが……」
「あれ、これじゃダメでしたか?」
似合ってない自覚はあるけれど、ちゃんとしたスーツで来たはずなのだが。
「ああ、伝え方が悪かったですね。魔法少女の正装と言えば、コスチュームのことです」
「あー……」
コスチューム。
魔法少女となった時に、その魔法少女にとっての標準装備として着いてくる衣装。魔法少女の運動にも耐え、体の一部のように調節が効き、多くの環境で行動を可能にする、万能衣装。
……最初からついてくるなら、裸じゃないのそれ? という疑問が、昔の
「……変身」
意識を込め、
コスチュームは普通に脱ぐこともできるし、魔法少女が意識さえすればいつでも着替えることができ、その時着ている普通の服は魔法少女個人の持つ内意識空間に転送され……まぁ簡単に言うと無事に早着替えできるという便利なシステム。
「……ん、どこかで……? いや、とても可憐で良い衣装ですね!」
「ははは……ありがとうございます」
久方ぶりに袖を通す、魔法少女としてのコスチューム。
水色と白のパステルカラーに、肩や手首、スカートなどの箇所に盛り付けられたフリル。少女趣味と神聖さを両立させた、青空の天使……なんて、昔の友人からは語られた、
ぺたり、と。変身の際に僅かに浮いた体が地面に降り、足の裏から床の感触がダイレクトに伝わってくる。
魔法少女の体だから問題ないが、この衣装、靴がなくてサイハイソックスだけなんだよな。魔法少女の鋭い五感が、冷たい床の感触をダイレクトに伝えてきて、思わず身震いしてしまう。
「ん、アメジアさんの準備が終わったそうです。では、早速始めましょうか。これからこの部屋の仮想戦闘空間モードを展開するので、専用
「え、戦闘ですか!?」
「はい。マクマンさんが、君ならそういうのは幾らでもできると言っていましたので。あ、荷物はお預かりします」
落ち着いても有無を言わさぬ勢いは健在で、キリクさんは
……マクマンめ。
そりゃあ
それも専用
専用
本人の生体構造を一部模倣して作成することにより、コスチュームと一体となっての装備を可能にし、汎用性よりもその得意分野と魔法特性を存分に引き出した行動が可能になるように仕上げられた、全魔法少女の憧れ。
本来
その開発に駆り出されるとは、因果なものだな、と笑ってしまう。
と、空間が歪み、この仮想空間にアメジアさんの姿が。
「───は?」
目の前に現れたのは、巨人だった。
全長7mはあろうかという、鋼鉄の塊。
巨大な槍のような両手を備えたその巨人の、頭部の部分によく見ると、アメジアさんが混乱した顔で座って……いや組み込まれてないか!?
「あ、あのキリクさん! これぇ、ほんとにいいんですかぁ!?」
『心配不要だ! 仮想空間だし、マクマンさんにはその子に遠慮はいらないと言われている!』
「わ、わかりましたぁ! その、すいません!」
アメジアさんの操作に応じてか、巨人の槍の先端に凄まじいエネルギーが集まり、その照準が
マ、マクマンあいつ!
『いよぉし! やれぇアメジアくん! 私の計算では、直撃すれば【概獣】クラスの魔獣の障壁ですら融解させる、巨人の火を!』
「これ絶対人に向けるものじゃないですよねぇぇぇぇぇ!!!」
仮想空間なのをいいことに、そんなアホみたいな一撃が
……とはいえ、だ。
「【
指先から星を横に放ち、
説明不足のキリクさんとマクマンには後で文句を言うとして、
あの専用
思えば、以前会った時もアメジアさんは大出力の
「っ、あれっ!?」
『外した!? 避けもしてないのに!? 制御システムに問題はなかったぞ!?』
まっすぐ距離を詰める
距離は五十mほどあったが、魔法少女の脚力ならば一息で詰められる距離。二発目の発射よりも、
『アメジアくん、そいつは近接戦闘も対応しているから、落ち着いて操作するんだ!』
「は、はい! ……あれっ」
距離を詰め、飛び上がった
「なにこれ、視線が……」
【
例えば、魔力を集めれば先程のように魔力の光線は起動をねじ曲げられるし。
例えば、【視線】や【意識】を集めてしまえば、そこから目を離すことが出来なくなる。
既に星は、十分な程にばらまいておいた。
意識に干渉してくるタイプの魔法の弾き方は、まだ身につけていなかったようだ。
『アメジアくん上ッ』
「遅い」
踵に魔力を込め、機械の巨体に向けて渾身の魔力と力を込めて、振り下ろす。
同時に、ヒビに
『……機動力も想定以上だし、今強化と魔弾の二重使用と、魔法の維持まで同時に。全部高等技術なのに』
「っぅ……何が起きたんですか……?」
『あ、良かった。脱出機構はちゃんと働いたみたいだね』
派手に壊してしまったが、仮想空間だからまぁ大丈夫だろう。
アメジアさんの無事と確認できたし、色々言わせてもらおうかな。
まず専用
『……ン? ユラリ? 星の魔法と、ユラリって、まさか……!』
「えぇと、ユラリさんと知り合いなんですか、キリクさん」
ワナワナと、体の震えが見なくても伝わってくるくらい震えた声よキリクさん。正直色々言いたいのはこっちなのだが、何か言いたいことがありそうなので一旦待つと。
『思い出した! 魔九院ユラリ! ───専用
「……そ、そうなんですか!? ユラリさん!」
…………。
「……人違いです」
「だそうですよ!」
『そんなわけないだろ!どう見たって本人だよ!』
「ヒィン!」
まぁ、研究職の人ならそこに関して知っていてもおかしくはないか。
別に機械について詳しい訳じゃないから、あんまりそういう先入観は持たれたくなかったのだが。
さすがに、この方向性の専用
慣れないことだが、たまには経歴の強さを使ってみるとしよう。
・アメジア・レスター
一話から再登場。
あの後順調にレートを上げ、専用
【