アイルーは撫でるより撫でられる派
要塞都市ステラガルド、商業区。
石畳の大通りには、昼食を求める住民たちが行き交っていた。
人間の商人。
装備を身につけたハンター。
大きな籠を抱えたアイルー。
あちらこちらから威勢のいい呼び込みの声が聞こえてくる。
そんな中、静羽と澪が向かったのは――。
ステラガルドでも評判の、アイルー料理長が営む大食堂だった。
「いらっしゃいませニャー!」
「……あっ! 会長さんと書記さんだニャ!」
「今日は二人でお食事かニャ?」
「はい。二名です。それから、今日は自治区紹介の生配信中なのですが、店内を撮影してもよろしいでしょうか?」
「ちょっと待っててニャ!」
とてとてと厨房へ駆けていく。
しばらくして、立派な料理帽をかぶったアイルーが現れた。
「会長さん、書記さん、いらっしゃいニャ!」
「配信の話は聞いたニャ! お客さんにも確認するから、少し待っててニャ!」
店内の客たちに確認を取り、撮影可能な席と厨房の一角を案内してくれた。
「うちの料理を紹介してくれるなら大歓迎ニャ!」
「腕によりをかけて作るニャ!」
ライブチャット
: うおおおおおお!!!!
: 猫の料理人だあああ!!
: まあ! なんて可愛らしい料理長さん!
: 厨房設備がかなり本格的ですね。
: アイルーが料理してる!!
: でっかい鍋をちっちゃい猫がかき混ぜてるの好きwww
: お料理も楽しみですわね!
席へ案内された二人の前に、木製のメニュー表が置かれた。
「今日のおすすめは、こっちだニャ!」
料理長おすすめ・豪華ハンター定食
ステラガルド大食堂/昼限定 1,850 Cr
セット内容
- 特大こんがり肉の厚切りステーキ
- 香草焼き魚
- キノコと根菜の濃厚シチュー
- 焼きたてパン
- 季節の温野菜とチーズ
- 特製フルーツデザート
- 食後のドリンク
「……ずいぶん豪華ですね」
澪はメニューを確認する。
「しかも、1,850クレジット……」
「予算内です」
そこが重要だった。
非常に重要だった。
「お肉もお魚も食べられる、うちの人気メニューだニャ!」
「ハンターさんたちにも大好評ニャ!」
「なるほど……」
澪は少し考えた後、静羽へ向き直る。
「せっかくですし、こちらにしましょうか」
二人は豪華ハンター定食を注文した。
ライブチャット
: うまそう!!!!
: 肉!!!!!!
: なんて豪華な定食なのでしょう!
: 1,850クレジットでこの品数ですか。
: これ本当に一人前!?
: 量おかしくね!?
: ハンターの皆さんは、これほどたくさん召し上がるのですね……。
: 書記ちゃんが予算内か確認してるの草。
注文が入ると、厨房のアイルーたちが一斉に動き始めた。
「豪華ハンター定食、二人前ニャ!」
「了解ニャー!」
「お肉の準備できてるニャ!」
「シチューも温め直すニャ!」
巨大な鉄板に、分厚い肉が置かれる。
――ジュウウウウウッ!!
勢いよく立ち上る湯気。
肉の表面が香ばしく焼けていく。
別のアイルーが大きな鍋をかき混ぜ、もう一匹が焼きたてのパンを籠へ盛りつけていく。
料理長は全体を見渡しながら、てきぱきと指示を出していた。
「焼き加減に気をつけるニャ!」
「お魚もそろそろ焼き上がるニャ!」
「盛り付けは豪華にいくニャー!」
ライブチャット
: すげええええ!!
: 料理してるとこめっちゃ楽しいwww
: 皆さん、とても手際がよろしいですわね!
: 作業分担が合理的です。熟練した調理チームですね。
: あの小さい体で大鍋扱ってるのすごい。
: 腹減ってきた……。
・
・
・
しばらくして。
「お待たせしましたニャー!」
「豪華ハンター定食、二人前だニャ!」
――ゴトン。
大きな木製の皿が、テーブルに置かれた。
そこには、山盛りの料理。
こんがりと焼き上げられた分厚い肉。
香草を添えた焼き魚。
具材がごろごろ入ったシチュー。
ふっくらとしたパン。
色鮮やかな野菜。
そして、食後のデザート。
「……これは……」
普段は冷静な澪も、思わず料理を見つめた。
「……相変わらず、すごい量ですね」
「いっぱい食べて、元気をつけてほしいニャ!」
「ごゆっくりどうぞニャー!」
給仕のアイルーが元気よく頭を下げる。
ライブチャット
: うわあああああああ!!!!
: 肉でっっっっか!!!!
: なんて美味しそうなのでしょう……!
: 一食分としてはかなりの量ですね。
: これが1,850クレジット!?
: 安すぎない!?
: 見ているだけでお腹が空いてきますわ……。
: 飯テロだああああ!!
「それでは、いただきます」
澪は手を合わせ、まずシチューを一口。
「……ん」
ほっとしたように、表情が和らぐ。
「……美味しいですね」
「野菜の甘みがしっかり出ていますし、キノコの風味もよく合っています」
続いて、ステーキを切り分ける。
ナイフを入れると、柔らかい肉がすっと切れた。
一口食べる。
「……こちらも、いい焼き加減です」
「香草の香りが強すぎず、お肉の旨味を引き立てていますね」
料理を食べる澪の表情は、普段の仕事中よりも少し柔らかかった。
ライブチャット
: 書記ちゃんの食レポきた!!
: めっちゃうまそうに食べるじゃん。
: 丁寧な感想ですわね。
: 味の特徴が伝わりやすい説明です。
: これ見てたら本当に腹減る。
: そういや会長は?
: あっ、確かに。
: 会長さんも召し上がっているのでしょうか?
: 先ほどの狩猟で体力を消耗しているはずですし、食事は重要ですね。
: てかあの人、あんなに動いてたのに全然疲れてなかったよな。
: やっぱハンターってすげえわ。
「……会長、皆さんが感想を聞きたがっているようですよ」
「せっかくの自治区紹介ですし、会長からも料理の魅力を伝えていただけますか?」
――アステラ自治区の公式配信は、いつの間にか本格的なグルメ番組になっていた。
カメラが静羽へと向けられる。
その目の前には、豪華なハンター定食。
分厚いステーキに、香草焼きの魚。
湯気の立つシチューに、焼きたてのパン。
色鮮やかな温野菜と、食後のデザート。
静羽は、目の前に並んだ料理を見つめて――
「いただきます」
両手を合わせ、食事を始めた。
まずは、ステーキ。
ナイフとフォークを手に取り、こんがりと焼き上がった肉を切り分ける。
切り口から、じゅわりと肉汁が溢れた。
一口。
もぐ。
もぐもぐ。
「…………!」
その瞬間。
ぱああああっ!
静羽の表情が、目に見えて明るくなった。
目を輝かせ、頬を緩める。
口元には、抑えきれないほど幸せそうな笑み。
それはもう、見ているこちらまで嬉しくなるような顔だった。
ライブチャット
:「…………」
:「…………え?」
:「かわいい」
:「かわいい!!!!」
:「ちょっと待って、今の顔なに!?」
:「めっっっちゃ幸せそう!!!!」
:「うわああああ!! 美味しそう!!」
:「会長、表情わかりやすすぎるwww」
:「さっきまで古龍見て平然としてた人と同一人物!?」
:「お肉一口でこの笑顔になるの!?」
:「これは料理人冥利に尽きるやつ」
食べる。とにかく美味しそうに食べる。
静羽は、次にシチューへ手を伸ばした。
スプーンですくい、ふうふうと少し冷ましてから口へ運ぶ。
すると、また表情が緩む。
ほっとしたように目を細め、じっくり味わう。
続いて焼きたてのパン。
表面はさくり。
中はふわふわ。
シチューにつけて食べると、静羽はますます幸せそうな顔になった。
さらに香草焼きの魚。
温野菜。
チーズ。
そして再びステーキ。
どの料理も、一口食べるたびに嬉しそうな表情を見せる。
しかも、食べ方が綺麗だった。
姿勢を崩さず、料理を丁寧に口へ運ぶ。
口に物を入れたまま喋ることもない。
それでいて、食事を楽しんでいることが全身から伝わってくる。
「…………」
澪はカメラを構えたまま、しばらく静羽を眺めていた。
(……本当に、美味しそうに食べますね)
普段から食事を共にする機会はある。
だから、静羽が食べることを好むのは知っている。
しかし。
こうして配信の画面越しに見ると、その表情の豊かさが際立っていた。
ライブチャット
:「食レポ一言もないのに美味しさ伝わってくるwww」
:「なんかもう、見てるだけで幸せになる」
:「お肉食べたときの顔が最高だった」
:「シチューも美味しそう……」
:「パンをシチューにつけるの天才」
:「この子、食べ物与えたらずっとご機嫌なんじゃない?」
:「さっきイャンガルルガ倒してた人だよね???」
:「あのときの格好よさどこ行ったwww」
:「格好いいとかわいいは両立するんだよ!!」
:「アステラ行きたい。あの定食食べたい」
厨房からも注目されていた。
「……ニャ?」
厨房から様子を見に来たアイルーが、静羽の食事風景に気づいた。
「料理長! ちょっと見てほしいニャ!」
「どうしたニャ?」
「会長さん、すっごく美味しそうに食べてるニャ!」
料理長が厨房から顔を覗かせる。
そして、静羽の表情を見た。
「…………」
ぴんっ!
耳が立った。
「……ニャアアア……!」
感極まったような声が漏れる。
「見たかニャ! あの幸せそうな顔!」
「料理人にとって、あれ以上の褒め言葉はないニャ!」
「やったニャー!」
「頑張って作った甲斐があったニャ!」
厨房のアイルーたちは、すっかり嬉しそうだった。
ライブチャット
:「料理人さんたちも喜んでるwww」
:「そりゃ嬉しいよなあ」
:「自分の作った料理をあんな顔で食べてくれたら最高だろ」
:「アイルー料理長かわいい!!」
:「会長、無自覚に料理人の心を掴んでるwww」
:「さっきは撫でて、今度は食べてアイルーを喜ばせてる」
:「アイルーたちに好かれる才能ありすぎない?」
そして、書記の一言。
「……会長」
澪は少し困ったように、しかしどこか楽しそうに声をかけた。
「皆さん、会長の食べっぷりに夢中のようです」
コメント欄を確認する。
:「もっと食べてるところ見たい!」
:「次はお魚!!」
:「デザート食べたときの反応も気になる!」
:「これもうグルメ配信でいいだろwww」
:「会長の幸せそうな顔を見ながら昼飯食べたい」
「……どうやら、料理の説明よりも、会長が美味しそうに召し上がっている姿の方が宣伝効果が高いようですね」
そして、ぽつり。
「……広報担当の朱音先輩が見たら、喜びそうです」
その頃。
厨房では、料理長が腕を組んで満足げに頷いていた。
「うんうん……」
「会長さんがあんなに喜んでくれるなら、料理人として嬉しい限りニャ!」
「……よーし! デザートの盛り付けも、気合いを入れるニャ!」
「「「おーっ、ニャー!!」」」
「…………」
厨房の方から聞こえてきた威勢のいい声に、澪は一瞬だけ目を向ける。
(……デザートまで張り切り始めましたね)
…………。
……ん?
(デザート?)
澪の視線が、テーブルへと移る。
そこには、二人分の豪華ハンター定食。
ステーキ。
焼き魚。
シチュー。
パン。
温野菜。
そして――。
既に運ばれてきている、セットのフルーツデザート。
(……デザートは最初に持ってこられたはずでは?)
澪の思考が止まった。
もう一度、厨房を見る。
料理長たちは、明らかに新しいデザートの準備をしている。
そして。
澪は、ゆっくりと静羽へ視線を戻した。
(…………まさか)
「まさか!」
思わず声が出た。
幸せそうに昼食を楽しんでいた静羽へ、澪はじっと目を向ける。
「会長。まさか余った経費で1人だけ別のデザートを頼んでいたりしませんよねぇ」
最後の「ねぇ」が、妙に低い。
にっこり。
澪は笑顔だった。
ただし、目は笑っていなかった。
ライブチャット
:「wwwwwwwwww」
:「あっ」
:「書記ちゃん気づいちゃったwwww」
:「ちょっと待って、どういうこと!?」
:「定食1,850クレジットだったよね?」
:「上限2,000だから残り150クレジットじゃん」
:「150クレジットで追加デザート!?」
:「いや、そもそも別注文したのかどうかもわからんwww」
:「料理長がサービスで作ってる可能性もあるぞ!」
:「でも書記ちゃんの警戒がすごいwww」
:「さっきの刀の修理費の件で完全に疑われてるwww」
「……ちなみに会長」
澪は、テーブルの上に置かれたメニュー表を手に取った。
「豪華ハンター定食は、一人1,850クレジット」
「経費の上限は、一人2,000クレジット」
「つまり、残額は一人150クレジットです」
淡々と説明する。
「……それ以上の追加注文をした場合、超過分は私費になりますからね?」
そして、静羽を見つめたまま続けた。
「それと、もし私の未使用分を使うつもりでしたら、事前承認の条件を確認してからにしてください」
完全に会計監査モードである。
……もっとも。
会計監査を担当しているのは、静羽本人なのだが。
ライブチャット
:「会計監査担当が監査されてるwwww」
:「立場逆転してて草」
:「書記ちゃん、めっちゃ警戒してるwww」
:「まだ何も確定してないのにwww」
:「これで普通に料理長のサービスだったら面白い」
:「逆に本当に追加注文してたらもっと面白い」
:「会長、なんか言ってwwww」
そのとき。
厨房から、アイルー料理長の元気な声が響いた。
「デザート、もうすぐできるニャー!」
「…………」
静羽を見る。
厨房を見る。
再び静羽を見る。
「……会長?」
にっこり。
「説明していただけますよね?」
カメラは、しっかりと静羽の方を向いていた。
ライブチャット
:「wwwwwwwww」
:「逃げ場がないwwww」
:「全国配信で経費の説明を求められる生徒会長」
:「豪華ランチが突然会計監査になったwww」
:「会長の反応が楽しみすぎる」
:「さあ、どう答える!?」
カメラは、しっかりと静羽の方を向いていた。
静羽は、ゆっくりと顔を上げた。
そして――。
にこぉ……。
それはもう、慈愛に満ちた微笑みだった。
すべてを包み込み、すべてを許し、見る者の心を穏やかにするような。
まるで、聖母のような笑顔。
ただし。
めちゃくちゃ震えていた。
「さ、さ、最初から一緒に分けて食べるつもりだったよ?」ガクガクブルブル
「…………」
静羽は微笑んでいる。
実に美しく、優しげに。
しかし、その手は小刻みに震え、肩も震え、声まで震えていた。
「…………会長」
「……なぜ、そんなに震えているんですか?」
ライブチャット
:「wwwwwwwwwwww」
:「震えすぎwwwww」
:「聖母の微笑み(恐怖)」
:「めっちゃ綺麗な笑顔なのにwwww」
:「さ、さ、最初からwwww」
:「絶対今考えただろ!!!!」
:「いや、最初から分けるつもりだった可能性もあるから!!」
:「説得力がなさすぎるwwww」
:「イャンガルルガ相手には一切震えなかったのにwwww」
:「古龍に見つめられても平然としてた人がこれwwww」
:「書記ちゃん>古龍なの???」
澪は静羽の顔をじっと見つめた。
そして、静かに口を開く。
「……なるほど」
「最初から、私と分けて食べるつもりだったんですね?」
静羽の微笑みは崩れない。
震えは止まらない。
「……それは、お気遣いありがとうございます」
一瞬。
場の空気が和らいだ。
……かに思えた。
「では、確認させてください」
「追加注文したデザートの金額は、おいくらですか?」
――ピシッ。
空気が凍った。
「一人当たりの経費上限は2,000クレジットです」
「定食が1,850クレジットなので、会長の残額は150クレジット」
「私の残額も150クレジットですが、二人分を合算できるかどうかは承認条件次第です」
「……つまり、分けて食べる予定だったかどうかと、経費として認められるかどうかは、別問題ですね」
ライブチャット
:「正論パンチwwwww」
:「逃げ道塞がれたwwww」
:「書記ちゃん強すぎるwwww」
:「会長、頑張れ!!」
:「いや頑張る方向が違うwww」
:「これがアステラ学園生徒会の日常なのか……」
:「会長が聖母みたいな顔で震えてるの面白すぎる」
そこへ、救いの手が……?
「お待たせしましたニャー!」
とてとてと、給仕のアイルーが近づいてきた。
その手には、料理長が腕によりをかけて盛り付けた、大きなデザート皿。
ふわふわのクリーム。
色とりどりの果物。
こんがり焼いた小さな菓子。
冷たいアイスを添えた、豪華な盛り合わせだ。
「追加の特製デザート盛り合わせだニャ!」
――コトン。
静羽と澪の間に置かれる。
「…………」
澪はデザートを見る。
確かに、二人で分けて食べられそうな大きさだった。
「……随分と豪華ですね」
「料理長が張り切って作ったニャ!」
その言葉に、厨房から料理長が顔を覗かせる。
「会長さんがあんなに美味しそうに食べてくれるから、こっちまで嬉しくなっちゃったニャ!」
「デザートも楽しんでほしいニャー!」
「……ありがとうございます」
澪は丁寧に礼を述べた。
そして。
「……ところで、こちらのお値段は?」
ライブチャット
:「きたあああああ!!!!」
:「デザート豪華すぎる!!」
:「美味しそう!!!!」
:「でも値段wwww」
:「書記ちゃんブレないwwww」
:「会長の命運が値札にかかっている」
:「アイルー料理長、悪気ゼロなのがまたwww」
「えーっと……」
アイルーは伝票を確認した。
「特製デザート盛り合わせは、450クレジットだニャ!」
「…………」
450クレジット。
定食二人分、3,700クレジット。
デザート、450クレジット。
合計――。
4,150クレジット。
「……150クレジット、超過していますね」
淡々とした声。
その一言に、コメント欄が爆発した。
ライブチャット
:「アウトーーーー!!!!wwww」
:「150クレジット超過wwww」
:「惜しい!!!!」
:「あと150!!!!」
:「いや合算できる前提でも超えてるwwww」
:「会長、完全に詰んだwwww」
:「聖母の微笑みは通用しなかった……」
:「経費の神は厳しかった」
しかし、澪は怒鳴ることも、ため息をつくこともしなかった。
ただ、静羽を見つめて。
「……会長」
「追加注文自体は構いません。せっかくですし、私もいただきます」
「ですが、事前に承認された予算を超えた分は、私費でお願いします」
少しだけ表情を和らげる。
「……それに、最初から分けるつもりだったのでしょう?」
「でしたら、私も半分負担しますよ」
そして、ほんの少し意地悪そうに。
「……次からは、注文する前に相談してくださいね?」
ライブチャット
:「澪ちゃん優しい!!」
:「ちゃんと分けて払ってくれるんだ」
:「会長よかったねwww」
:「いや、会長が勝手に震えてただけでは?www」
:「古龍より怖い書記ちゃん、実はめっちゃ優しい」
:「これが生徒会長と書記の日常か……」
:「それよりデザート食べようぜ!!」
澪は取り皿を二枚用意し、特製デザートを半分ずつに分けた。
白峰 澪
「……はい、会長」
静羽の前へ皿を差し出す。
「どうぞ」
そして、静羽の顔を見て一言。
「……もう震えなくても大丈夫ですよ」
ライブチャット
:「wwwwwwwww」
:「最後までいじられてるwww」
:「会長、完全敗北」
:「でもデザートは食べられる!!」
:「早く食べて!!」
:「さっきみたいな幸せそうな顔が見たい!!」
――こうして、豪華な昼食に追加デザートが加わった。
なお、今回の騒動で最も恐ろしいものは、大型モンスターでも古龍でもなく、経費の計算だったのかもしれない。
「し、白峰大明神様~」
両手を合わせ、拝むように澪を見上げる静羽。
「……誰が大明神ですか」
呆れたようにため息をつく。
「そんなに拝んでも、経費の上限は増えませんからね?」
静羽の前にデザートの皿を置く。
「……まったく。ほら、溶ける前に食べましょう」
少しだけ口元を緩めて。
「次からは、ちゃんと相談してくださいね。会長?」