【ゆる募:うちの自治区を発展させる方法】   作:空紅 唯空

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ステラガルドの秘密①
週に一度は都市への襲撃があるらしい


11話 ――いよいよ、本日の大本命。アステラ学園へ!

昼食を終えた二人は、アイルーたちに見送られながら大食堂を後にした。

 

「また食べに来てニャー!」

 

「次も美味しい料理を用意して待ってるニャ!」

 

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

 

「またねぇ~」

 

満腹になった二人が再び大通りへ出ると、ステラガルドの街は昼下がりの賑わいを見せていた。

 

商人たちの呼び声。

鍛冶場から響く金属音。

荷車を引くアイルーたちの元気な声。

そして、遠くに見える巨大な防壁。

 

午前中の配信では、広大な草原、大型モンスターとの遭遇、飛行船からの景色、古龍イヴェルカーナ、そして要塞都市ステラガルドを紹介してきた。

 

だが――。

 

今回の配信には、まだ紹介していない大本命が残っている。

 

「さて、昼食も済みましたし、そろそろ本来の目的地へ向かいましょうか」

 

澪はカメラを静羽へ向けてから、改めて視聴者に語りかける。

 

「ここまで、アステラ自治区の自然環境や都市の様子をご紹介してきましたが……」

「今回の配信は、あくまでもアステラ学園の公式広報活動です」

「ですので、ここからはいよいよ――」

 

少しだけ間を置く。

 

「私たちの通う、アステラ学園をご紹介します。」

 

ライブチャット

:きたああああああ!!!!

:ついに学園!!

:そういえば学園の紹介配信だったwww

:午前中の情報量が多すぎるんだよ!!

:イャンガルルガに古龍にアイルーにハンター飯……

:やっと本題に入るのかwww

:どんな学校なんだろ?

:あの会長が通ってる学校だぞ……?

:絶対普通じゃない

:生徒50人しかいないんだっけ?

:めっちゃ少人数だな

:でも自治区はキヴォトス最大なんだよね?

:謎が多すぎる学園

 

《ステラガルド・学園区画》

 

二人は大通りを進み、商業区を抜けていく。

賑やかな市場の喧騒が少しずつ遠ざかり、代わりに整然とした石畳の道が続くようになった。

周囲の建物も変わっていく。

商店や食堂に代わり、資料館や研究施設、訓練用の広場などが目立ち始めた。

 

道の脇には、学園区画を示す案内板が立っている。

 

「アステラ学園は、ステラガルドの学園区画にあります」

「自治区内で唯一の学園であり、現在の在籍生徒数は50名です」

「規模だけでいえば、キヴォトスの他の学園と比べても、かなり小さい部類でしょうね」

 

澪は歩きながら説明を続ける。

 

「ただし、授業内容には少々特色があります」

「一般的な学科教育に加えて、狩猟、採集、環境調査、モンスターの生態研究など、自治区の環境に合わせた実習が行われています」

「また、ギルドとの協力関係も深く、現役ハンターが講師として指導に訪れることもあります」

 

「そういえば、何だかんだでギルドの説明してなくない?」

 

「…………」

 

ぴたり。

澪の足が止まった。

 

「…………あ」

 

数秒の沈黙。

 

「……そういえば、そうですね」

 

「午前中から何度もギルドの名前を出していましたが、肝心の組織については説明していませんでした」

 

ライブチャット

:あっwwww

:そういえば!!

:ギルドって何!?

:ずっと普通に聞いてたけど、確かに説明されてないwww

:ハンターが所属してる組織?

:イャンガルルガを回収しに来た人たちもギルド職員だっけ?

:そもそも学園とは別組織なの?

:ギルドって何をするところなんだろ

:会長、よく気づいたなwww

 

「では、簡単に説明しましょう」。

 

「ギルド、正式名称:ハンターズギルドとは、アステラ自治区における狩猟活動やモンスターの調査・管理を統括する組織です」

「主な業務は、狩猟依頼の受付、狩猟・捕獲許可の発行、ハンターの管理、モンスターの生態調査、危険情報の収集などですね」

 

「また、各地の拠点運営や物資の輸送、緊急時の救助活動にも関わっています」

「アステラ学園とは別の組織ですが、互いに協力関係にあります」

「例えば、先ほども言いましたがギルドから現役ハンターを講師として派遣していただいたり、逆に学園の生徒が調査活動を支援したりしています」

 

ライブチャット

:なるほど!!

:めっちゃ重要な組織じゃん!

:狩猟の許可もギルドが出してるのか

:勝手にモンスター狩っていいわけじゃないんだな

:調査も救助もやってるの!?

:自治区の安全管理を担ってる感じか

:学園とは別組織なのね

:ギルドって何人くらい働いてるんだろ?

 

「なお、ギルドに所属する職員が全員ハンターというわけではありません」

「受付、調査、輸送、物資管理、事務など、様々な専門職があります」

「もちろん、アイルーたちも多くの業務に携わっています」

 

「……ですので、ギルドは単なるハンターの集まりではなく、自治区の生活と安全を支える重要な組織だと考えていただければ」

 

「……会長、せっかくですし、ギルド本部も紹介しますか?」

「学園の紹介が本来の目的ですので、先に学園を案内してからでも構いませんが」

 

「いや、今回は学園の紹介にしよう。ギルドにはアポ取ってないしまた今度だね」

 

「……そうですね。それがよいと思います」

 

澪は納得したように頷いた。

 

「ギルド本部には一般公開できない情報もありますし、事前の許可なく撮影するわけにはいきませんから」

「後日、正式に撮影許可をいただいてから紹介しましょう」

 

ライブチャット

:あー、確かにアポなしはまずいか

:ギルド本部も見たかったー!

:まあ、次回のお楽しみってことで!

:ちゃんと許可取るの大事

:会長、こういうところはしっかりしてるんだな

:昼食の追加デザートではあんなに震えてたのにwww

:それは言ってやるなwwww

:ギルド紹介配信も楽しみにしてる!

:でも今は学園が見たい!!

:そうそう! 本日の大本命!!

 

「では、予定どおりアステラ学園へ向かいましょう」

 

澪はカメラを正門へと向け直した。

 

「ギルドについては、また別の機会に詳しくご紹介できればと思います

「……それでは会長。改めて、学園の案内をお願いします」

 

ライブチャット

:待ってましたあああ!!

:いよいよアステラ学園!!

:どんな学校生活送ってるんだろ?

:授業風景が気になる!

:生徒会室も見たい!!

:他の生徒も登場するかな?

:会長、よろしくー!!

 

――寄り道続きだった自治区紹介配信も、ようやく本来の目的地へ。

アステラ学園の正門が、二人の目の前にそびえていた。

 

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

Tips:アイルーには小柄でも戦闘能力を持つ個体がおり、装備や技術を駆使して大型モンスターに立ち向かう。

 

 

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

要塞都市ステラガルド、学園区画。

 

二人が辿り着いたのは、立派な石造りの門柱と、重厚な木製の門扉を備えた大きな正門だった。

左側の門柱には、金属製の校章。

その下には、黒地に金文字で刻まれた校名。

 

『アステラ学園 — Astera Academy』

 

 

【挿絵表示】

 

 

門の向こうには、広大な学園の敷地が広がっていた。

石畳の大通りの先には、巨大な階段と木造・石造りの校舎。

校舎の左右には、渡り廊下で繋がれた複数の建物が並ぶ。

右手には訓練場らしき施設があり、木製の的が整然と設置されていた。

そして、ひときわ目を引くのが――

 

校舎の背後から空へと突き出した、巨大な白い骨。

まるで山そのものを貫くように、何本もの湾曲した骨がそびえ立っている。

 

さらに奥には、学園の建物よりも高い位置に停泊する大型飛行船。

緑豊かな山々と、遠くに流れ落ちる滝。

自然と建築物が一体となった、壮大な景観だった。

そこで静羽が、カメラへ向き直る。

 

「では改めて、視聴者諸君。ようこそ、アステラ学園へ!」

「今から校舎を案内するよ。まずは大まかに、学園の施設を紹介しようか」

 

静羽が校舎の方へ手を向ける。

 

「正面に見える大きな建物が本校舎。普通教室や職員室、生徒会室なんかがあるよ」

「それから、右手に見えるのが訓練施設。左手には研究棟や実習用の施設が並んでるんだ」

「ほかにも、図書室や食堂、装備の保管施設なんかがあるね」

 

「生徒数は50人しかいないけど、実習で使う施設が多いから、敷地は結構広いんだよ」

 

ライブチャット

:うおおおおおお!!!!!

:めっちゃかっこいい!!

:え、これ学校!?

:なんか巨大なギルド本部みたい!

:生徒50人でこの規模!?

:校舎でっか!!

:右側の訓練場、本格的すぎない?

:普通の学校と雰囲気が全然違う!

:ていうか、後ろのアレ何?

:骨?

:いやいやいや、骨にしては大きすぎるだろ

:何の骨だよあれ!!!!

 

「補足すると、アステラ学園は一般教養と狩猟・調査に関する専門教育を並行して行っています」

「そのため、教室だけでなく、実際の狩猟や調査活動を想定した設備が必要になるんです」

 

澪がカメラを右側へ向ける。

そこには、広々とした訓練場。

木製の標的や、巨大なモンスターを模した訓練用の模型が置かれている。

 

「例えば、こちらの訓練場では武器の扱い方や立ち回りなどを学びます」

「武器種によって必要な設備が異なるので、訓練場も複数用意されていますね」

 

続いて、左側の建物へ。

 

「研究棟では、モンスターの生態や素材、自治区内の環境などについて研究しています」

「調査で持ち帰った資料や試料を分析することもあります」

 

ライブチャット

:ちゃんと学校してる!

:狩猟実習ってすごいな……

:モンスターの生態研究、めっちゃ興味ある!

:あの訓練用の模型、でかくない?

:普通の学校のグラウンドとは違うなwww

:会長はあそこで刀の練習してるのかな?

:生徒会室見たい!!

:研究棟も見たい!!

:ねえ、後ろの骨は?

:あの巨大な骨、説明してほしい

:校舎の後ろから生えてるんだけど!?

:あれ飾りじゃないよね?

:どう見ても生物の骨格なんですが……

:サイズおかしくない!?

:校舎よりでかい骨って何!?

:もしかしてモンスターの骨?

:あんな大きいモンスターがいるの!?

 

「……ああ、なるほど」

 

澪はカメラを上へ向けた。

青空を背景に、巨大な白い骨が映し出される。

一本一本が、まるで塔のように大きい。

それが何本も連なり、学園の建物を取り囲むように伸びていた。

 

「……皆さん、やはり気になりますよね」

「学園の背後に見える、あの巨大な骨についてですが……」

 

「古龍の骨だよ。大昔のね」

 

…………。

 

あまりにも、あっさりとした説明だった。

まるで、校庭に植えられている木の種類でも紹介するような口調。

しかし、画面の向こうでは――。

 

ライブチャット

:…………は?

:古龍?????

:今、古龍って言った?

:古龍の骨!?!?!?

:いやいやいやいや!!!!

:ちょっと待って!!

:あのサイズの古龍がいたってこと!?

:イヴェルカーナより遥かに大きくない!?

:というか、なんで学校に古龍の骨があるんだよ!!

:普通に紹介しないでwwww

:アステラ学園、校舎の背景がとんでもなさすぎる

 

巨大な白い骨が、青空を背景にそびえ立っている。

一本一本が建物を凌ぐほど大きく、湾曲した骨はまるで巨大なアーチのようだった。

しかも、見えているのは骨格の一部にすぎない。

地面の下にも、途方もない規模の骨が埋まっている。

 

「正確には、学園の建設以前からこの場所に存在していた古龍の骨格です」

「学園は、この骨格が存在する地形を活かす形で建設されました」

「現在も一部は地中に埋まっており、全体像を地上から確認することはできません」

 

ライブチャット

:えっ、全部見えてるわけじゃないの!?

:まだ地面の下にあるの!?

:どんだけ大きいんだよ……

:これもう化石の上に学校建ててるようなもんじゃん

:なんでそんな場所に建てたのwww

:骨格そのものが遺跡みたいになってる……

:これ何百メートルあるんだ?

:生きてた頃を想像したくないんだけど

 

静羽は巨大な骨を見上げながら、何気ない調子で付け加えた。

 

「あそこまで大きくはないけど、同じ種と思わしき古龍は見たことあるよ」

 

「……そうですね。過去の目撃記録にも、類似した特徴を持つ古龍が残されています」

 

そこで、澪はふとコメント欄を見た。

 

…………。

 

ものすごい勢いで流れていた。

 

ライブチャット

:…………え?

:今なんて?

:見たことある????

:生きてるやつを!?

:同じ種類の古龍がまだいるの!?

:いや待って待って待って!!

:あんな化け物みたいなサイズの骨を見せられた直後に!?

:『あそこまで大きくはない』ってどのくらい!?

:会長の大きさの基準が信用できないwwww

:イャンガルルガを普通扱いしてた人だぞ!!

:イヴェルカーナ見て運がいいって言ってた人だぞ!!

:その古龍、どこで見たの!?

:どんな姿だった!?

:というか、そんなのが今も生きてるの!?

 

「皆さん、かなり驚かれているようです」

「それもそうでしょうね。これほど巨大な骨格と同種と思われる古龍が、現在も存在している可能性があるわけですから」

 

「……そういえば、会長が目撃した個体については、まだ詳しくお聞きしていませんでしたよね?」

 

「あ~そういえば話してなかったっけ?」

「まあ発見時はギルドから口止めされてたからね。えーっと」

 

ごそごそ。

静羽が懐に手を入れ、何かを探し始めた。

 

「……会長?」

 

ごそごそ、ごそごそ。

 

「何を探しているんですか?」

 

「あった!」

 

ぱっ!

静羽が取り出したのは、一枚の写真だった。

 

「……写真、ですか?」

 

静羽が差し出した写真に、澪はカメラを近づける。

そして――。

画面いっぱいに、その写真が映し出された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そこに写っていたのは、巨大な蛇のような生物。

全身を覆う硬質な鱗。

背中から無数に突き出した鋭い棘。

岩山に巻きつく、途方もなく長い胴体。

そして、こちらを睨みつけるような、恐ろしい顔。

 

周囲には切り立った岩壁や滝が見える。

しかし、それらの景色があまりにも小さく感じられた。

 

「…………」

 

澪の手が止まった。

 

「……会長」

「……これ、本当に写真なんですか?」

 

思わず、そんな質問が口をついて出た。

写真の中の生物は、あまりにも巨大だった。

遠近感が狂っているのではないかと疑いたくなるほどに。

 

ライブチャット

:…………

:…………え?

:は?

:何これ

:えっ、ちょっと待って

:でっっっっっっっっっか!!!!

:いやいやいやいやいや!!!!

:山!? 山が動いてるの!?

:蛇!? これ蛇なの!?

:待って、周りの岩山と比べてみて

:おかしいおかしいおかしい!!!!

:これ生き物なの!?

:こんなのが実在するの!?

:古龍ってここまで大きくなるの!?

:さっきのイヴェルカーナが可愛く見えるんだけど!?

 

澪は写真をじっと見つめていた。

 

写真の中の古龍。

その姿は、背後にそびえる巨大な骨格とよく似ている。

長大な胴体。

特徴的な棘。

そして、蛇のような体型。

 

「……確かに」

「背後の骨格と、形態的な共通点が多いですね」

「同種、あるいは非常に近縁の古龍である可能性は高そうです」

 

そこまで言って、澪は静羽を見た。

 

「……それにしても、よく撮影できましたね」

「これほど巨大な古龍を、ここまで鮮明に……」

 

そして、ふと気づく。

 

「……あの、会長」

「発見当時はギルドから口止めされていた、とおっしゃいましたよね?」

「……現在は、この写真を公開しても問題ないのでしょうか?」

 

ライブチャット

:あっ」

:そういや口止めって言ってたな

:公開して大丈夫なの!?

:会長、ちゃんと許可取ってるよね!?

:さっきギルドにはアポ取ってないって言ってなかった?

:また書記ちゃんの確認が始まったwww

:でもこれは確認した方がいい

:こんなの機密情報でもおかしくないぞ

:いや、それよりこの古龍について教えて!!

:名前は!?

:どこにいるの!?

:大きさは!?

:これ本当に生きてるの!?

 

澪は写真と静羽を交互に見つめた。

 

「……会長。まずは公開許可について確認させてください」

「それから、差し支えない範囲で構いませんので、この古龍について教えていただけますか?」

 

「いいよ。口止めはそこそこ前に解除されてるからね」

 

「……そうでしたか。それなら安心ですね」

少なくとも、機密情報を生配信で公開してしまうという事態は避けられたらしい。

 

「では、改めてこちらの古龍についてですが……」

 

「非常に巨大な蛇型の古龍ですね。学園の背後にある骨格とも、外見上の共通点が確認できます」

「……それにしても、なぜ発見当時は情報の公開が制限されていたのでしょうか?」

「希少な古龍の生息地を保護するため、ということでしょうか?」

 

少し考えるような仕草をしてから、口を開いた。

 

「口止めされてた理由って、あいつの気が立ってたからなんだよね」

 

「……気が立っていた?」

 

「気が立ちすぎて、近づいてくるもの全部パックんちょしてたから」

 

「…………はい?」

 

ライブチャット

:…………は?

:パックんちょ?

:今パックんちょって言った?

:丸呑みってこと!?

:いやいやいやいや!!!!

:あのサイズの古龍が!?

:近づくもの全部!?

:怖すぎるんだけど!!!!

:パックんちょって表現が可愛すぎて内容が頭に入ってこないwww

:いや笑い事じゃないだろwww

:会長、もっと危機感のある言い方して!?

 

「……なるほど」

 

澪は慎重に言葉を選んだ。

 

「つまり、当時は極めて攻撃性が高く、周辺に近づくこと自体が危険だったため、ギルドが情報を制限していたわけですね」

「不用意な接近を防ぐための措置だったと……」

 

そこまで説明して、ふと疑問が浮かぶ。

 

「……ですが、気になりますね」

「古龍がそこまで興奮していた理由は、判明しているのでしょうか?」

 

静羽を見る。

 

「縄張りへの侵入でしょうか。それとも、何か外部から刺激を受けたのでしょうか?」

 

ライブチャット

:確かに、なんでそんな怒ってたんだ?

:もともと気性が荒い古龍なのかな?

:繁殖期とか?

:縄張り争い?

:あんな巨大な生物と縄張り争いできるやついるの!?

:それもそうだなwww

:何かに襲われたとか?

:あのサイズを襲う生物がいたらそれも怖い

 

澪がカメラを写真へ近づける。

 

巨大な古龍の頭部。

 

鋭い牙。

 

無数の棘。

 

そして、全身を覆う頑丈そうな鱗。

 

白峰 澪

 

「……それにしても、立派な鱗ですね」

 

「これほど巨大な古龍ですから、鱗一枚でも相当な大きさなのでしょう」

 

「研究資料としても、非常に価値がありそうです」

 

その瞬間。

静羽の様子を確認しようとした澪が、何かに気づいた。

 

「…………?」

 

静羽を見る。

もう一度、写真を見る。

そして、再び静羽を見る。

 

(……あれ?)

 

妙な胸騒ぎ。

午前中のイャンガルルガ討伐。

格好いい技を披露したいという理由で、太刀を損傷させた生徒会長。

そして、普段から刀や珍しい素材の収集に目がない人物。

 

(……いえ、まさか)

 

澪は一度、その考えを振り払った。

しかし。

 

「……会長」

「念のため確認させてください」

 

「この古龍が気を荒らげていた原因について、会長は何かご存じですか?」

 

猛烈に嫌な予感がする。

 

ライブチャット

:ん?

:書記ちゃん?

:なんか急に声が真剣になったぞ

:嫌な予感がするwww

:いや待って、会長が原因ってことはないよね?

:さすがにないだろ

:あんな巨大な古龍だぞ!?

:でも会長だぞ?

:その一言で不安になるのやめろwww

 

澪は静羽をじっと見つめていた。

そして、静かに問いかける。

 

「……まさかとは思いますが」

「会長、この古龍に何かしたわけではありませんよね?」

 

その問いに、コメント欄が一瞬だけ静まり返った。

 

――実際のところ、古龍が激怒した原因は、眠っていたところを静羽に起こされたこと。

より正確には、静羽が鱗欲しさに、眠っていたダラ・アマデュラの逆鱗を無理やり剥ぎ取ったことだったりするのだが。

当然ながら、その事実を配信の視聴者たちはまだ知らない。

そして澪もまた、いくら目の前の生徒会長でもそんなことをしていたとは、まだ確信できずにいた。

 

ライブチャット

:…………

:会長?

:なんで書記ちゃんそんな質問するのwww

:いや、でも……

:会長ならやりかねないと思ってしまった

:頼む、違うと言ってくれwww

:あの古龍を怒らせた原因が会長だったら伝説になるぞ

:というか、そもそも近づけるの!?

:会長、説明お願いします!!!!

 

「…………会長?」

 

澪の声が、ほんの少しだけ低くなった。

 

「……何か、心当たりがあるんですか?」

 

――学園紹介配信は今、思いもよらない方向へ進もうとしていた

 

 




関係ないんですけど静羽はかくれんぼとか生き物のありのままの姿の写真撮影とかうまいですよ。
ホント今の状況とは関係ないですけど。
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