【悲報】ちんちん改造したのに戦争に負けるw   作:ひつまぶし太郎

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新刊発売記念です。
元々はぶらっくぶれっどw黒パンやんwっていう懐かしいネタをしたがっただけなんですよ。
ほんとに。
なのでそんなに長くはやりませんしローテンポで薄味です。


ぷろろーぐ。

 

この世界は、緩やかに滅びへと向かっている。

 

ガストレア。

そう呼ばれる危険で未知で、神秘的なまでに冒涜的。

そんな、危険な生物によって。

 

DNAを書き換え、生物を新たにデザインし作り替えるウィルスは、またたく間に人類を脅かした。

 

十年前、人類はそんな危険生物の洪水に立ち向かうべく、ありとあらゆる手段を尽くした。

 

爆撃、銃撃、特攻。

人体実験、裏切り、人身御供。

国境を越え一致団結、など夢のまた夢。

ほとんどの国が、明確な対処を行うよりも早く人類の生存可能エリアは縮小の一途をたどっていった。

 

そんな中で。

まことしやかに囁かれる都市伝説があった。

 

新人類創造計画。

体の一部を機械化して、ガストレアに対抗するべく非人道的な処置を施された上で戦場に送り込まれる兵士たちがいたという。

 

彼らは一様にガストレアを葬れる力を持ちながら、同時に莫大な費用とおびただしい数の犠牲を重ねて生まれてくる。

 

時に、人間兵器とすら揶揄される彼らはしかし。

 

戦争の結末を覆すほどの力は持たなかった。

 

 

…さて。

そんな都市伝説の中に、悲しい事実が一つ。

 

 

 

───ちょ、おまwちんちん改造したのに戦争負けてんだけどw

 

 

は?(真顔)

 

 

何やってんだお前え!!!(ぶち切れ)

 

 

新人類創造計画じゃなくて新ちんちん創造計画とはこの李白の目をもってしても見抜けなかったよ恐れ入ったから殺すね(反逆)

 

 

 

これは、肉体を違法改造された少年が軍を退役してパン屋を営む何気ない話。

 

その少年は、滅びゆく世界で何を見るのか。

 

あるいはナニを見るのか。

 

 

まだ誰も、何も知らない。

 

 

 

知るわけもないし知ったこっちゃあないとも言う。

 

 

●

 

 

「で、そろそろ戻ってくる気になりましたか?あなたが申請していた休暇の予定期間はとうに過ぎていますが…ふふっ。でも、ええ。寛大な私は許してあげますよ。だってこうやって誘ってもらうのを待ってたんでしょう?素直じゃないんですね」

 

自信たっぷり。

その言葉に相応しい女が、一人の男に笑いかける。

 

言葉こそ懇願の形を取っていたが、その実その女にとっては命令に等しい。

 

聖天子。

そう呼ばれる純白の少女が、狭苦しいパン屋の中でふんぞり返るさまは、少々どころかひどく現実感を失っている。

 

着ている服はまるでウェディングドレスのようだ。

和紙のように薄くて真っ白い生地を幾重にも羽織り、その頭部にも同様のヴェールをまとっている。

 

…本人の高潔さへの畏敬を込めてなのか、彼女の掲げる無垢な理想論を揶揄するものなのか、それとも純真であってほしいという人々の願いなのか。

その肌はおろか、頭髪まで白い彼女はよく雪に例えられている。

 

そんな美貌を持つ少女に向かって、初対面で「雪被り姫」「処女厨受け狙い」などとのたまった恐れ知らずどころか命知らずのガキがいるらしい。

ついでに「結婚する予定もないのになんでウェディングドレス着てるんです?」という追撃もセットで。

 

バカだなぁ。

まぁまさかそんなバカガキが僕なわけないよな僕がそんな自暴自棄になるわけもないし。

清廉潔白だし。

 

僕は、耳に指を突っ込みながらあくびを一つ。

 

「ちょっと何言ってるか分かんないですね」

 

「なんでわかんないんですか?普通にそんなに難しいことは言ってないですよね」

 

「いや、わかんないな…たぶんミゲルもわかんないって言うと思いますよ」

 

「誰ですかミゲルって。知らない人の名前を言われても困ります」

 

「えーほんとに知らないんですか?聖天子様ともあろうお方が?」

 

「……いや、え…?私が悪いんですか?」

 

聖天子。

敗北した人類がモノリスで遮った境界の内側に引きこもって実に十年。

日本は5つのエリアに分割されたわけだが、その一つ、東京エリアの三代目の統治者が彼女だ。

その人間離れした美貌と、決して見かけ倒しではない辣腕で、先代、先々代の聖天子と比べても圧倒的な支持を得ているらしい。

知らないけど。

 

そんな少女は、年相応に、統治者として極めて当たり前で、むしろ必要とされる程度のプライドがあった。

 

驕り高ぶることなく。

だが、へりくだることもない。

高潔で、純白な女王様は、年下の僕にからかわれることをよしとしなかった。

 

ガキが…舐めてると潰すぞ…。

そんな風に思わずムッとした表情を浮かべ、同時にどれだけ思考を巡らせてもやはりミゲルという相手にはたどり着かないのか、すぐに困惑の表情に移り変わる。

 

「……やっぱりわかりません」

 

「ミゲルはあれですよ…ほら。天童民間警備会社のあるビルの1階だか3階だかのゲイバーとヤクザを反復横跳びしてるあいつです。アングラでアンゴラみたいな。所属がまずよくわかんないし人知れず違法入国したって聞いた気がしますね」

 

「じゃあ知るわけないじゃないですか!そんなゴリゴリの犯罪者!」

 

ばん、と白魚のような手が木製のカウンターを叩き、その衝撃でかごに入ったパンが揺れる。

 

私怒ってますと、口にせずとも伝わってくるほどの表情だが知ったこっちゃあない。

 

今の僕は軍属じゃなくてただのパン屋。

なんか退職届が休暇届扱いになってるような言い分が聞こえてきたがきっと気のせいだろうし。

 

いくら所属軍人ではなく所属兵装扱いで人権がないしちんちんもないし童貞ではない(超重要)とは言え、さすがにそんな馬鹿な話はないだろう。

 

…うん。

ないよね?

 

「確かに見た目はゴリラですけどそこまで言うことはないじゃないですか。こないだ聖天子様の写真見せたら喜んでましたよ?そんな相手を悪く言うなんて変わっちゃいましたね、聖天子様々は」

 

「…うっ、た、確かに知らない人を悪く言い過ぎたかもしれません…」

 

「まぁ写真のタイトルは『エロ本コラ画像選手権聖天子様の部』だったんですけど…結構自信あったんどけどなぁ。まさかふたなりにしたほうが点数高いとは…まだまだ僕も修行が足りないなって」

 

惜しくも優勝を逃したので、次回開催時は優勝取れるように頑張ります。

 

「何を言ってるのか何一つわかりませんけどとりあえず侮辱されたことだけはわかりました。死刑でいいですね?」

 

「そりゃ困る。これでも僕のパンを待ってる人がいるんで」

 

廃棄先にいるガキどもとか。

貧困高校生とか。

死体の胃袋に入ってたドーナツ食べちゃう系のダメ人間とか。

 

意外とこの店は愛されてるのだ。

知らんけど。

 

場所は東京エリアの中心と外周の中環地点くらい。

程よく閑散としていて、程よく整備されている。

 

店の表のガラスはピカピカで、日当たりも良好。

 

素晴らしい。

 

そんなに大きくない慎ましやかな感じが僕は気に入っていた。

 

まるで聖天子様のおっぱいみたいだね、とか言ったら本当にぶっ殺されそうなので口にはしないでおくけれど。

 

「それ以上に私が困ってるんですが…?」

 

「国家元首って大変ですね」

 

「あ、な、た、の!せいなんですけどね!」

 

ふぅ、まったく。

統治者のくせに沸点の低い。

 

下世話な政治家の相手だってしないとだろうに、なぜこうも簡単に声を荒げるのか。

 

「そういう類の政治家はとっくの昔に滅びてますよ。ガストレアに敗北したときから」

 

無能が上にいた地域は滅びた。

むしろあの状況から立て直してきたエリアのトップたちが化け物ともいうが。

 

「乱世ですねぇ…そろそろ日本人も原点回帰して侍になったりしませんかね。弾き、忍殺!誉は浜で死にましたぁ!」

 

「…なるわけないでしょう。それより復帰の話ですが」

 

唐突に僕がテンションを上げてもなんのその。

さすが国家元首。

あるいは僕のご主人様。

薬決めて頭ハッピーセットなやつの扱い方が手慣れてやがるぜ。

 

「許してちょんまげ」

 

べー、と舌を出す僕に向かってゆるゆると首を振るその少女は、疲れたような笑みを浮かべた。

 

「……はぁ、まぁいいでしょう。どうせダメで元々な所はありました。それに真面目なあなたには正式な辞令のほうが効果的でしょうし」

 

なんか恐ろしげな計画が聞こえてくるが無視だ無視。

 

「それより、うちはパン屋なんですが。それとも聖天子様はコンビニでトイレ借りてもガムとか買わないタイプですか?」

 

「…焼きたてのクロワッサンを一つ」

 

「毎度あり〜」

 

僕は統治者がマジックテープをバリバリする財布を取り出したことに爆笑しそうになるのを必死にこらえながら小銭を受け取り、代わりに焼きたてのクロワッサンをかごからトングで袋に移し替えてその手に渡す。

 

それで終わり。

 

ひらひらと手を振りながら新聞に目を落とす僕が本気で興味をなくしているのを悟った白い影が、踵を返して店外へと歩き出す。

 

からんころんと、ドアにつけたベルが鳴り、外で待機していた彼女の護衛たちが一斉に道を開ける。

 

「あつっ…ふふ…」

 

だから、きっと。

 

そんなクロワッサンにかじりついた音と嬉しそうな独り言が聞こえた気がするのもきっと、気のせいだ。

 

気のせいじゃなかったらちょっとあざとすぎる。

 

果たして意外と食えない彼女の策略なのか、幻なのか。

 

その答えを僕が知ることはないのだろう。

 

 

今日も並べて事もなし。

 

 

世界は緩やかに滅んでるし、世界の誰かが死んでいく。

 

後悔は先に立たないし、先の見通しもない。

 

僕のちんちんだって帰ってこない。

 

変わらないのはパンの美味しさくらいのものだ。

 

 

「聖天子様御用達とか店先にぶら下げてみようかな?…いや、変な奴に絡まれそうだしやーめっぴ」

 

 

だから僕はパンを焼く。

 

 

思いついた日に、焼きたい時に。

 

 

前を向くために僕はパンを焼く。

 

 

好きなアイドルが生放送でガストレアに食われた時も、新車をこすった時も。

 

僕はこれからも何度だってパンを焼くだろう。

 

 

 

「…あ、配達頼めます?はい。ビッグマックで。は?ビッグマクド?うるせえなここは東京だぞ戦争しようってのか!?」

 

 

…まぁ別に焼くだけ焼いて僕がパンを食うわけではないのだけど。

 

 

『ぶらっくぶれっど』

 

 

本日も変わらず営業中。

 

 

 




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