【悲報】ちんちん改造したのに戦争に負けるw 作:ひつまぶし太郎
先に謝っときますすみません。
IP序列。
国際イニシエーター監督機構という組織が規定、発行しているもので、倒したガストレアの数や挙げた戦果などによって行われるランク付けだ。
難しいことは考えずに、この序列がほぼそのまま強さの基準と考えてもらっていいだろう。
「里見くん、延珠ちゃんとの序列覚えてる?」
「よく覚えてねえけど、12万ちょいだったような…」
「私も端数まで覚えてないけど、だいたいそのくらいよ」
民警の数は多い。
だが、その質は全てが良いとは決して言えない。
だが、1000番台ともなれば、普段お目にかかることのできる民警の中でも相当な上澄みと言えるだろう。
このあたりから、質が良い、と呼んで差し支えのない戦力になる。
現場に一人でもいれば、そいつは幸運だ。
よほどのクソな引きをしない限り、
自分の命があるか保証しないが。
そんな塩梅。
「そんな相手が震え上がるパン屋の店主ね…」
「IP序列とか関係ない感じだったけどなもう」
蓮太郎は会議室に入って早々絡んできた男の背中を見る。
IP序列1584位伊熊将監。
彼は、ぶらっくぶれっどの代理だと知った途端『別にちんちんと尻にタトゥー入れられたくらいなんてことねえよ!!』という捨て台詞とともに顔を青褪めさせており、後輩の所業に蓮太郎は普通にドン引きした。
「里見くんだって似たような経歴のはずなのにね」
「うるせえよ。あいつは後輩だけど、誰よりもあの戦争で…」
言いかけて、蓮太郎は口を噤んだ。
あの後輩がガストレア戦争時代のことを好んで話さないのを知っているから。
そもそも蓮太郎も後輩も当時5歳と4歳。
本来戦争に駆り出されることすらあり得ない年齢だった。
だと言うのに、あの後輩は。
あの戦争で誰よりも戦果を挙げている。
暫定単独IP序列8位。
全ての民警が、彼を基準に評価される。
イニシエーターもいない。
プロモーターでもない。
彼は民警ではない。
だが、民警として評価するにあたって、彼のガストレア排除の能力は何よりも単純明快だ。
彼よりも早く、多く、鋭く。
ガストレアを殺せるかどうか。
彼との距離はどの程度か。
そんな、恐ろしいまでの絶対基準。
こないだのように非正規に勝手に駆除したりする以外、公的記録上はまともに十年間活動していないことを考えれば、いまだに8位という位置にいることがまずおかしかった。
実際、1位の人間とは浅からぬ因縁もあるようだし、いつだったか序列が後輩よりも上の民警を鼻歌交じりにぼこぼこにしていたのを覚えている。
戦果で彼を上回ることができても、戦力として彼を本当に超えている人間は七組もいないだろう。
そもそも、先輩などと。
彼の経歴を考えれば、自分がそう呼ばなくてはいけないはずだ。
そんな風に思いを馳せているうちに、禿げ頭の男が、会議室へと踏み込んでくる。
「んー!んんんー!」
手錠と口輪で拘束され牢屋にぶち込まれた見覚えのある少年を乗せたカートを伴って。
後輩だった。
パン屋の店主をしている、蓮太郎がよく知る後輩だった。
…なんか檻の中にエロ本がぶら下がっているあたり、割と低俗で低品質な罠に引っかかったらしい。
何もかもが最悪だった。
「それで、里見くん。誰よりもあの戦争で、の続きは?」
「あの戦争で一番馬鹿になったんだよ、うん。もうまじちんちん」
●
会議室のスクリーンに聖天子様が映った瞬間立ち上がった社長たち。
それを一瞥し、それから檻のなかで当たり前のように拘束を抜け出し尻をかきながらエロ本のページをめくるバカに一言言いたげな顔をしながら、聖天子様は口を開く。
『楽にしてください、皆さん』
「うーす」
『あなたはもう少しちゃんとしてください』
「そっすねー…おぉ…でっか」
『あなたという人は本当に!!いいですか!?これは、政府からの直々の依頼なんですよ!それを着拒した挙句代理をよこして、菊之丞さんの知恵で仕掛けたそんな低俗な罠に引っかかって!ちょっと!ねぇ!聞いてるんですか!?』
「うんうんうんうん」
『それやめてくださいっていつも言ってますよね!』
「人前でそんな騒いでプライベートのつもりですか?真面目にしてくださいよ聖天子様」
『───!!!───!?』
聖天子の後ろに控える菊之丞が首を振った瞬間、音声が途切れる。
画面の向こうで顔を真っ赤にした国家元首が何かをわめきたてているが、会議室は不気味なくらいの沈黙で満たされていた。
『……………ふぅ』
ひとしきり叫び倒して落ち着いたのか。
込み上げてくる何かを飲み込んだ聖天子様は、さっと顔を上げ蓮太郎たちの顔を見渡す。
全員顔を伏せ、必死にこの沈黙が過ぎ去るのを待っていた。
やがて、息を整えた聖天子が意を決したように口を開く。
その美貌に添えられた朱色と涙目について触れる、恐れ知らずはここには存在しない。
『…依頼はシンプルです。民警のみなさんに依頼するのは、昨日東京エリアに侵入して感染者を一人出した感染源ガストレアの排除です。もう一つは、このガストレアに取り込まれていると思われるケースを無傷で回収してください』
昨日東京エリアに出現したガストレア。
それは、蓮太郎が追いかけ、後輩が殺した男を感染させた、その大元。
変異の直前に蜘蛛足を確認したことから、モデルスパイダーであろうことは推定されているが、感染源であるガストレアはその姿形も足取りさえも、依然として発見に至っていない。
「質問よろしいでしょうか。そのケースとやらは、ガストレアが取り込んでいる、あるいは巻き込まれていると見ていいわけですか?」
『その通りです』
「感染源ガストレアの形状と種類、いまどこに潜伏しているのかについて、政府はなにか情報を掴んでいるのでしょうか?」
『残念ながら不明です』
「回収するケースの中にはなにが入っているか聞いてもよろしいですか?」
『……依頼人のプライバシーに関わるため、お答えできません』
質問しても、まともな答えは返ってこない。
そのきな臭さに嫌な沈黙が重く会議室に振り注ぎ、しかしそれを破るようにけたたましいほどの笑い声が響き渡った。
『誰です』
「私だ」
声がした方に目を向ければ、会議室に蓮太郎たちが来たときからずっと空席だった椅子に、一人の男が腰を下ろしていた。
仮面をし、気取った様子のその男。
知っている。
それはつい昨日、岡島の家で遭遇した───。
「お、お前…!お前は、世界を滅ぼす者とか名乗る、警察を全裸にしてから殺した変態殺人鬼!!」
「耳が痛いね。私だって好き好んでこんなことはしていないよ…里見くん」
男は机の上を歩き、聖天子様と真正面から相対する。
『名乗りなさい』
「おっと失礼…私は蛭子。蛭子影胤という。お初にお目にかかるね無能な国家元首殿。端的に言うと私は君たちの敵だ」
「どっから入ってきやがった!」
「正面から堂々と。道すがらうるさいコバエがいたので処理させてもらったけどね…おいで、小比奈」
「はい、パパ」
一人の少女が、蓮太郎の後ろからテーブルに向かって走り抜けた。
一体いつからそこにいたのだろう。
もし、彼女がその気であれば。
ぞわり、と。
首筋が泡立つ。
今自分の首が繋がっているのは奇跡なのではないか…?
「うんしょっと」と言って手をつき足を上げ、難儀しながら卓の上にのぼる姿は年相応だが、腰にぶら下げた小太刀といい只者ではないのは確かだった。
少女は影胤の横に来てスカートをつまんでお辞儀をする。
「蛭子小比奈。十歳」
「彼女は私の娘にしてイニシエーターだ…そう殺気立たないでほしいね。私は今日、ただの挨拶に来ただけなのだから」
「挨拶だと…?」
「そう…七星の遺産は我らが戴く。そう言いにね」
七星の遺産。
聞き慣れない単語に首をかしげる蓮太郎たちを憐れむように、蛭子は首を振る。
「度し難いね。君たちは本当に何も聞かされていないのか?だとするのならお笑い草だ!見給え、そこの彼を!あれこそがこの世界の象徴だ!力あるものに首輪をつけ、無理矢理従える!そんな政府のどこに正義がある?」
「似合ってるっしょ?聖天子様の趣味なんだよね」
『違います』
「そう言いながらも聖天子様の目には欲望が見え隠れしており、このあと僕はお仕置きとしてぶち犯されるんだよね…
『変なモノローグを入れないでください!今はそういうタイミングじゃないです!』
聖天子様と後輩のコントを尻目に、部屋にいる民警と社長全員が自衛用の拳銃を抜き、発砲。
しかし、そのすべてが青白い燐光によって遮られていた。
燐光は四方八方から襲い来る銃弾を弾き返し、吹き飛ばす。
会議室のテーブルも調度品も、その悪夢のような跳弾によってずたずたになっていく。
「名乗ろう里見くん、私は元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』蛭子影胤だ」
全員が銃弾を打ち尽くすまで沈黙していた男の宣言に、思わず息を呑んだ。
殺意だ。
戦争が生み出した怪物による、戦争の火蓋をきり落とすという本気の凄味。
それに気圧されるように思わず一歩、民警たちが下がり。
───そして。
唐突に。
服が弾けた。
その場にいた成人男性全員の服が、容赦なく。
『ファ!?』
「「「なにっ!?」」」
「ちょっと、何してるの里見くん!?ば、場所と時を考えなさい!!」
「俺は何もしてねえよ!!!」
木更さんと聖天子様の顔がさっと赤らみ、即時に顔が伏せられる。
全裸、全裸、全裸だ。
部屋の中にいる男全員が、後輩を除いて、全裸だった。
「すっげぇえええ!ちんちんがいっぱいだああああ!」
馬鹿のはしゃぐ声が遠くに聞こえ、さらには伊熊将監の尻にうんちとハートマークの入れ墨が入っているのが見えて、蓮太郎はこれが現実ではないことを祈りたくなる。
だが残念。
ところがどっこい。
あまりにも過酷な現実がそこにあった。
「ちんちん、ち・ん・ち・ん!ふぅわ!ふぅわ!O.T.I.N.P.O!!!Fooooooooo!!もげろー!!」
「はしゃぐなチンカスぅ!!」
蓮太郎は後輩にツッコミながら。
いや、別にそういう意味じゃなくて。
漫才的な意味でツッコミを入れながら頭を抱えた。
どうしてこうなる。
つい数秒まで、あんなにシリアスだったはずなのに!
「最近どうにもこの力を使うと、近くにいる成人男性全員の服を消し飛ばす能力も追加されたようでね。悪く思わないでほしい。私も不本意なのさ」
「ふざけんなバーカ!」
「ふざけてなどいなあい!!私は真剣だ!私だって困っている!どれだけメンテナンスしても治らないとかむしろこの世の不条理でしかない!ふざけるな!!」
ビリビリと、いっそ先ほどよりも激しい怒りとともに部屋の空気が震え、バカ以外全員が黙り込む。
全裸で。
「TNTNが1本!TNTNが2本!TNTNが3本!TNTNが4本!TNTNが5本!来るぞ遊馬!今ちんちんが5本揃い!エグゾディアは完成する!!」
ムキムキ、マッチョ、歴戦の男たちが全裸で立ち尽くす光景はいっそ壮観ですらあった。
なぜかいそいそと自分で服を脱ぎ始め、サイドチェストのポーズを取る菊之丞含め、男臭さが界王拳二十倍って感じ。
あとお前はもうちょっと世界を滅ぼす者さんの話を聞いてやれよ、と蓮太郎は頭の片隅で
「…それでは、私たちはそろそろお暇させていただくとしよう。いくよ小比奈」
「はい、パパ」
2人が悠然と窓際に歩み寄るのを、全員がただ見ていることしかできない現状に、蓮太郎改め全裸太郎は拳を握りしめた。
世界を滅ぼす者。
そう名乗る男の恐ろしさに、あるいは公共の場所で衣類をまとわないという心細さに、背筋が寒くなる。
「───おい、忘れ物だぜ。ラジオネーム世界を滅ぼす者さん」
「な───ぁ」
「パパ!?」
2人が窓から飛び降りるその直前、黒い何かが会議室を切り裂いた。
見れば、蛭子の両肩に、黒い小太刀が深々と突き刺さっているのが見える。
血を噴き出し、驚愕に目を見開く蛭子の視線の先にいる後輩は、あくびを一つ。
あれは、小比奈の腰にぶら下げていたはずの小太刀だ。
一体、いつの間に?
檻の中から出た様子はない。
冷たい鉄格子の内側で、落ちていく2人にひらひらと手を振る後輩は、得意げな顔をすることすらなく、ひたすら騒いでたくせにもう興味を失ったのか横になった。
───先程まで蛭子に向けられていた畏怖と恐怖の感情が、後輩に向けられる。
蓮太郎は、そういう異常な落差がシャブカスサイコジキル&ハイド扱いされてんだよデカ金玉チンカス男と呆れ果てた。
『…皆さん、私から新たに依頼の達成条件を追加させて頂きます。…あの男よりも早く、ケースを回収してください』
聖天子様の声が、会議室に響き渡る。
口にしたくはなかったのだろう。
できれば秘密裏に処理したかったはずだ。
…最後の言葉を、少女は目を瞑り、唇を小さく噛んで告げる。
『ケースの中身は、七星の遺産。悪用されればモノリスの結界を破壊し、東京エリアに大絶滅を引き起こす、封印指定物です』
歯を食いしばる蓮太郎の視界のなかで、後輩は屁をした瞬間自分のケツから薔薇の花が出てきてドン引きしていた。
今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
失礼しました。
シリアス書いた反動でちんちんが出てしまいました。
反省はしていません。
ちなみにシリアスらしきものはあと一回だけ予定しています。
感想と評価ください!!!(鳴き声)