【悲報】ちんちん改造したのに戦争に負けるw 作:ひつまぶし太郎
ありがとうございます。
こんな作品がランキングの末席だとしてもいたらダメだろ…怒られるだろ…(震え声)
『───さぁ、今日君は生まれ落ち、だからこそ生まれ変わる。ただの人間から、最強の兵器として』
そこは地獄だった。
僕をフラスコから取り上げて嗤う男には聞こえていないのだろう。
でなければ、こんな怨嗟に満ちた空間で正気は保てまい。
分厚いメガネ、手術着と表情の見えない大きな白いマスク。
無機質なラテックスの手袋の感触が、僕にとって一番最初の世界の触覚。
『問おう』
赤子の泣き声が止まらない。
僕の前に死んでいった、何百という生命が、世界を呪っている。
産声すら上げられなかった子どもたちの、無垢な嘆きが僕を呑み込む。
煩い。
耳障りだ。
耳を塞ぎたくても、胎児の僕にはどうにもならない。
こんな世界、壊れてしまえばいい。
こんな、悲しい世界。
救われなくっていい。
そう思うのに、怨嗟の声すら巻き込んで、僕に振り注ぐ男の声は頭蓋の内側にへばりついて離れない。
『汝は世界を救う光なりや?』
果たして僕は人間か。
そんなことを考えるまでもない。
兵器になるために生まれ落ちて、兵器になった。
その存在意義は敵の殺戮であり、僕の背後には屍山血河が広がっている。
全身の細胞一つをとっても人のそれではなく、その手で誰かを抱き締めても温もりなんて感じない。
骨は金属、眼球はレンズ、脳はコンピュータ。
僕は機械兵器。
新
こんな生まれから血に塗れ、産声すらなかった化け物が、人間だなんて認められない。
ただ、人類に奉仕するための───
『───ふむ、そこまで兵器として極まっているのにまだ無駄があるのは美しくないと思わないか?』
『喜べ少年。君のために世界で初めて四賢人が手を取り合ったのだ。四賢人の科学技術は世界一ぃぃぃぃぃいいいいいい!』
『男子はね。誰でも地上最強の夢を見る。そして、君こそが地上最強というわけさ』
『燃え上が〜れ、燃え上が〜れ、ガンダム〜!いや、立ち上がれかな?』
そんな悪魔の機械に、魔改造を施した馬鹿な4人が世界にはいる。
僕を生み出した科学者ではない。
この天才と紙一重のバカたちこそが僕の開始因子。
まぁ、ちんちん改造手術に取り組んでる間に人類敗北したんですけどね(半ギレ)
なおバカたちは『むしゃくしゃしてやった。反省している』『だってもう人類滅びそうだったし。あの日は過去一番徹夜が続いてたし…深夜テンション?』『で、ちんちんが機械になった感想は?』『ご立派ァ!』などと供述しており、動機はカス。
舐めすぎだろ。
深夜テンションで未来ある少年のアナログスティックを電動にしてんじゃねえよ。
「うーん…ぐふっ、ぐへへ…ダメだよ少年…そんな、いくら私が魅力的だからって…」
「だめだこりゃ」
服がはだけ、一晩中僕を貪ってたダメ人間を踏みつけながら僕は洗面所へと向かう。
…なんだろう。
口の中どころか胃の中まで先生の匂いがする気がする。
なんなら脳がスパークして、言語野が蕩けるレベルの快楽をひたすら叩き込まれ続けたせいか、先生の元から離れがたいという強い欲求すら感じる。
首輪とかしてほしい。
先生に押さえつけられ、耳元で先生の吐息と声を感じながら。
全身で這い回る先生の手と舌に翻弄されて。
そんな、昨日の夜が何度もフラッシュバックして───
「いつもこうなんだよな。先生が来るといつもこうだ…」
天気は晴れ。
気分は最悪寄りの最高潮。
あれから十年。
どういう訳か、僕はまだ人間だった。
●
さて。
僕の布団で好き放題惰眠を貪っていた先生も帰り、今日の分の洗濯物も終わったし。
廃棄の時間である。
昨日は夕方から思いつきでパンを焼いたせいで実に大量のパンが余ってしまっている。
賞味期限はまだまだ先だろうが、それてもパン屋として客に出来立て以外を提供するのは気分が悪い。
僕は思いつきでちんちんを違法改造する奴らと違って性格がいいので、きちんとゴミはゴミらしく人間のゴミ捨て場と揶揄される場所にパンを投げ捨てに行くわけだ。
なんてできた人間なんだろう。
素晴らしい。
マックで拍手喝采されるだろこれ。
そんな聖人君子のちんちんを鉄くずに変える世界はやっぱり滅んで当然だし、この世の終わり具合は仕方のない話なのかもしれなかった。
「自覚のない悪…」
「よいしょ、と」
かごに乗せたパンを軽バンに積み込み、固定し終えた僕は、指先に絡めた車の鍵をくるりと回して伸びをする。
なんだか僕を批判するような声が聞こえた気がしたけどきっと幻聴だろう。
自慢じゃないが、よく幻聴を聞いて会話してる僕が言うんだから間違いない。
「ん───」
本日は晴天なり。
抜けるような青に、聳え立つ黒いモノリス。
爽やかな風が、陽気を程よく散らして気持ちがいい。
いい天気だ。
そして、こんないい天気の日は、サボるに限る。
「おい降ろしやがれクソガキィ!ただじゃ置かねえぞお前!!」
軽バンに突き刺さるような形で聳え立つ十字架に磔にされたチンピラを尻目に、僕は車へと乗り込んだ。
「……?なんだあれ。あんなイケてる車のオプションとかあったっか…?悪戯?それとも季節外れのクリスマスか?」
「あなたの仕業なんですが…?」
そう言われたらそんな気もしてきたな。
かーっ。
また僕なんかやっちゃいました?
あるんだよねぇ。
寝起きでムカつくとノータイムで適性存在を殲滅してしまうクセが。
クセというか、オートバトル機能的な。
…あれ。
「ん?」
「?どうかしましたか?」
なんかいる。
僕は会話が成立したことに疑問を覚えて横を見て、目を見開いた。
落ち着いた色のワンピースにスパッツ。
少し冷めた表情と、きっちりシートベルトを締める姿は真面目なようでちぐはぐだ。
「幻覚じゃない?」
「幻覚…?」
つん、と。
隣に座る少女の頬に指を突き刺せば、確かな存在感を持って押し返してくる。
どうやら先程から僕にちくちく言葉を投げかけてくるのは幻聴ではないらしい。
びっくりした。
いつも僕の脳内で言葉責めしてくる幻覚かと思ってたのに。
脳内にこびり付いた怨嗟の炎をメスガキに罵倒されてると脳内変換することで精神ダメージをゼロにしてる僕が見せる幻覚にしては随分と現実的だったからもしやと思ったけど、ほんとに現実だとは。
「君誰だっけ」
唐突な接触に頬を赤らめる少女は僕の質問に心底信じられないという顔でため息をついた。
「政府からの依頼であなたを勧誘しに来たと説明してた気がするんですが…千寿夏世です。民警の」
そうだったかなぁ。
今朝方は快楽でいつもにまして頭あっぱらぱーだったしなぁ。
なんにせよ。
「やだねーヤクザの勧誘とか。世も末じゃん」
「あの…一応私たちは政府からの依頼で来たのでヤクザ呼ばわりはちょっとやめてほしいです…」
「国軍なんてヤクザみたいなもんでしょ。つーか民間警備会社名乗ってるのに国の使いっ走りとか恥ずかしくないの?」
「うっ…結局我々民警は国の庇護あってこそで…」
「正論って有史以来一度も人を救ったことのないゴミの代名詞だって知ってた?」
民間なんて聞こえのいい言葉で誤魔化して、国が軍事力を保有したがるのはいつの時代も変わらない。
そんなんだから負けんだよ。
もっと足並み揃えて巨大ロボとか作れよ。
人のちんちん改造してないでパシフィックリムれよ。
「というか思い出したけど勧誘に関しては断って普通に帰ってもらおうとしたじゃん僕。店の中で暴れたらだめでしょ」
そうじゃん。
『従わねえってんならこの店壊すぞ。スクラップにして、お前が受ける予定だって言う仕事代わりにやってやる!!!』とかなんとかいって、クラウドさんの武器のパチモンみたいなそれを振り回してきたチンピラだったわ、あのオブジェ。
そのあと静かになったことに満足して歯磨きと洗濯物した気がするな…。
よく覚えてないけど。
だんだん気絶したチンピラの鼻っ柱に無意味に一発拳を入れた気もしてきた。
通りで顔を洗うときにほっぺに返り血がついてるはずだよ。
「それは…そうなんですが…」
「パン屋に制圧される民警とかいらなくね?雑魚じゃね?」
「返す言葉もありません…」
「だから私刑に処しても許されるわけですね。世紀末万歳」
「私刑は犯罪ですよ」
「うるさい口だなぁ」
えい、と。
小うるさい少女の口に廃棄パンを放り込む。
アンパンマンパン。
偉大なる作者様の寛容な心によって許される、由緒正しきパチモンパンである。
「もぐ…」
「おい夏世!何のんきにパン齧ってんだ!まずは俺を助けろ!今すぐ降ろせ!」
「どうしましょう将監さん、美味しいです」
「ああああ!クソ!クソが!殺す!絶対ぶっ殺してやる!!」
「さっきから語彙力それだけとか舐めてんの?もっと豊かな国語力を養ってくれよ。これだからドパに支配された現代人はさぁ。絵本をケツから読んでじゃねえよケツ掘るぞ」
して。
だいぶ賑やかになってきたし脱線も楽しいところではあるが、そろそろ目的地に向かうとしよう。
「じゃ、れっつらごーで」
「殺すぅ!!」
「将監さんがついに小松呼ぶ時のトリコみたいに……ちなみにお若く見えますが運転の経験は…?」
お若く見える(小学生男子並み感)。
「経験は豊富だよ。ヘリも飛ばせる」
「殺すからなぁ!!!」
「おぉ」
他人の感心した様な視線は気持ちいい。
自尊心が満たされる音に酔いしれながら、僕は真実を口にした。
「ま、無免許だけど。誤差でしょきゃっほー!!」
「ひぇ───!?」
僕のテンションに押されるようにメーターが勢いよく振り切れる。
アスファルト、タイヤを切りつけながら。
ついでにチンピラ民警の顔に風が吹き荒びながら。
「───嘘ですすみませんイキってました許してください!?ちょ、せめて中に入れてくれ…ください!!!死ぬぅ!」
早朝の静かな街に、けたましいエンジン音が響き渡っていた。
目指すは外周区。
この終末世界の象徴ともいえる世界の狭間だ。
「───ちょ、パン屋さん!警察来てます警察!パトカーが!サイレンが鳴ってます!スピード違反ですよ!?」
「何も怖くはない〜」
「ダメだこの人!嘘ですよね、普通に撃ってきてますけど何したらこんな警察に恨まれるんですか!?」
「マッドマックスみたいで最高じゃん?生きてるって感じするよね」
「しません!感じません!むしろ死にそうです!」
…響き渡っていた。
止めて、引く(引き金を)。
今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
感想、評価、お気に入り登録をしてくださっている皆様。
本当にありがとうございます。
今しばらく終末世界で下ネタと日常系を反復横跳びする本作をよろしくお願いします。
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