オトモイズチとか言う大社跡の妖怪   作:マキシマムとと

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甘味が罠として機能するオトモ道場とか誰得…??

 

 ワテがイズチに転生してから、これまでに食った事のある甘味は4つ。

 

 

 1つはハチミツだ。

 

 初ご飯であるゲロマズ虫入り腐肉の後でワテお口を癒やしてくれたエンジェルドロップ。

 あの時に食った蜂の巣は木屑で出来てたから口の中が蜜と屑でジャリジャリネチャネチャして心地悪かったんやが、その後見つけた小さなヤツは巣の材質が違うらしくてクリーミーだったんよ。

 それからはなるべくチッコイ蜂の巣を選んで食うようになったな。ミツバチとスズメバチの違いなんか知らんが、逆襲してくる蜂の針の痛みも全然違うし。

 

 

 2つめは回復ミツムシ。

 

 1回だけ割と低いところを飛んでるのを見つけてチョッカイかけたんよな。

 本体は食えんかったが、ミツムシの持ってた蜜はそれなりに美味かった。

 綿アメ製造機ってあるやろ?

 自分が小人になってマシンの中に入ってクルクルと製造される綿アメを食ってる感じで面白かった。

 味は甘さ控えめでミントの香りがしたかな?

 

 

 3つめは金霊テントウ。

 

 これはもぉアレよ。

 逆アーモンドチョコ。

 食感が逆なんよ。

 外がカリッとして、中身はグニャっと。

 味的にも外の方が甘くて中身は苦いんやけどな。

 なんつーか酒が欲しくなる味だったわな。

 悪くないんやが1匹の量が少ないのと、甘みよりも苦味のが強いんでそこまで意識して食ってない。

 

 

 最後はオルタロス。

 

 素材を腹に貯める習性のあるデッカい蟻みたいなアイツ。草の実やら青キノコ、ハチミツなんかを集めた集団が歩いてるのを見つけてな?

 ハチミツは予想通り美味かったんやが、驚いた事にその他の色の虫も美味かったんよ。

 いや、外の殻の部分はクソだったけどな?

 サランラップとアルミホイルの中間みたいな噛みごたえで嫌にネチネチして…けど、中身は本当に悪くなかった。

 水よりもゼリーに近い感じ?

 ドロ〜ってよりかプリンッとしてて食感もなかなか面白かったし。

 

 

 ただまぁ…正直どれもこれも一長一短。

 野生特有の旨味と野暮な雑味が混在して口の中でお相撲さんをしておりました。

 

 『うまい』『まずい』

 『うまい』『まずい』

 

 はっけよ〜い、のこったのこった!

 てな具合でな。

 

 だからこそ、なんや。

 だからこそワテは今、猛烈に感動している…!!

 

 「まだ食べたいの〜? 困ったなぁー♪」

 

 まるで困ってる風には見えない笑顔でワテの鼻先をくすぐるのは団子の姫様ことヨモギちゃんである。

 場所は当然ながら先日までの畜生拘置所とは違う。

 あんな場所にヨモギちゃんが来てニコニコ笑ってたらヤバイやろ、いろんな意味で。

 

 「ヨモギさん危ないよ! この子はまだ調教…とか言う以前にこの子、イズチなんだからね!?」

 

 軽率な行為を咎めるのはオトモ道場の主…我らがボスであるイオリ君。

 そう、あの地獄空間から釈放されたワテは今、オトモを育てるための訓練施設に移送されていた。

 広い空、広い庭。

 狭い心(アイルー)の猫と狭いコミュニティーに固執する犬(ガルク)に囲まれて孤高を貫く我が生き様。

 (コレがボッチ・ザ・ロックイズチなのか…!?)

 

 そんなワテにとって原作キャラであらせられるヨモギちゃまの溌剌とした笑顔は眩しく、懐から香る美味しい匂いはワテの胃袋を隷属させる最強のアイテムとして機能していた。

 

 「え〜大丈夫だよー! イッ君は賢いもんね〜♪」

 

 うん、ボクかしこいんだよ!

 

 「ギヒィ〜♪」

 

 お座り、尻尾フリフリ、お口パッカンからのベロ出しハスハス…我ながら完璧。

 完璧な畜生ライフである。

 …なのでどうか、どうか団子を!

 うさ団子を追加だドンしてくださりませ〜!!

 

 「ギャ……ギ…キュ〜ン♡」

 

 「きゃー♡ キューンだって!!」

 

 「………何なんだろうね、このイズチ??」

 

 ワテの一芸は効果抜群!

 ヨモギが腰のポーチに隠していたうさ団子を見事せしめる事に成功した。

 

 「いくよ〜………ホイッ!」

 

 天高く放り投げられた団子ちゃん。

 それを目で追い、チカラの方向を定めて…!?

 

 「ガウ…!」

 

 ワテが跳躍に移るより一瞬早く、白い影が青空を遮った。

 

 「あ、テンマ!!」

 

 それはワテより先に道場に入隊したガルクの中の一匹。何かに付けてワテに喧嘩を吹っ掛けてくる駄犬(ガルク)の中の駄犬(クソ犬)、テンマだった。

 

 「ギギギギギィ(クソ犬がぁぁぁぁ)…!!」

 

 だが甘い。

 ここで平常心を無くすほどワテは獣になってはいない。ここは悲しみのポーズでヨモギちゃんから追加のうさ団子をゲットするまで。

 そう考えた俺の未来は…しかし!

 

 「もー最後の1個だったのに〜」

 

 「ガウガゥ…www」

 

 ヨモギちゃんの死の宣告。

 そしてワテを嘲笑うテンマの視線。

 これによりワテの理性はお空の彼方へ飛び立ちました。

 

 「ギシャーーー!!!」

 

 威嚇…突進…か〜ら〜の〜〜〜!!

 

 「イッ君!」

 「止めなさい!!」

 

 おっとぉ!?

 

 「ギ………アムッ!!」

 

 ギリギリ再起動した理性君がお仕事開始!

 テンマはまだ若くて経験に乏しいガルクだ。

 初めて感じたであろう死の恐怖に硬直した犬っころ。その首根っこをアマガミして地面に押さえつける。

 

 混乱して暴れるバカ犬。

 このままじゃその動きで首が裂けかねないので仕方なく背中を踏んづけて動きを遮ると、それに反応して外野から悲鳴が上がった。

 

 「やめてー!」

 「いや、まって!」 

 

 流石にスプラッターは不味いやろ。

 森の中ならまだしも、人里で血飛沫はよろしくない。そう判断したワテの天才的ブレーキング。

 

 イオリ君じゃなきゃ見逃しちゃうね☆

 

 「うん…大丈夫だ、よく見てヨモギさん」

 

 「だって! え…あれ??」

 

 ワテはオサでも何でもない一般通りすがりイズチなので、ガルクと比べて体格の差は無い。

 だが、その上で馬力が違う!!

 小型車にスポーツエンジンを搭載したようなクソ馬鹿力をここで発揮してくれるわッ!

 (具体的には地面に埋まってる岩を右脚で抓んで上体固定、その安定感を左脚に使ってガルクを固定した)

 

 「フンスッ!」

 

 腐っても捕まってもワテは野生のイズチのイッ君。養殖の犬っころなんぞに負ける道理が無いのでごわす。

 

 どれだけ暴れても揺るがない。

 まさに大木のようなワテの体幹。

 身を持って力の差を理解したのだろう、小生意気な駄犬(テンマ)は暴れる事を止めて子犬のようにピスピスと鼻を鳴らした。

 

 ここまで来ればワテにもわかる。

 降参のサインを受け取り拘束を解除。

 すると先程までの態度から一転、手首が千切れるような手の平返しを見せてテンマが俺のケツを嗅ぎ、足を舐めて地面に寝転んで腹を見せた。

 

 「えっ…!?」

 

 「ちゃんと人間の声に反応して止まったね、脚でテンマを押さえ付けたのも首を怪我させないように意識してやったみたい…この子は、本当に…もしかするかも………!!」

 

 この時点で嫌な(いや〜ん♡)予感はしてたんよ。

 

 「ケコッ…ケコッ…ケコオゥォ!!」

 

 一度食べた胃酸塗れの団子を吐き出して俺に尻尾をふるテンマ。彼の好意を無駄にしないために、したなく…しかたな〜〜〜く元人間としてのプライドを投げ捨ててゲロを食うワテ。

 

 「無理だと思ってたけど、これなら…!」

 

 「ムースちゃんの言った通りになるかも!」

 

 そんなワテを見ながら話す彼らの言葉に聞き耳を立てながら、ワテは近く訪れるであろう試練の時を(脱走計画を)見据える(企てる)のであった…モグモグモグ。

 

 

 

 ◇

 

 

 それからしばらく、ワテはオトモ道場で修行の日々を過ごしていた。

 

 …いやね!?

 違うねんね!?

 

 脱走する気はあったのよ。

 このまま行くとかなり高い確率で調教(洗脳)されてオトモイズチとしてムサ苦しいハンターのオッサンに使い潰される未来は目に見えてる。

 ただほら、飯が美味い上に森とは比べ物にならんレベルで安全な環境で修行が出来るんやで!?

 間違いなくボーナス。

 ボーナス・ステージinオトモ道場。

 

 だが…しかし。

 課題だったスタミナ増強訓練にも慣れてきたし、うさ団子は惜しいが妙に最近はきな臭い空気を感じる。

 

 そろそろ脱走計画を実行に移す頃合いか…。

 なぁ〜んて…思ってたんですけどね?

 

 「あらあら! 本当にイズチなのね!」

 

 代わり映えのない道場の毎日。

 しかし、その日は珍しい来客があった。

 白地に赤が映える美しい日本の伝統。

 それを着こなして踊るように歩む巫女の姉妹。

 

 そう…ヒノエとミノトである。

 

 「ヒノエ姉様、あまり気を許しては…」

 「大丈夫よミノト! 私にはわかります、この子は悪い子じゃない…ほら、見てこの可愛いいおめめ♡」

 

 「ギ………キュ〜ン??」

 

 「きゃ〜♡♡♡」

 

 普通に混乱した。

 モンハンライズの看板娘(文字通り)やで!?

 原作キャラ筆頭株主様やで!!

 なんでこんな…えッ?

 ワテに会いに来てくれたの!?

 (トゥンク♡)

 

 パニクリながら、とりあえず猫を被ったのが良かったのか、ヒノエは大喜びてワテにの顔面を撫で回した。

 

 (ほわ…めっっっっちゃ良い匂い)

 

 香りのエクスタシーとテクニシャンなお手手のサワサワにワテの内なる本能先生もニッコリ。

 ヨモギは美味しい匂いで幸せになるんやが、これは…何と言うか…メスを感じる。

 これが…これが魔性の女……(ゴクリ)!!

 

 心地良い香りに誘われて舌が伸び【殺気】ヒェ!?

 

 氷を超えた氷。

 まさに絶対零度の視線でミノトがワテを睨んでいた。

 

 『下手な事をしたら…』

 

 ミノトが親指を立てて首を切る仕草を幻視したワテは、カタカタと震えながらハミ出した舌を口の中に収納したし、少しだけ『ご挨拶(コンニチワ!)』をしかけたワテのチェリーなボーイちゃんも真っ青になってゲートの内側に舞い戻った。

 

 死にたくないでござる。

 拙者…まだ死にたくないでござるぅぅぅぅ!!

 

 その後の記憶はかなり曖昧。

 走って休んで、その間ヒノエに撫でられる天国とミノトに視線で射抜かれ続ける地獄に板挟みにされて、またすぐに走って休んで、また撫でられて射殺されて……兎に角、辛かった事だけは覚えてる。

 

 早よ帰れ、早よ帰れ…!!

 

 そう願いながら訓練して、やはり合間に撫でられて、蓄積した疲労からどうしても油断してミノトに殺されそうになって、また訓練して………。

 アオアシラなんて目じゃねーよ。

 何回この地獄を繰り返すねんて…!

 怖い。

 巫女の姉妹…怖い。

 

 やはり脱走しよう。

 なんかこのままだと色々と手遅れになる気がする。

 ワテはそう決意した。

 

 ───その夜。

 

 「イッ君…キタ……よ」

 「今日はムースちゃんと一緒に来たんだよ〜♪」

 

 ニコニコ笑顔のヨモギちゃん。

 その側にはワテをこの地獄へ叩き落とした宿敵(宿命の敵と書いて宿敵)ムッスーの姿があった。

 

 「ギ…イギギ………」

 

 ヨモギは嬉しい。

 お店の片付けを終えてから、わざわざワテのもとへ足を運んでくれた。疲れているだろうに、そんな気配など微塵も感じさせずにワテを気遣う、その心の温かさ!

 それは嬉しいけど、オマケのコイツは嬉しくてない。いやでもムッスーいやムースか…コイツなぁ〜???

 これでコレが娘の顔じゃなけりゃ必殺の砂利ブレスをお見舞いしてやる所なのだが………。

 

 葛藤するワテを尻目に、ムースが懐から良い匂いのソレを取り出した。

 

 「…………これ、イオリ君には…ナイショ」

 

 そう言って特大サイズのうさ団子をプレゼントしてくれた。いつものオトモフーズの上にホカホカでモッチモチのうさ団子が…あ、お耳も付いてる!!

 

 「ギャウ!!」

 

 「しッ、静かに」

 

 「ギ…キャウ……」

 

 「ふふっ…」

 「ね!? かわいいよね! ね!?」

 

 チッ…。

 かわいいのは…お前らなんやで?

 

 「耳はムースちゃんが作ったんだもんね」

 

 「…ふんす」

 

 ヨモギちゃんのうさ団子に胃袋を掴まれたワテ。

 そうともさ。

 ワテの胃袋を掴んだのはヨモギちゃんのなんだ。

 モグモグ。

 

 「お…おいしい、かな?」

 

 「大丈夫だよ! パクパクだもん!」

 

 まぁ終わったことをグチグチ言うのも男らしくないもんな。ここは団子に流してやろう。

 

 常に死を感じる緊迫した訓練から一転、可愛いおにゃの子がユリユリしながらワテに美味い飯を恵んでくれる幸福の一時のこの落差。

 

 「ほら、ムースちゃん!」

 「ん…や、でも」

 

 なんかスゲーイチャイチャしてる。

 なんだなんだぁ〜??

 

 「あの…イッ君…コレ」

 

 ムースが取り出したのはボンヤリと光る赤い石。

 

 「助けてくれて…ありがと………」

 

 「これ、ホウズキ石って呼んでるんだ! ムースちゃんが山で見つけね? 火玉ホオズキにソックリだし、イッ君に似合うんじゃないかって話して! それでね───!」

 

 娘と似ているムースの表情は。

 あまりにも娘を思い出させた。

 何もない白い病室のベッドの上で。

 暇があれは泥団子をこねて。

 丸めて、磨いて…磨いて…壊して。

 納得するまで何度も何度もやり直して。

 そうして出来た彼女の傑作を。

 

 『おとう、さ…いつも…ありがと……』

 

 そう言って俺にプレゼントしてくれた。

 そんな遠い…遠い記憶が………。

 

 「首にかけても…いい?」

 

 野生のイズチからすれば邪魔でしかない首飾り。

 けれど…まぁ、なんだ。

 ホオズキの色が綺麗だったから。

 だから…俺は目を閉じでその光を受け入れたんや。

 

 

 これなんよ。

 うん。

 これが良くなかったんよ。その日は割とハッピーな気分で脱走計画も忘れて心穏やかに眠ったんやが………。

 

 

 … そ の よ く じ つ 。

 

 

 ◇

 

 

 「ガハハハハハハ!!」

 

 馬鹿でかい声で笑うのは馬鹿でかいオッサン。

 

 「里長、みんなが怖がってるので、もう少し声を抑えて頂けませんか?」

 

 「おうそうか! スマンスマン!」

 

 「いや…え〜っと………」

 

 イオリ君が懸命に挑んでいるのは熊…ではなく、この里の長と呼ばれるクソデカ親父───フゲン。

 

 (な〜んで、忙しいハズの里長さんがこんな場所にいるの〜??)

 

 今世紀最大の謎である。

 

 「では参る!!」

 

 「ピゲォ…!?」

 

 (な〜んで、忙しいハズの里長さんがワテの上にライドしてるの〜??)

 

 今世紀最大の謎である。

 

 謎は謎のまま、三輪車に熊を乗せたような比率のワテらは仲良く楽しくオトモ道場を駆け回った。

 

 あの…最後に一言だけよろしいですか?

 

 

 

 こんな転生は、嫌だッ!!!

 

 

 

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