問題だらけのアイドルグループを武道館に連れていく 作:AK999
時刻は9時になる前。さて、今日は初めてメンバー達と顔合わせをする。ちなみにメンバーの子達も今日が初めての顔合わせらしい。
ある程度の情報は日比野社長から聞いたが実際に会ってみないと分からないことも多いからな。俺は大きな期待と少しの不安を持ちながら会議室のドア開ける。一発目が大事なんだ。彼女達はもう既に全員揃っているだろう。ここは1つ元気に挨拶をしよう。
「おはようございます。今日からプロデューサーとして参加させていただく男画七宇佐です。初めてのことが多いのでご迷惑をおかけする事もあると思いますが、よろしくお願いします」
俺はそう言いながら勢いよく頭を下げる。
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あれ?返事が返ってこない。嫌な予感がしながらも少しずつ顔をあげると、部屋はもぬけの殻だった。
「ん、なんで?」
デンワダヨッ!デンワダヨッ!デンワガキタヨッ!デンワガキタンダヨッ!
そう思っていると会社から借りた携帯電話がなる。なんだこの着信音。
「はい、New Periodの男画七です」
「あ、あのあのすみません。きょきょ今日からお世話になる高宮花子(たかみやはなこ)でしゅ!」
高宮花子さんか。今回の採用者で唯一アイドル経験がある人だったな。俺は事前に日比野社長から聞いていた情報を思い浮かべる。
「あ、はい、今日からプロデューサーとなりました男画七宇佐(おがなうかさ)と申します。よろしくお願いします」
「あ、ああ、あ、は、はい!よろしゅくお願いします」
だいぶ焦っているな。さっきからめちゃくちゃどもっているし、噛んでいる。ははーん、さては唯一のアイドル経験者なのに初日から遅刻してしまったから焦ってるんだな。まあ、まだ始まったばかりだ。しかも、遅刻なんて、なんて事ない。連絡を入れるだけ素晴らしいと言える。俺は急に消えた先輩のことをおもいだしながら、できるだけ優しい声で返事をする。
「はい、よろしくお願いします。ちなみになんですが、今、何処にいらっしゃいますか?」
俺は努めて優しい声でそう高宮さんに居場所を聞く。
「ええええと、ああああの確認なんですが、じ、事務所の場所って高宮区の高宮町ですよねぇぇ??」
悲鳴に近いような声が聞こえる。よっぽど焦っているんだな。ん?高宮町?高宮町は隣町だったはずだ。なるほど、場所を間違えたんだな。なら場所を伝えて来てもらおう。
「それは隣町ですよ?事務所は高見町にありま
「オラァ、女ここがどこだか分かってんだろぉなあー!!!」
「ぴぃぃーー、すすす、すみません、すみません」
携帯からそんな柄の悪そうな男の怒鳴り声と彼女の悲鳴が聞こえる。
え、怖。彼女は一体どこと間違えたんだろう。
「ち、ちなみになんですけど今、地図にはなんて表示されてますか?」
「え、えええとえと、た、高宮町の8-9-3ですぅぅぅぅ」
俺は自分の携帯で住所を調べる。oh,思いっきりヤクザの事務所じゃないか。
「オラァオラァどうなるか分かってんだろぉなあ!女!」
「どう落とし前つけんだお前!!」
「タダじゃおかねぇからなぁ女!」
「ぴぃぃぃぃぃすみません、すみません。間違えただけなんですぅぅぅぅ」
そうこうしている間に携帯から怒号と悲鳴が垂れ流される。
「い、今すぐ向かいますので事情を説明してください。あ、あと電話は切らないでください!」
俺はそう言い切ると事務所から駆け出し、近くの駐車場に停めていた車に乗り込んだ。
ちなみに車に乗っている間にも彼女の悲鳴とヤクザらしき人達の怒鳴り声が聞こえていた。
そんなこんなでなんとか無事、事務所に戻ってきた。初日から死ぬかと思った。ちなみに彼女も俺も五体満足である。俺のスライディング土下座が効いたな。まあ、実際は途中から誤解が溶け、彼女はもてなされていたのだが。アイドル恐るべし。
「ふぅー、やっと戻ってきた」
「ご迷惑おかけしてすみませんでした」
「全然、構いませんよ。誰にでも間違いはありますから」
俺はわざと少し震えながらそう答える。
「ほんとにすみませんでした」
「いえ、ほんとに大丈夫ですよ」と彼女に笑いながら告げ、会議室のドアを開ける。
「やっと来ましたね、初日から遅刻とは先が思いやられますね。プロデューサー」
ブルーシルバーの長髪に少し切れ長の目がこちらを射抜く。確かこの子は採用された中で最年少の佐々木玲奈(ささきれな)さんだったか。年は今年で16だったはずだ。
「すすすすみません、プロデューサーは私のせいで遅れたんです。責めるなら私を責めてください」
なんと、高宮さんが庇ってくれている。確かに遅れたのは高宮さんのせいだが、連絡を怠っていたのも事実だ。いや、それよりも目の前の彼女、佐々木さんも遅れてなかったか?なのになんで、こんなにやれやれみたいな風に言われないといけないのか。
「佐々木さんでしたよね、まずは遅れてしまい申し訳ありません。ただ、佐々木さんも遅れる際は連絡をいただけると助かります」
俺は自分の非も認めつつ、あなたにも非がありますよという風に伝える。
「私は妹の園への送りがあるので遅れると運営に連絡しましたよ」
俺は咄嗟に社用ではなく、自身の携帯のメッセージアプリを起動する。すると、そこには日比野社長から佐々木さんが遅れる有無が書かれたメッセージが送られてきている。ちょうど高宮さんを893グループから助け出すために車に乗った時間あたりだった。
俺は本日2回目の土下座を披露した。高宮さんはオロオロしながらも、自分も謝った方がいいのかなと考えたのか膝つき始める。
「いいですよ、プロデューサーにも事情があったのは入ってくる前の会話から推察できますし。私自身も遅れてきたのは事実ですから」
そんなふうに落ち着いた声が頭上から聞こえる。最近の高校生はとても落ち着いてるな〜なんて感想を思い浮かべながら、頭をあげると会議室には結局俺と助け出した高宮さんと遅れてきた佐々木さんの3人しかいないことに気づく。
「メンバーは5人と聞いていましたが、残りの3人は何処に行ったんですか」
佐々木さんが質問してくる。ほんとにどこいったんだろね。そう思いながらも、所在を確認するのはプロデューサーの仕事だろう。俺は社用の携帯を取り出し、名前欄の1番上にあったアイドルに電話をするのだった。