「 っふう、これでおしまいっと。ぬわぁぁぁあん疲れたもぉぉおおん!(本日二度目) 」
「 お疲れ様、コーラ飲む? 」
「 おっ、ありがとナス・・・Foo!気持ちぃぃ〜!! 」
あれから体感2時間ほどであろうか。私とヤジュニャンはひたすらに妖怪を退治し続けていた。退治と言っても、
ウォッチの機能を試すために、至るところをレンズで照らして妖怪がでてきて、ヤジュニャンがそれを倒す。それの繰り返しだ。
辺りにはセミが二足歩行になったような妖怪、セミまるというらしいが、それが何体も倒れている。
その数、114体。一体なぜ、一見にして不毛にも思える行為に及んでいるのか。
「 しかし、けっこう殺ったなぁ。久しぶりの運動には丁度いいが、メダル一枚も手にはいらないとは、これもう( 先行きが )わかんねぇな。 」
私がヤジュニャンに貰ったもの、友だちの証しである妖怪メダルである。私たちは片っ端から妖怪を探して友だちになってもらおうとしているものの、その尽くが襲いかかってくるので、こうして尽く返り討ちにするというのが、この2時間続いている。
私自身は小遣いが増えるという副産物の存在からさほど苦ではないが、そんなに強いのに、どうして他の妖怪の手を借りたがるのか気になるところだ。
「 ていうか、この山、セミまる多くない?ついさっきウォッチ貰ったばかりでよく知らないけど、妖怪ってこんなに湧くの? 」
「 んにゃぴ、オレにもよくわかんないっピ・・・ていうのはぁ・・・ 」
ヤジュニャンが一回転して、奇妙な踊りを舞い始め、そして・・・
「 U★SO! 」
「 ナニソレ? 」
「 いやU.S.Oっていう憑いた奴に嘘を吐かせる妖怪がいてよぉ・・・ 」
「 いやそう言うのいいから知ってるなら早く教えて。 」
「 んにゃぴ・・・ 」
「 妖怪ってのは至るものから発生する。人を含めた動物の死後に化けたものや、鳥山石燕の描くような器物が変じたもの等、そのルーツは様々。はたらくようかいやら妖怪言えるかな?と題して一曲二曲妖怪の名前だけで曲作れるくらいにはいる。 」
「 それで、なんでセミまるはあんなにいるの? 」
「 奴らがセミが転生した妖怪だからッスね。読んで字のごとくだってはっきりわかんだね。
セミは毎夏アホみたいに生まれてアホみたいに成虫になって一週間で死ぬから、セミまるの母体数がめちゃくちゃあるんすねぇ。もちろんこれはセミだけに限った話じゃない。
さっきのじんめん犬みたいに、人間から妖怪になる奴もおりますねぇ!
死んだら終わりっていうのは嘘。死んだら妖怪に転生するの♥ 」
「 キモ・・・ 」
「 んにゃぴ・・・ 」
「 それでヤジュニャン、どうしてそんなに友だちを作ろうとするの?ヤジュニャンだけでもあんなに強いのに。 」
「 うーん、それはだな・・・ 」
彼はスッと私を指さした。いや、厳密には、私の腕に着いた、妖怪ウォッチを、だ。
「 そいつを所持する上での、ある種の宿命だ。 」
「 宿、命・・・? 」
急に物騒な雰囲気になってきたが、ヤジュニャンは構わず私に教えてくれた。
「 さっきもいったが妖怪は、他生物から輪廻して生まれる種もいる。では、その妖怪に転生する前に、死んだ生類の魂は何処に行くのかわかるか? 」
「 死後の世界・・・? 」
「 半分正解だな。厳密には黄泉の国だとかそんなとこじゃなくて、妖怪の世界、妖怪のリーダーであるエンマ大王の統治する妖魔界と呼ばれる世界の、妖怪市役所という場所に送られ、妖怪としての名や姿、そしてメダルを与えられる。
それで妖怪として長い時を生きた後に死んだら転生して、それでまた死んだら妖怪に・・・の繰り返しッスね。 」
「 エンマ大王って、あの閻魔大王? 」
「 概ね合ってるな。まぁ、経典とかで見るくらい恐ろしい存在じゃないけどよ。んでそのエンマ様は人と妖怪の共存を望んでいて、そちらに進んでいく方針だったんだが・・・ 」
「 だったんだが? 」
「 聞くがよフミカよぉ、仮に総理大臣が来月からスナックやらアイス、駄菓子に至るまでの菓子類に消費税とは別口の税金、つまりおやつ税なんてものを導入するなんてニュースで言ってたら、どう感じる? 」
「 それは、困る、よね? 」
「 そうだよな。んでそういった人間界の社会構図を妖魔界に落とし込んでみると、エンマ大王ってのは、まさしくその総理大臣やら大統領やらの立場なんだよなぁ。
ここが重要だ。
リーダーがここをこうすると決めれば、必ずと言っていいほど反対意見がでる。それは人間の世界でも妖怪の世界でも変わらない社会の宿命だってはっきりわかんだね。
そんで、そのエンマの願った理想には、反対の意見を突きつける少数派が沸いてでた。
人間を快く思わない、エンマのやり方が気に入らないって連中だ。
人間にひどい目に遭わされた。単純に人間が嫌い。妖怪が人間を支配するべき。要因やそれに根付く思想はそれぞれだが、そんな輩がこの人間界に紛れている可能性がありますあります。そんな連中にとって、人と妖怪を取り持つ妖怪ウォッチの存在が面白くないのは想像するに難くないです。
それにな・・・ 」
「 それに? 」
「 こっちの方がたちが悪いかな。市役所を介さずに変化したり、エンマ様の支配の及ばない領域から来た妖怪、或いはまだ妖怪ではない、怪異が偶にいるんだよ。 」
「 怪異? 」
「 口裂け女って聞いたことないか? 」
「 それ知ってる。ワタシ綺麗?って聞いてくる奴でしょ? 」
「 そう、ああいう都市伝説だのなんだのになるくらいには視える奴視えない奴ところ構わず洒落にならない被害をだしてる奴らまでもいやがるのさ。
そんな無頼の輩も、視えないだけで何処かにいる。虎視眈々と獲物を狙って、暗闇に身を潜めている。それが人間界の真の姿なわけだ。
だからそんな連中にもし狙われた場合、オレだけではお前を守りきれないかもしれない。だからフミカ、お前にはたくさんの妖怪と友だちになってほしい。 」
「 ヤジュニャン・・・ 」
「 お前が危機に陥った時、お前が困難に向かう時、オレたちは必ず、お前の力になるからよ。
ていっても、今のところはオレしか友だち妖怪いないけどよ。 」
「 ・・・ 」
「 あぁ、辛気臭くなっちゃったぁ。そろそろ山から降りますよぉ、降りる降りる。 」
言われるがまま神社を後にして、私はそのまま下山していった。傍らにはヤジュニャンがいてくれるが、やはり私以外の人間には見えていないらしく、道行く大人は皆彼に気づいてはいなかった。本人曰く意図して姿を隠しているらしい。
そうして足を動かしながら、ヤジュニャンが教えてくれたことについて考えていた。
あまりピンとはこないのだけれども、かなり信憑性がある話だったし、妖怪の友だちをいっぱい作る必要があるのも納得はいった。
人間をよく思わない妖怪。見えてはいけないような妖怪。確かにそんなのはいても可笑しくはないし、どこかにいると思うと何処か怖くなるが、自然と勇気も持てていた。
ヤジュニャンがそうであるように、力を貸してくれる、友だちになってくれる妖怪も、やはりいてくれるのだろうと思えたからだ。
しかし、そんな時。
「 ケータって超Sだよな!オレたちをみるなり逃げようとするんだからよ。 」
「 マオ君も超Sだよねぇ。 」
「 え、なに、あれ? 」
私が見たのは、よく話したりする男友だちだった。
クマくんとカンチくんだ。あのずんぐりむっくりとしか体格に、ヘッドフォン、話し方。見紛うはずがない。
だが、様子が可笑しいかった。
あの二人はいたって普通の男の子だ。
あんな、なんというか、露出の多いセクシーな格好をするはずがないのだ。お腹はもちろん、お尻まで丸見えだ。
いわゆるボンデージという奴だ。
どう見たって可笑しい。
「 あれはもう、妖怪の仕業ってはっきりわかんだね。 」
妖怪ウォッチのレンズを展開し、二人の周囲を探ってみると、そこにそれはいた。
「 ウッス! 」
上半身だけ強靭に彫像のように鍛えられた、二人と同じようなボンデージを着たサングラスの男の人のようなまさしく怪異だった。
「 あれは妖怪、タクさんだな。主に男に憑いて変態マゾにしてしまう、恐ろしい妖怪だ。
妖怪不祥事案件、『 ウチの息子が変な癖に目覚めた 』のもとだな。
びっくらこいて襲っては来ないみたいだし、ここは穏便に平和的解決を・・・ 」
「 あ、女だ!おいマジかよ!ウリ専妖怪のタクヤは、女のことが大嫌い!!お前を芸術品にしてやるよ! 」
「 だってヤジュニャン、お願い。 」
「 しょうがねぇなぁ・・・ 」
「 では殺すか。(和尚) 」
勝負は一瞬だった。ヤジュニャンが上半身と対照的なお座なりな下半身を蹴って一撃でダウンした。
よっわぁ。
「 このお馬鹿乳首!人間の子どもに手を出すなんて何やってるんですか!? 」
「 ウッス! 」
「 タクヤ、カマホモ三十人から仕事が入っています!至急やれますか? 」
「 ウッス・・・ 」
その後、彼のマネージャーという妖怪、マネさんが身柄を引き取りに来て、迷惑をかけたお詫びとしてタクさんのメダルを貰った。
あまり嬉しくはないが、二人の口ぶりからしてケータ君に危害を加えようとしていたらしいことを考えれば、首輪を付けるという意味でも私が彼のメダルを持っていた方がいいのだろう。
なにがあろうと、私はケータ君を守る。心にそう誓った。
タクさん
属性 ブキミー ランク B