死絡み魂縁   作:紡縁永遠

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第零話 

 「………」

 「水星(みなせ)!早く起きなさい!」

 「はぁ……わかったよ、永琳」

 「貴方を拾ったのは失敗だったかしらね」

 

 ここは、城壁に囲まれた、軍事都市。と言っても、ここ以外に、人間と呼ばれる種族がいるとかは聞いたことがない。

 俺は捨て子だった。それも城壁の外に捨てられていた。

 今思えば、運が良かったはなしだ。だって城壁があるのは妖怪がいるからだ。妖怪、穢れの具現にして、高度な意志を持つこともある獣。そんな異形が跋扈する外で、よくもまぁ無事だったと思う。

 そして、そんな俺を拾ってくれたのが、八意豌ク逅ウ。ふむ、やはり、本来の名前を呼ぼうとすると自然と化ける。言いやすく、聞き取りやすいのは、八意永琳という方だ。

 

 「全く、今日から試験よ?」

 「わかってる」

 「本当に?まぁ、いいけど」

 「能力も判明していないのに、なんで軍事学校に………」

 「捨ててもいいのよ?」

 「誠心誠意、真面目に行かせていただきます」

 「よろしい」

 

 さて、朝から漫才をしたら、紹介ばかりでやっていなかった自己紹介をするとしよう。名前を、魔気華(まぎか)水星。きつねの嫁入りがあった星がきれいな日に拾ったからという、なんともまぁ適当な感じだ。名字は、うん。縁起がいいわけじゃない、魔は穢れに通ずる。それなのに、魔の気に華とは、やっぱり何を考えているかわからない。

 母親としての永琳と過ごし、姉のようになった今、というか今に至るまで。頭は上がらないし、何かあれば、頭を下げなければと感じることもある。都市の最上位の頭脳なのだから当たり前だ。

 

 「………ここ、か」

 「みたいですね、」

 「しれっといるな、依姫」

 「ええ、まぁ、今年の試験で壁となるならあなたでしょうから」

 

 綿月依姫、俺と同い年で、今回軍事学校に入学する首席候補だ。この軍事都市にある、軍の総隊長の娘さん。能力開花済みの化け物である。

 

 「俺は能力を使えないんだよ」

 「あれ?前使えませんでしたっけ?」

 「ありゃ、霊力ぶん殴っただけの初歩技だ」

 

 霊力、人間に宿る力で、能力を使用するエネルギーでもある。生死をさまよったりすると増えるので、まぁ量が強さに直結することもある。俺はもともと馬鹿みたいに多いから勘違いされることがあるが、戦闘はやったことがないし。模擬戦では、霊力をぶつけるだけで済ませている。だって痛いの嫌だもん。

 

 「ただの霊力であれですか、化け物ですね」

 「神霊を降ろせる奴に言われたかねぇよ………それで、一つ聞きたいんだが。大和(やまと)さんは来るのか?」

 「入学試験には来ないですよ、入学初日には顔を出すらしいですけど」

 「そうか、全力で止めろ、俺は死にたくない」

 「父のことをひどく言わないでください」

 

 大和さん。依姫の父で、軍事都市最強の名を持っている。まぁ、性格には、二番手だけど、一番手は政治に勤しんで戦闘には出てこないので、最強は大和さんになっている。

 

 「それじゃ、互いに頑張ろうか」

 「ええ、頑張りましょう」

 

 俺はというと筆記はまあ問題はなかった。この都市のトップの頭脳を持つ永琳の教育(拷問)のおかげで、九割は確実に解けているだろう。

 間違えれば永琳の薬を人瓶飲むという、実験だ、おかげで毒耐性がついた。馬鹿だろ本当に。

 

 「結局、お前とかよ」

 「ええ、よろしくお願いしますね、水星」

 「まったくだ依姫………手加減してくれよ?」

 「それができればね」

 

 実技試験、能力ありの一対一の模擬戦。

 木刀一本、さて、どうしようか。能力開花済みの依姫だけど、試験じゃ使わないはずだし………正直辞退したい。依姫は強い。才能を持ったうえで、努力を惜しまない人間だ。

 それに対して俺は、努力はするがそれは永琳の実験から逃げるためだ。不純すぎる。父を超えるために努力した依姫と、嫌なことから逃げるために努力した俺。努力の重みが違う。

 

 「はじめ!」

 

 「霊刃〈飛影(ひえい)〉」

 「はぁっ!」

 

 霊力を纏わせた木刀を振るい、霊力を飛ばすことで飛ぶ斬撃を作り出す。そしてそれを完璧に防がれた。霊力が多いから遠距離技をバカスカ撃てるが、それでも、当たらなきゃ意味がない。霊力を保持していれば体力消費も抑えられる。

 

 「行きますよ」

 「ああ、」

 

 小手調べは終わり、今度は依姫が仕掛けてくる。

 大和さんみたいな剛刃というわけではないが重い、踏み込みがしっかりしている。

 

 「やり辛そうですね」

 「まぁ、俺は刀よりも、槍とかのほうが性に合ってるからな、」

 

 嘘だ。本当は刀も槍も苦手だ。真正面からの戦闘が苦手ってだけだ。自分より強い人しか周りにいないから、どうしても惨めになる。

 才能は、自分が持っていない、欲しいものだ。だから、永琳も、これを隠し続けた実績を、他の人なら評価去るかもしれない。

 能力を使えない。それは事実だ。でも、開花してないとは言っていない。

 

 「っ!」

 

 依姫の猛攻を防ぎながら、もう一つ別のことに意識を向ける。もちろん、何発かは喰らうことになる。

 骨を斬らせて、肉も断たせて、それでも勝つのが、俺のやり方だ。

 

 「起動〈神殿水門(しんでんすいもん)〉」

 「!」

 

 水の生成、及びその操作と、状態変化を操る能力、だけど現状できるのは水の生成と状態変化のみ、ま、ただの濁流でも押し返せるでしょ。

 

 「神降し〈罔象女神〉まさか、使うとは思いませんでしたよ」

 

 やっぱり化け物だな、こいつ。

 

 「そこまで!二人して馬鹿なの?」

 「………何だよ、永琳」

 「というか、開花していたなら伝えなさい!」

 「伝えたら実験につきあわされるだらうが」

 「それでも説明しなさい!能力は危険なのよ?!」

 「はいはい、わかりましたよ」

 

 途中中断した試験だが、無事次席だった。流石に能力制御ができる依姫の方に評価があったみたいだ。

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