キルドで依頼を受けた俺達は一先ず街の領主の元へ向かった。
この国、名前をフルティア王国と言い街の名前をフェザードと言う。国の名前は非常に分かりやすく建国当時の季節を司る大精霊の名前が取られている。
俺達が今いる国は春に建国したらしく春の大精霊フルティアの名前が使われている。
他にも冬に建国したセヌワ帝国、秋に建国したクレハ商国、夏に建国したメラ法国がありそれぞれの季節の大精霊の名前が使われている。後は後ろの方にその国の特徴、王権とか商売が盛んとか国の特徴的な物を付けて国名は完成だ。
そして大精霊とは先に語った神話の争いで神から落ちた肉片が姿を変えた物で最も神に近い存在と言われている。
まぁ所詮伝説で本当にそんな存在が居るのかそもそも怪しい話で信じている人間もそれぞれの季節の神殿所属の者位だが。
「止まれ!!何者だ!!」
そんな事を思っていると不意に威圧的な声を掛けられ現実に意識を戻す。どうやら目的地に着いていたらしい。パーティの空気感に耐えられなくて現実逃避していたとも言う。
目の前に広がるのはこの辺りで最もデカく豪華な外見の建物の領主邸、そして左右の門に1人ずつ建つ金属の全身鎧と顔が見えない全面兜を被る門番の男の1人に依頼書を渡す。
「Bランク冒険者パーティ【冬桜】依頼を受けて来た。依頼人と話がしたい」
俺が門番にそう言うと門番は互いに頷き合う。
「領主様に確認する。この場で少し待て」
門番はそう言って建物の中へと消え2〜3分程で戻って来る。
「確認した、くれぐれも騒ぎを起こさない様に」
門番の男はそう言うと左右に避け俺達は建物の中に入ると3階の最奥の部屋の扉を開ける。
「いらっしゃい【冬桜】、まさか貴方達が受けてくれるなんて思ってもいなかったわ」
そう言って俺達を出迎えたのは無数の書類の山に囲まれた俺より10cm程背の低い顔に深い皺を刻んだ歳を取った人間の女性、その瞳はエメラルド色に輝き髪は真っ白に染まっている。名をテレスと言い彼女がこの街の領主だ。
「話を聞きに来た、何が起こってる?」
「相変わらずせっかちね、まずは座ったら?」
「どうせ話を聞いたら直ぐに立つ、意味が無い」
俺の言葉にスフリが俺を小突くのを感じる。
「そう、まぁ良いわ、と言っても依頼に書いてある通りよ、この街にダンジョンが出来たからダンジョンを封鎖してきて欲しいの、早くしないとモンスターが溢れ出して街に被害が出る。今はこの街の衛兵が定期的に駆除してくれているけれど何時迄も持つものじゃ無いわ」
「そのまま衛兵に封鎖させれば良いだろう、何故そうしない」
俺の言葉にセレスは目を伏せ黙る。余っ程言い難い事でもあるのだろう、若しくは上の権力を持つ人間にしか知られていない情報か。
「まぁ詳しくは聞かない、俺達は依頼を受けた、だから仕事をする。それで良いな?」
「ええ、貴方のそういう所、本当にウチの主人と似ているわ、もうあの人が死んで5年になるのね」
「5年か…………それはアンタにとって長い時間だったか?」
「さぁ、どうかしら?でも涙が枯れるには十分な時間よ、今では仕事をして充実しているわ、あの人がいた頃より生き生きしてるって言われる位だもの」
「【男やもめに蛆が湧き、女やもめに花が咲く】って奴か」
「あら、何それ?」
「本か何かで見た言葉だ、男は妻に先立たれると蛆が湧く様に不潔になるが女は旦那に先立たれれば花が咲く様に美しく生き生きとしていく、そんな意味らしい」
「…………フフ、確かにあの人ならそうなりそうね」
「…………無駄話が過ぎた、俺達は行く」
「ええ、気を付けてね」
俺はそう言うと扉を開け部屋を出ていった。
外に出る為廊下を歩いていると背後からゲシゲシと連続ローキックを食らい背後を見るとスフリが俺の脛を蹴っていた。
「な、何だよ」
「何だよですって!?あんな事言っといて何だよですって!?」
何故か目に涙を浮かべローキックを見舞い続けるスフリに俺は訳が分からずサンとオータムに助けを求める目線を送る。
「自業自得」
「ちょっとは反省するんだな」
しかし2人から返ってきたのはそんな返事だけでどうしたものかと考えているとやがて蹴り疲れたスフリが俺の顔を掴み無理矢理目線を合わせてくる。
「私達は貴方が死んで花の様に美しくなれると思ってるの!?そんな訳無いじゃない!!2度とあんな事言わないで!!」
どうやら【男やもめに蛆が湧き、女やもめに花が咲く】と言う諺を自分達に照らし合わせてしまったらしい。
「…………悪かった、そんなつもりはなかったんだ、済まなかった」
そんなつもりはなかったのだが悲しませた事を素直に謝罪するとスフリは落ち着きを取り戻し漸くダンジョン封鎖に向かう事が出来た。