~京・二条城~
俺は今二条城に来ていた。表向きは将軍への挨拶だが本当の目的はここ二条城にいる室町幕府13代将軍・足利義輝の暗殺である。俺は今日のためにあらゆることをして来た。
関白をこちら側に引き込んだり、史実では反三好家だった丹波の諸大名を縁組などでこちらに引き込む、またはお互いにかかわらない様に和議を結んだりしてきた。
本当だったら本猫寺をこちら側に引き込みたかったが使者を送る度に「話を聞いて欲しければ我らを笑わせてみろ」と言って来た。しかし三好家には笑いに通じたものはいなかった。俺も人を笑わせるのは苦手なので結局本猫寺については何もできなかった。ただ本猫寺に出入りしている雑賀衆を傭兵として優先的に借りる事は出来るようにした。
雑賀衆といえば鉄砲で有名である。信長による石山合戦では本願寺に味方して信長軍を大いに苦しめた。
等々俺は将軍襲撃の後に劣勢に立たされないようにした。
それでもまだ足りない。東側では桶狭間で今川軍を撃退し、美濃攻略中の織田家が、西国では出雲尼子家を倒し西国の覇者となった毛利家がいる。ただ、毛利家は当主の隆元が死んで混乱しているだろうからしばらくは大丈夫だろうが問題は織田家である。
織田家は史実通りなら美濃を取った後、上洛軍を編成して攻めてくるだろう。織田家との敵対。それだけは避けたいところだが織田家が天下を狙っているならそれは無理だろう。俺としても天下を狙っている。つまり敵対は避けられない。ならばその上で最善の道を選ぶまで。その一つが将軍殺しである。
おそらく俺が将軍を殺さなければ「将軍家に敵対する三好家を討伐する」と言って上洛して来るだろう。それは避けたい。織田家のほかに将軍がいればそちらに味方するものが必ず増える。最悪の場合、同時にたおすことも考えられる。
それは嫌だ。ただでさえ織田軍と戦うのにその他に敵が増えるなんて考えただけで寒気がする。
なら将軍家をたおすことで「将軍殺し」の汚名がつこうとも敵が減るなら何ともない。更に「俺らは武士の頂点に立つ将軍を殺すことができる」とアピールすることができる。
「敵は二条城にあり!」
そして俺はそう叫び、将軍を襲う。我が天下の為に。
「なんでこうなったんだ?」
本陣の中で俺は力なく呟く。本陣に居るものたちも苦虫を噛み潰したような顔をしている。
あの後将軍襲撃は上手く進んだ。二条城の守備兵が防戦するも2万の軍勢の前に1000にも満たない守備兵では焼け石に水にもならなかった。
やがて、二条城は炎に包まれ炎上した。俺はこの時将軍暗殺が上手くいったと思っていた。
しかし、おれの思いは無残に打ち消された。
「足利義輝公が妹君達を連れて二条城から脱出しました!」
・・・。
「すまん。もう一度言ってくれ」
「はっ!足利義輝公が妹君達を連れて二条城から脱出しました!」
・・・。
「長逸」
「はっ」
俺は隣に居る長逸に話しかける。
「将軍逃げたんだって」
「はい」
俺は膝から崩れ落ち手を地面につける。
「・・・終わった。将軍暗殺失敗した」
この世の終わりを確信したような雰囲気を出す俺に長逸はいった。
「殿。大丈夫です。この時のために殿は山城全体に兵を出したんじゃないですか」
そう。この時俺は万が一に備えて山城全体の要道を抑えさせていた。おかげで連れてきた5万のうち2万しか二条城襲撃につかえなかった。
「それはそうだな」
俺は少し持ち直した。ここで落ち込んでいても仕方がない。俺はこれから始まる事後処理のことについて考えた。
結果として足利義輝を殺すことは出来なかった。どうやら関白が裏で脱出の手助けをしていたらしい。その後足利義輝は敦賀の港から大明国へと逃げたらしい。
将軍暗殺には失敗したものの、その将軍は日ノ本からいなくなったのだ。結果としては上々である。
次に丹波衆は将軍暗殺に驚いていたらしいが、敵対する気はないと諸大名から書状が送られてきた。
しかし上手くいかない事も起きた。松永久秀が独立を宣言して大和国内を襲撃し始めたのだ。そのせいで奈良の大仏は炎上したと言う。
俺はこのことに対して特に驚かなかった。思った感想は案外早かった。それだけである。
将軍暗殺に関わらなかった久秀が何かをするとは思っていた。
史実でも松永は三好三人衆と仲が悪くなり信長上洛の隙を作ってしまった。
俺は久秀のことについては大和の国境に兵を置くだけにした。今は兵を失いたくはない。
それと俺は名を「義継」と改めた。この名には「三好家の当主が武家の秩序体系において最高位に君臨する足利家の通字である『義』の字を『継』ぐ」という意味が込められている。
俺はこの名で足利家の時代が終わり三好家による時代が来たと表明したのであった。
「三好義継の野望」を読んで頂きありがとうございます。あと2話程度で1話に戻ります。俺としては信奈を追い返して三好政権を維持させたいのですが・・・。その辺の感想をお待ちしてます。