5万8000の軍勢で松永久秀の籠る信貴山城を包囲した俺は本陣で暇を持て余していた。
何もやる事がないのだ。軍の維持は政康がやっているし、雑務もすべて終わらしてしまったのでやる事がないのだ。
だからと言って本陣を離れる事も出来ない。何かあればすぐに行動できるようにしていないといけないからだ。おかげで余計にやる事がなかった。
「あ~、何か楽しい事でも起きないかな~」
本陣に設けた私室で俺はゴロゴロしながら言った。そんな時小姓が入って来た。
「義継様、義継様にお会いしたいと言う物が来ておりますが」
俺への客の来訪を告げる。
「誰来たの?」
俺は心当たりのある人物がいなかったので小姓に尋ねる。
「はっ、名前は解りませんが偉そうな餓鬼です」
偉そうな餓鬼。それだけで誰が来たのかわかった。
「分かった。通していいぞ」
そして数分後、俺の思った通りのヤツが現れる。
「やあ、久しぶりだね」
「何の用だ久脩?」
土御門久脩は肩をすくめながら言う。
「何、三好の当主様が暇を持て余しているって言うから遊びに来てあげたんじゃないか」
一体どこからそんな情報を。そう思った。
「だったら帰れそんだけの用事なら来るな」
そう言ってしっしと手で払う。
「ははは。それは残念だ。だけどいい情報を持って来てあげたんだよ」
「いい情報?」
「比叡山延暦寺が打倒三好を掲げて戦の準備をしてるよ」
「・・・ほう」
比叡山延暦寺。織田家に反抗して焼き討ちにされた寺が俺に刃向うのか。
「それがなんだ?降りかかる火の粉は払うまでだ」
「もちろんそうなんだけど、打倒三好を掲げて挙兵するのが他にもいるんだよ」
「ほう、何処だ?」
「比叡山延暦寺のほかに越前朝倉家、丹後一色家、波多野家以外の丹波の大名、伊予河野家、そして織田家だよ」
・・・。
「いっぺんに挙兵するのか?」
「そうみたいだよ。ただし兵をそろえるのに時間がかかるみたいだけど」
まさに織田家包囲網ならぬ三好家包囲網だな。
「さすがに多いな。所で浅井家はどうなんだ?」
織田家が挙兵するとなると同盟国の浅井家も兵をあげるはずだが。
「ああ、浅井さんは織田を見限ってこちらにつくそうだよ。はい、これその書状ね」
そう言って久脩は書状を懐から出して俺に渡す。俺は受け取り中を確認してみると久脩のいう通り織田家を見限って三好家につくと書いてある。ただししばらくは中立を保つとのことだ。
「・・・なるほど確かにそう書いてあるな」
「それともう一つね。この包囲網を画策したのは朝倉さんだよ」
越前朝倉家。こちらも史実では織田家に反抗し、最後はあっけなく滅んだ家であった。
少なくとも今の当主は朝倉義景だったはずだ。史実通りなら優柔不断の屑だったはずだが、
「こんなのを作れるところを見るとクズではなさそうだな」
「他にも武田や上杉、毛利にも頼んだらしいけど突っぱねられたらしいよ」
もしこの三家のうちどれか一つでも包囲網に加わっていればかなり危険だった。どれも天下人にふさわしい物がいる家である。とてもじゃないが戦いたくはない。
「つまり朝倉さえ倒せば包囲網は崩れると?」
「そうだよ。今のうちに兵を起こせば比叡山延暦寺も対応できないだろうから」
「なるほどな。確かに挙兵してない今がチャンスだな」
「ちゃんす?」
「ああ、何でもない。ならすぐに行動を起こさないとな」
「頑張ってね。ああ、それと丹波の大名家は朝倉征伐に連れて行くといいよ。義継さんの留守中に何も出来なくなるから」
「ああ、分かった。今回はありがとう」
「別にいいよ。それより京の出入りを許してほしいな。早く陰陽師を再興させたいからさ」
「ならもっと情報を持ってこい。そしたら考えてやる」
「前もそう言わなかった?」
「陰陽師の再興はそんだけ重要と言う事だ」
「ふぅん、そう。じゃあ、次はもっといい情報を持ってくるよ」
そう言って久脩は式神に乗って帰って行った。俺はそれを見送るとすぐに確認させた。久脩のいう通り大名家で大規模な兵の準備を行っている事が判明した。
俺は三日後に5万8000のうち、2万の軍勢を連れて西宮城を出て京に向かった。京についた俺はあらかじめ行っていた徴兵で集った兵2万の軍勢と丹波の大名の兵8000、合計4万8000の軍勢で越前へと向かった。
なお越前の隣国若狭は土御門久脩の働きかけで抵抗するものはおらずそれどころか兵を出す者までいた。
合計兵力5万2000の軍勢で越前へと侵攻した。