「いやーこんなところで吉に会えるとは思っていなかったよ」
「私もよ。今回はたまたま京に用事があっただけだから」
三好義継は今京の町の茶店で吉と話していた。
あの後義継は「積もる話もあるけど取りあえず席を移そう」と言って信奈が賛成したため今に至る。
因みに信奈の従者三人は離れた所で待機していた。
その事に「不用心では?」と家臣の明智十兵衛に心配されたが自分の意見を押し通して無理やり遠くへやったのだった。
「京に来たのは初めてか?」
周りをきょろきょろと見ている吉に問いかける。
「・・・いいえ、前に一度着た事はあったけど・・・。ここまで賑わってはいなかったわ」
吉が来たのは足利義輝がまだ京にいたころだと言う。
確かにその頃と比べれば京の町は賑わっている。関所は置いているが税を取るのは禁止し、物がスムーズにいったり来たり出来るようにしたし、楽市楽座を配布し商人が自由に売買出来るようにした。
おかげで京の町は日ノ本の首都としてふさわしい発展を遂げたのだ。
「・・・三好家はすごいわね。軍事だけじゃなく政治も優秀。今敷かれている包囲網もすぐに破られそうね」
「・・・そうだな。確かにそうだな」
事実三好家は全ての戦線に余裕を持って対応している。毛利家が加わったことにより膠着した伊予戦線と織田軍に囲まれている近江戦線以外は包囲したりするなどしていた。
「ほんとにすごいと思うわ」
「ああそうだな・・・っと、すまない。急ぎの用事があったんだ。俺はこれで失礼するよ。ああ、それと今回は俺のおごりな」
「また会える日を楽しみにしているわ」
そう言って俺達は分かれた。次に会うのが戦場と知らないまま。
「義継様っ!いったいなにをしていたんですかっ!?」
「本猫寺に泊まると報告は受けていましたがこんなに遅くなる事はないですよね?」
比叡山延暦寺を包囲している軍の本陣に入ると軍を率いていた荒木村重と池田勝正に思いっ切り怒られた。
確かに吉と出会った事でかなり遅く放ったが別にここまで起こる必要はないだろう。
「・・・悪いな。古い友人とたまたま会ってな。かなり話し込んでしまったんだ」
「・・・その年で古いとか」
「・・・たかが17のお子様が古い・・・ブフッ」
うわぁ、何こいつら。めっちゃ殴りたい。
しかしここは戦線。気を抜いてはだめだ。
「・・・話は変わるが包囲してから何か出来事はあったか?」
真面目に話す俺を見て二人は姿勢を正し報告する。
「・・・今日はありませんでしたが大体一日三回くらいの奇襲が仕掛けてきました。最初は戦うのですがしばらくすると寺に戻っていくのです」
「『貴様ら穢れた俗世の武士がこの神聖な延暦寺に攻め入ることなどできるものかっ!』と喚き散らしてるのを何回か聞いた事があります」
村重、勝正の順に報告する。
「・・・兵の方は?」
「士気に影響はありませんが軍の規律が乱れつつあります。このまま続けば脱走兵も出てくるかと」
「傭兵じゃこのくらいが限界か」
義継は農民を戦に駆り出すのを良しとしなかった。戦は専用のものを雇い農民には畑仕事をやらせて戦から遠ざけた。こうした政策により三好軍は一年中軍を動かせることが出来るようになった。しかし傭兵なのでこちらのいう通りに動かしづらかったのである。
「だがどうせ今日で対陣は終わりだからな。村重、勝正、準備は出来ているな?」
「もちろんだ」
「右に同じく」
その問いに俺はうなずき口を開く。
「よし、さっそく始めるぞ!我らに立て着いた事を死んでも後悔させてやれ!全軍、比叡山延暦寺を焼き払えっ!」
俺は大きな声で総攻撃を指示したのであった。
比叡山延暦寺は徹底的に焼かれ焼き討ちが終わった次の日には山はきれいに剥げていた。
この焼き討ちにより寺に籠っていた坊主全てが焼き殺され人々は三好義継に心から恐怖した。
しかし、比叡山延暦寺はいい評価がなかったためすぐ人々は存在を忘れいつもの生活の戻っていった。
比叡山延暦寺を焼き払い更に行動可能となった焼き討ち部隊は裏切り物である松永久秀を延暦寺の戦後処理の後決着をつけるべく南進するもすぐにその行軍は止められることなった。
風林火山動く。
比叡山延暦寺の焼き討ちを理由に『甲斐の虎』と呼ばれる武田信玄が宣戦布告して来たのだ。
これにより2万の軍勢は急ぎ防衛の準備をすべく観音寺城に向かうのであった。
比叡山延暦寺という強敵を討ち果たすもそれを超える強敵と戦うことなった。結果的に「三好包囲網」はさらなる強敵により強化されたのであった。