「熊王丸は南蛮が攻めてくると思う?」
俺はその問いに固まってしまった。10歳の餓鬼が何を言い出すのかと思えば理解できる人じゃないと理解できないような事を言ってきやがった。
「いきなりごめんね。でも熊王丸なら理解してくれるんじゃないかと思っていったの」
吉は少し俯きながら話を続ける。
「子の話ね、あまり言いたくはないんだ。前にこの話を皆に言ったら、笑われたわ。当然よね。父上は答えられず、母上は汚物を見るよな目で私を見てきたわ」
吉と母親は仲が悪いのだろうか。いくら何でも自分の娘を汚物を見るような眼では見ないだろう。
そこであることに気が付き言う。
「何でそんなことを俺に言うんだ?いいたくないんだろう?」
トラウマになった話を自分から言うのだから。
「何となくだけど熊王丸なら私の求めている答えを言ってくれそうな気がしたから」
俺を真っ直ぐ見つめて言う。俺はその言葉にこいつは将来デカくなるなと思った。
「・・・俺の予想では俺らが生きている間に攻めてくるだろう。もっとも今のままならの話だが」
おそらく南蛮人の戦略としては日ノ本のキリシタンとそうでないものを戦わせてそこに仲介して植民地化するだろう。それが自軍に被害が少なくなおかつもっとも成功しやすいだろう。
俺の答えに吉は少し考えてからいう。
「確かにそうよね。ありがとう。おかげですっきりしたわ」
そこへ男が吉の名前を呼びながら近づいて来た。
「あっ、父上。今行きます。それじゃあね。また会いましょう」
そう言って吉の父親のもとにかけて行った。俺はその後ろ姿を見つめながらあることを思い出した。
「どうしよう。俺迷子だったんだ」
この後ようやく合流した。しかし、兄に拳骨され父上からは1週間謹慎処分を言い渡された。
精神と肉体のダブル攻撃を受け撃沈した俺は7年後に再び吉と出会うのだがそれはもう少し先の話である。
「ああ~。暇だ~」
謹慎処分を言い渡されて三日が過ぎた。学習することもないし(読みつくした)、雨が降っているので体を動かすわけにもいかない。
そんなわけで俺は自室の畳でごろごろ転がっていた。
「何か面白いこと起きないかな~」
そんな時、誰かがこちらに、しかも早足で向ってきていた。
「なんd」
バンッ!
いきなり開いたふすまにびっくりしてしまった。
「う、うわっ!何だ!?」
そこに立っていたのは父の十河一存であった。
「ここにいたか熊王丸」
父はいつになく真剣な感じであった。
目の前に座った父は驚愕の事を言ってきた。
「熊王丸。お前はこれから十河熊王丸ではなく、三好熊王丸となるのじゃ」
・・・
「あ、あの~父上?仰る意味が解りませんが」
「つまりお主は三好長慶さまの義息子となるのじゃ」
「え、えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
俺の声は城中に響き渡った。