三好家次期当主となって早5年が過ぎた。その間に俺は覚えられるものはすべてを学んだつもりだ。
13の時には初陣し、戦いの恐怖を味わった。まあ、すぐに立て直して敵を倒しまくったが。
三好三人衆の一人である三好正康とはすぐに打ち解けた。元々年が近かったし、武士としての何かが似ていたのかも知れない。
三人衆の一人、三好長逸とは打ち解けるまでは行かなかったが、三好の当主としての才はあると言われた。
三人衆の最後の一人、岩成友通は俺の後見役なのでそれなりの信頼関係はある。
伊この五年間にした事は三好三人衆との関係改善であった。将軍暗殺後に三好三人衆に軽く扱われた義継が久秀についてそこから三好の没落が始まったのだ。
俺は史実通りに将軍暗殺をする気でいた。だって邪魔なんだもん。将軍殺しの汚名が付いても俺は関係ないからな。
そして15になった俺は二つの出来事に遭う。
それは義父の長慶様と父の十河一存の死だった。体調がよくなった長慶とは裏腹に一存は年々弱って行った。そして3月18日に一存が死んだ。このことに長慶様は泣き崩れた。そこから体調が悪化し、7月4日に死去した。
俺は三好三人衆の支援で三好家当主となった。長慶様の葬儀を行い俺は名を義重に変えた。
義重は将軍暗殺前まで使っていた名である。俺は心の中で将軍暗殺は近いと思っていた。
そんな時に松永久秀が訪れた。松永久秀は長慶様の重臣である。信長が京に進出してくると呆気なく降伏し、その後2度にわたって謀反を起こすなどした。毒殺などをたくさん行っていたため戦国三大悪党と呼ばれている。
俺としては久秀だけは会いたくなかった。三人衆の情報から姫武将であることが分かっているが怖い。
当主として断る事も出来ず広間に通した。
「お初にお目にかかります。松永弾正久秀でございます」
松永久秀を見た俺は驚愕した。久秀は30になるかならないかの熟れ頃の美女であった。
肌は褐色で、顔だちは彫りが深く、一見するとこの国の人間ではなさそうだ。
父か母が、外国の者かも知れなかった。
この時代の女性としてはめずらしく、清楚な短髪。
その豊満な体を包む衣装は、和服ではなく、唐風の真っ赤な派手のものだった。
色町の遊女と見まがういでたち、そして匂い立つような女の色気。
頭には、なにがしかの花をあしらった飾り物。
鼻を突くような、龍脳の香り。
そして胸元は半場見えていて、谷間が深い。
まるで深海へとつながる海溝のごとく。
「義重さまが当主となれば三好家はさらに繁栄するでしょう」
そのたおやかな笑顔は楊貴妃のごとく。
そのあふれる母性は、衆生を救済する菩薩のごとく。
とうてい、天下に名高い極悪人には見えなかった。
「あ、ああ。俺は三好の当主としてこのままでは終わらないつもりだ」
久秀の色気と極悪人という恐怖に立ち向かいながら答えた。
そんな俺を見て久秀は微笑んだ。
「ふふっ、義継さまはわたくしめが怖いのですね?」
俺はその時みた。久秀の瞳の奥で殺意と悲しみであふれているのを。
俺は背筋が凍る思いをした。
「ふふっ、心配いりませんよ。今日は挨拶に来ただけですから。それではそろそろお暇させていただきますわ」
そう言って久秀は広間から出て行った。俺はこの時決心した。そして誰に言うとも限らず呟いた。
「久秀は危険だ。俺の天下取りの妨げになる。殺さないと」