別行動として脳内補完してください()
主人公の装備は「逃亡騎士シリーズ」に「グレートソード」です
プロキシ兄妹と出会って、ビジョンとのゴタゴタも終わり、邪兎屋の四人が少しだけ忙しくなってきた頃の話。借金だらけの経営は、相変わらず火の車だった。
郊外のさらに先、地図にも載っていない名無しのホロウの入り口で、ビリーが大きなため息をついた。
目の前では、景色がぐにゃりと歪んで、薄暗い境目をつくっている。ここから先がホロウだ。ニコは腕を組んで仁王立ち、アンビーは静かに刀の柄へ手を添え、ビリーは相棒の二丁拳銃をくるくる回して、ご機嫌ななめな顔でこちらを見ていた。
ビリー「親分〜、本当にそんなもんあるのかよ〜?」
アンビー「ニコ、そろそろ探索を始める時間よ」
ニコ「うっさいわねぇ!今回の依頼をこなさないと、うちの経営は崩壊するのよ?文句言わないで、きびきび働く!」
時間を少し戻して、昨日のお昼ごろ。
事務所に着信音が鳴り響いた。ニコが電話を取って、短くやり取りをして、通話を切る。そして、ニッコニコの笑顔でこちらを振り向いた。
ニコ「みんな、仕事よ!しかもホロウの中で物を探すだけの、簡単なやつ!」
ビリー「おお!やっとこれで家賃が払えるな!」
アンビー「物を探すだけで、この金額…。しかも前払い。ニコ、さすがにこれは怪しいと思う」
ニコ「仕方ないでしょ、明後日には家賃を払わなきゃいけないんだから…。プロキシ先生は最近引っ張りだこで頼めないし、あたしたちだけでやるしかないのよ」
机の上には、赤い文字でデカデカと「家賃」と書かれた督促状。ニコはそれをちらっと見て、ごまかすようにコホンと咳払いをした。
かくして、なんやかんやありつつも、三人は郊外のさらに先、名前もないホロウへやって来たのだった。
ホロウの中は、拍子抜けするほど静かだった。
空は鈍い灰色で、太陽がどこにあるのかも分からない。ひんやりした空気の中、砂を踏む足音だけが、やけに大きく響いていた。
ニコ「しかしほんとに、何もないわねぇ…」
見渡す限り、崩れた建物の跡と、錆びた墓標、それに朽ちた武器が転がっているだけ。しかもホロウなのに、エーテリアスが一体も出てこない。探索というより、遺跡見学にでも来た気分だった。
ビリー「エーテリアスどころか、鳴き声ひとつしねぇな」
アンビーは周囲を見渡して、小さく眉を寄せた。
アンビー「…静かすぎる」
そこからしばらく歩いて、「騙されたかしら…でも前払いだし…」とニコが思い始めた頃。突然、目の前に巨大な扉が姿を現した。
見上げるほど高い、黒ずんだ鉄の扉だった。表面には焼け焦げたような跡が残っていて、剣を象った古い紋様が、錆の下からうっすらと浮かんでいる。ずっと昔から、誰かがここを閉ざしていたのだと、嫌でも分かった。
ビリー「うはっ、なんだこれ、でっけぇ!」
ニコ「これは、開けないと先に進めないわね…」
アンビー「気をつけて。映画だと、大抵こういうのを開けた先に強敵がいるわ」
ニコ「物騒なこと言わない!」
ニコは肩で、ビリーは両腕で、アンビーは足を踏ん張って、扉に体重をかける。錆びた蝶番が悲鳴をあげて、細い隙間から、冷たい風が吹き出してきた。灰の匂いがした。
三人で力を合わせて、扉をゆっくり押していく。ゴゴゴゴ…と重い音を立てて少しずつ開いていき、その向こうの景色に、三人は言葉を失った。
そこは、まるで世界の終わりのような場所だった。
地面は一面の灰。朽ちた剣や槍が数えきれないほど突き刺さっていて、それらは、灰をかぶった大きな丘の先へ向かって、どこまでも続いている。
空には、夕暮れとも夜明けともつかない鈍い光がにじんでいた。風が吹くたびに灰が舞い上がって、雪みたいに三人の肩へ降り積もる。ここは、火が燃え尽きたあと、時間だけが止まってしまった場所のようだった。
――最初の火の炉――
ビリー「…親分、今回探してるのって、結局何なんだ?」
ニコ「…遺骨と、剣よ」
ビリー「剣なんて、ここら中に刺さってるじゃねぇか。見分けつくのかよ? 遺骨はともかくさ」
ニコ「一緒に置かれてるらしいわ。それに、剣は見ればわかるって話よ」
ビリー「ますます怪しくなってきたな…。アンビー、さっきから黙ってるけど、どうした?」
アンビー「…あの丘の上に、何かいる。とても大きな気配を感じる」
ビリー「何だよそれ、やばくないか?」
ニコ「ここまで来たら、行くしかないわ。そのとんでもないのと出くわさないように、祈りましょ」
三人は丘に向かって、ゆっくりと歩を進めた。
足元の灰は思ったより深くて、一歩ごとに足首まで沈んだ。両脇には、折れた剣や砕けた盾が、墓標みたいにずらりと並んでいる。誰が、いつ、ここでこれほど戦ったのか。考えるだけで、背筋がひやりとした。
丘の上も、また異様な光景だった。相変わらず灰は積もっているけれど、広場のように開けた場所の中心に、錆びたマントと傷だらけの鎧をまとったまま座り込む、白骨があった。その横には、2メートルはありそうな傷だらけの特大剣が突き立てられている。少し離れた、灰が盛られた場所には、らせん状の剣も刺さっていた。
不思議と、その骸のまわりだけは荒らされた形跡がなかった。まるで、誰かがここで静かに最期を迎えて、そのまま時が止まってしまったみたいに。
ビリー「…あれが目標の物か? 剣が二本あるぜ」
ニコ「…大きいほうでしょ。恐らくあれが目標ね」
ビリー「じゃあ、さっさと回収しちまおうぜ」
三人は黙って近づいていく。ニコが骸に手を伸ばした、その瞬間。
「ギャアアアアアアア!!」
特大の咆哮が、空気を引き裂いた。
足元の灰が波打ち、丘の空気がびりびりと震える。
アンビー「二人共、危ない!」
アンビーに引っ張られて、三人は後ろに倒れ込む。直後、さっきまでいた場所に、大きな何かが降ってきた。灰が舞い上がり、地面が揺れる。
それは、まさに悪魔(デーモン)だった。
6.7メートル級の巨体。背中には、体に不釣り合いな小さな羽。手には、人なんて軽く押し潰せそうな棍棒。人のものとは思えない身体は、三分の一ほどがエーテリアス特有の核に侵蝕されていた。
黒ずんだ皮膚には、ひびのような亀裂がいくつも走っていて、その隙間から、赤黒い火がちろちろと漏れている。息をするたびに、口から灰が散った。空洞みたいな目が、ゆっくりと三人をとらえる。
けれど、妙なことに、こいつはエーテリアスに「なりかけている」状態だった。
ニコ「二人共、やるわよ!」
ビリー「見た目まんま悪役じゃねぇか! スターライトナイトの出番だぜ!」
アンビー「撃破する!」
戦いの幕が、切って落とされた。
見た目の割に、戦闘は意外なほど簡単だった。動きは単純で遅く、デーモンは少しずつ追い詰められていく。
振り下ろされた棍棒が、さっきまでビリーのいた地面を叩き割る。ビリーは軽々と跳んでかわし、空中から二丁の銃を連射した。弾は黒い皮膚に当たって、小さな火花を散らす。
後ろではニコがアタッシュケースを構え、ガチャンと展開する。砲口が火を噴くと同時に、アンビーは側面へ回り込み、電気をまとわせた刀でデーモンの腕を斬りつけた。
ビリー「へイヘイヘイ! そんな攻撃、当たんねぇぜ!」
ニコ「弾薬もタダじゃないんだから、節約しなさい!」
ビリー「オレの娘たちが、撃ちたがってんだよ〜」
アンビー「おかしい…。あの気配でこれなら、弱すぎる…」
ニコの砲弾がデーモンの足を砕いて動きを止め、ビリーの弾が顔面に当たってのけぞらせる。そこへ、アンビーの刀が胸の核を貫いた。デーモンは膝をつき、動かなくなった。
ずん、と地響きを立てて、巨体が崩れ落ちる。しんとした静けさの中で、灰だけが、ゆっくりと降っていた。
ニコ「意外とあっけなかったわね」
ビリー「正義は勝つ!」
アンビー「…まだ終わってない!」
ホロウの主を倒した、と三人は思っていた。けれど、突然デーモンの体が燃え上がる。体の奥で炎がくすぶり、脈打つように勢いを増していく。砕いたはずの足もいつの間にか元に戻っていて、デーモンは立ち上がり、再び咆哮した。
三人は武器を構え直して、向かい合う。
その時、パチッ、と乾いた音が大きく響いた。
デーモンから漏れ出した混沌の炎が、飛び火して、そこに座っていた"王"に火をつけた。
ぽっ、と小さな火が灯る。それは骸の鎧の隙間から、静かに、でも確かに広がっていった。三人は声を出すことも忘れて、その光景を見つめていた。
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やがて消えゆく定めの、火の時代。
その遥か昔、ホロウもエーテルも、新エリー都もなかった頃。世界は"火"によって生まれた。
けれど、最後の"王"は、"火"を消して世界を終わらせることを選んだ。
それでも世界は、まったく別のルールで続いていった。かつて火と王がいた火の炉には、灰が残るだけだった。
そして、今。
無限の時を生きたデーモンが、再び"火"をつけた。たとえそれがまがい物の"混沌の炎"だったとしても、燃え残っていた"王"を目覚めさせるには、十分だった。
――この世界に、再び"王"が。"混沌"と"始まり"を併せ持つ、"最後の王"が目覚める。
〜灰または王視点〜
火が消えた。
その瞬間から、世界は少しずつ「同じ」になっていった。
温かさと冷たさの差が消えた。光と闇の差が消えた。生と死の差が消え、上と下の差が消え、近いものと遠いものの区別さえ、やがて溶けて、ただ一枚の、のっぺりとした黒になった。
王は、その黒の中にいた。
いや、「いた」という言い方は正しくないのかもしれない。体は、もうずっと前に朽ちている。肉は落ち、骨になり、その骨さえ脆くなって、鎧の中でひっそりと崩れていった。残っているのは、意識だけだった。
神に近い魂を持つ者は、死ぬことすら許されない。
だから王は、眠りと目覚めの境目にある、冷たい微睡みの底を、ただ彷徨い続けた。何年も。何百年も。何千年も。数えることは、とうの昔にやめた。数える意味のある「時間」そのものが、もう世界になかったのだから。
ときどき、記憶の欠片が、黒い水面に浮かんでは沈んでいく。
玉座。鐘の音。重たい剣の柄を握り直す、あの感触。
そして最後に、自分の手で世界の火を消したときの、指の間からこぼれ落ちていく、小さな、小さな、最後の熱。
あれは、正しかったのか。
答えを教えてくれる者は、誰もいない。問いかける相手もいない。黒は何も返さず、どこまでも同じ静けさで広がっているだけだった。
――そのはずだった。
パチッ。
小さな音がした。
音。音だ。何千年ぶりかの「差」だ。完全な静寂と、それ以外。世界に生まれた、はじめての区別。
黒の遠く、ほんのわずかな場所で、何かが熱を持った。
朽ちたはずの体の、いちばん深いところに、ぽつりと赤い点が灯る。それは本物の火ではなかった。かつて世界を照らし、焼き、すべてを始めた最初の火とは似ても似つかない、荒々しくていびつな、不純な炎。混沌の炎だった。
けれど、火は火だった。
それは、燃え尽きたと思われていた灰の底へ、ためらいもなく潜っていく。冷えきった魂のさらに奥、もう誰にも触れられないはずの場所へ。
灰の魂に、火がつく。
熱い。
王は、思い出した。熱いという感覚を。痛みという、あまりにも生々しい証拠を。
胸の奥で、火種が脈を打つ。ひとつ、ふたつ。そのたびに黒が剥がれ落ち、凍りついていた意識にひびが入っていく。微睡みが、焼かれていく。
温かさが戻る。冷たさも戻る。光が、闇が、重さが、世界の輪郭が。ひとつ、またひとつ、差異がゆっくりと息を吹き返していく。
灰の匂い。錆びた鉄の味。遠くで吠える、獣の声。
そして、もうひとつ。
小さな温もりが、三つ。
か細く、けれど確かに脈打つ、生きているものの熱。それはひどく懐かしくて、目が眩むほどまぶしかった。
――燃え残ったものに、火がついた――
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誰一人として、目が離せなかった。
デーモンの炎が燃え尽きたかと思った矢先、その火の中から、一つの肉体が形を成していく。燃えていた火の色が、荒々しく燃え盛るものから、暗く力強い火へと変わっていった。
炎の中で、白い骨に肉がつき、朽ちていたマントが風もないのにふわりと揺れる。ボロボロの鎧が、赤く熱を帯びて、がしゃり、と音を立てた。
彼は、ゆっくりとした動作で特大剣を引き抜き、肩に担いだ。
剣の重みで、足元の地面がきしむ。灰がざあっと舞い上がる中、暗い火の灯った眼差しが、じっと三人を見ていた。
そのとき、くすぶっていたデーモンが身体をさらに強く燃え上がらせて、彼に向かって突っ込んでいった。
地面が揺れる。灰の波を割って、炎の塊が棍棒を振りかざし、猛然と迫ってきた。
「ギャアアアア!!」
ビリー「危ねぇ!」
三人は突然のことに呆気にとられていたけれど、デーモンの叫び声で我に返って、慌てて起き上がり、彼を助けようと走り出す。
でも、デーモンのほうが速い。間に合わない…! そう思った時、彼は逃げようとしなかった。体勢を低くして、身を畳むように少しだけ傾け、身体の前で、デーモンに剣の側面を向けて構えている。
ニコ「は?」
ビリー「え?」
ガァン、と鐘を突いたような重い音が響いた。衝撃で灰が円を描いて吹き飛び、足元の地面に深いひびが走る。
彼は吹き飛ばされるどころか、デーモンの突進をがっしりと受け止めた。そして、その体勢から顔面めがけて剣を突き上げ、のけぞって膝をついたデーモンを、横薙ぎの一撃で吹っ飛ばす。
デーモンはそのまま倒れ、燃え盛っていた炎も、嘘みたいに静かに消えていった。
あたりに、また静けさが戻った。灰が降り積もる中、彼は剣を肩に担ぎ直して、一歩ずつこちらへ歩いてくる。足音はやけに重く、鎧のきしむ音だけが響いていた。
三人が呆気にとられていると、彼が近づいてきて、一言だけ発した。
「貴公らは、生者か?」
続かないです
誰か続きを…この夢の続きを…
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