「嫌いなスケート選手をぶっ跳ばせる」と誘われた   作:高島智明

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第1話 醜い家鴨の子

彼女ー葛城由麻は、今日も道場で格闘技のトレーニングに励んでいた。

 

「はあ…はあ」

ひと息、汗を拭った時、道場を覗いている人物に気が付いた。

「何でしょうか?」

その人物は気付かれたと悟ると、道場に入って来て彼女に声を掛けた。

「貴女、アイスホッケーをやってみない」

 

瞬間だけ、何を言われたか理解が追い付かなったが、次の瞬間には相手を睨み返していた。

「貴女も、私の家族に目を付けたのですか!」

「はあ?」

 

由麻の両親、葛城祐樹・麗香は長野オリンピックにも日本代表を務めたフィギュアスケート・ペアの元選手だった。

そして、由麻の兄の葛城弾馬はスピードスケートの日本代表。

幼い時から、周囲はスケート競技のサラブレッドと見做していた。

だがしかし、由麻自身は自分には両親や兄の様な才能は無い、と思っていた。

むしろ、コンプレックスの原因だった。

 

とはいえ、家族が由麻をないがしろにしていた訳では無い。

極普通に娘として、あるいは妹として可愛がられて育っている。

けれども、逆に其れが更にコンプレックスをひねくれさせていた。

 

「あたしは、スケートは嫌いです!」

瞬間だけ、相手はキョトンとしたが、次の瞬間には笑っていた。

「だったら、益々スカウトに乗りなさい。貴女の嫌いなスケート選手を、ぶっ跳ばせるわよ」

「はあ?!」

 

それから相手は、篠崎飛鳥と名乗った。

アイスホッケーのキャプテンだと言う。

そして、ゴールキーパーの候補を探していたのだ、と言った。

GKに要求されるのはスケートの技術などでは無い。

格闘技にも通じる勇気、そして身体能力が要求される。

だから、格闘技の道場を覗いていたのだと。

 

「貴女の家族がスケートをやっていたなんて知らなかったわ。

あくまでも、格闘技に真摯に向き合っている貴女にゴールを任せてみたくなったのよ」

 

飛鳥と名乗る相手に言われているうちに、由麻の内心に其れまでのコンプレックスとは別かも知れない感情が起きて来た。

もしかしたら、家族とは別な道が開けるかも知れない。

もう、自分は白鳥の家族の中の「醜い家鴨の子」では無く成るかも知れない。

 

初めて、由麻は飛鳥のスカウトを真剣に聞く気に成った………。

 

……。

 

…結局、由麻は飛鳥に誘われるままに、キャンパスの中のアイスホッケー・リンクへと足を踏み入れた。

 

キャプテンの飛鳥に紹介された由麻を、チームメンバーの中には知っている者も知らない者も居た。

だがしかし、飛鳥キャプテンは、あくまでもGK候補の格闘技経験者として扱った。




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