「嫌いなスケート選手をぶっ跳ばせる」と誘われた 作:高島智明
葛城弾馬は、次のオリンピック代表が期待されるスピードスケート選手であり、元オリンピック代表のフィギュアスケート・ペア選手である葛城祐樹・麗香を両親に持っている。
当然の様にスポーツ専門記者のみならず、1般マスコミの注目を日常に受けていた。
その弾馬が両親と出掛けたのを何時もの様に追跡した記者は、行き先に最初は違和感を感じた。
彼らの専門とは1見関係が無さそうな、アイスホッケーの地方大会の観客席に着いていた。
確かにスケート競技の1つには違いないが?
そんな疑問を抱いていた記者がハッとしたのは、対戦するチームのメンバーが発表された時だった。
GK:葛城由麻。
かつ…らぎ?
記者は、小さなゴールの前に立ち塞がる防具に身を固めた少女を見詰め、それから慌てて応援の記者とカメラマンを呼んだ。
*
由麻にとっては、初めての試合が始まった。
敵のプレーヤーが、彼女らが打ち出すパックが襲って来る。
チームメイトとの練習では無かった殺気すら込めて。
だがしかし、由麻は恐れを振り払った。
格闘技で培った勇気と身体能力を振り絞りパックを打ち返す度に、観客席から
「由麻ちゃーん」
と、歓声が上がった。
由麻は充実していた。
スケートから逃げ回っていた過去を忘れるかの様に。
今は只、ゴールを死守することしか考えられなかった………。
……。
…勝った。
由麻が死守したゴールを敵が割った数より多く、チームメイトは敵ゴールを割っていた。
だがしかし、チームがリンクから引き揚げようとした時、何者たちが立ち塞がった。
いや、何者とは言えない。
マスコミの腕章を付け、カメラを構えている者すら居る。
「葛城由麻さんですね」
「葛城祐樹・麗香ペアの御嬢さん。葛城弾馬選手の妹さん」
「スケート競技のサラブレッド、遂に”氷上の格闘技”にデビュー」
これだ。これを恐れていた。
由麻は、逃げ回っていたものに又捕まった感触に囚われていた。
ところが、その由麻の前に、庇う様に進み出たものが居た。
キャプテンの篠崎飛鳥だった。
「由麻はうちのチームのメンバーです、今日初めての試合を戦ったばかりの。
そして、大切なチームメイトです。それに…」
「ご家族は、ああして純粋に応援に来ていらっしゃいます」
記者たちは、バツの悪そうな表情を互いに交わしたが、結局は観客席の葛城1家の方へと矛先を変えた様に立ち去った。
「キャプテン、済みません」
「何を誤っているの?由麻」
飛鳥は、心底不思議そうに問い返した。
「ですが…」
「貴女は貴女。そして、我がチームに勝利を齎したGK。他の何なの」
その飛鳥の言葉に、自分の居場所を見つけた思いの由麻だった。
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