「嫌いなスケート選手をぶっ跳ばせる」と誘われた   作:高島智明

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第4話 初めての涙

「スケート競技のサラブレッド、遂に”氷上の格闘技”にデビュー!」

そう仰々しく題された記事は、結局は出た。

 

尤(もっと)も、インタビューに応えたのは、専ら本人の両親と兄だった。

例によって、読者を引き付けそうに切り取られていた。

「娘が選んだ道を応援している」

「妹が格闘技をしていたことが役立った」

そんな処だけが強調されていた。

 

チームのキャプテンが言い切った台詞などは、ひと言も掲載されなかった………。

 

……。

 

…その記事は、結局はチームの皆も読んだ。

チームの先輩たちの前で小さくなる葛城由麻に対してチームメイトたちは、

「貴女、期待されているわね」

としか言わなかった。

 

先輩たちの軽い調子の声の奥に、由麻を気遣う温度が確かにあった。

両親と兄の言葉だけが切り取られた記事を見て、胸の奥が少しだけ冷たくなった由麻だったが、その温度を暖めてくれる感触が確かに在った。

 

「さあ、練習、練習!」

キャプテンの篠崎飛鳥は、そう纏めた。

(…このチームに入って好かった…)

由麻には、そう思えた………。

 

……。

 

…疑いの心で見れば、見えない筈の幽霊を見る。

次の対戦相手は何故かゴールキーパーの由麻を警戒しているかの様に、由麻には思えた。

 

そうで無くても激しい、格闘技の経験者をGKにスカウトしようとする様なアイスホッケーという競技である。

由麻は身の危険すら感じた。

それでも、勇気を振り絞り、身体を張ってゴールを死守した………。

 

……。

 

…1戦、又1戦と勝ち上がって行く由麻や飛鳥のチーム。

遂に、代表候補と噂される強豪チームとぶつかる時が来た。

 

激しい戦い。

由麻や飛鳥だけでは無い。

チームメイトが死力を振り絞った戦いも、結果は無残だった。

 

戦い終わって、リンクにパックをキャッチする為だったグローブついた瞬間、胸の奥がじわりと熱くなった。

これが「負ける」という感覚なのだと由麻は知った。

 

戦い終わって無念の涙を流すチームメイトたちだったが、飛鳥は由麻にもチームメイトたちにも言った。

「泣け、そして忘れるな。泣いた分だけ強く成ろうよ」

 

けれども、由麻には其れだけでは無かった。

由麻の存在は注目されていた。

 

初めての挫折感を乗り越える様にトレーニングを再開したチームだったが、試合結果は大きく報道されていた。

相手が代表候補だっただけでは、明らかに無かった。

由麻の存在が注目されていた。

 

あからさまなバッシングこそ無かったが、ジャーナリズムは由麻の未熟を指摘した。

その記事を知った時、由麻には、あの感情が呼び覚まされた。

まるでスケートから逃げる様に格闘技を選んだ過去が。

 

そんな由真に、飛鳥やチームメイトたちは只こう言った。

「負けて泣いた分だけ、強く成ろうよ」

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