「嫌いなスケート選手をぶっ跳ばせる」と誘われた   作:高島智明

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第5話 テンプレートの様な奇蹟

強豪チームに対する敗戦の翌日から、今時らしく非合理的では無いが、決してハードで無いとは言い切れないトレーニングが再開された。

「打倒!(強豪チームの名)」

誰もが合言葉にしていた。

 

葛城由麻もゴールキーパーのトレーニングを新たにしていた。

練習相手のチームメイトとは言え、突撃して来るプレーヤー、撃ち込まれて来るパックに対して身体を張ってゴールを守る。

その合間の基礎トレーニング。

そんな日々が過ぎて行った………。

 

……。

 

…そんなトレーニングに明け暮れる日々の内の、とある日。

由麻の兄、葛城弾馬はスケートシーズン以外の季節での基礎トレーニングである自転車を漕いでいた。

 

ふと見ると、妹が自分と並んで走って行く。

格闘技をしていた頃、何故かスケートを避けていた頃には考えられなかった。

妹は兄には何も言わず、黙々とペダルを踏んでいた………。

 

……。

 

…再びスケート競技の季節が来て、あの強豪チームとの再戦の機会が訪れた。

 

チームメイトたちは、キャプテンの篠崎飛鳥以下、この数ヶ月の想いを胸にリンクに立つ。

無論、相手チームとて、この数ヶ月を驕慢に送って来た訳では無いだろう。

それどころか、強豪の名を背負ってトレーニングに送って来たに違いない。

だがしかし、負けて堪るか!

 

試合は始まった。

相手チームのプレーヤーが、パックが、由麻の守るゴールに迫って来る。

やはり、強い。そして、攻撃は容赦無い。

それでも、由麻はゴールの前に立ち塞がる。

そしてチームメイトたちは、飛鳥を中心に反撃して行く。

 

アイスホッケーでは、何度でも選手交代が出来る。

実の処、1分ごとにプレーヤーが後退する程なのだ。

プレーヤーの様に走り回らないからと言って、ゴールキーパーに交代が無い訳でも無い。

 

待機場所に下がった由麻は、観客席の両親を見付けた。

その姿は、かつてのペア代表でも、スピードスケート代表の親でも無い。

只、ゴールを死守する娘を純粋に応援する、当たり前の親の姿だった。

 

(負けない。今度は未だ負けていない)

由麻は交代のGKに代わって、再びゴール前に立ち塞がる………。

 

……。

 

…アイスホッケーの試合は、正式にはピリオドと呼ばれる20分の単位を計3回行う。

第1ピリオド…第2ピリオドそして最終ピリオド。

 

遂に、由麻たちのチームは相手チームをリードした。

 

そして…審判のホイッスルが鳴った。

 

「勝ったー」

チームメイトの誰かが声を上げ、左胸にCのキャプテンマークを装着した飛鳥の周りに集まって歓声を上げた。

由麻も、その1員として声を上げていた。

 

観客席から拍手が上がる。

その中に、葛城の両親も居た。

その両親に近づいてインタビューしようとする者も、今の由麻には気に成らなかった。

只1人のチームメイトとして、テンプレートの様な奇蹟みたいな今日の勝利を喜んでいた。

只それだけだった。




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