「嫌いなスケート選手をぶっ跳ばせる」と誘われた 作:高島智明
葛城由麻に届いた知らせ。
それはアイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」からの、強化選手の誘いだった。
思わず由麻は聞き返してしまった。
「私が葛城の娘だからですか」
だが、相手は冷静に答えた。
「あの国民スポーツ大会で、有望そうな数名の選手に声を掛けています。貴女も其の1人です」
返答を保留した由麻は、今はOGと成っている元キャプテンの篠崎飛鳥に連絡を取った。
「それで?由麻はどうしたいの」
スマートフォン越しの飛鳥からの率直な反問に由麻は迷った末に、答えた。
「挑戦してみたい。葛城の娘で無く、アイスホッケーのゴールキーパー葛城由麻として」
「由麻のしたい様にしなさい」
スマホからの飛鳥の声は、由麻の背中を押してくれた。
飛鳥とのスマホを落とした後、由麻は家族に打ち明けてみた。
格闘技を始めた時も、GKにスカウトされた時も殆ど事後報告だった由麻にしてみれば、その意味では初めてだった。
両親と兄は応援する、と言ってくれた。
だがしかし、
「私は、お兄ちゃん程強く成れないかも知れないよ」
確かに、オリンピックを始めとするスピードスケートの国際大会で、近年の日本選手は活躍している。
数度の大会にかけて複数のメダルを取った選手まで居る程だ。
その高レベルの中で揉まれながら活躍している葛城弾馬は、当然に次回の「アルプス2030」でも期待されている。
その弾馬が言う。
「勝っても負けても、うちの妹に変わりは無いさ」
「それに、私たちだって世界じゃ強かった訳じゃ無い」
遂に「ミラノ・コルティナ2026」で日本のフィギュアスケート・ペアは金メダルに輝いたが、それまでは出場権すら獲得出来ないオリンピックすら在った。
葛城祐樹・麗香の出場した長野オリンピックも開催国枠だと、酷評する者も居ない訳では無かった。
「それでも、私たちには後悔は無い」
「だから、由麻ちゃんも後悔しないで」
そんな両親に、今の由麻は素直に成れた………。
……。
…やはり、葛城由麻の代表入りは両親や兄と結び付けられた。
だがしかし、今の由麻には雑音だ。
現状の由麻に在るのは、ゴールを死守すること。そして正式の代表選手に近付くことだ。
そして、由麻を含めた「スマイルジャパン」の当面の目標は「アルプス2030」の出場枠を勝ち取ること。
何せ「ミラノ・コルティナ2026」でも参加は10ヵ国。
北の国々などの強豪ひしめく中での出場は、ある意味「参加することに意義が在る」だった………。
……。
…初めての国際試合。
北の国の大柄な選手が怖くないと言えば嘘だろう。
それでも由麻は、ゴール前に立ち塞がり続けた。
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