「嫌いなスケート選手をぶっ跳ばせる」と誘われた   作:高島智明

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第7話 飛翔

葛城由麻に届いた知らせ。

それはアイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」からの、強化選手の誘いだった。

 

思わず由麻は聞き返してしまった。

「私が葛城の娘だからですか」

だが、相手は冷静に答えた。

「あの国民スポーツ大会で、有望そうな数名の選手に声を掛けています。貴女も其の1人です」

 

返答を保留した由麻は、今はOGと成っている元キャプテンの篠崎飛鳥に連絡を取った。

「それで?由麻はどうしたいの」

スマートフォン越しの飛鳥からの率直な反問に由麻は迷った末に、答えた。

「挑戦してみたい。葛城の娘で無く、アイスホッケーのゴールキーパー葛城由麻として」

 

「由麻のしたい様にしなさい」

スマホからの飛鳥の声は、由麻の背中を押してくれた。

 

飛鳥とのスマホを落とした後、由麻は家族に打ち明けてみた。

格闘技を始めた時も、GKにスカウトされた時も殆ど事後報告だった由麻にしてみれば、その意味では初めてだった。

 

両親と兄は応援する、と言ってくれた。

だがしかし、

「私は、お兄ちゃん程強く成れないかも知れないよ」

 

確かに、オリンピックを始めとするスピードスケートの国際大会で、近年の日本選手は活躍している。

数度の大会にかけて複数のメダルを取った選手まで居る程だ。

その高レベルの中で揉まれながら活躍している葛城弾馬は、当然に次回の「アルプス2030」でも期待されている。

 

その弾馬が言う。

「勝っても負けても、うちの妹に変わりは無いさ」

 

「それに、私たちだって世界じゃ強かった訳じゃ無い」

遂に「ミラノ・コルティナ2026」で日本のフィギュアスケート・ペアは金メダルに輝いたが、それまでは出場権すら獲得出来ないオリンピックすら在った。

葛城祐樹・麗香の出場した長野オリンピックも開催国枠だと、酷評する者も居ない訳では無かった。

 

「それでも、私たちには後悔は無い」

「だから、由麻ちゃんも後悔しないで」

そんな両親に、今の由麻は素直に成れた………。

 

……。

 

…やはり、葛城由麻の代表入りは両親や兄と結び付けられた。

だがしかし、今の由麻には雑音だ。

現状の由麻に在るのは、ゴールを死守すること。そして正式の代表選手に近付くことだ。

 

そして、由麻を含めた「スマイルジャパン」の当面の目標は「アルプス2030」の出場枠を勝ち取ること。

何せ「ミラノ・コルティナ2026」でも参加は10ヵ国。

北の国々などの強豪ひしめく中での出場は、ある意味「参加することに意義が在る」だった………。

 

……。

 

…初めての国際試合。

北の国の大柄な選手が怖くないと言えば嘘だろう。

それでも由麻は、ゴール前に立ち塞がり続けた。




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