薄暗い森林の中を、武装した集団が慎重に進む。
進んだ先には異形の腕とその近くに血まみれの少年。
武装した集団の一人が、少年を抱きかかえ避難させる。
他の集団は、新種のエーテリアスへ射撃する。
少年はその光景を目にし、泣き叫んだ。
その後、少年は白く密閉された空間へと幽閉された。
「まさか、エーテリアスに育てられたっていうのか?」
「まぁ…身元が分からないから、飽くまで可能性の話
だがな」
「成長の早さが尋常じゃない。ただ、ほとんど 喋らない。我々を意図的に避けているとしか」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!」
少年が叫び声を上げ、研究員の腕に噛みつく
「お、おい!離せ!」 「やめろ!」「離しなさい!」
口元を血で汚した少年は暴走し、
研究員に取り押さえられ、麻酔を注入され眠らされた。
その隙に少年の腕には鳥を模した赤い腕輪が付けられる。
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Episode 1
救い――――――――――――――――――――――――――
少年、
行く当てもなく、
千翼の足取りは、すでに自分のものではないようだった。
コンクリートの地面を踏みしめるたび、
膝から力が抜けていく。
乾ききった喉は呼吸するだけでも痛み、
胃の奥では何かに締めつけられるような
感覚が絶えず続いていた。
いつから食事をしていないのか、もう思い出せない。
「……どこへ行けばいいんだ」
声にしたところで、答える者などいない。
千翼は虚ろな目で前方を見つめた。
やがて視界の輪郭が崩れ、足元の感覚さえ失われていく。
そのまま、彼の身体は冷たい地面へと崩れ落ちた。
薄れゆく意識の中、微かに近づく足音が聞こえた。
「お兄ちゃん!あそこに倒れてる子がいるよ!」
「どうしてあんな所に、子供が…?」
「一度、私たちの家で休ませてあげよ!」
千翼が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
そこはとても温かく心地よかった。
密閉された空間に居た千翼にとっては
まるで夢を見ているようだった。
「起きた?」
「…?……誰だ!」
目を覚ました千翼は、すぐにベルトを探した。
近くに置かれているのを見つけると、腰に巻きつけ
戦闘態勢をとった。
「…あんたら誰なんだ!」
(まさか…4Cの追手か…!)
「ちょっと待ってよ!」
「落ち着いてくれ!僕たちは君に危害を
加えるつもりはない」
「そんなの信じられない!」
千翼のただらなぬ雰囲気にアキラは冷や汗を流していた
(まずい…錯乱している……この子を落ち着かせないと…
リンに万が一があれば…僕は………)
「グッ!…はぁ……はぁ………」
「大丈夫!?」
異様な苦しみ方に、アキラとリンが反射的に駆け寄る。千翼は青白い顔のまま、掠れた声で呟いた。
「お腹が……空いた…」
(この子は危険だ…でも………)
「……リン!何か食べられそうな物を持ってきてくれ、
その間、僕がこの子を見ているから」
「任せて!」
アキラは、警戒しつつも千翼の青白い顔を
心配そうに見つめる。
それから少しして、息を切らせたリンが戻り、
ハンバーガーを、即座に千翼へと差し出した。
「…これ、食べれる?」
食欲には勝てず、ハンバーガーを奪い取ると千翼は
その香ばしい香りに食欲を刺激されすぐさまそれを
貪りつくと、ものの数分で完食した。
夢中に食べる千翼の姿にアキラは
毒気が抜ける気持ちになった
「少しは落ち着いたかい?」
「…うん」
「君、自分の名前はわかる?」
リンがそう問いかけると、千翼は少し
名を名乗る。
「…千翼」
「そうか…僕はアキラ、こっちは妹のリン
二人でビデオ屋をやってるんだ」
「よろしくね」
「それで、千翼はなんであんな場所にいたの?」
そう尋ねるリンに、千翼は少し考え込む。
(他人の俺にここまでしてくれる二人には……
感謝してる……それでも)
千翼は4Cの過酷な毎日を過ごし、優しくされるのが
逆に怖くなっていた。
(…本当は俺を4Cに突き出す為の
時間稼ぎかもしれない………)
(だけど…!)
千翼は意を決してこれまでの経緯を話す。
「………昔……母さんが…エーテリアスに殺されたんだ」
アキラとリンは息を呑み、静かに次の言葉を待った。
「そのあと、4Cって組織に捕まって…
ずっとエーテリアスと戦わされてた。
あいつらは、俺を人間扱いなんて一度もしなかった。
ただの使い捨ての道具みたいに…」
俯く千翼の肩が、微かに震えている。
(……さっきのはその所為だったんだ…!)
リンの瞳には、言いようのない憤りと
千翼への深い同情が浮かんでいた。
アキラもまた、目を険しく細め、
4Cという組織の非道さに激しい怒りを覚えていた。
(……これほど危険な背景を持つ少年を匿えば、
僕たちもただでは済まないかもしれない…)
(本当は治安局に引き渡すべきなんだろう…でも)
「…そうか。辛かったね、千翼」
アキラは静かに、だが確かな温もりを込めて言った。
そして、隣にいるリンを見た。
リンは、すでに決意を秘めた目でアキラを見返していた。
言葉を交わさずとも、妹の言いたいことは分かっている。
「……千翼」
アキラが千翼に歩み寄る。
「帰る場所がないなら……僕たちの家で暮らすかい?」
「…え?」
千翼が驚いたように顔を上げた。そんなはずはない、
という強い不信感がその瞳に揺れている。
「私もお兄ちゃんに大賛成! 4Cがなんだって言うの!
こんなに傷ついた子を、外に放り出せるわけないじゃん」
リンは努めて明るく、しかし絶対に譲らないという
口調で笑ってみせた。
「………いいの? 俺、何するか分からないよ……?」
怯えるように自分たちの顔を伺う千翼を見て、
アキラは苦笑しながら、
その頭へ優しく手を置いた。
「僕たちが言い始めたんだ。君がここに居たいなら
誰にも文句は言わせないよ。」
「ありがとう……」
母親が殺されたあの日から、幸せな瞬間などは一度もなく
エーテリアスを倒し、実験される日々の繰り返しだった。
しかし、リンとアキラとの出会いが千翼に人の
温かさを感じさせ、心からの笑顔を見せたのだった。
「…そう言えば…どうやってエーテリアスを?」
「これで、体を強くしてから戦ってた」
そう言うと千翼は、ネオアマゾンズドライバーを
リンとアキラに見せる
「そっか…だから、さっきそれを着けてたんだ……」
千翼の言葉に、アキラとリンは顔を見合わせた。
少しだけ声を潜め、相談するようにリンが
アキラの袖を引く。
「お兄ちゃん、千翼にイアス達の事は
話しといたほうが、いいのかな?」
「そうだね…紹介しておこうか」
話し終えると、アキラがイアスを呼ぶ
「イアス、こっちに来てくれ」
長い耳を揺らし、不器用な足取りで歩く
ウサギのような姿をした妙な機械の塊。
ボンプという存在を初めて目にした千翼は
警戒しつつ、身構えて距離をとった。
「……なんだ、こいつ……?…エーテリアスか…!」
「まって!この子はイアス。私たちの
家族で頼れる相棒だよ! 」
「ンナンナ!(よろしく!)」
千翼はその言葉を聞くと、イアスへの警戒を緩め
一息ついた。
「家族…か」
――――――――――――――――――――――――――
「そろそろ千翼にプロキシの事、話しても
良いんじゃない?」
「リン…流石に千翼は巻き込めないよ」
「もう家族なんだしさ!隠し事はしないでおこうよ!」
「でも…」
「いいから!いいから!」
「わかったよ…」
(一度言ったらリンは曲げないからね…しょうがない)
「千翼…実はね…私たちプロキシやってるんだ!」
「……プロキシ…?何それ?」
「えーっと…ホロウは、わかるよね?」
「あぁ…知ってる…エーテリアスが居る所だろ?」
「そう!それでね、プロキシは依頼を受けて、
ホロウの中で私たちはイアスに意識を同期して
依頼を
(…同期……)
「……でも、それって危なくないか?」
千翼の素朴な疑問に、リンは「うーん……」
と言葉を詰まらせた。確かにホロウ探索は命がけだ。
危険な目に遭うことだって一度や二度ではない。
考え込む彼女の様子を見て、千翼はそれを遮るように
言った。
「俺にも……何か、協力させてくれないか?」
「…え?」
自分を救い、初めて人間として扱ってくれた
アキラとリン。彼らに恩を感じていた千翼は、
もしそこに危険があるならば
今度は自分が二人を守りたいと強く願ったのだ。
千翼は真剣な眼差しで、アキラを見つめた。
それを見たアキラは苦笑しながらも
降伏の合図を出すように息を吐いた。
「…わかった」
「!」
「ちょうど依頼が来てたんだ、千翼
護衛を頼めるかい?」
――――――――――――――――――――――――――
ホロウの入口、千翼は過去を思い出す
『大丈夫…大丈夫だから…』
そう優しい女性の声とともに、抱きしめられた記憶。
そう物思いに耽けていると、リンから呼びかけられる。
…千翼」
「千翼!」
「おーい、聞こえてる?千翼」
「………あぁ」
「ぼーっとしないでよ!行こ!」
「あぁ…」
イアスと同期したリンと千翼は、裂け目へと進んで行った
ホロウ内にて
『指定された場所はここみたいだね、リン
何か見えるかい?』
そこにいたのは、エーテリアスから逃げ惑い
恐怖のあまり顔が青ざめていた男性だった。
「エーテリアスに襲われてる人がいるよ!
依頼人の言ってた人かも」
「誰か!助けてくれ!」
千翼はエーテリアスを目にし、抑えていた
『戦いたい』、『壊したい』
そんな本能と欲望に歯止めが効かなくなり
エーテリアスの方に向かった。
「エーテリアス…!!」
「ちょっと!?千翼!?」
追尾するエーテリアスを、千翼がバイクで
機械的な電子音がホロウの不気味な空気に響き渡る。
【NE・O】
「…アマゾンッ!!」
「うわぁ!?」
強い熱と衝撃波が千翼の身体から放たれ、
イアスがそれで少し吹っ飛び、
アマゾンネオへと変化した。
「ウアァァァァ!!」
千翼は、咆哮を上げエーテリアスに殴りかかる。
「痛てて…!…あれが…千翼の言ってた………」
『リン!今はその人を避難させるんだ』
リンは千翼の姿に気を取られるが、アキラの言葉で
我に返り、目的の人物をホロウの外へ案内する。
「ギャアァァァァ!!」
「グッ…!」
やがて千翼は、エーテリアスの猛攻に劣勢を強いられる
(エーテリアスは!俺が全部!)
「アァァァァァァ!!」
千翼は咆哮を上げ、再度インジェクターを押し込む
『BLADE LOADING』
そんな電子音声の後に、右腕からアマゾンネオブレードが生成されると、透かさずエーテリアスへと斬りかかった。
(狩るッ!)
「ハァァッ!」
「ギャアァッ!!」
千翼は生成された刃をエーテリアスの脇へ
深く突き刺し、力任せに引き抜いた。
絶叫を上げる怪物の胸元へ、馬乗りになった千翼は
何度も、何度も刃を突き立てた。
それは狩りというよりも、ただの獣の暴走だった。
「ギャアァァァァァッ!?」
それから程なくして、コアが崩れ消滅した
静寂が戻ったホロウの中で、千翼の荒い呼吸と、
まだ治まりきらない殺気が生々しく響いていた。
その圧倒的な凶暴性をイアスを通して
目の当たりにしたリンは息を呑み、
わずかに身体をこわばらせる。
(…これが、4Cに利用されてきた千翼の戦い方………?)
エーテリアスをただの獣のように蹂躙したその力は
あまりにも異質で、恐ろしかった。
インジェクターを引き抜き、
元の姿に戻った千翼が自分の手を見つめ、
小さく俯いた。
(必死に戦わなきゃ、誰も必要として
くれなかったんだ……!)
千翼の背中を見つめるリン。
先ほどまで感じていた恐怖は、いつの間にか薄れていた。
「……千翼!…」
リンは強張った足に力を入れ、一歩、
千翼の方へと踏み出す。そして、彼を安心させるように、
いつも通りの明るい声を出した。
「……終わった、みたいだね。お疲れさま!じゃあ
帰ろっか!」
「!…」
それから一言も発することなくイアスを乗せ
ホロウの外へと、ゆっくりとバイクを進めた。
(俺は…楽しんでたのか………?…)
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捕捉
鳥を模した赤い腕輪=ネオアマゾンズレジスター
・千翼の人間状態での強い闘争本能を押さえ込むもの。
4C
・Competitive Creatures Control Centerの略称
・特定有害生物対策センター
・政府が設立した公的組織