架空近未来国家召喚   作:zero3 ガイル

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プロローグ ロウリア王国編1

 

フルダイブ型ゲームが当たり前となった世の中。

 

そんな一般的となったフルダイブ型戦略シュミレーションゲームの一つである『ワールド・ネオウォーズ』でいつもの様に遊んでいた俺、中田健一(なかたけんいち)は『ワールド・ネオウォーズ』の勢力の一つ『アカツキ帝国』の司令官に転生しただけでなくアカツキ帝国本国と一緒に異世界に飛ばされた。

 

どうして転生した事を自覚したのかというと、一つ目はリアルの俺は独身のアラフォー男性だったのに端正な顔立ちの二十代半ばな男性になっていた事と、二つ目の理由は現代のフルダイブ技術だと触覚・嗅覚・味覚を再現する事は不可能であるのにリアルと全く差異なく五感を感じられること。

 

そして転生した事を自覚した真の理由は……。

 

「閣下。今週の新世界に対する新たな報告書です」

 

「わかった、確認するよ有栖」

 

黒の軍服を着た身長170はあるスラっとしたモデル体型で綺麗なロングヘアーの黒髪が特徴な美人が指揮官室に入ってきて俺に報告書を渡す。

 

これが俺が転生したと実感した三つ目の理由だ。『ワールド・ネオウォーズ』の陣営の一つである『アカツキ帝国』の美人秘書としてファンから絶大な人気がある如月有栖(きさらぎありす)が生きた人間の様に俺に話しているからだ。上記の説明の様に転生前のフルダイブ型ゲームの技術では、五感のうち三つである触覚・嗅覚・味覚が再現できない様に現代でもNPCは簡単な受け答えは出来るが、思考や行動を人間と同じレベルまで完璧に再現は出来ていないからだ。

 

しかも有栖だけでなく、他のNPCキャラ達も人間と遜色ないレベルの思考や行動を示した事で俺は『ワールド・ネオウォーズ』の『アカツキ帝国』の司令官に転生したと実感した事を理解したが俺は素直に喜べなかった。

 

側から見ればアラフォーのオッサンから二十代のイケメンになった、ゲームの設定上事実的な最高権力者、ゲームクリア後に転生した為に美人秘書を含めて軍民問わずに多くが崇拝レベルに俺に対して忠誠心がクソ高いという好条件が揃っているが、俺は転生前はゲーム好き以外は大した取り柄もないアラフォーなサラリーマンでしかない。

 

そんな凡人オブ・ザ・凡人に国の運営丸投げしたらダメでしょうと思うのだが、しかし俺が……「実は俺は転生して君が知る司令官とは別人なんだ」なんていうトンチキな事を言う勇気もないし言ったら変人確定するし、遠回しに軍人が全ての決定権を握ったらまずいんじゃないのと言った時には……。

 

「いいえ!中田閣下の決定に反対するアカツキ国民はいません!もしそんな非国民がいるなら私達アカツキ帝国軍人が粛清します!」

 

と、有栖を筆頭とした高級士官や政治家達様子に俺は一層自分の正体がバレない様に理想の司令官として振る舞うしかないと自覚した。とにかく転生して二ヶ月かたった現在も正体がバレずにすんでホッとしてるし、『ワールド・ネオウォーズ』の世界じゃなくて全く未知数な異世界に飛ばされて最初はアカツキ帝国も混乱したが、食料が豊富なクワ・トイネ公国と石油を筆頭に近代国家に必須な鉱物資源が豊富なクイラ王国という温厚で文明的な異世界国家と国交を結ぶ事が出来て混乱はある程度収まっているが『ワールド・ネオウォーズ』の世界で構築した経済圏の喪失や海外展開した軍事力の喪失分の埋め合わせがまだ出来ていないので問題は山積みだけど。

 

ーーー。

 

中央暦1639年 三月二十二日 午前。

 

そして、アカツキ帝国と国交を結んだロデニウス大陸に位置するクワ・トイネ公国は凄まじい勢いで発展していた。

 

アカツキ帝国と国交を結んだ事で大量の食料を輸出する事が締結され、その見返りに大量の食料の輸送手段を確保する事も考えてクワ・トイネ公国のインフラ開発を行っていた。アカツキ帝国によるインフラ開発に対する恩恵は凄まじく、石畳が進化した様なつなぎ目がない道路や鉄道と呼ばれる大量に物や人を移動させる事ができる大規模運送システム、アカツキ帝国に大量輸出するために大規模な湾岸施設が築かれようとしており、これが全国に普及すればクワ・トイネ公国歴史上類を見ない経済発展をするだろうとクワ・トイネ公国の経済関係者達は確信していた。

 

更に清潔な水道技術、夜でも昼の様に明るくなる電気技術、一瞬で火がつくプロパンガスの普及で経済だけでなく生活水準も飛躍的に向上した。

 

そして同じ様にクワ・トイネ公国とほぼ同時期に国交を結んだクイラ王国も隣国クワ・トイネ公国の様に食料自給率100%を遥かに超える様な肥えた土地を保有してないが、クワ・トイネ公国の莫大な食料と同様にアカツキ帝国が喉が出るほどに石油を筆頭とした地下資源を保有していた事もあって石油や地下資源を対価にクイラ王国にもクワ・トイネ公国と同様なインフラ開発を行っていた。

 

「凄まじいな」

 

日に日に自国が発展していく様子にクワ・トイネ公国首相のカナタは感慨深く呟く。

 

「ええ、まさか辺境国家の我々が文明国を超える生活を手に入れるとは思いませんでしたよ」

 

カナタに同調する様に秘書官も頷きながら答えた。

 

「これもアカツキ帝国と国交を結んだおかげだな」

 

「全くです」

 

カナタの言葉に秘書官も同じ様に答える。

 

最初は異世界から転移した転移国家という信じられない事を言う怪しい集団という認識だったが交流が続くとアカツキ帝国は文明圏外国に属する辺境国には似つかわしくない程に発展した街並みや鋼鉄で動く巨大船や飛行機という巨大な鉄竜を当たり前に扱うアカツキ帝国を自分達の世界の常識では測れない規格外な国家と認識し、クワ・トイネ公国はアカツキ帝国が説明した転移国家という証言を信じる様になった。

 

「アカツキ帝国が温厚で理性的で助かりました。もしこの世界の列強国同様の思想でしたら我が国はロウリア王国以上の脅威と戦う事になっていました」

 

「そうだな。ロウリア王国以上の脅威と戦争するなど考えたくもない」

 

「ですね。アカツキ帝国と友好関係を構築できたおかげで我が国はロウリア王国に対する問題にだけ集中できます。最近のロウリア王国はきな臭いですからね」

 

側近の言う通り最近はロウリア王国がきな臭い。

 

自分達同様に文明圏外国ではある。しかし軍事力は列強国には及ばないが下手な文明国より強大であるため出来れば衝突は避けたいのが本音だが、ロウリア王国の歴代の国王が覇権主義でロデニウス大陸制覇を悲願としてると同時に人間至上主義者であるため人間を含めた多種族国家であるクワ・トイネ公国と隣国クイラ王国の関係は水と油と表現する程に合わない為に戦争は時間の問題と考えていた。

 

その為にカナタはアカツキ帝国にインフラ開発だけでなく、ロウリア王国の戦争に備えて武器の輸出も強く願い出ていた。

 

アカツキ帝国も最初は転移して間もない新世界でインフラはともかく武器輸出をすれば新世界にどの様な影響が出るか不明であった為に最初は慎重な姿勢であったが、新世界に転移して『ワールド・ネオウォーズ』の世界で構築した海外で輸入していたエネルギーや食料、そして友好国を全て失ったアカツキ帝国にとって転移前と同様に国内を安定させる事が急務であり、新世界で転移前同様に異世界で大量の食料やエネルギーを輸出してくれる国家との友好関係を即座に構築する事は必須であった。

 

新世界についてはまだわからない事だらけのアカツキ帝国にとって石油や地下資源が豊富なクイラ王国同様にアカツキ帝国の食料事情の殆どを解決してくれるクワ・トイネ公国との関係性を構築する事は重要であった為に旧式だが、クワ・トイネ公国に対する武器輸出を認めたのであった。

 

ーーー。

 

同時刻。ロウリア王国 王都ジンハーク ハーク城

 

ロデニウス大陸の完全統一という野望に燃えるロウリア王国の現王ハーク・ロウリア34世の前で御前会議が開かれていた。

 

「国王様。全ての準備は整いました」

 

「後は王の号令を待つだけです」

 

自身が信頼する将軍達の自信に満ち溢れた言葉にハーク・ロウリア34世は満足げに頷く。

 

しかし戦争する前の最終確認の為に宰相であるマオスは王国騎士団将軍であるパタジンに質問する。

 

「しかし、クワ・トイネ公国に戦争を仕掛ければほぼ同盟国と差し支えがない程に友好関係を築いているクイラ王国も参戦してくる事は明白。将軍は二カ国を同時に相手にして勝つ見込みはあるのですか」

 

「ご安心を一国は農民の集まり、もう一国は不毛の地の貧国。数においても質においても我が国が圧倒しています。何より両国は亜人の国であり我が国が負ける要素は一切得ません」

 

「わかりました」

 

将軍パダジンの説明を聞いてマオスは納得した様に呟く。

 

「それより宰相殿。二ヶ月前に二カ国に接触し、我が国も接触してきたアカツキ帝国という国の情報はありますか」

 

「ロデニウス大陸の北東1000キロに存在するワイバーンを初めて見たというワイバーンも知らない野蛮な新興国家ですよ。彼等の反応が演技とも思えませんから竜騎士も存在しない為にとても脅威になるとは思えません」

 

新世界は化学技術を主体とする列強国第二位のムーや魔導技術世界一である列強国第一位の神聖ミリシアル帝国という例外を除けば列強・文明国・文明圏外国の航空戦力はワイバーンを使うのが常識。ワイバーンを使用できない国は文明圏外国でも遥かに格下扱いであるため、宰相のマオスの指摘通り新世界の常識的に考えれば10騎いれば一万の歩兵を足止めできるワイバーン等の航空戦力を保有してない国家は大した脅威にならない。

 

マオスの説明を聞いてパタジンもアカツキ帝国が援軍が来ても大した脅威にならないと判断した。

 

「しかし、我が代でついにロデニウス大陸が統一され、忌々しい亜人どもが根絶やしに出来ると思うと、余は嬉しいぞ」

 

ハーク・ロウリア34世は嬉しそうに発言する。

 

「大王様。統一した暁には、あの約束もお忘れなく……くくく」

 

会議室に黒いローブを被った男の薄気味悪い声が鳴り響く。黒いローブを被った集団は第三文明圏の覇者で列強国のパーパルディア皇国から派遣された使者であり、今回の作戦会議に参加させる様にハーク・ロウリア34世に通達していた。

 

「わかっておる!」

 

そんな黒いローブを被った男の声に不快感を隠さない様にハーク・ロウリア34世は怒気を込めながら叫ぶ。

 

命令される事を嫌うロウリア王国の国王ハーク・ロウリア34世の気性ならその場で黒いローブを被った男の言葉を聞いた瞬間に切り伏せていたが、今回のロデニウス大陸統一の為にパーパルディア皇国に大規模な軍事支援を受けているため粗相にできない為にその場で斬り伏せたい強い思いを踏み止まらせた。

 

昔からロデニウス大陸の覇者である祖国を文明圏外国家と馬鹿にしていたパーパルディア皇国を含めたフィルアデス大陸の国家群共にロデニウス大陸統一が完了したらお前らも制服してやると決意するのであった。

 

それから会議は続き、手始めに国境から比較的近いギムを強襲し占領、ギムを拠点にクワ・トイネ公国の首都を一気に制圧し、それに並行して4400隻からなる軍船でクワ・トイネ公国の交易や海軍の拠点であるマイハークを占領してクワ・トイネ公国の食料輸出に依存しているクイラ王国を干からびさせ、クイラ王国が餓死寸前まで弱ったらクイラ王国を一気に占領する事を説明されてハーク・ロウリア34世は機は熟したと判断する。

 

「今宵は我が人生最良の日だ!クワ・トイネ公国、並びにクイラ王国に対する戦争を許可する!」

 

ロウリア王国はロデニウス大陸統一の為にクワ・トイネ公国とクイラ王国との戦争を許可を出した。

 

会議室に全員がロウリア王国がロデニウス大陸統一を成し遂げられると信じて疑わなかったが彼等に誤算があった。ワイバーンも知らない野蛮な新興国家と判断したアカツキ帝国の事を軽視した事が高い代償を払わされる事に会議室に参加している誰もが予想だにしない事に。

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